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崎裏町の怪異  作者: 齊藤
夜見坂トンネルの呪い
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夜見坂トンネルの呪いの調査

そして四時に授業を終えて放課後。 問題の時刻にトンネルを調べてみたかったので、時間をつぶすついでに高校の隣りにある市立図書館で事故について調べることにした。 早く帰りたがるアユミを説得するのに少し時間がかかったが、ごねるようなら一緒に帰らないぞと言うと簡単に引き下がった。 アユミは文芸部に所属していて、いつも六時頃まで活動しているのだ。 事故現場を通るのは気味が悪いというのはわからなくもないが、今日に限って早く帰ったところでどうなるものでもない。

さて、図書館での調査だが、地元紙も電子化されており検索は簡単だった。 写真家が死んだ轢き逃げ事件の正確な日付けは1998年の六月五日で、今から十一年前である。 被害者は夏休みを利用して遠方からきた旅行者であることと、轢き逃げであること、死体はトンネルの近くの路上にあったことという程度の簡単なことしか書かれていない。

轢き逃げ事件より後の夜見坂トンネルでの事故は、四件の正面衝突事故と二件の追突事故で計六件があったことはハッキリした。 追突事故のひとつは追突の際に反対車線にはみ出しており、対向車線を走っていた自動車が巻き込まれている。

特に期待してもいなかったが、新聞記事ではありふれた交通事故として書かれているだけだ。 発生時期が六月初旬に集中していることさえ触れられていない。

調べた結果から結論を導こうと考えてみるが何の成果も得らぬまま図書館の閉館時間である六時が近付いたので、アユミと合流するために校門前へと急いだ。 あとは現場を見なければなんとも言えない。

「新聞を調べたけど、特に面白い情報は無かったよ」

調べた結果を報告しながらアユミと並んで歩く。 私は徒歩通学だが、アユミは自転車通学なので自転車は押しながら歩いている。

「ああ、その対向車線にはみ出してきた車に巻き込まれたのがうちのお爺ちゃんだよ。 トンネルの真ん中で両方の車線を塞ぐ形になったから渋滞になって大変だったって言ってた。 警察の検証でお爺ちゃんに非はないのがわかったから車は保険で直せたけどね」

アユミの祖父はアユミと同居している。 私がアユミの家に泊まったことは何度かあって、アユミの祖父と面識もある。 当事者から直接話を聞ければ何か新たにわかることもあるかもしれない。

そんな風に話しながら十五分ばかり歩くと問題のトンネルにさしかかった。 確かに危険そうな感じは全くなさそうに見える。 自動車なら数秒で通り過ぎてしまうほどの距離だろう。 真っ直ぐな道路なのにその数秒しかないトンネルの箇所で事故が何度も起きているのだから、ここに何か問題があるはずなのだ。

ゆっくりと歩きながら、トンネル内部の状態を携帯電話で撮影して記録していくが、後から見返して何かわかるとも思えなかった。 道路もトンネルも補修された後があり、きちんと管理されている様子が見受けられる。

たっぷり三十分ほどかけてトンネル内部を観察して、ふと気付いた。 妙に明るい…。

「あっ‼ アユミ‼ ちょっとこっち来て」

崎裏町の側からトンネルを見ると一目瞭然だった。 トンネルの向こう側に太陽が見えている。 太陽の光が真っ直ぐにトンネル内に差し込んでいるから明いのは当然だった。 もう少し待てばトンネルの向こうに沈む夕日が見えるだろう。

「うわぁ。 凄い。 こんなの初めて見た」

アユミは妙にはしゃいでいる。 アユミがここを毎日通るとは言っても、夕方に通るのは必ず帰り道、つまり太陽を背にするので気付かなかったのだろう。 もちろん私も初めて見た。

思わず携帯電話を構えて撮影した。 そして気付いた。

「もしかして、死んだ写真家ってのもこれを撮影しようとしたんじゃね?」

有り得る話だ。 私達は歩道にいるが、トンネルを真正面から写真に収めたいと思ったら車道に出るしかない。 そして真っ直ぐな道でスピードを出している自動車が止まりきれずに轢いてしまう…。

「なるほど。 辻褄は合うね」

「これで説明が付くのは轢き逃げ事件だけだけどね。 夕日だから眩しいってほどでもない。 目が眩んで運転ミスってことは考え難い。 だけど、とにかく太陽の光がトンネル内部まで差し込むのはこの時期のこの時間帯だけだろうってことはわかった。 どう関連してるかはわかんないにしても、合理的に説明が付くような何かだと思う」

アユミはあからさまにホッとした様子を見せた。 呪いの噂がそんなに怖かったのだろうか。 その手の噂は物語として楽しむことはあっても実際にあるかと問われれば絶対に無いと私は断言できてしまうのだが。

「サヤちゃん、凄い。 今日は一緒に帰ってもらってよかった」

無駄足にならなくてなによりだ。 私は呪いの噂なんぞ信じていないとは言え、久々にアユミのうちへ泊まるのだから、憂いを残さず楽しめればそれに越したことはない。


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