誰が殺した?
その後、平穏に試験勉強して、定期試験を受けた。 殺人事件で動揺している学生も多いことを考慮して試験を延期してはどうかという意見も教師の間ではあったらしいのだが、年間の指導計画が狂うのも良くないという意見が勝って、試験での評価をやや甘くすることで妥協したらしい。 そんなに弱い精神を持ち合わせない私にとっては試験が簡単になってラッキーという程度の感覚である。 実際、自分なりにはかなりよく出来た方だと思う。
開放的な気分で教室を出ようとすると校内放送で呼出しを受けた。 職員室へ行ってみると、そこにいたのは刑事だった。 落日峠の焼け跡のところで会ったあの刑事と、ユウヤに聞き込みにきていた佐藤警部である。 名前を知らなかった刑事は佐伯と名乗った。 私が学校の試験のことを言ったので、それを配慮して試験が終わる今日まで来なかったのかもしれない。
「どーも、こんにちは。 私に聞くようなことがありましたか?」
「夕日神社の宮司、丸山についてちょっとね。 君が言った通りに死体を移動させたことを丸山は認めたよ。 土曜日、ああ、日付で言えば六月十三日か。 早朝に死体を発見した丸山は山の中の木の後に死体を一旦は隠して、その日の夜に死体の移動をしたと証言している」
「はあ、それで」
「ここからが問題なんだが、金曜日の夜に三枝教諭と夕日神社で会う予定になっていた人物がいる。 その人物の証言では三枝教諭は夕日神社に来なかったと言うんだ。 その証言を裏付ける証拠はない。 今のところその人物が一番怪しい。 しかし、丸山が本当に死体の移動と損壊だけをやったという証拠もない。 丸山が死体の移動をしたという指摘をした君は、丸山が殺人はしていないということに確信ありげだったが、そう思った根拠を確認させてもらおうと思ってね」
「いや、ホントにちゃんとした根拠なんてないんですよ。 気付いたのも私と丸山さんに共通するところがあったから気持ちがわかったってだけで」
「ほう。 共通するところ?」
「元々は私の家系があの神社の宮司をやってたってことは知ってますか?」
「ああ、それは丸山から聞いてる」
「それでなんとなくあの神社に愛着があるんですよ。 丸山さんの場合は愛着というより責任感とかかもしれませんけど、いずれにしてもあの場所が汚れるのが嫌だなって気持ちがあるってことです。 衝動的に行動した可能性もあるんで、誰もが納得する理由ではないでしょうね」
「まあ、それだけじゃ私も納得しづらいな」
「それはそうと、丸山さんは何でまた学校に死体を移動したんです? 体育倉庫って普段は鍵かかってたはずでしょう」
「死体の服のポケットに鍵が入っていたから思い付いたという話だ。 距離的には神社と学校は近いが、学校の中で死体が発見されたら学校関係として捜査されるだろうという見込みでわざわざ移動したらしいな。 土曜日の昼間は運動場で部活している部があったから、彼らが倉庫の中に死体が無いことを見ていたら、死亡推定時刻がそれより前では他の場所から死体を移動したことに気付かれると思って石灰で死体をぐちゃぐちゃにすることを思い付いたらしい。 要するに死亡推定時刻を誤魔化すためだ。 運んでいる途中で死体にかなり傷が付いてしまったのを隠す意味もあったみたいだが」
「はー、よくとっさにそんなことまで思い付くもんですね。 動機が非合理的な割にやることに隙がない」
「石灰は倉庫に保管されていたものだ。 死体を移動してから石灰があるのを発見して思い付いたと言っていたから計画的というほどではないんだ」
たしかに体育倉庫には生石灰があった。 園芸用に用意しているもので、ラインパウダーと間違わないようにやたらと派手に表示してあった覚えがある。 倉庫に入ればまず目についてもおかしくはない。
「ひょっとしたらと思って聞きにきたが、そう簡単に都合のいい証言はないか…」
「いやぁ、期待させてすいませんね」




