祓
臨時休校が終わっていつも通り登校しようとすると、落日峠の焼け跡の周辺がバリケードテープ (黄色と黒のテープ) で囲まれていた。 周囲には警官がいて、鑑識らしき人が作業している。 さっそく調査を始めたらしい。
「あのー。 私、ここ通らないと遅刻するんですけどー」
声をかけると、警官のひとりが返答を返してきた。
「ごめんねー。 そっちから迂回してくれるかな」
そう言って林の中を指差す。 木が茂っているせいか下草はあまりないので歩くのに問題なさそうだ。
ふと視線を動かすと、神社を管理している宮司の丸山さんが立っているのが見えた。 ここは神社の敷地内なのだから立ち会うのも当然か。
「丸山さん。 大変なことになりましたね」
「ああ、神域でこんなことになるとはな…」
「これ、血を焼いた跡じゃないかって連絡したのは私なんです」
丸山さんはずいぶんと渋い表情をしたままで鑑識の様子を見ている。
そうか、ここは神域なのだ。 私は自分と神社の関係からここでの殺人に不快感を感じていたが、彼にとっては自分が管理する神域を穢されたのだ。
そのとき、私の脳内に閃いた。
「ここで血を焼いたのは丸山さんですね? それは結果的に証拠隠滅ですよ。 もしかして死体を移動したのも丸山さんですか?」
すると、私達の会話が耳に入っていたであろう刑事のひとりが会話に割り込んできた。
「どういうことかな?」
「たぶんですけど、穢れを祓おうとしたんじゃないですか」
丸山さんは少しの沈黙の後で私を見ながら口を開いた。
「何か証拠はあるのかな?」
「物的証拠は何もないですよ。 ただ、ここで血を焼く理由として他に思い付かなかっただけです。 最初は血のDNAを破壊して鑑定不能にするためかとも思いましたが、ここで血が流れたことは調べればわかることなので誰の血か特定できなくすることに何の意味があるのかということが私の中で引っ掛かっていたんです。 丸山さんがここを『神域』と言ったんで、血が穢れだと気付きました。 そういう感覚を持っている人がここで殺人をすることはないでしょうし、丸山さんは血を焼いたり死体移動をしただけなんじゃないですか。 かなり確信があるんですが、どうでしょう?」
丸山さんは沈黙したままだ。
「殺人に関しては実は他に容疑者がいて話を聞いてるんだが、それと合わせると納得いく部分がある。 ちょっと話を聞かせてもらえるかな。 あ、それと君も一緒に来て欲しいんだが…」
「来週は定期試験があるんで授業はちゃんと受けときたいんですけどー。 っていうか、もう行かないと遅刻するんで勘弁してください。 これが血の跡じゃないかっての、こないだ警察に連絡した八崎サヤです。 住所もそのとき言ってあるんで必要なら連絡してもらえればいいんで」
そういって解放してもらった私は急いで石階段を降りて登校した。




