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崎裏町の怪異  作者: 齊藤
三枝教諭
12/18

推測

ぼんやりしていると、自治体の回覧板(かいらんばん)がまわってきた。 殺人事件があり、犯人が捕まっていないので外出を(ひか)えるようにという注意だ。 情報提供の呼び掛けや警察の連絡先も書かれている。 隣家(りんか)から歩いてその回覧板(かいらんばん)を持ってくるというあからさまな矛盾に呆れるが、自治体で発言力のある老人達は電子メールというものが存在するということさえ知っているかどうか怪しいくらいなので、最低でもあと十年ほどして世代交代が完了するまではこの馬鹿馬鹿しい手段で運用されるのだろう。

そもそもこの内容であれば自治体で通知するよりも、警官が呼び掛ける筋合いのものじゃないだろうか。 あらためて呼び掛けるまでもなくこの町内で事件のことを知らないなんてことはないだろうが。

無意味とは思いながらも念のために母にも回覧板を見せ、次の家へと回覧板を持っていくために玄関を出た。 玄関を出たが敷地の出入口を通りはしない。 (へい)の横にある自転車(じてんしゃ)の荷台を足掛かりにして、そのまま(へい)を飛び越えて(となり)の庭へと入る。

「ユウヤー。 いるー? 回覧板だよー」

声をかけながらバシバシと窓を叩くと、パジャマ姿のままのユウヤが顔を出した。

「はいはい」

この窓はユウヤの部屋の窓だ。 ユウヤは出掛けない日はパジャマのままで(すご)すことも多い。 ユウヤの母は仕事を持っているので、洗濯などの一部の家事をユウヤがやっていて、着替えるとその分だけ洗濯物が増えるというのが面倒くさいのだそうだ。

回覧板を受取(うけと)ったユウヤが目を通すと(あき)れた口調で言った。

「なんだこりゃ」

そりゃそう思うよなぁ。

「事件に関係ありそうな情報といえば、落日(らくじつ)峠の階段の途中でなんか燃えた(あと)があったの気付いた? あれって事件に関係あるかな?」

ユウヤにそう言われて、確かにそんなものがあったのを思い出した。 昨日の朝、登校途中に見た覚えがある。 落日峠の四崎(よつさき)町の側、中腹(ちゅうふく)よりやや上のあたりだ。 直後に殺人事件という大きな事件を聞いたので忘れていた。 石階段とその横の山林が(おおよ)そ四平方メートル程度の範囲でコゲていた。 見たときは深く考えなかったが、言われてみるとおかしい。 野焼きにしても中途半端だし、あんなところで火を使う理由がないのだ。

何か事件の証拠になるものをあの場所で燃やした可能性は有ると思えた。 証拠って何だ? 凶器だろうか。 どうしてあの場所でわざわざ燃やさなければならなかったのか…。 いや、わかった。 『あの場所』を燃やしたかったのだ。

「あの場所が本当の事件現場(げんじょう)かも。 三枝(さえぐさ)の頭蓋骨は陥没してたっていうことだったし、殴りつけるんじゃなくて石階段にぶつかっても結果は同じはず。 流れた血を洗い流しても今時の科学捜査じゃDNA鑑定すれば誰の血かわかっちゃう。 DNAを破壊する薬品とかもあるかもしれないけど、焼いてしまえば簡単だから、あの場所に流れた血を隠すために焼き払ったって仮説は立てられる」

「それじゃ、あそこで事件があったっていう証拠はもうないってことか…」

「いや、そうでもないと思う。 三枝(さえぐさ)の血かどうかは特定できなくても、それが血かどうかくらいはわかるんじゃね? 傷口と石階段の形が一致すれば証拠としては充分だし、もしかすると離れたところに血の飛沫がちょっとくらいはあるかも」

「警察に連絡した方がいいかな?」

「警察も馬鹿じゃないし、気付いてるんじゃないかなぁ…。 まあ連絡しとくか」

死体をわざわざ移動したなら落日(らくじつ)峠で三枝(さえぐさ)が死ぬと犯人にとって都合が悪いということだろう。 どういう理屈で犯人にとって不都合なのかは思い付かないけれど、そこは警察が考えてくれるだろう。 そもそも落日(らくじつ)峠の焼け跡が血を焼いた跡かどうかは私の推測でしかないし。


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