報道
翌日、昼前に起きた私はぼんやりと殺人事件のことを考えていた。
まず事件の情報を5W1Hで整理してみよう。
・誰が? 犯人は不明。
・何を? 殺されたのは国語教師の三枝である。
・いつ? 六月十二日の金曜日には普通に授業があったのだから、十二日の夜から十五日の早朝にかけてのどこかだろう。 土日に活動した運動部があればもっと特定できるかもしれない。
・どこで? 死体が発見されたのは高校の体育館である。
・どのように? 殺人と断定して警察は動いているらしいので、殺人とわかるような死因なのだろう。
・なぜ? 動機は不明。
情報が不足しすぎている。 これで推理できたら超人だな。
そろそろマスコミも情報を掴んだだろうかと、居間にあるテレビのスイッチを入れた。 ちょうど高校の校門前でリポーターが喋っているところだった。 自分の知っている場所がテレビに映るのは変な気分だ。 近所の住民のインタビューで方言まるだしで喋る年配者にも妙なおかしみを感じる。 普段から聞いている方言なのに、テレビを通して聞くとどうしてこうも違和感があるのか。
レポーターはまず死体の発見時の様子を説明していく。
発見したのは体育教師の吉田だった。 吉田は生活指導を担当している都合で早めに出勤し、職員室から体育倉庫の鍵が失くなっていることに気付いて体育倉庫を確認に行くと錠はかかっておらず、死体を発見した。 体育倉庫は体育館の一部になっていて、体育館と校庭のどちら側からも入ることが出来る。 体育館側から体育倉庫に入るには鍵は不要である。 もちろん体育館自体にも錠はあり、死体発見時には体育館自体の錠はかかっていて、鍵も職員室の棚に収まっていた。 失くなった体育倉庫の鍵は見付かっていない。
死体は体育倉庫内で大量の生石灰と水を被ってグズグズに崩れた状態だった。 頭蓋骨が陥没していて、今のところそれが直接の死因だと考えられている。
次に事件前の三枝の足取りへと話題は移っていく。
三枝は両親と一緒に暮らしていて、近所でも学校でも評判は悪くなかった。 金曜日 (六月十二日) の夜は家へ帰ってこなかったが、遅くなるというメールを両親の携帯電話へ送ってはいた。 そういった場合は三枝の両親は先に寝てしまう習慣だったので、三枝が帰宅していないことに両親が気付いたのは翌日、つまり六月十三日の朝のことだった。 三枝の両親は少し不安には思ったが、酒でも飲んで酔い潰れてどこかで泊まっているんじゃないかと楽観視していたので数日は様子見しようと考えていた。
リポーターがそこまで説明すると、次はスタジオが映り、コメンテーターが喋り始めた。 コメンテーターの喋る内容はスカスカで聴く価値はなさそうなので、テレビのスイッチを切った。




