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崎裏町の怪異  作者: 齊藤
夜見坂トンネルの呪い
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夜見坂トンネルの呪いの噂

「ねぇ、サヤちゃん。 知ってる? 夜見坂(よみさか)トンネルでまた事故が有ったんだって」

教室に入って席についたところで話しかけてきたのは隣の席のアユミだった。 眼鏡に三つ編みという風貌から生真面目に見られがちな彼女だが、実際には気弱でのんびりな天然タイプだ。

私が始業前二十分ほどに着くように登校すると、アユミはいつもそれより早く来ている。 始業まで二人で話すのは日課のようなものである。

「いや、知らない。 いつの話?」

「昨日の夕方。 七時前だと思う。 自動車同士の衝突で、片方は重体みたい」

夜見坂トンネルは四崎(よつさき)町と崎裏(さきうら)町の境にある。 この高校は四崎町にある市立高校であり、崎裏町から来ている学生のほとんどは夜見坂トンネルを通ることになる。 アユミもその一人だ。

「あそこの事故って何件目だっけ? もう五回か六回くらいは事故ってるよね」

「うん。 はっきり知らないけどそれくらいだと思う。 やっぱり呪いってあるのかな? うちのお爺ちゃんも事故ってるし」

地元では有名な話だ。 十年くらい前の六月五日にアマチュア写真家が轢き逃げにあって死亡して以来、六月初旬の夕方に集中して事故が起こっている。 轢き逃げ犯は捕まっておらず、死んだ写真家の呪いが事故を多発させているのではないかと噂されている。 夜見坂という名前が黄泉を連想させることもそういった噂を助長しているかもしれない。

「いやいや。 私ら何世紀に生きてるか言ってみなっての。 たまたま事故りやすいところってだけだってば」

「そんなことないよ‼ 真っ直ぐな道だし、トンネルも三十メートルくらいしかないんだよ‼ 歩道もあるし、毎日通ってて危いと思ったことなんて一度もないよ…」

私は夜見坂トンネルを通らない道を通学路にしているが、それでも地元のことだ。 どんなところかはよく知っている。 確かに代わり映えしない普通の道に普通のトンネルがあるだけだ。

「ふうん…。 それもそうか。 期間が集中してるってのも不思議だもんね」

とは言うものの、私は呪いなんて信じてはいない。 六月に夜見坂トンネルが危険になる理由があるはずなのだ。

「なんだか怖い…。 今日は一緒に帰ってくれないかな…」

「何言ってんの。 私があっち通って帰ったらかなり遠回りじゃん。 めんどくさ」

「あ、じゃあ明日は休日だし、うちに泊まっていってよ。 パジャマとか下着とかも貸すから‼」

「パジャマはともかく下着を借りるとかありえん。 ちょっと勘弁してよ〜」

しかし、そうは言ってもアユミはこうなると頑固だ。 なんだかんだで一緒に帰ることを約束させられてしまった。

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