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第四章、告白

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。

尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。


二日後の週末、



玲菜が働いているコンビニに亮がレジの前に立ち、



玲菜と話をしていた。



亮、「いやー、お会い出来て光栄です。



噂通り竜彦にはもったいない、アハハハハ」と、



後頭部に右手を当てながら照れていた。



玲菜は弱りながら、「あのー、他のお客様がお待ちなので、



またの機会にそう言った話は」と、



敬遠すると亮は後ろを振り向くと、



イライラしたお客の顔を目の当たりにした。



すると亮は驚いて、「あ、申し訳ない」と、言って即座にレジから退いた。



その時、偶然にも真理が店内に入って来た。



亮を見るなり、「このばーか。



あんたもこの間のふらつきと、差程変わらないじゃない」と、咎めた。



亮は自制した面持ちで、「いや、



噂の彼女を人目見たいからつい」と、



言い訳すると真理は、「連れの彼女の仕事の邪魔しに来るなこのボケ」と、



言って軽く拳で頭を叩いた。



亮は、「イテ」と、言って店内から出て行こうとすると、



真理は、「あんた今日は波に乗らないの」と、



尋ねると亮は、「今日はうねりが強過ぎて突風で、



消防からサーファー達は、海から締め出し食らったのさ。



こう言う時こそ良い波に乗れるチャンスなのに」と、悔やんだ。



真理、「あんたは波に乗らなくても、何時でも調子に乗っているから、



ここでは大人しくしてなよ」と、嫌味気に咎めた。



そう言われた亮は顔が強張り、「悪かったな、



どうせ俺は波より図に乗る方が、得意なサファーだよ」と、開き直った。



するとレジにはお客が居なくなり、



玲菜が二人の前に来て、「真理さんこの間は絡まれていた所を、



助けて頂いて有難う御座いました」と、頭を下げた。



真理は微笑んで、「私の名前を知っていると言う事は、



この間のここの出来事を竜彦に話したのね。



それに助けて頂いたなんて、口にするくらいだから、



竜彦との交際が始まった訳だ」と、



問うと玲菜は、「いえまだどちらも正式な交際を、



受け入れた訳では有りませんが、



私から交際を頼もうかと思っています。



私が巻いた種だと言う事もあるけど、彼をもっと知りたいから」と、



今日はプライドを捨てて、素直な自分の気持ちを伝えた。



真理は微笑んで、「見知らぬ土地で、大事なものを見付けた様ね。



きっとあなたは素直に、彼の愛情を受け入れると思ったから、



あの時、私はおせっかいな事をしたのよ」と、切り出すと玲菜も微笑んだ。



すると亮が、「俺にもおせっかいしてくれよ。



新人美容師スタッフの秋世ちゃん紹介しろよ」と、せがんだ。



それを聞いた真理は呆れて、「テメーは 一生路頭に迷ってろ。



この女ったらしが」と、激怒した。



すると聞き覚えのあるアメリカンバイク独特の、



ドカドカと言う音を立てて、駐車場でエンジンが止まった。



そう竜彦のバイクである。



店内から三人は黙って竜彦の姿を伺っていると、



入り口付近でしゃべっていたので、



竜彦は即三人を見つけて、「なんだお前ら、



揃って暇だな」と、嫌味を言うと亮と真理は同時に、



「大きなお世話だよ」と、答えた。



そして真理は、「王子様の御登場だよ」と、



答えると亮は、「熱い二人の仲には入れないな」と、



やはり嫌味で言い返した。



竜彦、「言われたか」と、肩を落として、



「この頃、玲菜と噂されてから負けっ放しだよ」と、



胸の境地を露にした。



真理、「噂は広がり何処行っても言われるよね、



アハハハ」と、笑われてしまった。



その時、玲菜は俯き加減になる。



それを見た竜彦は急に真顔で、「俺から言うよ、



玲菜俺と付き合って欲しい。



浜の噂は本当だ。



俺は君の事が好きだ。



俺のダチの前で言うよ、正式に付き合って欲しい」。



その言葉に驚いて言葉を無くす玲菜。



それを見守る亮と真理であった。



すると急に真顔になる玲菜は、「ズルイ人ね。



私はリンクから降りると弱く成るから、



今なら何を言っても受け入れると思っているでしょう」と、



照れくさ紛れに訴えると竜彦は、「ならばリンクの上なら、



告白して受け入れてくれるのか」と、問い掛けた。



玲菜は顔を上げて、「私はリンクの上が本当の私なの。



その時、私からあなたに告白するわ。



何故なら私が最初にあなたをあの氷の上で、好きになったから。



私からあなたにプロポーズするわ。



あの氷の上で」と、答えた。



そんな玲菜と竜彦を見守る、亮と真理であった。


そして次の週の月曜日の午後、



竜彦は大滝スケートリンクのベンチに 一人座っていた。



二人は携帯のメールアドレスや、電話番号を教え合わなくても、



意思疎通は出来ている様であった。



すると場内の扉がそっと開くと、



そこからいつものユニホームを来た、



玲菜が出て来て竜彦の事など気にせず、



リンクに降りて静かに滑り始めた。



その姿をベンチで見詰める竜彦であった。



そしてそっとベンチから立ち上がり、リンクの縁に手を掛けて、



彼女が滑る姿をそっと見ていた。



玲菜はしばらくリンクで舞った後、竜彦の前に滑って来た。



相変わらず年季の入った、古びたスケートリンクの普段の午後は、



誰も滑ってはいない。



この二人だけのリンクに成っていた。



玲菜は竜彦の前に来て微笑んだ。



そして急に真顔になり、一方的に竜彦にキスをした。



キスを終えた玲菜は竜彦を見詰めた。



すると竜彦は、「やはり、リンクの上では君は変わるな。



これが君から俺の告白なのか」と、



問いかけると玲菜は微笑んで、



「私は氷の上ではあなたには負けないわ。



あなたが横浜で幅を利かせていたのなら、



私は氷の上では幅を利かせていた」と、



語ると竜彦も微笑んで、「土俵が違うだろ。



それに俺は浜で幅を利かせていたなんて、思った事はない。



周りが勝手にそう噂しただけだ」と、言い返すと玲菜はまた滑り出し、



リンクで舞った。



それを見詰めながら竜彦は、「君は今でもリンクの上では、



プライドが有るんだろ」と、



尋ねると玲菜は竜彦の前を滑りながら玲菜は、



「あなたもこの街ではプライド有るんでしょう。



元、アウトローのナンバーワンだったのだから」と、



問うと竜彦は笑いながら、「俺は浜のナンバーワンだなんて、



昔から思った事はないぜ。



浜の連中が勝手にそう仕立て上げただけだ。



君こそここに来る前は、



ナンバーワンの座を維持して来たのだろ」と、



追求すると玲菜はその時、



表情が重くなり竜彦の前に滑って来て、



「そうよ、オリンピック候補を目指してた強制的にね。



でも挫折したの」と、語ると竜彦は、「捻挫して滑る事が、



トラウマに成っただけではないのだろ、



もっと深い訳が有るはずだ」と、



追及すると玲菜は事の発端を語り始めた。



玲菜、「私の親は父がカナダ人で、



母が日本人のハーフとして産まれて来たの。



幼い頃そう、六歳に成る頃まではカナダで暮らしていた。



カナダはウィンタースポーツが盛んで、



私は二歳の頃から、スケートスクールに通わされていた。



物心が付く前から氷の上で滑っていた私は、



六つに成っても、スケートをしている自分が自然体だった。



父親はカナダで不動産を営み、母はその仕事をサポートしたいたわ。



だけど父は私が六つに成る頃、交通事故に遭い他界。



母が後を継ごうとしたけど、やはり父親の技量には伴わず、



父方の兄に事業を譲り、母は私を連れて日本に帰国したの。



父が亡くなってその財産の一部と保険が降りて、



帰国した時には割りと裕福だった。



母はまだ若かった事も有り、直ぐ仕事は見つかった。



私は日本に帰国してからも、名古屋でスケートを続けた。



母が働き母子家庭で育った私は、



学校から帰ると家に 一人で居る事が寂しく、



母が仕事で夜遅くなるので、



私も名古屋のスケートリンクで、



必死に練習する事には躊躇いはなかった。



でも名古屋はスケーターの名門で、



私が所属するチームには大勢の、



強制的にオリンピックを目指す、



若いスケーターが所属して競っていた。



だけど世界を目指すには、



所属しているチームのスケーターのレベルでは、



誰も到底及ばなかった。



その中にずば抜けたスケーターが 一人居たの。



それが私だった。



でも最初からずば抜けていた訳では無く、



二年前に誤って転倒する直前、私はトリプルアクセルを行う際、



微妙な体重移動からトリプルアクセル以上の、



回転が出来るバランス感覚を得たの。



それは私でしか解らない、引力と体重バランスと、



回転に加わる遠心力の感覚だった。



大失敗が大成功を生んだ瞬間だった。


玲菜は話続けた。



玲菜、「ジャンプのタイミングで、



誰も出来ない引っ掛けと言う技術を得たの。



加速してエッジを真横にし、



もう片方の靴のエッジにぶつけるとつんのめる。



その瞬間大きくジャンプをして、体を回転する事を試みると、



体は大きく宙を舞い体が斜めになりながら、



五回六回上手く回転が掛かると、七回の真横アクセルが出来る。



後は姿勢を起こし着氷する時の体制が、垂直に入れば大成功する。



その時コーチは私をオリンピック候補に、



仕立て上げる事を誇りに思っていた。



でもその技はとても危険な技で、



一つ間違うと後頭部から落ちて、死を招く技だった。



でもトリプル以上の回転を試みると、



失敗率も高い危険な技でもあった。



死を見るのは、ひらめいた私だけで良かった」。



その時、竜彦が口を挟んだ、「コーチが他のチームメイトにも、



遣らせたんだな」と、尋ねると玲菜の表情が更に重くなる。



そして玲菜は、「私は止めた」。



竜彦、「自分が 一番その技の危険性を知っていたから」。



玲菜、「私も何度も後頭部から落ちて、脳震盪を起こしていた。



知らぬ間にトラウマになり、その技は出来なくなって行った」。



竜彦、「だがコーチは欲が出た。



玲菜が出来なければ、他のスケーターに遣らせ様と」。



玲菜、「まだ体が軽い十二才の女子スケーターに、



その技を伝授しようと、コーチである有田 裕子四十歳。



元オリンピック代表選手で、現役の頃にオリンピックに出たけど、



おしくもメダルは勝ち取れず、四位で終わった選手」。



竜彦、「その夢をコーチとして、



教え子にメダルを取らせたいばかりに、



危険な技をチーム全体に遣らせた」。



玲菜、「でも誰も成功の意図を辿らなかった。



同時に私は日に日に強引になるコーチが怖く成り、



十七才でフィギアスケートを止めた。



それから大学進学に向けて勉強に励んでいたの。



もうフィギュアスケート人生から、幕を閉じ様と心に決めて。



でもコーチは私を追いかけた。



度々私の自宅を訪れ、私に続ける様求めた。



私は首を振り続けた」。



竜彦、「身も心もボロボロだったから」。



玲菜、「私があの技を編み出さなければ、



彼女は死に至らなかった。



同時に編み出した技が出来なければ、



また他の技を編み出す様仕向けられた。



時には自分の感情を露にして、私の頬を何度も張り倒し、



時には私をオリンピック候補から外し、



亡くなった彼女を候補に仕立て上げ、気が済むまで特訓させ続けた。



その結果コーチの前からチームメイトは、誰も居なくなった」。



竜彦、「コーチはチームメイトの、メダル獲得の夢を捨て切れず、



優秀だった玲菜には再三栄冠を求め続けた」。



玲菜、「受験勉強所の騒ぎでは無くなっていたわ。



四六時中コーチは私を監視していた。



ゼミに行く時も、友達と遊んでいる時も、



通っている高校にまで姿を見せる様になっていた。



私は気が狂いそうだった。



同時に母もそんなコーチを咎めたけど、



私を監視する事を止めなかった。



高校を卒業して直ぐに、バイトのお金を貯めていたので、



彼女の監視から逃れ様と、夜逃げ同然で夜行バスに乗って逃げた。



母にも伝えず家出同然に。



最初は浜松市に降り立ち、



スポーツセンターでスケートリンクの監視員と、



管理の仕事を任せられ働いていた。



それが痣となってしまった。



浜松市のスケートリンクは施設が大きく、



整った環境であったが為に、



割と全国では有名なスケートリンクだったの。



なので一年足らずで、コーチに見つけられてしまったわ」。



竜彦、「コーチは死に物狂いで君を探した。



きっとスケートは捨てきれないと踏んだから」。



玲菜、「だから日本中いや、世界中のスケートリンクを探して、



私を見つけ出そうと必死だった。



探し当てた顔付きはもう、やつれ果てた老婆の様だった。



そして私に告げた。『お願い私が叶わなかった願いを叶えて』と」。



それを聞いた竜彦はベンチに座り、「夢は自分で叶えるものだ。



幾ら長年指導して来た教え子でも、限界を超える様な演技を仕込んだら、



その子は単なる利用価値にしか過ぎない。



メダルを獲得したら、自画自賛するつもりだろ。



元オリンピック選手が、指導した教え子がメダルを勝ち取り、



その栄冠の影には、コーチの指導の成果がある。



評判が立てば、フィギュアスケート界でも多大なる評価が有り、



スケート連盟の高いポストに付けるとね」。


そして玲菜も竜彦が座っているベンチに座り、物思いに更けていた。



竜彦、「彼女は、君を愛していたんだな」と、切り出すと。



玲菜は竜彦に振り向いて、「私が小学生の頃、



彼女は単なる個人経営のフィギアスケート教室の、



指導のサポートが役目で入って来たの。



でもフィギア界では、オリンピックで四位の成績だった事を称えられ、



名を馳せた方が 一個人が経営する、



子供向けスケート教室の、指導員のサポート役なんて信じ難かった。



その時、母親から彼女の噂が伝わって来たの。



長年の過酷な練習のせいで、



足の手術をしても、ハードな演技は出来ないと宣告されて、



路頭に迷った挙句、流れ着いた先が名古屋の、



と或るスケートリンクの、子供向けスケート教室のサポート要員だと」。



竜彦、「そのサポート役が君に目を付けた」。



玲菜、「そう、出会って間もない頃は、



私に優しくサポートしてくれる、個人コーチ成ってくれた。



スケーターとしての悩みも理解してくれていた。



それがいつの間にか評判になると、



元オリンピック選手が優しく指導する教室として、



個人経営の教室は生徒を増やして行った。



サポート役からメインのコーチと成った。



それは差ほど時間が掛からなかった。



そして常に県大会に生徒が出場すると、



トロフィー全てを奪った」。



竜彦、「その内全国大会でも、上位に食い込むのは常に教え子」。



玲菜、「でも全国大会では、ベストテンには食い込むけど、



チーム大勢で出場しても、常にチームの中の一番優秀な選手でも、



七位以下までの成績だった。



今活躍している有名なオリンピック候補には、



到底及ばなかった。



県内では栄冠を勝ち取れても、



全国では勝ち取れない、フィギアチームの存在であったの。



その時、私は練習中トリプルアクセルを行おうと、



バックモーションで滑走して、そこから前向きに滑り、



片足を上げてジャンプをしようとした瞬間、



足が上がらないで氷にエッジを着けたまま、



足が縺れてエッジをもう片方の履いていた、



靴のエッジに接触させてしまい、エッジが反動で真横を向いたの。



反射的につんのめる所で、ジャンプをしてしまった。



その時、回転も掛けていたので、



思い切りジャンプをしていたせいも有り、



体が斜めに成り、まるでスクリューの様に回ったの。



偶然だった、強い回転力が加わると真横に七回転して、



そのまま氷の上に落ちた」。



竜彦、「それが新たな技がひらめいた発端だった」。



玲菜、「それを皮切りに、私はなんとか体が真横に成りながらも、



垂直に体を立て直す技を試みた。



練習の甲斐も有り、真横で回り着地する前に、



体を垂直に立て直す技を習得して、その技が完成した。



その名はアクセルスクリュー」。



竜彦、「忽ち君は、それでオリンピック候補に伸し上げられた」。



玲菜、「でも少しでも体全体に力が入っていたり、



飛んだ瞬間に恐怖を感じてしまうと、やはり体が膠着して、



大失敗して後頭部を酷く強打する技だった。



なので自分で編み出したけど、チーメイトには行う事を止めさせた」。



竜彦、「だがコーチだけは、続けて欲しいと願った」。



玲菜、「オリンピックで金メダルを取らせたいばかりに」。



そして沈黙の時が流れた。



しばらくして玲菜は、「結局また私は何も告げず、



勤めていたスケートリンクから逃げる様に、



彼女の目の届かない土地へと逃げた。



そこがこの街だった。



横浜に来て 一ヶ月位過ぎてから街を散策していたら、



不思議な建物が目に入った。



最初は古びた市営の体育館かと思ってた。



よく見るとボロボロの看板に、



大滝スケートリンク駐車場と明記されていた。



一瞬躊躇ったけど、窓口を見たら値段も安いし入ってみたの。



すると場内の電気も暗くて、こんなリンクがこの現代に、



存在している事が不思議に思えたけど、



誰も滑っていないこのリンクに、私は心引かれたの。



まるで私だけのリンクに成れる様で、



ここを私のホームグラウンドにしたの」。



玲菜は話終えると、横に座っている竜彦の手に自分の手を重ねた。



竜彦はその時、何も言わなかった。



玲菜、「暖かい、この温もりが忘れられないの。



あの時、この手が差し伸べられた時から、



あなたを忘れられなく成ってしまったの」と、



呟くと竜彦はリンクを見詰めながら、



「これが君の心の底からの、告白なのかな」と、囁やいた。



玲菜、「そうよ告白なんて初めてなの」と、目頭が熱く成った。



竜彦、「俺も正式に告白されたのは始めてだ。



俺は昔からワルで、まともな女と付き合って来た事なんてない。



不良の女との交際なんて浅い物さ。



お互い遣りたい時にだけベッドを共にして、



遣っちまえばお互い興味が無い。



汚れた人生を歩んで来ると、君が輝いて見える。



今の俺は良い人に拾われて、画家としての人生を歩んでいるが、



あのままだったら、泥沼裏街道を驀進していただろう」。



玲菜、「今まで男性をこんなに好きに成った事は無いの。



たわいも無い切欠だけど。



あの時、技を失敗して恥をかいたけど。



でもあなたに手を差し伸べられた時は、心の底から喜びを感じたわ。



男性に優しくされたのも初めてだった。



今までスケートしか知らない私は、あなたの愛情が堪らなかった。



たかがリンクで、立ち上がらせて貰っただけで大げさだけど、



あなたを愛してしまったの」と、語ると大粒の涙が頬を伝った。



その時、竜彦は何も言わずベンチから立ち上がり、



玲菜の前に手を差し出した。



玲菜は涙を流し、竜彦を見上げながら自分の手を差し出した。



その手を竜彦が掴むと、



その手を引いて玲菜をベンチから立ち上がらせた。



そして玲菜を抱きしめた。



玲菜は万感の思いで目を瞑ると、



自分も竜彦の背中に腕を回した。



誰も居ない二人だけのスケートリンクは、



優しく二人を包む様であった。



そして竜彦は、抱いていた玲菜を自分の体から放し、



玲菜は瞼を静かに開いた。



その時、玲菜の両腕を両手で持った竜彦は、



玲菜を見詰めてキスをした。



妖精に恋をした街の不良は、



妖精にキスをする事で目覚め、



暗黒の世界から妖精の世界へと、導かれる様であった。


オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html

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