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第二十章、出場

この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。

尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。

ここは神奈川県横浜市、裕子のアパートには毎日、



嫌がらせの手紙や抗議の手紙が複数、ポストに入れられていた。



内容は全て玲菜の邪魔をする事に対して、



腹を立てているファンからであった。



それを見ずにまとめてゴミ箱に捨てると、裕子は買い物に出様と、



財布を持ってアパートを出た。



何気なく街を歩いていると、



俯いて歩く一人の若い女性が目に入った。



それは紛れも無く玲菜であった。



ほくそえむ裕子。



またと無いチャンスに思えた様であった。



そっと歩いている玲菜の背後から近づき、



形振り構わず飛び掛ろうとすると、



その道の脇から男性が数人と真理が出て来て、



男性が裕子を取り押さえた。



その男性は健一と亮、そして竜彦であった。



もがく裕子に真理は呆れて、



「ねえ、あんたは学習能力って言う物が無いの。



前にも言ったけどこれだけ浜では、



あんたは玲菜の事でバッシングされているのに、



玲菜を 一人で市内をのこのこと、歩かせる訳が無いだろ。



警戒心もなく獲物に食らい付くあんたは、



まるで餓えた獣そのものだよ」と、非難すると裕子は暴れて、



「うるさい放せこの子を渡せ、



この子は誰がここまで、仕上げたと思っているんだ」と、豪語した。



それを見ていた玲菜は切なくて堪らなかった。



なので言葉を掛けなかった。



すると裕子を皆んなで拘束して、



竜彦のワンボックスカーに強制的に乗せると、



全員ワンボックスカーに乗り込んで、竜彦は車を走らせた。



そして着いた先は、秋山の実家であった。



秋山の父が所有する道場を借りて、



関係者全てを呼んで、裕子と話し合う様であった。



そこには秋山 清二とその妻明子、玲菜のチームメイト全員。



弘美と玲菜とその母静香。



真理、竜彦、そして道場の角に椅子を置いて座る秋山の父が居た。



道場にテーブルを置き、ソファーも置かれていた。



裕子をソファーに座らせると、テーブルを挟んで向かい合わせに、



秋山 清二とその隣に玲菜が座り、竜彦と玲菜のチームメイトは、



秋山と玲菜が座るソファーの後ろに立っていた。



そして健一と弘美、明子が裕子側のソファーに座った。



その後ろに母静香が立った。



秋山 清二はソファーに座りながら、足を組み腕も組んで、



何か考え事をしていたが裕子に切り出した。



秋山 清二、「さて、あんたには二度目の交渉をするが、



今度はあんたに関わる関係者全てと、交渉する事に成った。



それは玲菜の正直なあんたの思いを伝えつつ、



あんたとフェアーな立場で交渉したいと願っている。



こちら側の意見と、あんたの意見を交えながら、



交渉して行きたいと思う。



なので強制的にあんたをここに連れて来た訳だが、



既にあんたは横浜では厄介者扱いだ。



ただこちらも玲菜に代わって、玲菜の気持ちを伝えよう。



そして我々が齎してくれた、幸せは皮肉にもあんたから、



始まった経緯が或る事を伝える。



まずあんたはこの後ろに立っている、



あんたがコーチをしたと言っている、このチームメイトの一人を、



誤って死なせてしまった。



だがあんたはそれは事故と称している様だが、



この若きスケーターの証言によると、



あんたが無理矢理当時、 一番チームメイトでも体が軽かった教え子に、



玲菜が編み出したトリプルスクリューを行わせた結果、



死に至らせてしまった様だが、それに対してあんたは反論が有る様だが、



今の思いを聞かせて欲しい」と、



願うと急に裕子は感情的になり、「あんた達、私に逆らってこの頃、



大滝スケートリンクで脚光を浴びている様じゃない。



どう言う事よ。



玲菜の次はあんた達があそこで、



人気を得るなんて許さないからね。



誰があそこまで仕上げてたと思っているのよ」と、



豪語するとチームメイトは各々裕子を批判した。



秋山はその時笑いながら、「今あんたには、



教え子を死に至らせてしまった事の意見を聞いているが、



まったく違う返答が返って来た訳だが、これでは話し合いに成らない。



これはあんたを告訴する時に、あんたは不利になる条件だが、



前歴があるだけに、今の質問にまったくあんたは、



答えてない事が不利になるが、



どうお考えですか」と、問いかけると警察から警告を受けているだけに、



素直になり裕子は、「あれは事故よ」と、答えた。



すると秋山は、「確かに事故だ。



その技を編み出した先駆者は危険だから、



遣らせるなと警告したにも関わらず、



行わせ死なせた責任は、指導者のあんたに有ると思う」と、



非難すると裕子は顔が強張り、



「とにかく私は玲菜の指導者としての地位を得たいの。



玲菜が欲しいの、その為には玲菜が必要不可欠なのよ」と、



言って急に玲菜に飛び掛ろうとすると、



後ろに立っていた静香と、



裕子の横に座っていた明子が裕子を取り押さえた。



秋山はまた笑いながら、「あんたはもう既に気が狂ってる。



正常な思考を失っている。



だが無常な宣告を受けて貰う」と、告げると玲菜が重い口を開いた。



玲菜、「楽しかった事も、



辛かった事も全て私は、思い出に変えるつもりよ。



私はオリンピックに出場する。



でもあなたの為じゃない、私の為にそして皆んなの為に、



あなたを地獄に落す為に。



もうあなたに情けを掛けないわ。



あなたは私の恩師でもあった。



でも今のあなたは私の悪魔よ。



私に纏わり着く悪魔の様に、私の愛する者全てを傷つける。



私の幸せを齎したのは、全てあなただった。



でもあなたを地獄に落さなければ、



あなたは全ての私の最愛の人を傷つけて回る。



これで最後よ。



ここでお互いフェアーな条件を出しましょう」と、



告げると秋山は、「この子は俺の娘だと思っている。



全てはこの子から始まった。



俺の実の娘を幸せにしてくれた玲菜。



玲菜を一人店で働かせた事で、



弘美はその母明子と、遊んで上げる時間が出来た。



俺も親子関係の歯車が噛み合い、イライラする事が無くなった。



竜彦はワルだったが更生した。



それだけじゃない。



横浜市民に笑顔を与えた。



あんたのお陰だよ有田 裕子さん。



それで再度、竜彦同様お互いにフェアーな条件を出そう。



玲菜のコーチを最初に手掛けたのは、



あんたとその同期の元金メダリスト、アレン・エドワーズさん。



そのアレンさんは今は、世界フィギュア連盟の会員であり幹部だ。



あんたを世界フィギュア連盟の、幹部に推薦して上げる代わりに、



あんたには条件を飲んで貰いたい。



金輪際この玲菜と竜彦の間柄を邪魔しない。



そしてこの後ろに立っている、玲菜のチームメイトを傷つけない。



無論利用して玲菜を追い込まない、



つまりここに居る全員、金輪際関わらないでくれという事だ。



どうでしょうか有田 裕子さん」と、



問いかけると裕子はしばらく黙っていたが、



急に顔が強張り激怒して、「私の条件を言うわ。



私に玲菜を渡せば、横浜から立ち去ってやる。



この女の子にも手を出さない、この竜彦とか言う玲菜のフィアンセを、



ナイフで刺さない事を約束してやるわ」と、



言い放つとそれに激怒したのは弘美であった。



弘美はソファーから立ち上がり、裕子の足を蹴り飛ばした。



弘美、「お姉ちゃんをそんなに苦しめるなら、



私はあんたの一番苦しい所をいじめてやる。



どうだこの足が言う事を聞けば、



お姉ちゃんを苦しめなくても済んだのに」と、蹴り飛ばし続けた。



すると怒りを露にした裕子は、弘美を殴ろうと手を上げた瞬間、



側にいた明子が裕子をぶっ飛ばした。



そして明子は、「弘美の言う通りだよ。



あんたはその足を、玲菜の足に摩り替えただけだ」と、



答えると玲菜が怒りを露にして裕子に告げた。



「地獄に落ちな」と。



そして辺りは静まり返ったのであった。



この時、玲菜は完全に裕子から吹っ切れた様子を伺わせていた。



そんな玲菜に動揺を隠せない裕子であった。


玲菜は横浜の大滝スケートリンクのスターでは在ったが、



正式にスケート連盟に、登録されている選手では無く、



今度のスウェーデン冬季オリンピック、日本代表選手に成る為に、



アレンの力を借りて、選手として登録される事になった。



そして大滝スケートリンクで、滑るプロスケーターでも無く、



一人のお客として滑っていた玲菜は、 



オリンピック出場後、プロスケーターと成る事を約束した。



玲菜は大滝スケートリンクで夜、練習に励んでいた。



それを見守る真理と竜彦の姿があった。



真理、「玲菜の思いが伝わるね。



本当はあの女と一緒に、オリンピックに出場したかったのに、



あの女は、あんな馬鹿な真似をするから、



あの女の願いを叶えて上げる事が出来ない」と、嘆いた。



隣に居た竜彦は滑る玲菜を見詰めて、



「その事を玲菜が我々に、伝える事が出来ない様だが、                          


玲菜自身も心を鬼にしているのさ」と、悟った。                          



真理、「あの女が玲菜を追い掛けなければ、                          



玲菜に幸せを齎さなかった。



それを真っ向から打破する裕子。



そのジレンマが玲菜を襲う」。



そう言うと真理は、リンクで滑っている玲菜を呼び付けた。



玲菜は静かに真理の元へ滑って来た。



そして真理は、「玲菜、私達に正直に今の気持ちを伝えても構わない。



今でもあの女に未練がある事を、



我慢しないで打ち明けても構わない」と、



告げると隣に居た竜彦も、「この幸せは確かに秋山さんが言った通り、



全て裕子から始まった。



その思いを裕子に告げても、



裕子は玲菜の得た幸せを、全て覆す事しか頭に無い。



もっと裕子が人の意見を尊重すれば、その事が理解出来るはずが、



自分本位の考え方しか出来ない裕子には、



無常な判決を余儀無く下すしかない」。



そう告げると玲菜は急に泣き出した。



そして真理は玲菜を抱き締めた。



玲菜、「皆んなに迷惑ばかり掛けてごめんなさい。



でも私一人では暴走する裕子を止められないの」と、



嘆くと真理は、「誰にも止められないよもう裕子は。



元裕子のコーチで有った瑠璃子さんですら、



裕子を止める事が出来ないのだから。



裕子の母親も哀訴を尽かして、相手にしない位ならもう、



檻の中に居て貰うしか手立てが無いね。



檻は檻でも精神病院の檻だけど」と、



決定着けると竜彦は、「まずはドラッグホスピタルに、



入院して貰ってからな」と、嘆いた。



竜彦と真理は、裕子の元コーチであった瑠璃子と、



裕子の親と面会を果たしたが、



結果的には暴走する裕子を、止める手立てを見出せなかった。



お詫びに瑠璃子は玲菜のコーチとして参加し、



オリンピック出場まで、週に一度は大滝スケートリンクに出向いて、



玲菜の指導に当たる事に成った。



これで裕子の行動に対して、



全ての関係者を、巻き込む形と成ってしまったのである。


                          

練習を終えて三人はスケートリンクから外に出ると、



駐車場に裕子が立っていた。



それを見て呆れる竜彦と真理であった。



すると真理は、「少しお話しましょうね玲菜。



あの馬鹿と」と、呟いた。



裕子は突然ポケットから果物ナイフを出して、



こちらに突進して来た。



それを見た竜彦は落ち着いて、



「話が出来る状態にするから待ってろ」と、



告げると突進して来た裕子の手を持つと、



そのまま巴投げでかわした。



その場に倒れ込んだ裕子は、立ち上がろうとする所を、



竜彦は裕子がナイフを持っていた手を蹴り飛ばし



ナイフは駐車場めがけて飛んで行った。



そして竜彦は裕子の手を掴んで、



強制的に立ち上がらせ羽交い絞めにすると、



その身を玲菜の前に突き出した。



すると竜彦は玲菜に向かって、「好きにしろ」と、



命令すると玲菜は顔が強張り、裕子を何度も張り倒して、



「馬鹿、何度同じ事を繰り返せば気が済むの。



あなたの関わる全ての人を巻き込んでしまって。



それでもまだ私を追い掛けるの」と、



咎めると裕子は、「あんたがいけないのよ、



あんたが逃げるからこう言う事になるのよ。



あんたが私から逃げるから、



私は不幸になるのよ」と、勝手な解釈で被害妄想を晒した。



もうこうなると、何を言っても自分本位の考え方を覆す事が出来ず、



仕方なく何も言わず真理と竜彦が、裕子の両方の腕を片方ずつ持って、



近くのファミリーレストランへと、連れて行くのであった。



そして話をする事にした。



玲菜は駐車場に落ちていた果物ナイフを拾い、



スカートのポケットに仕舞ったのであった。



ファミレスでは裕子をソファーに座らせ、



テーブルを挟んで向かい側の席の、ソファー真ん中に玲菜を置いて、



両側に竜彦と真理が座った。



ウェートレスが来ると真理は手っ取り早く、



四人分のホットコーヒーを頼んだ。



そして竜彦が、「裕子さんあなたが現役時代、



肩を並べていたアレンさんは御存知ですよね」と、



尋ねると裕子は不貞腐れながら、「知ってるけどまさか、



玲菜の最初のコーチだとは知らなかった」と、



語ると竜彦は、「今は世界スケート連盟に加入している幹部で、



あなたの事を強く非難していました。



連盟にもこの事を伝えて、あなたには何が有ろうと、



連盟は 一切係わり合いを持つ事は、有り得ないとの見解でしたが、



その事に対してはどうお考えですか」と、



質問すると裕子は、「連盟が何よ、どうでもいいわ。



私は玲菜を取り戻したいだけ」と、



連盟加入を否定すると真理が、「つまり玲菜を取り戻せば、



連盟がどうあれ玲菜を操り、



自分がフィギュア界に、多大なる名誉を齎すとお考え。



残念ですがもう既に、連盟にはあなたの悪評は轟いていまして、



玲菜をあなたが取り戻したとしても、



あなたは連盟からバッシングされるだけです」と、



念を押すと裕子は俯いた。



玲菜、「私の足が欲しいの。



出来る事ならば私の足をもぎ取って、自分の足に着けたいの。



弘美ちゃんは勘が良いから、あの時あなたの足を蹴り付けたの」と、



悟ると裕子は急に顔を上げ、



「あの子いつか殺してやる」と、恨みを抱いた。



竜彦は感情的にならず、「近い内にあなたは病院送りだ。



病名は統合失調症、所謂精神分裂症でね。



かなり進行していると思われます。



ですがあなたは信じたくはない様子ですが、



これだけ周りに迷惑が掛かると、



強制的に精神病院に入院させるしか、手立てが有りません。



多分現役時代に発病し、あなたがコーチを捨てた時点で既に、



発症直後だったかと思われます。



自から治療に専念しませんか。



そうは言ってもあなたは、



言う事を聞かないと思われますが」と、



問いかけると裕子は黙っていたが徐に、「信じたくは無いの、



信じてしまうともう、仕事が出来なくなる」と、



呟くと竜彦は、「自分ではどうする事も出来ないのは解る。



ですが既に今日も人を刺そうと、果物ナイフを持って突進して来た。



衝動に駆られたでは済まない行為だ。



例え殺すつもりは無くても、列記とした殺人行為。



あなたをこのまま野放しにしては置けない。



この事実を訴え民事裁判を起こせば、



必ずあなたは強制的に、病院で検査を受ける事になる。



そうすればもう世間には出られない」と、



告げると急に大人しくなる裕子。



真理、「やはり承知していた様ね」と、尋ねると玲菜は、



「治せばあなたの周りの、風当たりが和らぐのならば、



治そうとしようよ」と、アドバイスすると裕子は急に顔が強張り、



「うるさい、あんたに言われる筋合いは無いわ。



私から逃げて置きながら、今更私を労わるの」と、



激怒すると竜彦と真理は笑いながら真理、



「よく解ったわよ今の態度で。



玲菜に甘えたいけど、甘えられる人が逃げちゃったから、



甘やかして欲しくて縋るんでしょう」と、



嫌味気に答えると竜彦は呆れて、



「その玲菜はあんたのおもりを、している暇が無いんだ。



残念だが他を当たってくれ」と、



嘆くと玲菜は徐に、「ねえ、私が中学時代に、



あなたは私の良き理解者に成ってくれていたけど、



それは私があなたに懐く様仕向けて、



本当は私をあなたの、下部にしたかっただけなの」と、



問いかけると裕子は、不気味な顔付きで笑いながら、



「良い子だったのに、今は私に逆らう裏切り者よ。



その仕打ちにこの男を殺してやる。



殺されたくなかったら、私の言う事を聞くのね」と、



脅迫すると竜彦と真理は同時に、



「お前を告訴する」と、訴えたのであった。



裕子はその時、怯えたのだった。



その数日後、精神分裂症の悪化が酷く起伏が激しい裕子は、



裕子の両親と裕子の元コーチ瑠璃子の手で、



精神病院に強制的に、入院させられたのであった。



その時、虚しい思いをしたのは、玲菜であった事は言うまでも無い。


そしてアレンの力を借りて玲菜は、



日本スケート連盟連盟に加入した後、



バッジテストを行う事に成った。



その時、玲菜の隣には裕子の元コーチ金田 瑠璃子が、



玲菜を抱き締めていた。



瑠璃子、「ごめんなさい、私があの子を捨てたばかりに、



あなたには大変な被害を齎してしまった。



でも私はあの子に果たせなかった夢を、



私はあなたに果たして行くから。



これからあなたを大舞台へと導くわね」。



そう告げると玲菜は、「それはあなたのせいでは有りません。



裕子が招いたトラブルです。



でも決して全てあの人が、私に被害だけを齎しただけでは無く、



同時に幸せも与えてくれました。



それをあの人と分かち合おうとしても、



あの人はそれを納得してくれません。



それは精神障害と言う重い病気のせいで、



彼女は喘ぎ苦しんでいる様です。



もしその障害が克服出来たら、私はもう一度あの人と、



スケート人生を歩みたいと思っています。



その時は私の大事なフィアンセ、



勝田 竜彦君との結婚を、称えて貰うよう願っています」。



玲菜のその優しさに、感無量な瑠璃子は涙を流しながら、



「玲菜は本当に優しい子ね。



少しでもあの子に、玲菜のその優しさが伝われば、



あの子は喘がなくても済んだのに。



精神病が尾を引いて、全てあの子が求める物を失ってしまった。



でもこれからあの子に果たせなかった夢を、



私は玲菜に託すから、玲菜ならば世界が認める妖精に成れるはず。



世界が注目する氷の上のやんちゃな妖精、



アイスエルフィンとしてその名を残し、



伝説と成りなさい」と、



励ますと玲菜は、「はい」と、答えてリンクに飛び出して行った。



まずは音楽に合わせて初級のテストである。



これはスケートの基本がしっかりと、備わっているかのテストで、



子供達をコーチしていた分、基礎はしっかりこなした。



そして8級のテストである。



4種類のトリプルジャンプ。



ジャンプコンビネーションを軽くこなした。



次にスピンコンビネーションを十回こなすと、



楽しそうに玲菜は、



切れの良い二つのフライングスピンをこなした。



そのシャープな滑りに、審査員は大きな拍手で称えた。



そして7級テスト、6級テストと軽くこなして合格すると、



3級のアクセルジャンプ、ルッツジャンプ続けて軽快な、



ジャンプコンビネーションを繰り出し、



玲菜にはまるで引力が、掛かっていない様な演技に、



審査員は度肝を抜かれていた。



2級のフリップジャンプ、ループジャンプは微笑みながら軽くこなし、



バックスクラッチスピンのその安定性を、審査員は高く評価した。



続けて玲菜の得意のシットスピンは、



回転を数えるのが困難程高回転で回った。



そしてスリーターンを軽くこなすと、審査員は拍手喝采であった。



1級のテストは正しくトウをつく。



正しいエッジで踏み切り、ランディングするが主な審査基準となる。



玲菜は軽快なリズムに乗ってスリージャンプ、



トウループジャンプ、サルコウジャンプと華麗に技をこなして行った。



テストは普通スケーターは緊張して、無表情である事が多いが、



玲菜は常に大勢の観客の前で滑る、横浜のアイドル的存在である為に、



笑顔を絶やさずその軽快な身のこなし方に、審査員達の心を掴んでいた。



続けてT字ストップ。



ストップする片側の足に重心を乗せ、きれいに止まると、



審査員達は声を上げて、玲菜の演技を称えた。



サークルを全て鮮やかにこなし目印まで戻ると、



ポーズを決めて終了した。



この時、審査員からは今度の冬季オリンピック代表選手として、



高鳴る期待を胸に秘めたのであった。



玲菜は忽ちマスコミに、その功績を取上げられた。



その演技はネットの動画サイトにも流れ、



脚光を浴びる存在に成っていた。



神技アクセルスクリューも取りあがられて、



一夜にしてスターに、伸し上げられたのだった。



大滝スケートリンクも花盛りで、



全国から玲菜の演技を 一目見ようと、



大滝スケートリンクに人々が殺到し、



並んで人々が入場券を買い求めていた。



土曜、日曜日には玲菜の元チームメイトも駆け付け、



玲菜が滑る前の前座を務めていたが、



極められた技に磨きが掛かり、人々を魅了していた。



無論これだけ話題に成れば、



マスメディアも放って置く訳が無く、



カメラが入り、衛星放送や国営テレビで中継されていた。



この寂れた個人経営の大滝スケートリンクにまた、



昭和三十八年当時の、賑わいが戻ったのであった。



全て玲菜のお陰であった事は言うまでも無いが、



それを司ったのは皮肉にも、極悪非道の裕子であった。



そして竜彦はその玲菜を描く画家として、



多大なる評価をされて、フランスの美術館に納めた妖精の涙は、



メディアにも取り上がられて、



竜彦は世界に誇れる画家として、君臨し始めたのであった。



その時、精神病院では、裕子が玲菜が出演しているテレビを見て、



急に暴れ出し、看護士数名で取り押さえられていた。



裕子は興奮して感情を露に、「玲菜、玲菜、お前の全てを奪ってやる。



お前一人で大きく成った様な面をして、この私を除け者にして、



どう言うつもりだ。



私を差し置いて注目されやがって。



竜彦が愛しいか、あの女の子が可愛いか。



そいつらの心臓を抉り出して、お前の目の前で生で食べてやる。



よーく覚えておけ」と、激怒すると看護士は仕方なく、



裕子に注射をするのであった。



そのテレビでは玲菜が、記者会見を受けていた。



玲菜は椅子に座りフラッシュが焚かれ、インタビューに応じていた。



記者の質問、「この度突然スケート連盟に加入して、



日本代表選手に選ばれた、お気持ちはいかがですか」と、



尋ねられると玲菜は、「はい、有り難く受け止めています」と、



感謝するとフラッシュが一斉に焚かれた。



女性記者、「同じチームメイトに聞いた所、



大変苦労されて、ここまで来たと伺いましたが、



今時珍しい個人経営のスケートリンクの、



ホームスケーターから一転、世界を目指す動機はどの様な、



心の変化がお有りだったのでしょうか」と、



問われると玲菜は、「私は今この時点では、



申し上げられない事も多く御座いますが、



追われる私を優しく受け入れてくれた、



大滝スケートリンクに人々がもっと集まり、



経営不振の寂れたスケートリンクを、



人々で絶やす事が無い様にする為に、



私はオリンピックに出場しようと思いました。



そしてもう一つ、そんな私を愛してくれた婚約者でもある、



画家の勝田 竜彦君の功績を世界中に広めたい一心で、



オリンピックに臨みたいと思っています」と、



答えると男性記者が、「横浜市民の噂では、



あなたの元コーチが、当時練習中に誤ってチームメイトの一人を、



死なせてしまった様だと聞いています。



そしてチームは解散し、そのコーチは元オリンピック日本代表選手で



過去に逃してしまった栄光を捨て切れず、



その代役として、オリンピック日本代表選手に伸し上げたくて、



あなたを必要以上に追い掛け回し、



あなたはストーカーされた形になり、



その身を隠す様に逃亡して、



横浜に辿り着いたと聞いています」と、真相を暴露されると、



玲菜は素直に、「はい噂通りです」と、



答えると今度は、隣に座っていた瑠璃子が話し始めた。




記者に対し瑠璃子は、「実は私はその有田 裕子の、



元コーチを担当していた、大田 瑠璃子と申しますが、



裕子が二歳の時から、スケートをコーチしていました。



非常に神経が細かい子で、挫けてしまう事が多く、



いつも私は励まして、スケートを続けさせて来たのです。



彼女は十六才頃から、私のアドバイスを聞かなくなり、



挙句の果ては、 一人でカナダに練習に行ってしまいました。



理由は当時スケートの技の成長に、



私の指導を批判して彼女は悩んでいました。



その時から精神的に、強いダメージを受けてしまった様で、



当時、日本代表として期待されていただけに、



立ち直れない様子でした。



裕子が帰国した時に、



名古屋のスケートリンクを訪れた裕子に私は、『まだ経験が未熟だから、



色んな大舞台に出て場慣れする事が大切よ。



まだあなたは十七歳なのだから、これから四年間練習に励んで、



今度の冬季オリンピックでは高い成績を残せる様、



私がコーチします』と、宣言したのですが、



やはり裕子は私の指導の仕方を批判して、



一人で練習すると言い残して、またカナダに旅立ちました」と、



語ると女性記者が、「そして次の冬季オリンピックでは、



四位の成績に終わり遭えなくメダル獲得には、



至らなかった訳ですね」と、問いかけると玲菜が、



「それから彼女は悩んで、何年もの間家に引きこもり、



当時知り合いだった、名古屋でスケート教室を開いていた方が、



裕子を家から連れ出しコーチのサポート役として、



私と知り合う切欠に成りました」と、



告げると男性記者は、「横浜市民の噂ですが、



追われて逃げた先が大滝スケートリンクで、



中原さんは氷の妖精と言われ、悪い悪魔からその身を隠す様に、



悪魔に目立たない、古びたスケートリンクで滑っていると、



一人の画家がその妖精の姿を見て、その美しさに心引かれて、



忽ち恋に落ちたと聞いてますが、



その辺はどうでしょう」と、尋ねられると場内は笑いに包まれた。



玲菜も微笑んで、



「それは惚れた画家さんに聞いて下さい」と、



申し出ると近くに立っていた竜彦が、「その通りです」と、答えた。



忽ち記者から冷やかされる玲菜と竜彦だった。



すると女性記者は、「まるで御伽噺ですね。



研ぎ澄まされた妖精は、悪魔にその身を追われ、



小さな蚊帳の中で舞っていると、



その蚊帳で可憐に舞う妖精を見付けた画家が、



その姿を描いて、その描かれた事を喜に変えた妖精は、



更に氷の上で舞い上がり、その描いた姿を人々が見て、



蚊帳の中の妖精を見に行くと、妖精は人々を笑顔に変えて行く。



そして妖精は、その描いた画家と恋に落ちて、



その喜びを噛み締めて悪魔を振り払う様に、



世界の大舞台へと、誘われ今羽ばたこうとしている。



いつかそれはまるで、御伽噺の様に言い伝えられ、



伝説となる事を余儀無くされて行く。



今まさにその瞬間が、訪れようとしている様ですね」と、



答えると記者からどよめきが沸いた。



そして二人は全国的にも、噂の二人に成って行った。



竜彦の展覧会では、玲菜が舞う作品が多くの人々に感動を与え、



二人はお互いに、注目の的を得た様であった。



作品もオークションでは高値で売買され、



これで玲菜が竜彦に対する今までの恩返しを、



全て果たせた形となった。



玲菜は練習の合間に、明子、弘美と共に買い物に出かけ、



要約安らぎの 一時を、迎えている様であった。



練習では裕子とは違い、愛情を持って指導してくれる、



瑠璃子を慕って行ったのであった。



その時、玲菜は『こんな優しいコーチが居たのに、



裕子はどうしてこのコーチの言う事を、



聞かなかったのだろう』と、



思うと『もっと早くこのコーチと出会いたかった』と、



心の中で嘆くのであった。



そして冬季オリンピックのシーズンが遣って来た。



今年はスウェーデンで開催する事が決まり、



無論玲菜は日本代表として、日本中の人々から期待されていた。



だが玲菜の目的は他にあった為に、差ほど緊張感が無く、



逆にこれで、裕子との関係を完全に断ち切れる思いで、



臨む事を決意したいた。



瑠璃子コーチは優秀で、玲菜の神技トリプルスクリューを強化して、



その応用でまた新たな神技を編み出していた。



お披露目はオリンピックと言う事になっていた。



女子シングルショートプログラム。



自由に選曲した音楽を用い、アクセルジャンプ、



ステップからのジャンプ、ジャンプコンビネーション、フライングスピン、



足換えキャメルスピンもしくは足換えシットスピン、



スピンコンビネーション、ステップシークエンスの7つの要素を行う。



控え室では瑠璃子、真理、竜彦から激励を受け玲菜は会場に出た。



各国の人々が見ていたこのリンクは、大滝スケートリンクとは違い、



玲菜の事を知らない各国の人々からは、あまり拍手を貰えなかったが、



やはり場慣れしている玲菜は、リンクに上がると笑顔で手を振り、



その少ない拍手に答えていた。



リンクの真ん中に滑るとポーズを決めた玲菜は、



音楽が鳴り始めると、軽やかに滑り出した。



碧空 /アルフレッド・ハウゼ楽団

http://www.youtube.com/watch?v=_NIunHFOm9c



玲菜の拘りで衣装もシンプルで、青いワンピースタイプであった。



彼女は竜彦と出会った時に着ていた、



練習用のユニフォームに極力近い物を選んでいた。



ここで思い出を作る為に。



この曲は前奏で嵐を表していた。



玲菜もそれに合わせて、激しくステップしながら軽やかにジャンプ。



そしてターン、ループジャンプ続けてトウループジャンプを決めると、



その軽やかなジャンプにどよめきが沸いた。



それに喜びを得た玲菜は、 フライングスピンを高回転で回ると、



玲菜を知らない海外の人は、感動して立ち上がってエールを送った。



曲が嵐が去り清清しい春風を表現すると、



玲菜は天を仰ぎながらくるくる回ると、その喜びを表現した。



その流れのままでキャメルスピンから、シットスピンに繋げ、



回りながら姿勢を上げて行くと、場内は拍手の渦に包み込まれた。



きめ細かな動きと、シャープで切れの良いジャンプに、



会場は大絶賛であった。



短い競技のショートプログラムの中に、玲菜の実力を発揮させて、



その能力を高く評価した審査員は、最高得点を付け、



ダントツトップに躍り出た。



その時、玲菜を追い抜く選手は、誰も出なかったのである。


そして最後の種目、フリースケーティングである。



控え室では竜彦、母静香、真理に弘美、



そしてコーチの瑠璃子の姿があった。



竜彦は玲菜にメイクをしていた。



すると玲菜は急に切ない顔になり、



「お願い私はあなたの物だと言って。



俺の為に今から滑るんだと言って。



私はあなたの妖精なのだから、



俺を満足させる為に、滑ってこいと命令して。



私はあなたをベッドの上だけで、満足させる妖精だけではなく。



氷の上でもあたなを、満足させる妖精に成りたいの。



いつもはそんな風には思ってなくても、



今日だけはそんな風に強く命令して欲しいの。



今まで優しく私を扱って来た分、今日だけは裕子の様に、



独占欲を私に晒して欲しいの」と、



縋ると竜彦はメイクを止めて玲菜を抱き締めて、



「玲菜は俺の物だ。



誰にも渡さない。



俺が見付けた氷のやんちゃな妖精は、



俺の胸でいつも踊っていた。



今日はその妖精を蚊帳の外に出し、



今世界中の人々の前で羽ばたこうとしている。



だがその妖精は俺の胸で踊る妖精には違いは無い。



いつまでも俺の妖精でいてくれ、そしてカナダのあの湖で舞う、



俺だけの妖精に成るんだ。



俺の為にそして俺に妖精の姿を描かせてくれる、



アイスエルフィンに成るんだ」と、



強く主張すると二人は抱き締あった。



その姿を見守る仲間達も万感の思いであった。



しばらくリンクの準備が整うまで、玲菜を飾り付ける母静香と真理、



そして瑠璃子コーチが居た。



瑠璃子は裕子に叶えられなかった夢を頻りに抱き、



二人は目を瞑り玲菜が組んでいる指を、



瑠璃子は両手で覆って二人は、何か祈りを込めていた。



玲菜の髪には白い花飾りが付けられ、



竜彦に綺麗に仕上げて貰った化粧は、



きめ細かく繊細で美しい姿に仕上げられていた。



オリンピック出場は今まで、臨んで無かった事とは言え、



これで何もかも裕子と、決着を付ける思いを胸に秘め、



最高の演技を舞う事を心に誓うのであった。



そしてリンクスタッフが控え室を訪れると、



玲菜の顔が真顔になる。



そして大きく息を吸うと、意を決して椅子から立ち上がった。



竜彦に付き添われ控え室から出て行った。



スケートリンクにやって来ると、ショートプログラムでは、



高得点を繰り出しただけに、大勢の人々から称えられた。



玲菜の衣装は竜彦と初めて出会った時に着ていた、



シンプルな練習用の青いユニフォームであった。



その時、玲菜は竜彦とキスをすると、



世界中の大勢の観客が二人を冷やかした。



キスを終えると玲菜は、リンクに静かに降り立った。



リンクの中央に滑ると、



玲菜は氷の上に跪いて指を組んで、目を瞑り祈りを込めた。



そして玲菜は立ち上がり目を開けて、



両方の手の平を返してその手を上げて、



その手の平を返したまま、両手を付けると天を仰いだ。



すると曲が流れた出した。



その曲は初めて大滝スケートリンクで、音楽に合わせて舞った。



パーシーフェイスオーケストラが奏でる、夏の日の恋であった。

http://www.youtube.com/watch?hl=ja&gl=JP&v=nagDhwBWPEM



曲に合わせて後ろに手を回し手を組んで、優雅に滑り出した。



最初は軽くアクセルを繰り出すと、



きっちりと着氷して拍手を貰った。



それに微笑む玲菜は、会場に向けて投げキッスをすると、



あまりにその余裕な素振りに、驚いたのは観客と審査員であった。



笑顔を絶やさないで、フリップを繰り出しまた拍手を貰うと、



お澄まししながらサルコウを舞った。



その大技を笑顔で、意図も簡単にこなす玲菜に、



感銘を受けた観客は立ち上がり、玲菜を大いに称えたのである。



そしてトウループを連続で繰り出すと、



やはり引力が掛かっていない様な、



しなやかな舞振りに大勢の人々が感激して、指笛が炸裂していた。



盛り上がって来た所で、得意の高回転ビールマンスピン。



鮮やかに回転する玲菜はこの時点で観客は皆、



この世の者とは思えない程、



驚いて言葉を無くしてしまったのである。



連続してドーナツスピンも高回転で繰り出すと、



その体制から足を肩から下ろし、



そのまま高回転でシットスピン、回りながら姿勢を上げると、



キャメルスピン、レイバックスピンに繋げた。



そのままリンクを滑走すると、



トリプルアクセルを連続で三回こなし、



手を大きく横に広げて喜んでいた。



その微笑ましさに会場も和み、篤いエールを送るのであった。



玲菜はその時、微笑んで何度もループを舞うと、



会場から拍手の渦が巻き起こった。



もう玲菜は迷う事無くリンクの角に滑って行くと、



そこから中央に向けて滑走し、リンクの中央でエッジを、



もう片方のエッジに引っ掛けるとその瞬間、思いきり飛んだ。



体が真横になり高回転で回ると、キャメルスピンを舞う様な体制で、



T字型の体制で片方だけ足を着氷させた。



それを何度も繰り返すと、その神技に観客は度肝を抜かれた。



そして審査員の前に滑って来ると、



首を傾げて微笑み審査員にウインクをした。



その行為に驚いた男性審査員は、顔を振って正気に戻した。



曲のクライマックスで、玲菜はその時急に真顔になる。



すると先程よりも早く加速して、



リンクの中央でエッジをもう片方のエッジに引っ掛けた。



 ”ツー カン” と切れの良い音を残し、



その慣性を垂直に伝えると、天に向かってジャンプした。



両手を上げて顔も天を仰ぎ、凄まじい勢いで上昇すると、



エッジに着いた氷が、細かい宝石の様に輝いて落ちて行った。



それを不思議そうに見詰める観客と審査員。



この高い天井に手が着く位に、舞い上がった。



そして上がり切ると、体を真横にして落ち葉が舞う様に、



ひらひらと落ちて行った。



氷すれすれで体制を垂直に戻すと、”ガン”と、言う音と共に、



着氷したのであった。



即滑り出し滑りながら氷の上で、手を広げて喜びを露にすると、



観客はその技に驚いて席に腰を下ろし放心状態で、



信じられない様子であった。



音楽がフェードアウトされると、リンクの中央でポーズを決めて、



観客席に手を振り リンクから上がると、



玲菜の演技に翻弄された観客は、急に我に返り拍手どよめき指笛と、



観客が玲菜の演技に感じた思いを、力いっぱい表現したのであった。



玲菜はリンクの外の椅子で、審査員の評価得点付けを待っていると、



即座に審査員は文句無しに、全員最高得点を打ち出した。



その瞬間玲菜は涙を流し、竜彦が居る場所へと駆けて行った。



それと同時だった。



観客席から女性が一飛び降りて、玲菜の元に駆け寄って来た。



手には刃渡り二十センチ位の、ナイフを手にしていた。



玲菜はその女性など眼中に無く、竜彦の元に走って行った。



女性は何も言わず、玲菜目掛けて突進すると、



母静香がナイフを持った女性を、横から飛びついて押し倒した。



玲菜は無事竜彦の胸に抱かれ、喜びを露にして涙を流し竜彦とキスをした。



襲い掛かった女性に馬乗りになり、何度も顔を殴打する静香。



その時、静香は馬乗りになりながらその女性に向かって、



「この悪魔が。



お前なんかに娘の幸せを奪われて堪るか。



この場で殴り殺してやる」と、怒りを露にした。



場内は竜彦と玲菜に感動して囃し立てた。



その時、静香は瑠璃子に止められ我に返ると、



殴り倒したその女性そう、裕子は気絶してしまった。



テレビカメラは世界中に竜彦と玲菜の、その光景を映し出していた。



鳴り止まない拍手と歓声の渦は、その光景を世界中に届けていた。



キスを終えると玲菜は、近くに立っていた弘美を抱き上げ、



感動を露にその場でくるくると回った。



そして弘美に玲菜は涙を流しながら、「有難う弘美ちゃん。



あなたのお陰で、世界中の人々の前で羽ばたいたわ」と、



感謝すると弘美は、人差し指で自慢気に鼻を擦った。



気絶した裕子に馬乗りになっていた静香は立ち上がり、



玲菜の元へと歩いて行った。



そして玲菜に、「おめでとう」と、



声を掛けると、玲菜は弘美を下ろして静香と抱き合った。



そして真理とも抱き合い真理が、「玲菜、これで終わったよ。



裕子との柵も最後だね」と、



問いかけると玲菜は微笑み、小さく頷いたのであった。



静香を止めた瑠璃子コーチも玲菜の元に遣って来て、



瑠璃子とも抱き合い瑠璃子は、「この日を待ち侘びていたわ。



短い間だったけど、あなたにコーチが出来た事を誇りに思うわ」と、



感謝すると玲菜は、「これも全て裕子から始まり、



試練と感動を与えてくれました。



でも皮肉な事に彼女は、その感動を打ち破りに来た。



その代わりに裕子のコーチで有った瑠璃子さんが、



私のコーチと成りこうしてオリンピックで、



私に栄冠を与えてくれた。



何もかも全ては裕子から始まったの」と、



語ると瑠璃子は、「そう、彼女は時として悪魔に成り、



成る事で私達の繋がりを導いた。



人は時として不幸中の幸いが齎す、大きな力を得る事が有るけど、



まさに彼女はそれを与えた。



全て共通して言える事は一つ。



玲菜の試練が私達のこの繋がりを司った。



裕子は全て玲菜に関わる者に試練を与え、



それを我々が乗り越えた事で、



我々に大切な物を抱かせる結果に成った。



それは絆と言う名の大切な心の繋がりだった」と、



悟ると玲菜はその時意識を取り戻していた、



母静香に殴られて頬が、痣だらけになってしまった裕子の前に来ると、



竜彦も付いて行き、竜彦は仰向けで倒れている裕子の腕から、



ナイフを取上げると玲菜は跪き、



自から裕子の上半身を起こして抱き締めて泣いた。



そして玲菜は、「金メダル獲得したよ。



あなたの玲菜は期待通り、あなたの願いを叶えたよ。



もう思い残す事はないでしょう」と、



問いかけると裕子は急に暴れ出し、「うるさいこの裏切り者が。



私を無視して 一人脚光を浴びやがって、どう言うつもりなんだ。



お前の息の根を止めてやる。



ナイフを返せ」と、叫んだ。



もうこの時点で、皆んなは裕子を咎める気にも成れず、



裕子は暴れながら暴言を吐き、近くに居た警備員の手によって、



仰向けの状態のまま引きずられて、拘束されて行くのであった。



皆その虚しさを抑え切れず、悔しさを噛み締めたのであった。



それから玲菜は、お立ち台の真ん中に立ち、



裕子の念願の金メダルを玲菜の首に掛けられた。



そしてお立ち台から降りると、会場に向けてインタビューが始まった。



玲菜は涙を流しながらインタビューに答えた。



玲菜、「私は今まで、オリンピックを目指して来た訳では無く、



アイススケートのイベントショーで活躍する、



スケーターである事を願って来ました。



それは実現し現在私はと或る寂れた、



スケートリンクに住む妖精と呼ばれています。



ですが嘗てオリンピックで欲しくも、四位の成績で終わった、



有田 裕子と言う元オリンピック代表選手が、



元私のコーチでしたが、四年前の17才の時に私はそのコーチの願いで、



オリンピック日本代表選手に成る事を強要されましたが、



無理難題の技の強化練習について行けず、



自から彼女と縁を切りました。



ですが私は彼女に追われました。



理由は有田 裕子が果たせなかった夢を、私に託したからでした。



言う事を聞かなければ私のここに居る恋人を、



ナイフで刺しました。



幸い事前に予測していた彼は、



自から防弾チョッキを着ていてくれた為に、



大事には至りませんでした。



でも私は内心彼女の願いを叶えて上げ様と、



このオリンピックに出場しました。



皆さんが篤く応援してくれた結果。



最高の栄誉を獲得する事が出来ました。



ですが彼女は私を許してくれません。



一度裏切った思いが根に有る様です。



仕方なく公の場を使い、今後彼女はこれ以上私の周りに、



被害を及ぼさない処置を、取らざる負えません。



私は横浜市の小さな寂れた大滝スケートリンクの、



妖精として今後も活躍し続けます。



私は大滝スケートリンクの氷のやんちゃな妖精、



アイスエルフィンでありたいから。



世界に羽ばたくよりも、



私は小さな湖が凍った時に現れる妖精でいたいから。



そこが大滝スケートリンクです。



身近で私の演技を称えてくれる、妖精でいたいから。



そしてそれを描く絵描きに愛され、幸せに成ります。



世界中の皆さん、こんな名も知らない寂れたスケートリンクで、



滑っているスケーターを応援してくれて有難う。



そして私はこの栄冠を胸に、



横浜市の小さなスケートリンクに現れる伝説の妖精として、



勝田 竜彦と言う画家に愛され、



スケート人生を続けて生きて行きます。



本当に皆さん応援してくれて有難う」と、深々と頭を下げると、



観客と審査員から大いなる拍手が沸き、



惜しまれつつ玲菜を篤く称えたのであった。



そして竜彦に抱きかかえられながら、会場を跡にする玲菜であった。



玲菜はこの時、最高の幸せを噛み締め、



自分は竜彦の女だと言う思いの、余韻に慕って目を瞑った。



世界が見守る氷の湖で遊びつかれた妖精は、



天使に抱かれ妖精の世界へ、帰って行く様であった。




オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html

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