第十六章、感謝
この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。
尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。
次の日の午後、
静香は喫茶店サファイヤを訪れていた。
カウンターの椅子に座り、
水色のカーデガンを羽織、コーヒーを飲んでいた。
静香は若くして玲菜を産んだ為に、まだ若く四十四歳で、
ビジネスウーマンだけに、玲菜と同じくショートカットの黒髪で、
地味な色の服装ではあったが、細面ですらりと伸びた足に、
紺色のタイトスカートを、身に着けた姿が美しかった。
それに目を奪われたのは喫茶店のオーナー秋山 清二で、
舞い上がっていた。
秋山、「あ、あーのー、あはははは、いやー、
娘がお世話になってるだなんて、とんでもないですよ。
弘美はこの前奢って貰うわ。
こ、こんな真面目で誠実な子が、我が店で働いて頂けるなんて、
こちらがなんとお礼を言って良いやらで、だははははは」と、
後頭部を掻いて照れていた。
それを見たお客の誰もが完全に玲菜の母静香に、
心を奪われていると確信していたが、
確かに誰が見ても玲菜に似ている事と、その気品に圧倒され、
仕方なく感じていた。
その近くで焼きそばを食べていた、
亮と健一が、こそこそと何かしゃべっていた。
亮、「ヤベーぞ、また巷で噂だぜ」と、
囁くと健一は、「あのママにして、この玲菜ちゃん有りだな。
これでまた浜の伝説が生まれたな」と、囁いた。
その時、二人は顔を見合わせて同時に頷いたのであった。
相変わらず秋山は舞い上がり、自分でも何をしゃべっているか、
分らなくなっていた。
そこに丁度、創作活動を終えた竜彦が来店して来た。
この事態に客全員が竜彦の方に顔を向けて、
唖然とした眼差しで見詰められた。
それを見た竜彦は何だかその空気に怖くなり、
「出直す」と、告げて出て行こうとすると、
客全員同時に、「帰るなよ」よ、言われてしまったのであった。
仕方なく竜彦は渋々来店したのであった。
すると何も言わず、竜彦に注目する客全員であった。
竜彦は呆れた顔で、空いているカウンターの椅子に腰掛けた。
カウンターの角に居た明子が単的に、「日替わり」と、
訪ねると竜彦は溜息を付きながら、「ああ、それでいいよ」と、
投げやりに答えた。
明子もかなり意地悪なので、この空気を把握しながら、
明子、「惚れた妖精が作る、ランチの方が良いわよねー」と、
強調すると急にここに居た客全員が俯いた。
それを見た明子は急に顔が強張り、
客に向かって、「なによ、笑いなさいよ」と、
命令すると秋山が代表して、「明子お前もなー、
弘美と同じで空気読めねーのかよ。
お前この関係をどう捉えていいか、客は困ってるんだよ」と、
告げると全員客は苦笑いであった。
すると静香は笑いながら、「あら、噂の二人の妖精の母親が、
そんなに気になるの。
母は妖精では有りませんよ、竜彦君が娘を妖精に変えたのだから、
あ、はははは」と、口を手で宛がい笑うと、
客は全員言葉を無くしただ呆然としていた。
そこに分の悪い奴が、奥からひょこひょこやって来た。
それを見た秋山は目を片手で覆い、「あちゃー」と、
叫ぶと弘美は父秋山を睨んで、「パパ惚れたな」と、叫んだのであった。
すると客全員が秋山と同じ様に、
片手で目を覆い一斉に、「あちゃー言っちゃったよ」と、
嘆いたのであった。
その時、大笑いするのは静香と、明子で有る事は言うまでも無かった。
そして竜彦が 一言、「弘美はキツイなー」と、嘆くのであった。
夜七時頃の事である。
急に竜彦の所に美術鑑定士の、水野から電話が掛かって来て、
驚きを隠せない様子だった。
竜彦は 一度喫茶店から自宅に戻り、創作活動を続けて、
玲菜を夜スケートリンクで練習させる為に、
車で喫茶店に迎えに行くのが日課であったが、
今日は急遽変更せざる負えない事態が、発生したのである。
それを伝えに喫茶店に寄ると、母静香もまだ喫茶店で、
秋山夫婦としゃべっている様子であった。
竜彦は喫茶店に来店すると、他には客は誰も居なかったので、
玲菜は静香が座っていたカウンターの椅子の、隣の椅子に腰掛けていた。
秋山、「よう、今日は早かったな、
どうする日替わりディーナ作るか」と、
尋ねると竜彦は、「玲菜を描いた作品を、名古屋の美術館で展示したら、
一億の値を付けて買いたいと言う人が現れたんだ。
オークションに掛けられる前に、
どうしても手に入れたいと、願い出たフランス人がいて、
美術鑑定士の水野さんが、慌てて俺の所に電話を掛けて来た。
そのフランス人が水野さんの、美術商を今訪れていて、
是非作者とモデルが見たいと、願い出ているらしいどうする」と、
問いかけると皆んなは驚いて秋山は、「い、一億。
またなんでそんな高値で買いたいんだ」と、尋ねると竜彦は、
「それを今から聞きに行こうと思うんだ」と、告げた。
早速初仕事とはりきり、母静香も着いて行く事になった。
車で美術商の水野の店に辿り付くと、早速店内に入る二人は、
大柄で太った白髪の年の頃は、
七十歳位の老人と若い女性の通訳が立っていた。
老人は玲菜を見るなり感動して、握手を求めて来た。
玲菜は急な事で実感が沸かず、ただ何も考えず握手を交わした。
すると水野が静香を見て、
「玲菜ちゃんの、お母さんでいらっしゃいますか」と、
静香に尋ねると静香もこの事に対し、実感が沸かず躊躇いながら、
「あ、はい、玲菜の母で、
中原 静香と申します」と、頭を下げた。
水野も頭を下げて、「美術鑑定士の水野 良平と申します」と、
告げると財布を出して、中から名刺を出し静香に渡した。
そして竜彦が、「それで水野さん、
名古屋に展示した作品、妖精の涙を 一億円で買取りたいと言う事ですが、
この方はどう言った方ですか」と、
尋ねると水野は慌てて、「ああ、申し訳ない。
紹介が遅れました。
この方はフランスの有名な美術館を運営している、
美術館のオーナーで名前は、ダニエル・チアリさん。
僕と同じ鑑定士でもあり、目利きでもあるんだ。
あの絵に感銘を受けてね。
是非美術館に飾りたいと申し出ているんだ」と、紹介すると。
竜彦が、「玲菜に権限が有るよ」と、
告げると玲菜は躊躇い竜彦に、
「そんな事無いよ、もうあなたの私だから、
金銭的な事は、愛する夫と成る人に託すわ」と、決定権を譲った。
もう誰が決めても 一億円で売却する事は、皆納得していたが、
儀式として誰が購入を、決定するかを選んでいた。
すると静香は、「それでは仲介役の私が、
一億円で 売却する事と決定します」と、告げると皆微笑んだ。
そして静香は、「私が七割、後は皆さんで分けてね」と、
冗談を言うと水野と竜彦それと、売買契約を結んだダニエルが、
通訳を通して耳にすると笑ったのであった。
だが雲行きが怪しい一人が居た。
玲菜であった。
すると急に感情的になる玲菜だった。
玲菜、「どうして、どうしてお母さんそんな事を言うの、
おかしいじゃない。
竜彦君が描いた作品なのに、
どうしてそんなに卑怯な事を言うのよ」と、動揺した。
そして急に泣き出す玲菜は、竜彦に縋り付いた。
今度は急に我に返った様子で、「御免なさい、
まだあの人に裏切られた蟠りが残っているの。
信じて来た最愛の人に裏切られ、
ナイフを首に突き付けられた思いが、
頭を過ぎると居た堪れなくなり、
つい母が冗談でも卑怯な事を言うと、
裏切られる恐怖感に駆られるの。
でも強くならなきゃね」と、竜彦から放れて涙を拭った。
それを見て心配になるダニエルは、通訳を通じて訳を聞いて来た。
そして竜彦が通訳に、簡単にこの敬意を説明すると、
ダニエルは嘆き悲しみ、急に玲菜を抱き締めた。
その思いは玲菜に伝わり、ダニエルは玲菜を抱き締めながら、
通訳を通してこう語った。
通訳、「ダニエルはこうおっしゃっています。
悲しい思いをして来たんだね。
要約この妖精の涙の意味が解ったよ。
僕はこの妖精の涙を見た時、
悪い悪魔に心を縛られている様に感じた。
それを画家である天使が、多くの人に悪魔が妖精を、
束縛している姿を見せたかったんだな。
そして多くの人にそれを伝える事で、妖精を愛する人々の力で、
悪魔を取り払って欲しくて、この作品を描いたんだ。
僕は解るんだ。
天使が愛した妖精の事を。
でも必ずその束縛から解き放たれる時がやって来る。
それは皆んなが妖精を愛し続ける事にある。
僕も一役買うよ。
僕は自由な妖精が好きだから」と、
語り終えるとダニエルの胸で、一頻り泣いた玲菜であった。
その優しさに感動する竜彦と玲菜は、
心からダニエルに感謝したのであった。
母静香も玲菜の蟠りにまた更に、罪意識に駆られ静香は、
「ごめんね竜彦君。
私はこの子に手を差し伸べる事が出来なかった。
迫り来る悪魔に、母親である私が阻止出来なかった事が、
自分が母として愚かだと感じているの。
亡くなった夫に怒られてしまいそう。
我が子 一人守れないで、
戸惑うばかりの玲菜に母である私は、
親としては失格よ」と、無念の窮地に竜彦は、
「それは違います。
最終的には玲菜が強く成らなければ、
悪魔を取り除く事は出来ません。
どんなに我々がそのアシストをしたとしても、
最終的には玲菜と裕子の問題です。
俺は心を鬼にして、玲菜を強くするつもりです。
俺や母静香さんに頼っても、この柵は解決しません。
不良の表現で言えば、一対一の勝負所謂タイマンです。
俺はブラックな世界に身を置き、そこから自ら脱却しました。
そして玲菜と知り合い、玲菜と甘く淡い恋に落ちました。
俺は今まで身を置いていた、闇の世界から抜け出せた。
そして彼女と明るい世界そう、
妖精の住む世界で、玲菜と生きようと決意しました。
でもそれは甘い考えでした。
裕子を半殺して脅かして、再起不能にするのは容易い事。
でもそれは雑魚の遣る事と気づきました。
自分の感情に流され罪を犯せば、玲菜が傷つきます。
どんな訳が有ろうが、犯罪者の女とレッテルを張られるだけです。
彼女を愛しその悪魔を取り除く手立ては、
玲菜自身が行うしか手立ては有りません。
合法的なやり方で悪魔を闇に葬り去るには、
全て妖精の力に掛かっています。
俺は更に気づきました。
本当の幸せは玲菜が自力で掴む物。
俺が力ずくで叶える幸せには、限界がある事を知りました。
とどめを刺すのは玲菜です。
いつかその事に気づくでしょう。
俺はそのアシストを致します。
でも玲菜は決して弱くは無い。
むしろ俺よりも、強い精神の持ち主だと思います。
だから俺は玲菜を信じて、玲菜を支えます」と、
強く玲菜の意思を唱えると、皆竜彦の意見を重んじた。
その時、玲菜は裕子から逃げる事を止め、
戦う決意を醸し出すのであった。
日曜日の事である。
噂を聞き付けた横浜市内以外の人達も、
玲菜を一目見様と、大滝スケートリンクを訪れていた。
決して宣伝をした訳でも無く、ショーが始まる時間を、
掲示している訳でも無いが、午後三時頃になると、
自然とスケートリンクに、
大勢の人々が集まって来るのであった。
そこへ大扉が開き真理、竜彦、静香に囲まれた玲菜が登場すると、
どよめいた後に歓声が上がる。
それが静かに拍手に替わって行った。
今日はホワイトとブルーが施され、
その色がグラデーションされている、ユニフォームに身を包み、
シンプルではあったが、派手な色を好まない玲菜の拘りであった。
それも全て竜彦がデザインする。
横浜の元ワルと妖精の間柄に、寄り一層華を咲かせていた。
今日もその影で、玲菜の姿を伺う裕子がであった。
玲菜はいつもの様に真理に抱かれ続いて、
今日は母静香にも抱かれ励まされていた。
静香、「玲菜、今まであなたを放って置いたお母さんは、
今日からこうしてあなたに、スキンシップを図ろうと思うの。
本来産みの母がこうしてあなたを、
励まさなければ成らない立場だった。
でも竜彦君の力を借りて、
産みの親である私がこれからあなたを、
支えて行くつもりでいるの。
長い間待たせてごめんね。
私はあなたを決して裏切らない。
あそこに居る女とは違うのだから。
だって私はあなたを産んだ母親だから。
辛い時やスケート人生に躓いた時は、
今度は私があなたに手を差し伸べる番よ。
プライベートでは、竜彦君に愛情を掛けて貰いなさい。
その代わり私はこうしてリンクで愛情を注ぐから。
さー妖精として人々の心に、明かりを点して来なさい」と、
告げると抱いていた、体を放された玲菜は静香に向けて、
「全ては竜彦君から解き放たれた私の人生。
有難う私は母の事を信じてこれからの、
スケート人生に繋げて行きます」と、
告げると勢い良くリンクに飛び出した玲菜。
すると今日は、首にはシルバーの十字架のリングを飾っていた。
竜彦が作った物である。
玲菜はリンクの中央に滑ると、氷の上に跪いて指を組み祈り始めた。
場内もその姿に感銘の意を称して、皆指を組み祈っていた。
この時、玲菜と観客の心は一つに成った。
そして立ち上がり、観客席の周りを滑り回り投げキッスを連発すると、
熱狂的な男性ファンが玲菜を冷やかした。
それに対し玲菜はウィンクをすると、
更に男性ファンの熱狂振りは、ヒートアップしていた。
そして再度リンクの中央に来ると、前後左右に体を向けて、
投げキッスをし会場を盛り上げた。
最高に盛り上がった所で、玲菜は微笑み両手を天高く上げた。
そして演技が始まったのであった。
今日の曲はピアノ五重奏曲 - 鱒
http://www.youtube.com/watch?v=HOMqdvZwX8E
静かにバイオリンが奏でられると、玲菜もそれにつれて揺れた。
玲菜は楽しそうに、バイオリンの奏でに心躍らすと、
曲に合わせて軽くターンを繰り返した。
曲はしばらくスローに、バイオリンのソロを奏でていると、
楽器がピアノソロに替わる。
すると玲菜は、より軽やかにそして楽しそうに、
トウループを繰り返した。
軽やかなピアノ演奏に合わせるかの様に蛇行して滑ると、
観客もそれに連れて乗って来た。
今度はピアノとバイオリン同士が、鱒が泳いでいるシーンを奏でると、
まるでその小川の上で舞う妖精を表すかの様に、
軽く飛び跳ねる玲菜。
続いてまた軽やかにターンを繰り返した。
ピアノの奏でが軽快になると、玲菜は天を見上げてアクセルを軽く行う。
そして先ほどとは違い激しく滑ると、
トリプルアクセルを絶え間なく連発させた。
場内は歓声の渦に包まれた。
続いてイーグルからバタフライを繰り返す玲菜。
春を迎えた妖精の喜びを表現するかの如く、
玲菜は裕子との柵など感じさせなかった。
更にピアノが曲を激しく奏でると、玲菜は次々と技を披露して行く。
その時、観客の歓声は驚きに変わり、
今度は拍手の渦が場内を駆け巡った。
そしてバイオリンとピアノが激しく奏でると、
大技のアクセルスクリューを連発させる玲菜に、
度肝を抜かれる観客であった。
曲がまたスローになると、玲菜の演技もスローになり、
氷の上を軽やかに滑り出した。
観客の周りをまた滑り出し、観客の方に体を向けて、
イーグルの体勢で、喜んでくれる観客に手を振った。
観客もそんな玲菜に、リンクに腕を伸ばして手を振っていた。
観客と玲菜はこの時、一つに成っていた。
二階席にも目を向けて、手を振りながらクルクルと回る玲菜を、
篤く見守り手を振る二階席に、投げキッスをすると、
二階席の観客もそのサービス精神に喜んだ。
その時、影で見ていた裕子の表情が、
奇怪に成るのを目撃した竜彦は徐に、「あいつヤバい。
もう気が狂ってる」と、囁いた。
すると真理と静香は遠くからその裕子を捕らえると、
今にも悪魔が玲菜の演技を見て、
それに食い付こうとしている有様であった。
獣の様に今にも涎を垂らさんとばかりな表情で、
玲菜を見詰めていた。
それを見た真理も、「マズイな。
不気味な笑みを浮かべて、口がたるんで涎が出てるよ」と、
その姿を捉えると裕子のその表情はまさに、
精神異常者であった。
母静香もその姿を見て、「竜彦君そろそろ、
第二の対策を取らなければ成らないわね」と、
告げると竜彦は、「大丈夫ですよ。
これでもだてに、ワルやっていませんでしたから、
狙われたるのは四六時中でした。
玲菜を手篭めに掛けさせたりはしません」と、念を押した。
そしてまた中央に滑りフリップを一回舞って、
曲が更に穏やかになり玲菜はターン。
サルコウを一度舞い、
曲が終わると止まってポーズを決めてお辞儀をした。
その瞬間、場内からは拍手が沸いて、興奮した観客から被っていた帽子や、
マフラーがリンクに、投げ入れられたのであった。
演技が終わると、玲菜は仲間の元へ滑って来た。
そして竜彦に篤く抱かれた。
次に母静香に抱かれると、
母は初めて玲菜の可憐な演技を見て、心打たれて泣いていた。
静香、「良かったね、これも全て竜彦君のお陰ね」と、
問いかけると玲菜も目頭が熱くなり、
薄っすら瞳に涙が溜まり、「そうよお母さん、
竜彦君が私を変えてくれた。
愛と勇気に満ち溢れ、それを更に真理さんが支えてくれた。
感謝しても感謝し切れないこんな喜びを、
二人は与えてくれたの」と、
語ると今度は真理に抱かれて、真理も薄っすら涙を浮かべて、
真理、「玲菜よくここまで立ち直り、更に進化を遂げたね。
でもまだまだ試練が待ち受けているけど、
この豪傑な真理さんが、玲菜をサポートして行くから、
どんな事に見舞われ様が、私達を信じて竜彦と結ばれなさい。
私を後ろめたく感じるんじゃないよ。
私も竜彦の事を、陰ながら愛していたけど、
玲菜と竜彦が結ばれる事を称えて上げる。
プライベートではベッドでの、女のテクを密かに教えて上げるから、
安心して竜彦と結婚を夢見ていなさい」と、
支持すると玲菜は、はにかみながら、「うん、
真理さんと禁断の世界に落ちても良いよ、
竜彦君が許す限り」と、冗談を言うと真理は微笑んで、
玲菜のおでこを、人差し指で突付きながら、
「この野郎」と、じゃれるのであった。
すると急に人込みの中から、複数の女の子の団体が、
玲菜の名を呼び、人々を掻き分けてこの場に入って来た。
皆涙を流して玲菜を称えたのであった。
それは嘗ての玲菜が所属していた、
スケート教室のチームメイト達であった。
驚いた玲菜はその 一人の女の子と、篤い包容を交わした。
その女の子は以前探偵である健一に、
玲菜の過去を伝えた大山 美智子であった。
美智子は感動して泣きながら、「玲菜ちゃん凄い凄いよ。
あの神技トリプルスクリューを何度も何度も、
完璧にこなすなんて信じられない」そう言うと、
チームメイト達からも篤く称えられた。
玲菜、「有難う美智子ちゃん背が大きく成ったね。
私は画家であるこの勝田 竜彦君そして、
私をコーチしてくれている、伊丹 真理さんの指導を受けて、
ここまで演技が上達したの感謝してるわ」と、
伝えると美智子はチームを代表して、
玲菜の手を取り、「玲菜ちゃん、これから玲菜ちゃんと、
私達はスケート人生を歩もうと思うの。
私達はまだ高校生だけど、
週に一度日曜日にはここに来て、一緒にホームスケーターとして、
玲菜ちゃんの滑る前座を務めたいの。
やっぱり私達は玲菜ちゃんが居ないと、
スケートを続けられないの。
玲菜ちゃんが幼い私達に、スケートの面白さを教えてくれた。
そして優しくスケートの上達を育んでくれた。
ずっとずっと私達を励ましてくれた。
だから今度は私達が玲菜ちゃんを称え、
励まして行きたいの」と、告げると玲菜は感動して、
「有難うでも私の前座なんておこがましい、
前座では無く皆んなもショーのメインとして、ここで滑って欲しいの。
私が主役では無く、
ここはチームメイト皆んなが主役のスケートリンクとして、
人々に称えて貰いたい。
そうなる様、私はあの人との柵を脱却するから、
その日が来るのを願いたい」と、遠くで見ている裕子を見詰めた。
するとチームメイトも、遠くの裕子を見詰めて顔色を変えた。
美智子、「探偵さんから事情を聞いたわ。
玲菜ちゃんを今でも追っているって。
もう裕子さんは気が狂っている様ね」と、
遠くからでも裕子の、不気味な顔付きが目に映った。
そして竜彦が、「君達に本当の事情を伝えたくは無いが、
伝えざる負えなくなっているんだ。
君達を守る為にね。
よく聞いてくれ。
彼女は今見てる様に正気ではない。
玲菜を取り戻そうと形振り構わず、
どんな手を使おうが玲菜を、オリンピックに出して、
その功績の背後には私が居るんだと、
連盟や多くの人達にアピールしたい様だ。
それは君達の方がよく理解していると思うが、
この間ここで裕子は俺の目の前で、
持っていたナイフを玲菜の首に宛がい、
俺から玲菜を奪おうとした。
あの顔付きを見れば解るだろうが、
君達も槍玉に挙げられる可能性があるんだ」と、
その危険性を伝えると、
チームメイトの 一人女の子が、「あの目付き覚えてる。
玲菜ちゃんがジャンプに失敗して、
間違ってエッジを引っ掛けてしまい、
つんのめってその直後にジャンプをして、
真横になり凄い勢いで回転して、氷の上に叩き付けられた時、
コーチはあれ程では無いけど、あんな顔していたわ。
その時から急にオリンピック代表選手を意識し始めて、
強烈にチームメイトに強化練習を行わせた」。
美智子、「玲菜ちゃんもうあの人駄目だよ。
いつも休憩時間に飲んでいた、
あの白い薬では、精神が回復しなくなっているよ」と、
悟ると真理はピンと来て、「メジャートランキライザー精神安定剤。
強力精神安定剤とも呼ばれていて、抗精神病薬。
向精神薬であり中枢神経系に作用して、
怒りや逆に極度の不安感を緩和させる薬。
軽い躁鬱病ならばそれ程、強い薬は使わなくて良いけど、
医師の処方せんの、メジャートランキライザーの致死量を、
無視して大量に服用してしまうと、
強い依存や正常な脳の動きに、戻れなくなる怖い薬。
つまり麻薬効果が有ると言う事よ」と、説明すると竜彦は、
「そう言えば俺達のワル仲間に、
似た様な顔付きで、街をふら付いていた奴が居たな」と、
真理に問いかけると真理は、「あれはコカインだったけど、
でも似た様な物ね。
もう玲菜や、ここに居るチームメイトと裕子が出合った時から、
強い薬を服用していたのよ。
端から考え方がおかしいからね。
自分がコーチをした生徒達を、オリンピック日本代表選手に、
伸し上げたいまでは解るけど、それを使ってスケート連盟に、
君臨しようと考える事がおかしい」と、疑問に思うと竜彦は、
「いや、方法が有るんだよ。
後で真理だけに教えるが、逆にこちらがそれを利用すれば、
あの女は闇に葬れるんだ」と、確信を得た。
それを聞いたここに居る仲間達は、
竜彦を信じるしか、手立ては無かったのである。
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html




