第十四章、探り
この物語はフィクションで、登場する人物や建物は実際には、存在いたしません。
尚この技は架空であり、実際に物理的に出来る技では有りません。
その次の日、竜彦は自宅のリビングに佇み、
携帯電話で誰かと話をしていた。
竜彦、「そうか御苦労だったな。
裏の事務所に今日出向いていいのか。
分かった三時に」。
そう言って電話を切った。
玲菜はソファーに座って、不安気な面持ちだった。
すると竜彦は玲菜の横のソファーに腰を据えた。
竜彦、「奴はやはり横浜にアパートを借りて住んでいる。
我々を常に監視している様だ」と、
告げると玲菜は、「私を奪うつもりなのね」と、
囁くと竜彦は玲菜を抱き寄せて、
「奴が監視するならば、こちらも監視するさ。
だがあの女は、ちょっと間が抜けてる様で助かったよ」と、
告げると玲菜は、「どう言う事」と、尋ねた。
竜彦、「玲菜と俺は出会って間もなく同姓を始めたが、
奴は同姓する前の、君のアパートを探り出したらしい。
横浜の不動産を虱潰しに当たって、見つけたそうだ。
それから裕子は、君を奪う計画を練っている間に、
運良く玲菜がアパートを引き払った跡、
直ぐに入居者が居たらしい。
その子は女子大学生で、玲菜と身形も似ていた為、
裕子はアパートを見張り、
隙を見計らって押し入ったら別人だと判明。
その後、警察沙汰に成ったが直ぐ釈放された。
たった数週間のアパートの、
入居者の入れ替わりに裕子は気づかなかった」。
玲菜、「全て竜彦君のお陰ね」と、受け止めた。
早速竜彦は玲菜を連れて、車で闇の探偵事務所に向かった。
到着すると表は内装工事の工務店だが、
特別な客にはセキュリティー完備の、
裏口から入って貰う仕組であった。
裏口のインターホンで応答する竜彦は、
許可を得ると裏口の扉の鍵が、解除される音がすると、
玲菜を連れてドアを開けた。
中に入ると長い廊下の突き当りが、事務所になっていた。
竜彦はドアを開けると中には、喫茶店サファイアの常連客でもある、
竜彦の元ワル仲間の坂東 健一が、作業服でソファーに座っていた。
玲菜は驚いて、「内装工事の健一君」と、目を丸くした。
健一は笑いながら、「まあ座れよ」と、
テーブルを挟んで、向かい側のソファーに招いた。
言われた通り竜彦と玲菜はソファーに座ると、
竜彦が玲菜に、「健一の本職は闇の探偵。
表向きは工務店だがな」と、語ると健一は、
「どちらも大して利益は上がらないけどな。
この商売は報酬は多いが、危険も伴う仕事なので、
なんでも引き受る訳には行かないよ。
なのでそろそろ手を引いて、
工務店一本で仕事しようかと思っているよ」と、嘆いた。
竜彦、「まあそれはさて置き、裕子の事だが」と、
尋ねると健一はテーブルに置いて有った、資料を持って話し始めた。
健一、「有田 裕子、元オリンピック選手で銅メダルを逃した後、
プロに転じて間も無くスケートを続けていた矢先に、
練習中足のトラブルで入院。
その後の消息は定かではない。
そして五年後に知り合いの、スケート教室のアシスタントとして、
リンクに舞い降りた。
ここからが玲菜ちゃんには重要な点だ。
コーチとしての才能を発揮したと言われたが、
これはあくまでもだ。
その陰には、天才少女中原 玲菜ちゃんの、
手助けを忘れてはならない。
これは当時 一緒にスケート教室に、
通っていた生徒から聞き込んだ話だ。
玲菜ちゃんは当時十歳で五歳の未熟な私達を、
自分の練習を止めて面倒を見てくれたお陰で、
スケート教室に通うのが嬉しくて、
毎日玲菜ちゃんに指導を受けていました。
玲菜ちゃんはスケート教室が終わり、
時間外で有田コーチに指導を受ける事が日課で、
仲が良く母親の様に慕っていましたが、
私達のスケートが上達するに連れて、
玲菜ちゃんの私達の指導が、有田コーチに替わりました。
その頃から有田コーチは、私達の指導が厳しく成り、
私達に対する態度が変化しました。
するとチームを作り、県大会に出場すると告げられ、
それに向けて練習に励みました。
玲菜ちゃんにはスケートの基礎を、
しっかりと教え込まれたお陰で、
私達は大会でもグラ付かない、
シャープな演技を披露する事が出来ました。
私達は有田コーチには、更に技を磨かされましたが、
チームメイトはその技を直ぐ習得し、県では皆高成績でした。
でも全国大会では強豪が多く、
いつもベストテン入りするのは、玲菜ちゃんだけでしたが、
全国大会になると必ず、ぎこちなくなる玲菜ちゃんは、
やはり大舞台では、緊張している様だと見受けられましたが、
控え室で私達の目の前で、
コーチから何度も頬を打たれる玲菜ちゃんを見て、
真相を知りました。
その時から、私達は有田コーチから距離を置く様に成り、
裕子から心も離れて言った分、
私達チームメイトは、玲菜ちゃんを寄り一層慕いました。
でも有田コーチは、そんな事は眼中には無い様で、
誰でもいいから、チームからオリンピック候補を、
出す事に専念した様子でした。
そして玲菜ちゃんが練習中、トリプルアクセルを行おうとした際に、
足が上がらず縺れ誤って、左足のエッジを真横にしてしまい、
右足のエッジを縦方向に、左足のエッジに引っ掛けてしまいました。
正面から氷の上に、体を叩き付けられると思った瞬間ジャンプをして。
体は宙に浮きましたが、態勢は真横になり回転して、
そのまま氷に落ちて行きました。
それがいつしか新技として有田コーチは、
私達チームメイトに技を叩き込みましたが、
誰もこなせる者は居ませんでした。
唯一 玲菜ちゃんだけが出来る技と気づいて、
有田コーチは玲菜ちゃんに、上手く着氷が出来る様指示した結果。
見事完成の域に達した頃、玲菜ちゃんは足を挫いて、
しばらく休む事になりました。
でもコーチは無常にも、当時一番若かった女の子に技を行わせた所、
体勢が真横から真下になり、そのまま氷の上に落ちて、
頭部を挫傷して救急車で運ばれましたが、
脳内出血が酷く、二日後に亡くなりました。
その事を切欠に関係者から、チームは強制解散に追い込まれ、
亡くなった女の子の両親に有田コーチは告訴され、
それから有田コーチの行方は定かでは有りません。
こう言う回答だったよ。
まずはこれでお仕舞い」と、一枚目の資料を机に置いて、
もう一つの資料を手にした健一であった。
ここで一旦両者は落ち着いて会話をした。
玲菜、「今言った通りです。
それが私の苦い過去。
その証言はみっちゃん事、大山 美智子ちゃんですね」と、
健一に尋ねると健一は、「その通りだよ、
玲菜ちゃんが当時滑っていた、名古屋のスケートリンクに出向き、
そこのリンクでユニホームを着て、滑っていた女の子に聞いたら、
直ぐに答えてくれたよ。
玲菜ちゃんの今の成果は、名古屋のスケートリンクにも轟いていてね、
来週大滝スケートリンクに見に来るそうだ」と、
告げると玲菜は少し微笑んで、「みっちゃん素直だから、
あの辛い過去を素直に話してくれるのは、
チームメイトの中では、
彼女しかいないはずよ」と、悟った。
そして健一は、もう一枚の資料を読み出す。
健一、「さて最近の有田 裕子だが。
この話はやはり、みっちゃんから知り合いに、
その場で携帯電話で電話を掛けて貰い、
裕子の知り合いに辿りついた結果、
一人裕子をよく知る人物に辿り付いた。
金田 瑠璃子さん、元有田 裕子の専属コーチで、
裕子が十六歳半ばの頃、裕子自身が捨てたコーチだ。
瑠璃子さんは唯一、今でも裕子の良き理解者で、
彼女は今でも裕子の相談役の様だ。
有田 裕子はコーチを退任した後、
やはりスケートに縋り付いていたい様で、
名古屋のスケートシューズの、オリジナル製造加工会社に入社。
会社と言っても町工場で、従業員は十名程度らしい。
急に最近会社を辞めたので、
瑠璃子さんは裕子の行動を、疑問に思ったそうだが、
後からその裕子の行動が、理解出来たそうだ。
そしてこの頃、裕子からの電話で、
横浜にもスケートシューズのエッジを、
オリジナルで加工する会社が有るらしい、
今はそこの会社で働いている。
玲菜ちゃん残念なお知らせがある。
竜彦に買って貰った今履いている、特注のスケートシューズは、
裕子が加工した物と判明したが、彼女はその事を知らない。
注文を引き受けた業者は、客の注文書類を見て作るが、
名前までは書いて無いのが幸いっだったが、
玲菜ちゃんの気持ちとしては複雑だろう」と、
推測すると玲菜は、「そんな事、気にしていません。
彼女の事は確かに敬遠してますが、
そのシューズの製造者が誰であれ、私の滑りに応じたシューズを、
作ってくれた事に感謝しま」と、敬意を称した。
すると健一は俯き、「もう一つ気づかないか玲菜ちゃん」と、
尋ねると勘の良い竜彦は、「玲菜のシューズは特別なシューズ。
普通のフィギャアスケートのシューズでは無い。
エッジを引っ掛け易く、引っ掛けた時に直ぐ抜け易い、
極めて特殊なシューズだ」と、答えると、
玲菜は青ざめた。
健一、「名古屋でばれた。
名古屋はフィギュアスケートが盛んな地。
それ故に特別注文のシューズを加工する会社も多く、
東京で注文しても、
名古屋の町工場で製造加工される事が多いんだ。
瑠璃子さんから聞いたよ、裕子は注文が入った時、
このシューズは誰が注文したか直ぐに解ったが、
その注文者を注文した店に問い合わせても、
店側が教えてくれなかったらしい。
エッジの下にこんな特殊な加工を施し、
滑るスケーターは世界でたった一人」。
竜彦、「アクセルスクリューが出来る、中原 玲菜だけ」。
健一、「そして有る程度の勘は持ち備えていた。
東京で受注が入ると、注文した客は関東圏の誰かだと分る。
それは当たり前だが、それだけでは玲菜ちゃんには辿り着かない。
そこで名古屋の元居たスケートリンクの、関係者に事情を聞くと、
『あんた知らないのかよ、名古屋の美術館に行って来なよ。
あの子は寂れた横浜のスケートリンクで、
アイスエルフィンと呼ばれて、市内では有名だよ。
その絵を描いているのが、婚約者でも有り今有名な画家、
勝田 竜彦だよ』と、言われて初めて玲菜ちゃんが、
今置かれている環境を知った」。
竜彦、「見付かるのは遅れたが、気づいたのは一発だったか。
時間の問題でいずれは玲菜に辿り付くが、
まさかシューズでバレるとは、予想外だったな」と、驚いた。
玲菜、「私を説得する材料にされるねきっと」と、心細気に答えた。
健一、「もし会ったら、『だからどうだって』強気に出るんだぜ。
『あんたは会社で仕事をする事が義務、
私は注文したシューズを履くのが義務。
金を払って作って貰ったんだから、
つべこべ言うな』ってね」と、
励ますと玲菜は少し笑みを浮かべた。
すると竜彦は、「それは真理に代行して貰うか玲菜。
迫力は真理の方が断然上だぜ」と、
冗談を言うと健一と竜彦は笑った。
健一、「真理は玲菜ちゃんを可愛がっているからな。
あいつには持ってない物を、
玲菜ちゃんが持っているからきっと代行して、
裕子を攻めてくれるよ」と、真理の思いを受けとめると竜彦は、
「俺もな」と、答えるのであった。
或る会社の駐車場に、黒塗りのセダンが止まった。
その会社は裕子が働いている会社である。
その中から健一が運転席から降りて来た。
そして後部座席の玲菜と、助手席の竜彦が降りて来た。
健一は既にこの会社を視察していて、
口実を設けて工場を、見学させて貰う事になった。
会社に入ると工場の中の、一人の女性に注目した三人であった。
しばらく影に隠れて見ていたが、三人は立ち去った。
すると今度は住宅街に車を走らせた。
車は古い様相のアパートの前で止まった。
そして直ぐ立ち去った。
そう裕子の住んでいるアパートを確認していた。
そして喫茶店サファイヤでは、玲菜は午後からここで働き、
竜彦、健一、真理、亮が客として、テーブル席に座って食事をしていた。
客も捌けた午後三時頃、客はこのフロアーのテーブル席に座っている、
竜彦の仲間だけになっていた。
今日は玲菜のスケートを中止して、今後の玲菜の防犯対策を練っていた。
健一、「おそらくここも、裕子は嗅ぎ付けているだろうから、
時期に顔を見せるだろう」と、
察すると側に居た玲菜は、「明日からお休みします。
勝手で申し訳ないのですが、
この店には迷惑を、掛けたくありませんから」と、
告げると近くに居た明子が、「その女がここに来るって上等じゃん、
一発で出入り禁止だよ」と、威嚇するとカウンターの中で、
コーヒーを入れていた秋山がしかめっ面で、
「はーん、人ん家の可愛い娘にガンくれただ、
ケチつけただ触っただのしやがったら、叩き出すぞバカヤロー。
玲菜ちゃん安心しなー、ここは誰が経営してる店か、
叩き込んでやるから」と、怒りを露にした。
真理は、「浜のどワルで有名な、
頭連中の集まりの縄張りに入って来たら、
命有って帰れるだけ有り難く感じるよ」と、悟った。
亮、「あの馬鹿女リンクで玲菜ちゃんに、
手を出そうとするから、浜じゃー 大騒ぎだぜ。
今日だって玲菜ちゃんのファンが、店にランチしに来てその事で、
裕子を非難する客が多く居るのに、浜の玲菜ちゃんのファン連中が、
噂を聞きいて、ファンがあの女をマークしているぜ。
それなのにまだのこのこと、玲菜ちゃんの前に現れるつもりかい。
その内遣られるぜ」と、嘆いた。
健一、「玲菜ちゃんの厄介者は浜でも厄介者扱いで、
何も考えて無いんだろうなあの女は」と、呆れた。
真理、「一心不乱だって玲菜を奪う事に、もうあのモンスターは。
玲菜 一人では太刀打ち出来ない程、
凶暴化してると思う」と、推測した。
竜彦、「玲菜が逃避行を続けざる負えなくなった時から、
凶暴化しているんだよ」と、思い返した。
秋山はコーヒーを入れ終わると、
玲菜がトレイにコーヒーをカップを乗せ、テーブルに配った。
配り終わると真理は、「奴の真相を確かめるか。
確かめるまでも無いが、一度話し合わないといつまでも、
平行線を辿っていても仕方が無い」と、嘆いた。
竜彦、「このままだと裕子も被害に遭うだろう。
それに玲菜もこのままだと生辛い」。
亮、「更にエスカレートするだろうし、裕子のストーカー行為が」。
真理、「この柵を攻略するには、相手の手の内を知るしか無いね。
しかも本音を聞出さなければ、手の打ち用が無い」。
秋山、「確かに裕子は玲菜をどうしたいかは、
こちらも解っているけど、何らかの約束をこちら側が要求してもだ、
それを飲める相手では無いと言う事だ」。
明子、「最初から聞分けが良かったら、
玲菜ちゃんも逃げる必要は無いし、
第一 裕子が当時コーチの指導に従っていれば、オリンピックに出て、
メダルを獲得出来た可能性は、大いに有ったはずだからね」。
健一、「お話させるしか無いな」。
そう言うと皆、納得した様であった。
次の日の午後の事である。
やはり巷では玲菜と裕子の噂は、瞬く間に地元横浜に広がり、
裕子はそんな事はお構い無しの様子で、
どんなにリンクでファンから罵声を浴びせられても、
大滝スケートリンクに、玲菜の演技を見に来ていた。
オーナーの大滝に咎められた為、
今日は関係者と離れた場所で鑑賞していた。
そしてショーを終えて竜彦は玲菜を車に乗せて、
喫茶店サファイアに玲菜を送り届けた。
一時間後、秋山に買い物を頼まれたか、
玲菜は財布を持って店を出て行った。
そして近くのスーパーに立ち寄ろうとした時である。
電柱に隠れていた裕子が、玲菜の背後から玲菜に抱き付き、
背後から玲菜の口を押さえて、そのまま玲菜を引きずる様に、
スーパーの駐車場の奥の、
人目に付かない場所へと、無理矢理玲菜を引きずって行った。
そして玲菜の口を押さえていた、手を退けて玲菜を脅かした。
裕子、「ねえ玲菜、誰のお陰で今があるんだい。
そうだね玲菜、昔は私があんたの母親代わりに、
話し相手になって上げたね。
今はあの若い女が玲菜の話相手か。
昔は私が夜、特別に玲菜をコーチして上げたから、
今あんなに魅了されている事を忘れたのかい」。
玲菜、「忘れたは、私はもうあなたの物ではない。
はっきり言って置くは。
私はもう芸術家勝田 竜彦の婚約者。
そしてスケートのコーチはあなたも調べたと思うけど、
美容室ドルチェのオーナー伊丹 真理。
私はあなたみたいな卑怯者とはおさらばしたいの。
私を使ってフィギュア界に君臨し続け様なんて、
出来る訳がない。
そんな甘い考えでフィギュア界が、
あなたを注目するとは思わない。
あなたは可哀想な人よ。
あなたの当時のコーチであった、
金田 瑠璃子さんの指導を無視して、
自分本位の練習の末 一生フィギュアスケート人生を、
台無しにしてしまった。
長い間、闇の世界をさ迷った挙句。
一人の少女と出合った。
その少女はあなたに忠実で、
その少女以外のチームの指導の際には、
少女はあなたの手と成り足と成った。
だけどあなたは欲が出た。
そしてその少女を仕込んで、メダルを取らせその影には、
元オリンピックの代表選手、
有田 裕子のコーチの賜物と言われたかった。
だけどその少女はあなたに着いて行けなくなり、
あなたの配下から逃れると、必死になって追いかけた。
でも私は気づいたの。
逃げてもあなたは追いかけて来る。
立ち向かうしか方法が無いの。
でも私はあなたに殺されないは。
あなたは私を殺せない。
何故なら完璧な今の私の演技や技に心奪われ、
我が物としたいはず。
そうよ今のあなたの今の気持ちを、ここで言って上げる。
『今の私のコーチが憎い。
玲菜が幼い時は従順に、私に従っていたのに、
今は玲菜が従っている、あの女に虫唾が走る』。
そうでしょう」と、語ると裕子は不気味な顔で笑い出した。
裕子、「はっははは、そうよ流石は元教え子ね。
解っている様ね。
ついでに婚約者も同じ思いよ何が婚約者よ。
そうよあんたを殺さないけど、今あんたの顔に傷を付けてやる。
あの男もあの女も私は、力では敵いそうに無いから、
あんたを苦しめたやる。
素敵な画家にあんなに綺麗に描いて貰って、
それが大好評で、高値で取引されているとは玲菜は薔薇色ね。
女の幸せを全て掴んで置いて、
嬉しそうにリンクで舞って、皆んなに愛されて楽しそう。
そろそろ分けて貰っても、いいんじゃないかしら。
その幸せを私にそうでしょう。
そろそろ私の玲菜に戻りなさいよ。
有り難いわ、私が玲菜を仕込まなくて済んだのだから。
あんなに華麗にそして遊美に、舞える玲菜を作り上げてくれるなんて。
あはははははは、それとね誰があのシューズを作ったか知ってる。
この私よ感謝するのね、あっははははは」と、
笑った所で裕子の首に腕が巻かれた。
真理は裕子の首に腕を巻きながら、「良くやった玲菜、
今のコーチから褒めて使わす。
さて本音を吐いて頂いて有難う、有田 裕子さん。
それでお約束が有りましてね。
あんたが作った玲菜のシューズの事なんだけど。
だからどうだって言うんだ。
あんたは会社で仕事をする事が義務、
玲菜は注文したシューズを履くのが義務。
金払って作って貰ったんだから、つべこべ言うな」と、
激怒すると、徐々に裕子の首を絞めて行った。
すると裕子は後ろから、
抱き付いていた玲菜の手を放して行った。
真理、「それで私や竜彦には力で敵いそうも無いから、
玲菜を脅かすのかい。
気に入らないね。
更に今の玲菜のコーチには、虫唾が走るくらい嫌いだとか。
それは認めてる様だね」と、尋ねると。
裕子は必死にもがきながら、
「あ、あんたは美容室のオーナーでしょう。
評判良いみたいだから、
悪い評判付いたらどうするつもり」と、脅かすと真理は、
「ほほー、力では敵わないけど、口は達者と来てる様だ。
元々浜のワル代表ですが、
その伊丹 真理が美容室を開いたで評判でしてね。
今更何を言うのかと思えば、
悪名評判デビューはもうとっくに果たしてますが。
でもあんたちょっと抜けてるね。
あんたが浜に現れてから今まで、
一人で玲菜を歩かせた事が無いのに、
今日に限って一人でチョロチョロ、
買い物に行かせる訳が無いだろう。
必ず明子さんが付いて来て買い物するのに、
今日に限って一人で買い物に、出たと言う考えが甘いんだよ。
それで、そろそろ私の玲菜に戻って欲しい。
私にも今の玲菜の幸せを分けて欲しい。
何故なら玲菜の今が有るのは、
私のお陰と恩を着せている事をネタに脅かす。
健一全てVTRに納めたか」と、
叫ぶと健一は車の陰に隠れていて、
車の陰からビデオカメラを持って出て来た。
健一、「ばっちりだ」と、告げると真理は、
「まだVTR回してよ、これでは証拠不十分だから」と、
告げると健一はVTRを持ちながら、OKサインを出した。
真理、「今この状態は、
正当防衛を主張しているけど承知願いたい。
それで聞分けが無いあんたに、
一人立会人を置いて玲菜とお話して欲しいが、
落ち着いて話がしたい。
今首を絞めているのは、あんたが突然暴れ出して、
玲菜の顔を殴る恐れが有るからだ、
その証拠もこのVTRに収めてある。
どうでしょうか」と、尋ねると苦し紛れに裕子は、
数回小刻みに頷いた。
すると真理は裕子の首から腕を解いた。
そして夜になると裕子は、指定された場所に現れた。
三人で静かに話せる場所、
そこは紛れもなく大滝スケートリンクであった。
玲菜はリンクのベンチに座り、俯いていた。
そこに竜彦が立っていた。
裕子はそっと二人の前に歩いて行った。
竜彦はその姿を見て玲菜が座っている、
ベンチのその横に腰掛ける様指示した。
裕子はそっと玲菜の横に腰掛けた。
そして竜彦が切り出した。
竜彦、「真理から聞きました、昼間のあなたの話を。
玲菜に婚約者が出来た事が、あなたは許し難い様だ。
ここで俺達の出会いを簡単に説明します。
玲菜はあなたから逃れて横浜に辿り付きました。
そして住居と仕事を確保して、
スケートを行う事はもう断念していました。
あなたが追いかけてくる恐怖に駆られて、
スケートはトラウマになりました。
ですが数ヶ月の後、街を散歩していると、
たまたま寂れた体育館の様な建物を見付け、
近寄って見ると、
格安のスケートリンクだと言う事が判明しました。
これも玲菜の運命かと思います。
最初はこうして場内に入場しても、
ベンチに座り俯いているだけでした。
でも彼女はここの掃除係りのおじさんに、
事情を説明するとおじさんに励まされて、
徐々にスケートを再開し始めました。
ですが彼女はその時は、華麗な滑りは出来ませんでした。
そこに偶然俺が現れ玲菜がリンクで転んだ所を、
俺が手を差し伸べました。
その瞬間、お互いの心に恋が芽生えました。
些細事ですが、俺と玲菜はお互いに愛情に飢えていました。
そして恋に落ちた。
俺が恋に落ちただけでは無く、
玲菜は俺の知り合いにも誠実な態度で対応して、
玲菜のお陰で俺の仲間達は、幸に成って行きました。
玲菜一人、 俺の仲間に加えただけで、
今俺の仲間は皆笑顔が絶えません。
そして横浜の人々にも笑顔を与えました。
この寂れ行く世の中に、人々に笑顔を咲かせた玲菜は、
年齢関係無く玲菜を慕い、今このリンクに花を咲かせています。
もうあなただけの玲菜では無い、横浜市民皆のアイドル。
伝説のやんちゃな妖精、アイスエルフィンに成った」。
話終えると沈黙の時が流れた。
そして玲菜は重い口を開いた。
玲菜、「ずっとこの土地に来ても、竜彦君と暮らしていても、
あなたが追いかけて来る恐怖に駆られました。
でも私まだ少しだけ、私はあなたに愛情が有るの。
それは竜彦君も理解してくれている。
この事を私の口から言う様にと、竜彦君から言われたの。
本当の気持ちを伝える様にと」。
竜彦、「ここでお互いの要求を交わしましょう。
僕達はあなたの行為に対して、大変迷惑をしています。
ですが確かにあなたにも言い分がある。
それは玲菜が幼い時から思春期を迎えるまでの間、
玲菜の母親が遅く帰る事を不便に思ったあなたは、
母親代わりに話し相手になって上げた。
無論コーチとして玲菜のスケートの才能を、
伸ばした人物で有る事は紛れも無い事実です。
ですが玲菜はあなたの母でも無ければ、
今はコーチでも無い。
事実現時点で、玲菜はあなたの事をコーチとして認めて無い。
そして今日の脅迫行為、それに今までのコーチとしての過失。
異常なまでのストーカー行為これは全て、立証出来る犯罪行為だ。
無論これからあなたがこの、犯罪行為が激化する事が有れば、
告訴いたします。
ですが玲菜のコーチとしてでは無く、玲菜のスケートの基礎を指導した、
第一人者としてあなたを称え、フィギュア界に強くアピールし、
もう一度優秀なコーチとして、
新たに生徒を呼ぶ手立ても、我々は行う事が出来ます。
その代わり我々には金輪際、付き纏わない事を約束する。
どうでしょうか」と、答えると裕子は何も反応が無かった。
すると急に裕子は玲菜の手を掴んで、
玲菜も一緒に強制的に立ち上がらせ、玲菜を羽交い絞めにして、
ポケットから果物ナイフを取り出すと、
それを玲菜の首に宛がった。
裕子、「この子を殺す。
この場から出て行き来な」と、
脅迫すると竜彦は、「殺せないよあんたには」と、告げた。
裕子は急に感情的になり、「なに言ってるのよ、
あんたの大事な婚約者に、ナイフを突き付けているのよ」と、
怒鳴りつけると竜彦は落ち着いた顔で、
「玲菜を殺せば、あんたのスケート人生は終わるんだ。
スケート人生を歩みたいから、
今こうして玲菜を追いかけているんだろ」と、
忠告すると玲菜も感情的になり、「私を殺せばいいわ。
殺せばあなたも殺される。
竜彦君は私を愛してる。
人生の全てを私に捧げてる。
私は解るの抱かれた時から、私を真剣に愛する眼差しは、
偽りの無い瞳だった。
私も竜彦君もお互い全てを捧げてる」と、
答えると更に興奮する裕子は、「うるさい玲菜。
この男はねえ、あんたを使って金儲けを企んでいるんだ」と、激怒した。
玲菜は、「そんな事はないわ。
私を描きその作品の報酬の半分は、私の貯金通帳に入れてくれるの。
私の為に私を描いて私を補ってくれる」。
すると竜彦は、ポケットに手を入れて笑いながら。
竜彦、「あははは、お笑い種だな。
今のあんたのその言葉に何も説得力が無い。
確かに俺は玲菜を利用して、更なるアーチストの成功を収めている。
だがもう少し深く考えて欲しい。
玲菜がスケートリンクで舞って、それを描く俺がいる。
その作品を出展すれば、この絵のモデルは誰だと人々は興味を持つ。
そこまで言えば理解出来るだろう。
あんただってここに来れたのも、
美術館で玲菜の可憐な姿の絵を見たからだ。
今までとは違い、あんたが見た絵は今まで目にした事も無い、
優雅で美しく舞う妖精に成っ玲菜だ。
それに惹かれ慌ててここに来ると、
描かれていた絵よりも遥かに可憐に舞い上がる、
玲菜の姿を見て心引かれた。
これであえて玲菜を拘束して、技を磨かせる手間が省けるから、
暴力を振るわず玲菜を脅かして、今直ぐにでも我が物とし、
オリンピック候補として出場させれば、
確実に今後の冬季オリンピックで、
金メダルが取れると確信しているはずだ。
俺はそこが狙いだった。
玲菜を最悪あんたに連れ去られた時に、
あんたに玲菜を傷つけさせない為には、
これが一番最高のな手だ。
それと玲菜があんたから、独立心を植え付ける為には、
あんたが指導して来た時よりも、我々が玲菜を指導した方が、
玲菜は技を極める事が出来る証を、玲菜に示したかったからだ。
あんたには出来なかった事を、
我々が実現出来たと言う証明をな」と、語り終えると。
奇声を上げる様な声で、「やめて、やめてよ。
あ、あんあたは利口な男だと認めるわ。
私はこの子を折檻し続けても言い聞かせて練習させて、
出場させるつもりでこの土地に来たわ。
その手間を省いてくれた事に感謝するけど、
出し抜かれていたなんて思わなかった。
でもこの子を頂くわ」と、玲菜を羽交い絞めにしながら、
じりじり後ろに下がると、
竜彦は二人の前に歩き出し、裕子を睨んで玲菜の首に宛がっている、
ナイフを持っている腕を掴み、
じりじりと力を掛けて、玲菜の首から放して行った。
もがく裕子は目を瞑り、引き放される腕に力を目いっぱい掛けたが、
竜彦の腕力には敵わず。
遭えなく裕子は手首を返され、背中にその腕を回された。
その瞬間ナイフを放しナイフは床に落ちた。
そして苦しむ裕子に竜彦は、「あんたはこの子を殺せない。
俺はあんたを殺せるが、玲菜もあんたを殺す事が出来る。
最悪な事態を招きたく無ければ、もう少し利口に振舞うんだな」と、
告げると裕子は泣きながら、「この子が居なければ、
私は玲菜以外の生徒をコーチが出来ないの。
私は生徒に基礎を教える腕はないの。
この子が生徒にスケートの基礎を教え込み、
基礎が出来た段階で後は私が技を磨かせる。
型を作るのは玲菜で、その型に磨きを掛けるのが私だった。
玲菜はカナダでニ歳からスケートを習い、
私が始めてこの子のコーチを担当した時は
十歳でもう既に型が出来ていた。
型が出来上がった所に、私が個人的にコーチを担当した。
私は玲菜がある程度まで、
スケート技術を修得した生徒以外は、教えられないの。
だから...」。
竜彦、「だから何だ。
最初から玲菜にそうはっきりと言えば、
こんな事にはならないはずだ。
あんたは常に命令する側に立ちたいだけだ。
それを玲菜に悟られたくはなかった。
いや、玲菜を脅かしてでも、立場が逆転するのを恐れただけだ」。
裕子、「返してよ私の玲菜を、私の元に戻してよ。
この子が居なければ、私はスケート人生を歩めない」。
玲菜、「私はあなたの元にはもう戻らない。
ずっと私を苦しめて来た。
幾度と無く私が編み出した神業で、あの子をあなたが殺してから、
私は自分を責めたけど、あなたはまったく眼中に無かった。
あの子が死んでもあなたは、
チームの誰かがメダルを獲得する事に拘ってた。
誰に責められ様が誰に中傷され様が、
あの子の死など、これっぽっちも敬う気配など無かった。
今でもあなたは私にメダルを取らせ、その先もそのずっと先も、
メダルを取り続けるまで私を放さない。
あなたの目的はたった一つ、自分が達成出来なかったメダル獲得を、
私をあなたの生き写しと見做し、
フィギュア界にその事を強くアピールして、
地位を得る事が目的よ」と、激怒した。
そして後ろに回した裕子の手を解いた竜彦は、苦しむ裕子を見詰めていた。
すると羽交い絞めにされていた、玲菜を抱き寄せた。
裕子は息を荒げて、「くそ、こんな利巧な男を物にしやがって。
今までの苦労が台無しだ」そう言って玲菜を睨んだ。
その時だった。
玲菜は竜彦から放れて、思いっきり手を振りかぶって、
裕子の頬を張り倒した。
何度も何度も張り倒し、挙句は裕子が倒れこんだ所で馬乗りになり、
裕子を張り倒し続けた。
そして玲菜は、「この悪魔の様な心を持つ、元日本代表のスケート選手。
あんたはもう、 一度は死んだ既に今は死神よ。
私が殺してやる」と、言って無我夢中で裕子の首を絞める玲菜。
苦しむ裕子は玲菜の手を振り解こうと、必死に玲菜の腕を持っていた。
しばらくそのままにして置いた竜彦であったが、
裕子が落ちる寸前、玲菜の肩に手を置くと我に返る玲菜は、
裕子の締めている首を緩めて行った。
そして馬乗りになった裕子の体から立ち上がり、
裕子を見詰めて放心状態であった。
そして大扉が開かれて健一、真理、大滝が大扉から出て来た。
意識を取り戻す裕子は上半身を起こして、
座り込んでやはり放心状態であった。
真理、「玲菜それでいいんだ。
今度は玲菜があんたに対するの恐怖心から、
恨みに変わったよ裕子さん」と、
告げると健一、「二階席から撮影させて貰いました。
これであなたが法廷でまったく、
不利に成る事は有りません」と、裕子に伝えた。
大滝、「どうかね、この子の縄張りで、
この子に殺されそうになる気持ちは。
これからもっと、地獄を味わう事になるだろうが、
馬鹿なあんたにせめてもの、忠告をさせて貰うよ」と、告げた。
竜彦、「裕子さんあなたは気づいていない様だが、
浜ではあんたをマークしている、玲菜の熱狂的玲菜のファンが居るんだ。
怪我をしない内に、出直して来るんだな名古屋に帰って、
瑠璃子さんと相談して」と、忠告すると今度は真理が、
「玲菜はこの横浜のドンに惚れられた女なんだ。
そのドンが基から馬鹿なら、もうとっくに今頃死んでるさ。
あんたがそのドンの事を、今更利巧な奴だと気づいても、
そのドンに喧嘩を売れば、
その結末はどうなるか、自分自身で考える事だね」と、やはり忠告した。
そして玲菜が呟いた、「もう止めようよ裕子さん。
こんな鬼ごっこ楽しくないよ。
あの時遣ったスケートリンクの、鬼ごっこの方が楽しかったよ。
皆んなでスケートの休憩時間に子供達と行った、
鬼ごっことは訳が違うんだよ。
取り返しが付かない所まで来てしまった鬼は、
惨い退治のされかたをされてしまうよ」と、
忠告すると裕子は立ち上がり何も言わずに、
大扉に歩いて行きフロアーから出て行った。
それを見た竜彦は、「あの女はやはり、
地獄に落ちないと解らない様だな」と、悟った。
そして皆、溜息を付いて黙り込むのであった。
オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125/folder/1536491.html




