表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Go bud Souls - 屍人を喰う者 -  作者: 西郷 岳晴
ラスティの章
4/4

□ ファースト・バトル

 ラスティが降り立ったのは、小学校の屋上だった。

 四階建ての校舎の頂上で、少年は使用済みのパラシュートを切り離す。本来なら地上から徐々に制圧したいところなのだが、不用意に校庭に降り立ってゾンビに囲まれるよりもマシと思い、少年は屋上に足を踏み下ろした。救助者をヘリに収容することを考えても、まず屋上を確保するメリットは十分だろう。

 とはいえ、周辺の濃い闇と同調するように、屋上もまた不気味なほど静かだった。幸いにも屋上にはゾンビの姿は無く、少年は周囲の安全を確認した後、屋上から校舎内部へと繋がる灰色のドアへと手をかけた――その時だった。

「グオオオオオッ!」

 という人間の声とはかけ離れた叫びと共に、ドアが内部から派手に突き破られる。そして、そのドアがまるで大砲のような勢いで少年に向かってきた。

「マジかよっ!」

 とっさに少年はドアを腕で払いのけて難を逃れたが、すぐさまゾンビが立て続けのような形で襲い掛かってくる。ボロボロの衣服に、ところどころ腐った体、白目をむいた眼球。もともとは人間だった生物とはいえ、その魂は生前のものから遠くかけ離れている。だが、こと戦闘力に関してはベースとなった人間よりも遥かに高い能力を保持している。その理由の一つが、不自然に発達した爪だ。ゾンビとなった人間の爪は、十五センチほどの長さにまで不自然に発達し、ナイフと鉤爪を合わせたような鋭い刃物へと変貌する。

「グオオオッ!」

 ゾンビは右腕を高く振り上げ、勢い良く少年の頭めがけてその爪を振り下ろす。まともに食らえば命は無い。しかし、

「ハッ!」

「!?」

 ラスティは、振り下ろされたゾンビの右腕を抱え込み、そのまま一本背負いを見舞った。ゾンビは地面と水平に飛びながら、落下防止用のフェンスへと派手な音を立てて突っ込む。

「グオ……オオオ……」

 だが、ゾンビはフラフラしながらも体を起こすと、またしても○○に向かって突っ込んでくる。今度はその爪を突き伸ばして少年の心臓を狙ってきた。

 ――ザシュ! 

 という人の肉が裂ける音と共に鮮血が飛び散る。鋭い爪は確かに心臓を捉えた。しかし、

「惜しかったな」

 心臓を捉えたのは、ゾンビの爪ではなく、それと同じように鋭く伸びたラスティの爪だった。ラスティは、ゾンビの爪を数センチでかわした後、ボクシングで言うクロスカウンターのように腕を交差させ、自らの爪をゾンビの心臓に叩き込んだ。鮮血が黒いスニーキングスーツを染めると、

「ウ……ゴ……」

 ゾンビは小さく断末魔の声を上げて床に伏した。灰色のコンクリートに血だまりができ、心臓から引き抜いた少年の爪には、乾き切らない血がベットリと付いていた。

「悪いな。その爪はお前だけの専売特許ってわけじゃないんだ」

 したたるゾンビの血を舌で舐め取った後、少年の爪は普通の人間の長さへと戻る。いや、本人としては元に戻したと言ったほうが感覚的には近い。これがゾンビキラーである少年の持つ能力の一つである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ