異世界召喚の代償〜世界を救ってくれた勇者が、全人類を宇宙戦争に強制連行しようとしています〜
世界は救われた。
たぶん
大陸南端にある王国テッセリア。
数年前に大陸の北端に突如出現した魔王とその軍勢は瞬く間に周囲の小国を飲み込んで勢力を拡大し、信仰の中心であった神国を粉砕、大陸最大の国であった帝国を陥れ、遠く離れたこの国の王都すら包囲しつつあった。
王城で次々に都市が陥落した報告を受けることに倦みながら、テッセリア王は打開策を血眼になって探していた。
王家に伝わる古文書をにらみつけて魔物への対抗策を練り、守りを固めるべく陣形図に手を入れ、これがどれほど意味があることなのかと自嘲し、顔を歪めた。
遠くに魔王軍の喊声が聞こえ、王の顔にさらなる影が差したとき、突然宰相が玉座の間に駆け込んできた。
「陛下!神殿より新たな知らせが!」
まだ息も荒い宰相に、古文書から顔を上げた王が言う。
「神殿が今更どうしたというのじゃ。やつらの神託を受けて戦った神国も帝国も今や焼け野原。もはや女神の奇跡にすがるしかないと引きこもっておったろうに。」
「その女神より、異世界より勇者を召喚して魔王を討伐させよとの神託が下ったと。」
「異世界?勇者?なんじゃそれは?」
「ここではない違う世界から勇者という異能を持った者を召喚するのだそうです。
そのものが圧倒的な力により王国を救うであろうと。召喚用の魔法陣と儀式を執り行う神官が今ここに向かっています。陛下、奇跡が起きるかもしれません。」
「神官どもの戯言であろう、やつらもついに狂いよったか。」
「陛下、女神が顕現したのです。私も遠目にその姿を見ました。これは女神の言葉なのです。」
「なんと、そのようなことが……。なんとも胡散臭い話じゃが、どうせこのままではこの国は亡ぶのじゃ、その勇者とやらに賭けてやるとしようか。」
神託を受けた神官たちにより半刻もしないうちに召喚の儀式の準備が整い、玉座の間に描かれた魔法陣が詠唱に合わせて光り始めた。
やがて光は強まり、目を開けていられないほど眩い光が迸ると、そこには奇妙な服装に身を包んだ男…勇者が立っていた。
テッセリア王が問う。
「そなたが勇者か。名を名乗られよ。」
勇者は答えるでもなく一人つぶやいた。
「ここは……そうか私は死んだのか、計画はうまくいっているようだな。」
「何と?」
不審げな王に向き直って男は続ける。
「私はサトシ・カワムラと申します。あなたたちの国を脅威から救うために勇者として異世界より参上いたしました。」
その言葉に王国の面々から安堵のため息と歓声が上がる。
「余はこのテッセリア王国の王である。勇者サトシ・カワムラよ、そなたの献身に感謝する。
女神によるとそなたは異能を持っているとか。どうか余にその力を示してほしい。」
「わかりました、ちょうどいまここから見える、この町の城壁を取り囲む軍勢ですが、あれが現在の敵ということで良いですか?」
王都が包囲されているとはいえ敵はまだ遠く、丘の上に立つ王城からは砂粒ほどにしか見えない。
「よく見えるものじゃな。その通り。この町はあれら魔王軍に包囲されておる。」
王が肯定するや否や勇者の手から白熱光線が放出され、魔王軍を焼き尽くした。
唖然とする王に男は言う。
「これでご信頼いただけますでしょうか?見える範囲の敵は焼いておきましたが。」
「そ、それでこそ女神が遣わした勇者である。
勇者よ、その力で大陸北端の魔王を討つのじゃ。褒美は望むようにとらせる。」
「ありがとうございます。お受けいたします。
ところで地図はありますか?魔王の正確な座標…場所が知りたいのです。」
「すぐに持ってこさせよう。宰相!持ってくるのじゃ。」
宰相が再び走らされ、届いた地図をしばらく眺めた後、男は言う。
「手書きの大雑把な地図ですが……まあ、大陸の北端ごと吹き飛ばせば確実ですね」
勇者の手が北に向けて伸ばされると、再び白熱光線が放出され、魔王城は魔王もろとも蒸発した。
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西暦5752年、地球を中心とする銀河帝国を築いた人類は突如外宇宙から侵略してきた珪素生物との戦争を続けていた。
宇宙空間を生身で動き回る頑丈な体を持ち、人類の総数の数万倍と思われる戦力を差し向ける珪素生物に対して、人類は科学のほかに近傍の時空間にある異世界から取り入れた魔法、呪法、陰陽道など様々な技術を駆使して対抗していた。
その技術の高まりは前線のエースであれば一人で星を砕くこともできるほどに至っている。
しかし、どれほど技術的に優位に立とうとも数が足りない。
特に主力となる魔法を操る能力のあるものは少なく、外世界から取り入れる必要があった。
外世界人の探索も行われたが、隣接宇宙群の中の星を一つずつ見て、人がいる星で勧誘を行うなどできるはずがない。
候補の星はそれこそ星の数ほどあり、それぞれの星が惑星を数個持っている。
人がいる惑星はその中に一つか二つしかないのだ。
ただでさえ人手不足なのにそんなことをしている余裕はない。
そこで、銀河帝国首脳部はかつて神と呼ばれていた上位存在に対して次のような噂を流布した。
魔王のような手の付けられない災害に苦しむ世界に、勇者という異能を持つものを召喚することで、その世界を救うことができる、異世界召喚という技術があると。
噂とともに戦死した銀河帝国の兵士が呼び出されるような魔法陣と儀式もセットで流出させたのだ。
人のいい神々は自分の民が困っていたらこの儀式をするように神託を下すだろう。
そうして呼び出された銀河帝国の兵士が何をするかも知らずに…
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魔王が消滅したことを確認するのにそれほど時間は必要なかった。
大気に張りつめていた重圧が消失したのを誰もが感じていたし、作物は元気を取り戻し、水は澄み渡った。
宴が終わり、夜が明け、朝日に照らされて和らいだ顔でテッセリア王が問う。
「勇者よ、そなたの力がこれほどとは思わなんだ。魔王討伐の対価として約束通り褒美を与えよう。
望むものを言うがよい。
もちろんこの国の王位でも良い。大陸全体の帝位を望んでも反対するものはおらんじゃろう。」
勇者は笑顔で答える。
「ありがとうございます陛下。それでは恐れながら申し上げます。
この星の全人類に対して、世界座標(0, 0, 0, 5752)で発生している銀河帝国と珪素生物の戦争への参戦を要求します。指揮は私、銀河帝国大佐サトシ・カワムラが取ることとします。」
目を白黒させる王に対してこの世界の救世主であった者は続ける。
「この世界はやや基準世界から遠いようですが……そうですね、あの太陽を全てエネルギーに変換すれば何とか地球までいけるでしょう。皆様を運ぶコールドスリープ設備と宇宙船の建造はお任せください。」
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初投稿でいろいろ未熟ですが、何卒よろしくお願いします。




