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後継から外れた小説家令嬢の婚約者は愛するものがいるらしい

作者: 桃兎
掲載日:2026/06/11

ゆるふわ設定


視点がころころ変わるので読みにくかったらすみません。


その男は婚約者に恋をしていた。

けれども愛したのは別のものだった。

悩みに悩んだ末に彼女に打ち明けた。それが終わりになると思っていたから、悲痛な心の痛みに耐えつつ……




リースベット・マリンドは15歳の夏に婚約をした。

伯爵家の長女として生まれ、ありとあらゆる後継教育を頭に畳み込み、王都の高等学園に入学した。

婿取りには慎重になっていたため春の段階では婚約者はいなかった。

それが覆るかもしれないとリースベットは知っていた。


リースベットの出産後に体調を崩した母はその後に子を授からなかった。

父も後継はリースベットでいいと子作りには非協力的であったため、リースベットには後継者としての道以外なかった。だから父の高すぎる要求にも無理難題にも努力でこなしてきた。

リースベットの笑顔は日に日に消えていった。母は心痛から父と次第に距離を取るようになった。






ここまではよくある貴族の家庭での話である。


しかし現実は違うこともままある。

実の所、リースベットは女性らしい社交も、刺繍も、甘いスイーツも、好きな殿方との恋愛話も、全てに興味がなかった。

だから、領地経営さえ出来ればそれらが免除される現状に非常に満足していた。

リースベットは無類の本好きで、勉強も得意である。しかし女性には求められないスキルばかりだった。

後継者として厳しく育てられた、そうは言っても母は女性の必要とするスキルを教えようとしたし、初めはリースベットだってやってみようと努力をした。

しかし、どうしても上手くいかない。心も躍らない。社交の笑顔での応酬は恐怖すら感じた。


だから現状に非常に満足していた。しかし、それだけでは人生の彩がない。

だから魔が差したのだ。


本好きが行き過ぎて著者になったのだ。

当時まだ13歳の事である。


そして予想外にもリースベットの出した本はヒットした。

ただし大ヒットという訳では無い。知る人ぞ知る本というものだった。

小説をメインに書いているがジャンルは多岐に渡る。


貴族女性が物書きと言うのは外聞が悪い。

だから偽名で出版社に送ったところ採用され偽名のまま小説家になった。

自分の作品には愛情があり我が子のように思っているほどリースベットはのめり込んだ。

表向きは後継教育の勉強として机に向かった。


そのように愛する作品を我が家の図書室に置いてしまう。

リースベットの書く小説のジャンルはさまざまだが恋愛小説も存在した。




リースベットの持っている本の中で図書室に置いたのが一番売れた恋愛小説だった。

そしてそれをたまたま手にした母が、ときめきを覚えてしまった。

少女のような顔をした母に、今でも愛してやまない父は、愛を囁いた。


実は母の読んだ小説を父もまた目にしていた……


そんな両親の間に新しい命が宿るのは当然だったのか……運命のいたずらか……


高等学園に入った翌週に生まれた赤子は、あろうことか男児だった。




ここに来てリースベットは突然後継者ではなく、嫁入り先を探さなくてはならなくなった……

しかし有力な子息にはほぼ婚約者がいる。




(あーーー終わりましたね、これは……)



リースベットの正直な感想はこれである。

終わったのは自分の貴族令嬢としての地位……ではない。

リースベットの家は裕福であるし、有力ではない下位の貴族であれば喜んで婚約を申し出るだろう。

しかし、そうすればどうなるか。

そう考えた時にリースベットの脳裏には『小説家リーヌス』の終わりが見えた。

リーヌスはリースベットの偽名である。


後継者としての勉強と称して堂々と執筆していたのにそれは不可能となるし、婚姻後もその機会はないだろう。



(……終わりました。せめて、せめて今の連載は終わらせたいのに!!)



初めに思ったのはこれである。













侯爵令息であるクルト・アッドウィルは17歳の好青年と呼ばれていた。しかしクルトには婚約者がいない。

女性からの打診もあったし、両親からも急かされていたが、『高等学園卒業までには見つけます。』と避け続けていた。


クルトは愛するものがあった。

それはクルトからすれば何よりも美しいものだった。

運命の出会いだとすればそれは15の時だろう。

うっそりとそれに手を伸ばす。


『会ったこともない彼』に想いを馳せる。

会ったこともないのにと言われるかもしれないが、クルトは彼の為ならば命をも捨てられる。

それくらいに想っていた。


代々宰相の家系でクルトも優秀な逸材と称されていた。

事実クルトは天才だ。

1度習えばすぐに覚えるし応用も簡単だった。

貴公子とも呼ばれるほど見目もよく、クルトもそれを自覚していた。

だから15になる前は『自分にとって有益な娘』であれば誰でもいいと考えていた。

正直、クルトは性格がよくない。

性格が良くては国は動かせない。

だからこれでいいと思っていた。



あの日までは……




ある物を偶然に手にした。それは特別なものではなかった。

見合いの相手が忘れていったそれを手に取って、なんとなく見てしまった。

それが沼だった。




クルトは落ちた。底なしの沼に。



それからのクルトは無駄にいい頭をフル回転させ婚約を先延ばしにした。

彼を探すために。


彼を保護し、安全に過ごしてもらえれば、安心して国を回せる。

彼の笑顔はきっと『あれ』にも影響があるだろうから、幸せが最優先だ。


『恋ではない』

紛うことなき感情だがこれは恋ではない。

確信があった。

彼を手に入れたいとは思わない。

それは事実だったし、気持ちははっきりとしていた。




彼の消息は掴めない。その上、彼への手がかりは17の春から途絶えた。

足掻いて探して季節が夏になった頃、クルトは抜け殻のようになっていた。

絶望の中、そろそろ婚約者をと言われ、同年代で有力な令嬢は居ないだろうと思っていた所に、後継者から外れたリースベットの存在が浮き彫りとなった。

リースベットの婚約者探しの時期と、クルトの焦燥感からの隙を、これ幸いと両親につかれ、あれよあれよと言う前に婚約は成立してしまった。



初めは自分のしくじりに苛立っていたが、リースベットは婚約者としての関わりを押し付けてこない。

それどころかクルトに提案してきた。


「アッドウィル侯爵令息様、もしもお嫌でしたら断っていただいても良いのですが……良ければ婚約者として会っている時間の半分は自由時間に致しませんか?」


真剣に告げられたこの言葉。

クルトには裏があると思っても抗い難い誘いだった。












リーヌスという平民男性として本を出しているリースベットにとってクルトは理想的な婚約者だった。

茶会の数も少ない。デートにも誘ってこない。なんならうっかり図書館に行きたいと言ってしまったら連れていってくれた。



『もしやアッドウィル侯爵令息様にとって、この婚約は不本意なのでは??』


そう思ったら即座に行動していた。


「アッドウィル侯爵令息様、もしもお嫌でしたら断っていただいても良いのですが……良ければ婚約者として会っている時間の半分は自由時間に致しませんか?」


クルトは一瞬動きを止めたが、リースベットを見ることも無く『良いだろう』と答えてくれた。


普通の令嬢ならば涙するところ、リースベットは大いに喜んだ。


(婚約者として会っているはずの時間の半分、これを執筆に当てられます!!)


と、心でガッツポーズさえしていた。



緩やかな時間をクルトと過ごし、趣味の読書も認められ、その上、執筆の時間までくれる婚約者に恋心は抱かぬとも感謝し、親愛という感情は生まれていた。


結婚したとしても、放置してくれるかも。


などという失礼な事まで思っていた。



だから、予想外だった。

クルトが頭を下げている現状が……









(え、どういうことですか??)


混乱していてもリースベットは表情に出ない。

作り笑いが下手で、苦肉の策として無表情を心がけていたら癖になってしまい、現在は無表情がデフォルトである。

そのため、クルトが深く頭を下げ続けている今も引くつく頬は別として無表情だけは保っていた。



「マリンド伯爵令嬢、私は今から不誠実な事を言う。婚約を解消するといえば私は全力で叶えよう。ただひとつだけ勘違いしないで貰いたい。君には何も瑕疵はない。これは私の心の問題なのだ」



前置きとして告げられ、この時点でとんでもなく驚いていた。

無表情のため気が付かれなかったけれども……



「その、私には愛するものがあるのだ。君を大事に想っているのは確かなのだが、どうしても忘れられない……一時は何も音沙汰がなくこのまま忘れゆくことになると思っていた。君のように聡明な女性とならば過去の愛を忘れられるとも思った。しかし、再度目にすればダメだった……私はやはり愛しているようなのだ……君以外を」



すまない。と頭を下げられた。

これは婚約解消して欲しいという懇願なのか、それとも浮気しているという白状なのか、はたまた愛人を認めるように願い出ているのか。

リースベットには判断できなかった。


「それは、その」



構わないのですが、と続けていいものか悩む。結局言葉には出来ず、他の言葉に変換した。


「婚約を解消したいという申し出でしょうか?」



ふるふると首を横に振られた。


どういうことなのですか???

こちらの混乱をよそにクルトは頭を下げたままだった。


「その、アッドウィル侯爵令息様はどうしたいのでしょうか?」


クルトはやはり頭を下げたまま告げた。


「出来れば君と結婚はしたい。だが、例え君以外との触れ合いをしないとは言え心に別のものを住まわせている男など不愉快だろう……と思ったのだ」



ここで混乱は大きく複雑になった。

本当にどういうことか教えてくださいまし????と













クルトの予想を裏切りリースベットは貴族令嬢らしいとは言えない少女だった。

大人しく可愛らしいが社交が苦手なようで決して作り笑いをしない。

そして言葉もまっすぐで嫌味なども言わない。


次期宰相と言われているクルトには有難いものだった。気が抜ける唯一の存在になっていると自覚した時にはもう恋に落ちていた。


趣味の読書もあらゆる分野に精通しており、会話は有意義で楽しい。

しかもお互いの意見交換の後には微かに微笑むのだ。

決して作り笑いをしないリースベットの笑みは癒しになっていた。



このままリースベットに焦がれ、婚姻まですれば幸せになれるだろう。


そんな思いも胸に広がっていた。

そしてそれと同時に後ろめたさが生まれた。


それでもまだ自分は『彼』を探している。

ということに



数ヶ月という時間をかけ、諦めよう。そう思った矢先だった。

彼の痕跡が見つかった。


見てしまえばもう無理だった。

夢中になった。



一瞬とはいえリースベットを忘れるほどに……




そこでリースベットに真実を打ち明けようと思い、頭を下げた。





「あの、よく状況が飲み込めません。今は私も混乱しておりますので、後日お話いたしましょう?よろしいでしょうか?」


リースベットの言葉に頷いた。






ここでクルトは大きな見落としに気がついた。


クルトが『彼を探すために費やした時間』は『婚約者との時間』を使っていた。と言うことは、その時間はリースベットにとっては空白の時間である。という事である。



そう思えば今度はリースベットは何をしていたのか、という事しか考えられない。

よくよく考えればリースベットと過ごす時間が癒しだったのは少ない会話や読書に時間を割くことが多かったからで……つまりリースベットにとってクルトは『話を広げてまで引き止めたい相手ではない』という事では。という事にここに来て気がついたのだった。




クルトは愛と恋の前ではポンコツになるらしいと自分を評価した。



「マリンド伯爵令嬢は、婚約を解消するとは言わなかったが、『自分を愛して欲しい』とも言わなかった」



そう気が付けばもうダメだった。



次の婚約者との時間にクルトはリースベットに会いに行った。あらかじめ決めていた『自由時間』に。














リーヌスとしての執筆にはマリンド伯爵家の使用人部屋を使っていた。

この執筆にはメイドのキャルと使用人のルドが関わっていた。

ふたりは夫婦でリースベットに仕えていた。

特にルドがリーヌスのファンだった。故に出版社とのやり取りは彼が担当し、リースベットからキャルが預かった原稿をルドが届け、ルドが受け取った出版社からの手紙はキャルを通してリースベットに届けられた。


この日もリースベットは執筆をしていた。

ルドは仕事に行っていたが、キャルは昼に呼び出す予定でリースベットはひとりで二人の部屋にいた。

夫婦となるふたりの部屋は使用人部屋でも独身の子達とは少し離れた場所にあり、リースベットが見つかったことはない。

出掛けた振りをして部屋で執筆。

リースベットの自由時間はこうして過ぎてゆくはずだった。




執筆業においての痛恨のミスをしてしまったのだ。

インク切れである。

ペン先も寿命だ。そう思えばリースベットの行動は早かった。


見つからないように屋敷を出て万年筆とインクを買いに出たのである。




書きやすそうな万年筆を見つけ、大量のインクを見て、購入を決断したが、執筆しやすさに重点を置いた万年筆は女性用には見えない。さすがに自宅用とは言いにくく、『プレゼント用に包装してください』と告げる。

待ち時間は長くはないが、この時間も無駄に思える。しかし、不審に思われることは避けなければならない。

包装されている間に他の小物を眺める。

次の小説のネタに良さそう。等と思っていると意外と時間が過ぎていく。



「お嬢様、お待たせ致しました。こちらでいかがでしょうか?」


従業員が包装された万年筆を見せてくれて早く帰りたかったリースベットは即座に頷いた。

丁寧に手渡されウキウキと店を出た瞬間視線を感じた気がして視線の方へと振り向くが誰かが見ているようには思えず気のせいか、と、屋敷に戻ろうと歩みを進めた。


数歩、歩いたところで遠くから『お嬢様!!』と呼ばれ顔を上げた。

焦った顔のルドに首を傾げつつ手を上げて『どうしたのですか?』と告げた。


「どうしたではございませんよ。キャルがお嬢様が行方不明と俺のところに泣きながら来たんです。俺も焦ったんですからね」

「あぁ、メモを残すべきでした。……ごめんなさい。これを買いたくて」


告げてから包装された万年筆を見せる。箱に入った上に丁寧なラッピングでなにか分からなかったらしくルドは『これですか?』と箱を手に取った。


「万年筆とインクですよ。まさか切らしてしまうとは。貴族女性が自宅用と言って買う訳にも行きませんからね。こういう形になりました」


リースベットは丁寧な言葉を使う。ルドは慣れている上にこの場にリースベットを知る他のものも居ないから許容しているが普段ならルドが叱責を受ける。

リースベットも立場は理解しているから人目があれば無理して言葉を崩すが素は丁寧な言葉である。



そう、『人目が無ければ問題はない』はずだった。


ルドは若い使用人で、そこそこの見た目で、そのルドの手にはリースベットが購入した『プレゼント』が握られている。


傍目にそう見えるのも理解していなかった。

それは当然の如く本人達にとって事実無根であり、ただの作家とファン、あるいは、雇い主のお嬢様と使用人、という立場でしか無かったからである。

ルドには愛してやまない新妻がいるし、リースベットには婚約者がいる上に今は作家活動が楽しい、こんなふたりに間違いなど有り得ない。

しかし、それは当人しか分からない。


だからその姿を見ていた人影にも注意を払うことはしなかったし、どう見られるかなど意識の範囲外だった。

視線を感じたのが正しく、上手く隠れた人物が誰かを知る努力をすべきだったのかもしれない。














リースベットの姿を確認した瞬間、胸が高なった。文具屋に入るを見て、プレゼントを用意しているのを見て、一瞬期待を寄せてしまった。

もしや、自分への贈り物か。と


しかしその期待は数分で打ち砕かれた。

嬉しそうにプレゼントの入った箱を見ているリースベットは声をかけた平民風の男に当然というようにプレゼントを渡してしまった。


ぐわんぐわんと頭が揺れる感覚がしてリースベットの背中が遠くなっていく。音が消えたような無音の中リースベットの背に手を伸ばすが距離もあり届くはずもなかった。

程なくしてざわめきが戻ってきた。

追うことも呼び止めることも出来なかった。


ふるりと体が震えた。

身勝手な自分に怒りすら込み上げる。

自分は『彼』を追い求めながらリースベットには自分以外を見て欲しくないなど……


そして思い至る。

やはり自分は性格が終わっているのだと。


ふぅ……と息を零す。

『彼』への『才能』に惚れ込んだだけだと思い知ると共に『婚約者』への執念に近い執着心は恋心と呼べるのか分からない。

ただ、決めた。

リースベットを逃がさない、と。

伸ばした手を握りその頭脳で彼女を手に入れる算段を立て始めた。




夏が終わると学生は学園に行く必要がある。

これまでは一線引いていたが夏休み後にクルトは動いた。

タウンハウスに侯爵家の馬車が迎えに来て寝耳に水だったリースベットは少し驚いた表情をのぞかせた。

近くにいる使用人がルドだと気がついてギリッと奥歯が鳴った。

なんとか表情は繕えていたのはリースベットの顔を見れば分かった。

無表情と言うが彼女は嘘が苦手なのだろう。苦肉の策で表情を出さないようにした。そう考えれば、無表情の中に彼女の豊かな表情が見えてきた。

戸惑いがちにクルトを見て、微かに笑みを浮かべた。リースベットがクルトの胸の内を知っていればその表情は出ていない。

そう気がつくと安堵と共に分かって欲しいとも思うのだから恋心とは厄介なものだとクルトは心の中で自嘲的に呟いた。



好きだと伝えるのは簡単だ。けれどリースベットに警戒されようものなら意味が無い。

逃がさない。

そう決めたからには手加減は不要だろう。


「おはよう、マリンド伯爵令嬢。婚約者としての交流が少ないと親から叱りを受けてね。すまないが今日から迎えに来てもいいだろうか?」


そんな言葉に屢叩く彼女が可愛い。


「はい、大丈夫です。無理はなさらないでくださいね」


ふっと微笑む彼女に笑みを返す。

その瞬間ルドを見るが平然としていた。

どういう関係だ?と聞く訳にも行かず、そういえばと言葉を発した。


「君はどこかで見たことがあるな。マリンド伯爵令嬢の専用執事というわけではないんだろう?」


ルドに声をかけると人の良さそうな笑みで返してきた。


「違います。俺……私はお嬢様付きのメイドであるキャルと夫婦なのでお嬢様に付いては居ますが専用執事になれるほどの実力はありませんので」


はは、と頬をかくルドにリースベットが柔らかく微笑む。ぎりぃと奥歯で音がする気がした。


「アッドウィル侯爵令息様に覚えてもらえるなんてルドも出世したんですね」


(俺は、侯爵令息様で、あの男は名前か……)


心中は荒れたものの穏やかに微笑み手を差し伸べた。


「では、行きましょうか。」


それでもエスコートは自分の役割で、この場を譲らなければ彼女の夫になれる。

荒波打つような心境の中、馬車へと乗り込んだ。




少し居心地悪そうに座るリースベットにクルトは笑みをもって制した。

彼女は強い。だからこそ押さえつけても無駄。ならば……


「マリンド伯爵令嬢、少しいいかな?」

「え、はい。如何なさいましたか?」


視線が絡む。胸がうるさい。


「り、リィーと呼んでも良いだろうか?」

「はへ…??あ、し、失礼しました。そうでした。侯爵様に交流を持つよう言われたのでしたね。それでアッドウィル侯爵令息様がいいのでしたらどうぞ」


照れているのか微かに赤い頬にはにかむ彼女は反則級に可愛かった。

ぐっ、と言葉に詰まりかける。


「ありがたい、助かるよ。君もクルトと呼んでくれると嬉しい。愛称を考えてくれてもいいのだけどね」

「え、あ…はい。では、クルト様、と。」


正直拷問のようだった。可愛すぎる彼女の恥ずかしがりながらも自分の名を呼ぶ。触れさえしていないのに心臓が爆音を鳴らしていた。


「ありがとう、リィー」

「い、いえ。クルト様」


タウンハウスから学園まではそう遠くない。そうやって許しを得た名をクルトは馬車から降りても続けた。


『あの』アッドウィル侯爵令息が笑顔で女性をエスコートして、愛称で呼んでいる。


そう噂される事などよく分かっていた。

分かっているからこそ、リースベットに承諾を早々に得たのだ。


「ああ、リィー。帰りも迎えに来るよ。『婚約者』なのだから良いだろう?」

「え、ええ。大丈夫です。ありがとうございます、クルト様」


婚約者というキーワードも広まるはずだ。

そう、リースベットの婚約者はクルトだ。そう再認識すると嬉しさで頬が緩みかけた。



その週末、クルトはリースベットに再び頭を下げることになる。

そして大いにルドに嫉妬するのだが、それはクルトの問題だけではなかったのかもしれない。







毎日の送り迎えで窮屈になるかと思いきや、クルトはリースベットのために毎日図書室へと向かってから帰るという理想の動きでリースベットは大満足していた。

本の虫と呼ばれても、暗いと言われても気にしないがマリンド伯爵家の醜聞になる訳には行かず、リースベットはずっと我慢していた。

それが『クルトの付き添い』ならば問題がないのだ。

目をきらきらと輝かせるとクルトは優しく微笑む。

神か!と言いかけて流石にまずいと本へと向かった。

クルトも本を読みに来たのだからこれで正解のはずである。と、信じて疑わずに……




クルトはリースベットにとって理想の婚約者だった。ずっとそうだった。

少し想いが変わってきた気がして一歩引いた。

そうこれは育ててはならない気持ちだ。

クルトは言っていた『他に愛するもの』が存在すると。


ずきんと胸が痛む気がして、首を横に振る。


(違う、違います。辛いと思った時は……書くに限ります)


リースベットは週末のクルトとの約束をどうしても自由時間にしてほしいと願い出た。


一瞬、本当に瞬く程の時間の後、ゆるりと良いよと返事を貰った。

あの一瞬が妙に違和感を覚えて居心地悪かったけれど、リースベットは気のせいだと自分に言い聞かせた。



週末になれば、リースベットはいつものように一度屋敷を出たあとこっそりと使用人部屋へと向かった。

離れの扉を開けるとキャルとルドが出迎えてくれた。

リースベットの専属と言えど休日はある。その休日にも付き合わせて申し訳ないなとは思うがキャルもルドも気にした様子はなかった。


「あ、お嬢様、これ出版社から……」


差し出された手紙と共に聞こえた出版社という単語に手を伸ばし受け取ろうとした瞬間だった。


ガチャリとドアノブが鳴った。ギィっと扉が開いて見えた姿に驚いて肩が震えた。





「な、なな、なぜここに」


焦るルドの声にリースベットは少し冷静になった。

ルドの手から手紙を抜き取り、隠すように手を後ろに回し乱入者へと向き直した。


「ご機嫌よう、このような場でお目にかかれると思わず、少々驚きました。……急ぎの御用でも御座いましたか?クルト様」


クルトは冷静に見えて怒りの感情を持て余しているように見えた。

本を書くにあたり身につけた人間観察で怒りの感情を読み取ってからリースベットはクルトを刺激しないように声をかけた。


「急ぎでは無い。しかし……リィーが先日読みたいと言ってた絶版の本が手に入り、少しでも早く知らせようと思い『君の用事』が始まる前に渡そうと思ったんだ。一応、婚約者との時間とされる日だったのだから、顔を合わせるくらい許されるだろうと思ったのだが、私の間違いだったかな?」


傷ついたというような表情にリースベットは戸惑った。同時に言葉に詰まった。後ろめたさ、という訳ではないがそう見える様子にクルトの目が悲しみに染まるようだった。


「っ、それは、間違い、では、ありません。あり、がとうございます」


不自然でしょう、私……

そう心で呟いた。受け取ろうと思いつつも隠すために手紙を持ったまま後ろに回した手が出せない。


「たまたま君を見かけた。ひとりで離れに向かっているように見え声をかけそびれたが、これを渡したくて後を追ってしまった。」

「……それは、その」


構いませんが、と続けようとしてクルトが目を逸らした事で続けれずにクルトの目線の先を自身も目で追ってしまった。

ルドと目が合う。

キャルは奥の台所でお茶を入れていて気がついていない。クルトの様子からしてクルトも気がついていないようだった。


「邪魔をしたようで悪かった」


本を渡すことなく背を向けようとしたクルトがやはり傷ついているように見えた。


「クルト様は、大変優秀ですが、私は違います……なので、察する事が難しいのです。言われなければ分かりません。ただ、ご不快な思いをされたという事だけは理解できました。申し訳ございません」


クルトが振り向きリースベットを見つめた。直後、ルドを見て顔を顰めた。


「お嬢様、俺は台所に行っていいっすか……」


空気に耐えられなくなったのはルドだった。

リースベットは無表情のまま頷いた。



(キャルに癒されて来てください)


そんな声になっていない言葉をルドは正確に受け取り部屋を後にした。








2人きりになった部屋に静けさが落ちた。リースベットもどう声をかければいいのか分からない。

しばらくしてクルトの息を吐く音が聞こえた。


「すまない。邪魔をする気は無かった、と言うのは嘘だ。」

「え……?」


どういう意味だろうと顔をあげるとクルトの悲しそうな瞳が見えた。


「君からすれば私の行動は許し難いだろうが、私は……」


何かを言いかけたクルトがピタリと止まった。

リースベットが伸ばした手を見つめて……


否定しようともクルトに惹かれていたリースベットにとってクルトの様子がおかしいのは許容範囲を超えていたようで冷静ではいられなかった。

だから、手を伸ばしてしまった。


『出版社からリーヌスへの手紙が握られたままの手を』伸ばせばその手紙はクルトには見えてしまう訳で、慌てて手を引っ込めようとしてもそれは阻止されてしまった。


「……」


クルトの視線がリーヌス宛の手紙に固定されている。

触れられた手があつい……などというロマンチックに心躍ることなく、分かりやすくリースベットは青ざめた。









息が止まるかと思った。その宛名はクルトの求めていた情報だった。

それを持つ手の主は恋焦がれている相手で……

都合のいい夢のように思えたがリースベットの慌てように現実と分かった。

ならば次に考えるのは『リースベットとルドのどちらがこの手紙の受け取り手か』という事だ。

考えて理解する。この場にいるリースベット。隠れて手にしていたものは手紙。貴族女性にとって作家はありえないとされる職業。

そうか、と。



「嘘だろう……こんなに近くにいたのか」


言葉の意味を測り損ねてリースベットは口を閉ざしたまま視線を逸らした。





クルトが『落ちた沼』は、綺麗な文章だった。

それは一種の宝石のように輝いて見えた。

15の頃に初めて見たのは見合い相手の忘れていった一冊の本だった。


「リーヌス、平民の男か……もっと、読みたい、その為には彼を保護した方がいいよな」


クルトは真面目だった。

真面目すぎてファンという概念を知らなかった。

ゆえに拗れた思いは発散されることなく積もり積もっていた。


会いたいというよりも、もっとあの文章が見たい。

その想いが強すぎた。

あの美しい文章が損なわれないよう保護したい。

そう思うがリーヌスは見つからなかった。


考えみれば納得できる。

リースベットが後継から外れ令嬢として活動し始めた頃とリーヌスが姿を消した時期は一致する。

そして、『自由時間』が設けられてからリーヌスはまた現れた。




可愛い想い人と探して尽くしたいと願っていた者が一致していた場合どうすればいいのか。

一瞬考えた後クルトは蕩けるように微笑んだ。



「リィー、少し聞いてもらっていいだろうか?ああ、もしも締切が近いなら優先はそちらでいい」


強めに握ってしまった手から力を抜き怪我をしていないと確認し安堵する。

リースベットは混乱したようにクルトを見つめていた。


「い、いえ、今は締切が迫っては……って、そうではなく」


そうではなくて……と、リースベットは言い淀んだ。


「その言い方だと私の予想はあっていそうだ。リィーがリーヌスなんだね?」

「っ、そ、それは」


リースベットは絶望と言わんばかりの表情を浮かべた。そこでクルトはまたもやポンコツになっていたと反省する。


そういえば『愛するものがいる』と告げたが『リーヌス』を探していると告げた記憶がない。


「これは俺のミスだ。すまない!」


頭を下げるとリースベットはびくりと肩を震わせた。


「な、なぜクルト様が頭を下げるのでしょうか?」

「少し話させてくれ、それで分かるはずだ」


そう告げてからクルトは昔話を始めた……






クルトは元来美しいものが好きだった。

美しい石が欲しいと願い宝石を手に入れた。

それは今でも引き出しに大事に収めてある。

次に欲しくなったのは美しい絵画だった。しかし当時8歳のクルトには手が届かなかった。

その時手に入れられなかった絵画は13歳の冬に手に入れた。

どうしても欲しかった。だから手に入れた。

『時期宰相としての道』を交渉の材料として……

この絵画はクルトの自室に今でも飾られている。


この頃から自分は執着が強いと自覚し始めた。


だが、その対象は『クルトが美しいと思った物』に限られていた。

だからクルト自身も勘違いしていた。

物さえ手に入ればそれを大事にすればいいと思っていたのだ。


そんなクルトが次に美しいと思ったのがリーヌスの文章だった。

本を手に入れれば満足できるかと思いきや、それは叶わなかった。

次の本は違う美しさがあり、世界が広がっていく感覚に囚われた。


もっと、つぎも……


その気持ちが強くなりリーヌスを探し始めた。

それが15の頃である。


クルトは母の記憶がほぼない。クルトが1歳の頃に重い病気を患い、実家に帰ったのだ。

父曰く母は『美しい』人。

その言葉が幼心に刻まれた。

甘えたいと願うが、英才教育を受け、忙しい父だけの家族ではクルトは口を閉ざすしか出来なかった。


悲しい時、寂しい時、手を伸ばすことも出来なくて、ただ『美しい』という言葉に救いを求めるようになった。


宝石は乳母がくれたものだった。

母のように、と言える存在では無かった。乳母はクルトに一線引いた対応しかしてくれなかった。

あまり泣かず、子供らしからぬクルトに乳母はどう接すれば良いのか分からなかった。

ひとりでいることが増え、わがままも言えず、ただ生きるだけだったクルトの唯一の癒しが美しいものを眺める事だった。

そんなクルトを哀れに思って小さな宝石をひとつくれたのだ。



宰相としての振る舞いや貴族の化かし合いを教わったクルトは更に冷めた子供となった。

ただクルトは非常に優秀だったため、偽ることを早々に覚えた。


にこやかな笑みの裏で冷めた心を持て余した。

性格がいい訳でもないクルトにとって、どうでもいい人達に何を言われても気にならないし、可哀想な美しいとされる女性を見ても心は動かないどころかどこが美しいのか分からない、可憐と言われる少女の隠された悪意が見えれば醜いとさえ思えていた。


そんなクルトにとっての美しい物は無機物だけだったし、それは仕方ないと思っていた。


このまま人に執着できず、恋など無関係のまま生きていくと思っていた。


綴られた美しい文章を見るまでは……



惹き込まれた。荒んだ心に潤いが生まれた。

それはクルトの執着心に火をつけた。


『愛』と紛う程に






「俺が探していたのは小説家リーヌスで、リーヌスの小説を愛していると思っていた。だからあの時の言葉は人物と言うより作品への愛だと思う。」


幼い頃の事はある程度織り交ぜながら伝えるとリースベットは少し顔色が良くなったようだった。


「クルト様は……リーヌスの存在を認めてくださいますか?私がそのリーヌスだとしても」


目を伏せ怖がるリースベットを安心させるように柔らかく手を握ると嘘ひとつない笑みを浮かべる


「正直に言うとリィーがリーヌスだと知る前は苦痛だった。想う相手がふたりいると思っていたからだ。けれど君がリーヌスだと知れば葛藤も無くなる。認めるも何もない。君は胸をはるべきだ。君の作品は俺の愛する価値のあるものだからな。」

「……っ、でも、世間では認められません」


リースベットの瞳が恐怖に怯えていた。


「ふむ……では、提案だ」



クルトの深い執着心をリースベットは測り損ねている。

伝えてはいないがクルトの恋情はリースベットに向かっている。

最早狂おしいほどにリースベットを想っているとは想像だにしていないのだろう。






クルトの提案にリースベットは安堵と共に申し訳なさが込み上げてきた。

そこでさらに提案された事をリースベットは迷うことなく頷いた。


提案は作家業をするのはクルトの書斎で行わないか、という事だった。

クルトとの時間だと言えば誰も疑問には思わない上に現在の使用人の家に入り浸っている現実より安心できる状況だった。


「ですが、クルト様に迷惑はかかりませんか?」


戸惑いながらの言葉にクルトは当然と言うように「全く」と返した。



それから幾つか話した。

ここがルドとキャルの住処だと言うことも……

そこで少しばかり眉間に皺を寄せたクルトを疑問に思っていると笑みで圧をかけられた。


「ところでルドという使用人と距離が近いように感じるのだが?」

「え、あー、えっと……」


言い淀んでしまうのはルドの出自が関係している。キャルを見初めるまでのルドは見目は悪くないが態度の悪い出来の悪い使用人だったのだから……


「リィー?言えないのかな?」

「うっ……あの、クルト様は孤児についての偏見はございますか?」


笑顔の圧に負けてリースベットは言いにくそうに尋ねた。


「いや、孤児を哀れに思うほど貴族も恵まれてはいないだろう?ただ環境が違うだけだ。もし衣食住が充実すれば嘘をつかない孤児の方がいいのかもしれないと思うが……まさか彼は?」


こくりと頷く。





ルドは10歳になった時、病気で倒れた。孤児のルドには風邪でも死ぬ可能性のある重大な出来事だった。

ルドが助かったのは倒れたのがリースベットの目の前で、リースベットが放置できないと家へと連れ帰ったからだ。

高熱の中でリースベットの声だけはよく聞こえていたらしい。

中途半端に語られる物語に少々もどかしく思った時にリースベットが呟いた。

『続きは風邪が治ったら聞かせてあげますね』

変な貴族だとルドは思っていた。



ルドは順調に回復して、リースベットの庇護下に入った。

使用人見習いとして屋敷に滞在したが、孤児だったルドには馴染めない環境だった。

それでも食事の心配はなく、寝る場所もあって、清潔な服も着させて貰えて感謝していた。


リースベットの事をお嬢様と呼び、物語の続きを聞く。そんな日常がルドに笑顔を取り戻させた。


リースベット13歳の時、ルドは16歳でいつものように物語を聞いていた。

その日、リースベットは思いつきで自分の考えた物語を語った。

ルドは目を輝かせ続きを催促した。

その様子にリースベットは自分の考えた物語を原稿にしてルドに渡した。

ルドの読み書きの勉強にもなると考えたからだった。

その原稿がリースベットの初めての本になる前にルドの教本になり、その頃にリースベットの専属メイドになるべく同年代がいいとされ選ばれたキャル、当時15歳が選ばれ、3人でリースベットの物語を語り合うようになった。


その物語を3人だけで独占するのはと出版社に送った。平民であるルドを経由すれば大丈夫だと言われ、リースベットはどうせ採用されないと軽い気持ちだった。






「そういう訳でルドはリーヌスの生みの親とも言えるのです。彼とは7歳の頃からの縁ですし、家族に近いんです。キャルと結婚してからは落ち着きましたが、口調もあまり褒められたものでは無かったんです。なので少々無礼があるかもしれませんが許してくださると嬉しいのですけれど」


そこまで話すとクルトの笑みの圧が増えた気がした。


「リィーの初めての本は彼のために書いたもの、と?」

「え、そうなるのでしょうか…あの頃のルドはキャルのために使用人として認められたいと仕事だけではなく読み書きも頑張っていたので応援の気持ちもあったので。私からしてみれば兄と姉のような存在ですし」


兄……と呟いたクルトから少しだけ圧が減ったようで息を吐く。


「あの、それで今後の執筆に協力くださるのですか?」

「ん、ああ、そうだな。協力というか俺の方がそうして欲しいんだ。どうだろうか?」

「……クルト様の重荷になりたくはないのですが」


うむむと悩んでいるとふっと笑う声が聞こえクルトを見ると圧のある笑みから穏やかな微笑に変わっていた。


「それならもうひとつ提案なんだが、リィーの執筆を応援する代わりに君の書いた物を一番に読む権利が欲しい。この先、ずっとね」

「え、そんな事でいいのでしたら大丈夫ですけれど」


ぽかんとクルトを見上げるとクルトはさらに笑みを深めた。本当に愛おしいと言わんばかりの笑みを……





「ところで先程から気になっていたのですが」

「ん?何かな?」

「クルト様はご自身の事を『私』と言っていたと思うのですが、先程から『俺』と言われてて……」

「ああ、すまない、貴族らしからぬ口調だったな。幼い頃から教育されていたから普段は私と言うのだが、少し気持ちが昂ると俺と言ってしまうんだ。幻滅させたかな?」

「い、いえ……その、物語の主人公のようだな、と。少し……と、ときめいてしまいました」



ふぅぅぅぅと大きく息を吐くクルトに恥ずかしさから目線を逸らしていたリースベットがクルトを見ようとすると、その目を大きな手で塞がれた。


「すまない、ちょっとだけ。今たぶん情けない顔をしているので見ないでくれ」


いつの間にか機嫌の治っているクルトに安堵すると共に自身の言葉に恥ずかしさを覚えリースベットも小さく頷くだけしか出来なかった。




リースベットは甘く見ていた。クルトの言う『この先ずっと』が言葉通りであることも、クルトがこの日から愛情を隠さなくなりリースベットに人目があっても愛を囁くことになる事も、リースベットの書いた原稿をルドに渡す際に必ず同行するようになる事も、この時は知る由もない事だった。



数年後、リーヌスは少しの間、休業した。

クルトの子を抱いたリースベットが執筆を再開したのはすぐの事。

クルトはリースベットの体調を案じつつ、リーヌスの本も読みたく葛藤することになるがそれはまた別の話

リースベット・マリンド 15歳

実際は本の虫。ただし家族のために隠している。

両親の事は好きだが表情に出ないので伝わっていない。


クルト・アッドウィル 17歳

真面目だが性格は良くない。ただし見目も良く次期宰相と称されるほど優秀なので女性受けは良い。

しかし女性への対応は冷めているため難攻不落と言われていた。


ルド 18歳

元孤児の使用人。リースベットは雇い主という以上に救ってくれた救世主のように思っている。リースベットにつけられたメイドのキャルが大好き。結婚するために努力した時にリースベットが本を書く。リーヌスの誕生したきっかけを作った。


キャル 17歳

没落した子爵令嬢。現在は平民としてルドと夫婦になっている。のほほんとしており貴族女性らしくはない。実は没落した時(当時14歳)に年上の貴族の愛妾にされそうだったところをリースベットに引き取られた。そのためリースベットに恩義を感じておりルドと共にリースベットに仕えれることに喜びを覚えている。




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