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世界が呼吸する場所で、君と出会った  作者: 優耀
ふたりたび

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13/17

境界の道

 街を離れて、半日ほど歩いた。


 道は、まだ道の形をしている。

 だが、踏み固められた跡は減り、轍も浅くなった。石畳はいつの間にか途切れ、土と砂利が戻ってくる。


 人の姿は、ほとんど見えない。


「急に、静かだな」

 リュカが言う。


「街が、遠くなったから」

 ミアはそう答えた。


 振り返れば、街はもう見えない。

 音も匂いも、ここまでは届かない。


 代わりに、風がはっきりと吹いていた。

 通り抜ける風だ。溜まらず、止まらず、ただ流れていく。


 ミアは歩きながら、深く息を吸った。


「……戻ってきた」


「なにが?」


「世界の、手触り」


 言葉にすると曖昧だが、感覚は確かだった。

 街では平らだった空気が、ここではざらついている。角があり、濃淡があり、場所によって重さが違う。


 リュカも、無意識に周囲を見回していた。


 草の生え方がまばらだ。

 獣道が枝分かれし、すぐに消えている。

 遠くで、鳥が鳴く。街で聞いた声より、ずっと鋭い。


「……気をつけたほうがいい?」

 リュカが聞く。


「うん。でも、危ないわけじゃない」

 ミアは少し考えてから言った。

「ここは……境目」


「境目?」


「街の世界と、そうじゃない世界の」


 説明するでもなく、言い切るでもなく。

 ただ、そういう場所だと知っている口調だった。


 道の脇に、崩れた石積みが見えた。

 かつては柵か、目印だったのだろう。今は役目を失い、苔に覆われている。


 リュカは、その影に視線を走らせる。


「……出るかもな」


「うん。たぶん」


 二人は自然と距離を詰めた。

 肩が触れるほどではないが、離れすぎない位置。


 リュカは腰の道具を確かめる。

 剣ではない。刃物と、縄と、投げられる程度の石。


 ミアは一歩、前に出た。


「右、少し濃い」


 それだけで、リュカは足を止めた。

 次の瞬間、草が揺れた。


 姿を現したのは、小さな魔物だった。

 獣に似ているが、目の位置が違う。動きは速いが、躊躇いがある。


 強くはない。

 だが、油断できない。


「追い払う」

 リュカが短く言う。


 ミアは頷き、少しだけ手を伸ばした。


 世界が、ほんの一瞬、軽くなる。


 リュカは踏み込み、音を立てて地面を叩いた。

 魔物は驚き、方向を変えて逃げる。


 それで終わりだった。


 二人は、しばらくその場に立っていた。

 呼吸が揃うのを待つ。


「……できたな」

 リュカが言う。


「うん。無理してない」


 ミアは、少しだけ笑った。


 街では感じなかった感覚。

 ここでは、確かに必要とされている。


 道は、まだ続いている。

 境界は、越えたばかりだった。


面白い、続きが気になると思って頂けましたら、

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