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世界が呼吸する場所で、君と出会った  作者: 優耀
ふたりたび

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11/18

静かすぎる世界

 道が、少しだけ整い始めた。


 それまでは土と砂利が混じった踏み跡だったのが、いつの間にか石が増え、轍の跡も均されている。歩くたびに、足裏の感触が変わるのが分かった。


 音も変わる。

 靴底が、乾いた音を立てる。


 匂いが増えた。


 土の匂いに、油と煙、乾いた草と、どこか甘い香りが混じる。人の生活の匂いだ。


 ミアが、小さく息を吸った。


「……ここ、楽」


 言葉だけ聞けば、安堵だった。

 でも、表情は晴れていない。


 リュカは、前方を見る。

 遠くに、低い城壁が見え始めていた。


「街だな」


「うん」


 返事は短い。


 人の気配が増える。

 荷車が行き交い、旅人がすれ違い、呼び声が交差する。


 誰も二人を気にしない。

 それが、街の普通だった。


 リュカは、少しだけ肩の力を抜いた。


 ――懐かしい。


 昔、一度だけ来た場所。

 落ち着けなかった記憶と、それでも安全だった記憶。


 ミアは、周囲を見回していた。


 丘で感じたような詰まりはない。

 重さも、引っかかりもない。


 それなのに――


「……先が、分からない」


 ぽつりと、呟く。


「見えない?」


「ううん。見えない、じゃなくて……

 決まってない」


 リュカは、その言葉の意味を完全には理解できなかった。

 けれど、聞き返さなかった。


「でも……」


 少し考えてから、言う。


「ここなら、休めそうだな」


 ミアは、驚いたようにリュカを見る。


 そして、ゆっくりと頷いた。


「……うん。たぶん」


 街門が近づく。

 石の影が長く伸び、人の流れが一か所に集まっている。


 ミアは、そこで足を止めた。


 危険を感じたわけではない。

 ただ、自分がここでは“必要とされていない”感覚があった。


 リュカは、何も言わずに待つ。

 急かさない。


 しばらくして、ミアは一歩、前に出た。


 リュカも並ぶ。


 二人は、人の流れに混じって街へ入る。


 世界は、ここでは静かすぎた。

面白い、続きが気になると思って頂けましたら、

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