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世界が呼吸する場所で、君と出会った  作者: 優耀
ふたりたび

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10/17

村の外の空気

 空が白む前に、目が覚めた。


 鳥の声はまだ少ない。

 風も、夜の名残を引きずっている。


 家の中は静かだった。

 灯りは落ち、寝息も聞こえない。


 リュカは、荷を背負う。

 音を立てないように、紐を締める。


 戸を開けると、朝の空気が流れ込んできた。

 冷たく、澄んでいる。


 外で、ミアが待っていた。


 外套を着込み、靴紐を結び直している。

 その動きは、少しだけ慣れていた。


「早いね」


「……眠れなかった」


「俺も」


 それ以上、言葉はいらなかった。


 二人は並んで歩き出す。

 村の道は、まだ影の中だ。


 家々の間を抜け、畑の脇を通る。

 土の匂いが、朝露と混じっている。


 振り返らなかった。


 振り返れば、戻れる気がしたから。


 村の外れに差しかかると、空気が変わった。


 ほんのわずかだ。

 でも、確かに違う。


 音が、少し遠い。

 匂いが、薄い。


 ミアが、小さく息を吸う。


「……ここから」


「分かる?」


「うん」


 道は続いている。

 踏み固められた街道だ。


 でも、村にいたときとは、違う。


 世界が、広くなった気がした。


 しばらく歩くと、リュカが言う。


「歩きづらくないか」


「大丈夫」


 そう言って、ミアは一歩、前に出た。

 迷いがない。


 歩き方は、早くも遅くもない。

 ただ、止まらない。


「……よく、歩いてきたんだな」


 リュカが、何気なく言う。


 ミアは少し考えてから、答えた。


「歩いてた、というより……

 気づいたら、ここまで来てた」


「迷子?」


「たぶん」


 少し間を置いて、付け足す。


「世界の方が」


 リュカは、意味が分からなかった。

 でも、聞き返さなかった。


 道の先に、低い丘が見える。

 その向こうに、街があるはずだ。


 まだ見えない。

 でも、気配はある。


 人の気配。

 音の重なり。

 空気の、重さ。


 ミアは、足を止めた。


「……大丈夫そう」


「なにが」


「世界」


 リュカは、少し笑った。


「そっか」


 再び歩き出す。


 朝日が、背中を照らす。

 影が、前に伸びる。


 二つ並んだ影が、同じ方向に進んでいた。


 これが、最初の一歩だった。


 特別なことは、何も起きない。


 ただ、戻らないだけ。


 世界は、静かに続いている。

面白い、続きが気になると思って頂けましたら、

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