sideコンビニ強盗
オレは阿久津レオ。なんの取柄もない中年だ。これまでの人生は無味乾燥なもので、出世もできず、金もなく、日々の生活はただの惰性で過ぎていく。これが、世の中をなめて生きてきたつけなのかもしれない。
そんなオレにも、運命の転機が訪れた。流れ星が落ちてきたあの大災害の日から半年が経ったころ、隕石が落ちた付近で謎の洞窟が発見されたという衝撃的なニュースを見ていた。これがオレに与えられたチャンスだと感じた、その瞬間、背筋に冷たいものが走った。体の中に何かが流れ込み、オレの意識を一瞬で変えてしまった。
……そう、超常的な力だ。
その力を得た瞬間、オレはそれがどんな力なのか、どう使えばいいのかを、一瞬のひらめきのように理解した。それは、思考を超えた感覚、まるで宇宙の法則を手中に握ったような気分だった。オレは生まれ変わったのだ。
オレが得た力は、万物を創造する異能だった。ありとあらゆるものを創り出すことができる。この力によって、つまらない人生は一変する。望むものを手に入れるだけでなく、自分だけの理想の世界を築くことができるのだ。
まずは、この力をどう活用するかを考えた。オレはまず、自分の人生を変えるための道具として、この力を使おうと決めた。毎日が同じタスクの繰り返しだった生活を、一瞬で彩り豊かにすることが可能になった。
最初の実験は、ささやかなものでいい。誰も気づかないようなものを生み出そう。無邪気な子供のように、まずは小さな遊びから始めることにした。目の前にあった無造作な石ころを手のひらで掌握し、小さな花瓶へと変化させようとした。
……だが、結果は失敗。創造したい物の詳細な作り方を理解していないとこの異能は使えない。その制限は厳しいようだった。その後も色々と創造しようとしたがすべて失敗に終わった。
お金を創造しようとしても詳細な作り方なんてものは調べてもわからず失敗、刀を作る工程が動画サイトにのっていたため、それを見てから刀を創造しようとしても失敗。その後もなかなか成功せず、唯一創造できたのが目玉焼きだった。
「いや、誰でも作れるわ目玉焼きくらい」
躍起になったオレは、その日から会社をサボり、何故かネット上でありふれていた銃の作り方を学び、ついに半年が経つ頃、銃の創造に成功した。しっかりと弾丸も創造した。
「もう金がねえ」
これまでの平凡な生活とは打って変わり、異能を手に入れたはずなのに、金銭面では何も変わっていない。むしろ会社をクビになり今では一文無しだ。万物を創造できる力を得たのに、それを利用する方法が分からなかったのだ。そんなことを思いつつ、オレは手元の自分が創造した銃をじっと見つめた。金属の冷たさが、不思議な感触を与える。
「やるか、強盗」
もう後には引けなくなっていた。