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無敵のナンパ師  作者: kuzusaya
1/5

始まりはベッドシーンから

がんばります

 ――20XX年、日本某所。


 流れ星が落ちてきた。空に見える巨大な塊を見上げ「あぁ、短い人生だったけど割と楽しかった……南無」と軽い気持ちで自分の死を悟っていたが、意外にも人類の諸先輩方が奮闘したため、俺は死ぬことはなかった。世界各国に隕石が落ちたようだったが、日本では近海に落下したため大きな被害もなく、事件から一年も経った今では、日本に住む人々は他人事のように被害者を追悼しているのだった。実に平和ボケした民族である。


「まー俺も他人事っすけどね」


「朝から独り言ですか?」


 隕石の大災害のニュースを眺めながらコーヒーを飲んでいると、自室のベッドの方から声がかかった。


 その澄んだ声の持ち主は、布団を身体に巻きつけたまま目を細めてこちらを眺めていた。布団の隙間から見える肌色は、まさに一糸まとわぬ姿を語っている。当然だ、昨晩のパートナーであり、そのまま寝入ってしまったのだから。そしてその髪と目の色にも、どこか不思議な魅力が宿っていた。


 窓から差し込む朝日によって、彼女の髪はプラチナのように輝き、金色の瞳にも同様の光が宿っていた。しかし、顔立ちは完全な日本人であり、そのミスマッチさがまた独特の魅力を放っている。実際、彼女は生まれも育ちも日本の生粋の日本人らしい。免許証を見せられたこともあるため、嘘ではあるまい。最近、突然黒髪黒目から金髪金目に変わったと聞いているが、その理由は未だに謎だ。


「なんですか……? 今度はじろじろ見てる……ま、まさかまた朝から……?」


「違うからねー、そんなにお盛んじゃないからね」


「まったく男というものは……仕方ないですね、受け止めてあげるのも女のつとめ、覚悟は決めました。どこからでもかかってきてください」


「お盛んなのはどっちっすかねぇ」


「……ロリコンのくせに」


「おい、ロリコンはやめろ、ロリコンちゃうわ」


「はいはい」


 そう言って、器用に布団の中で服を着て、近くに置いてあった水を飲むと、とてとてと朝食を取るためのテーブルまで歩いてきてさっと隣に座った。用意しておいた簡単な朝食のパンをもしゃもしゃと頬張るその姿は、まるで小動物がエサを……これ以上はやめておこう。


「また異能力者が現れたんです」


 彼女の言葉に、思わず耳を傾けた。この世界には超能力を持った人々が存在している。所謂「異能力者」と呼ばれる彼らは、超能力者よりも短い名称で、実際にはその存在を知る者たちだけに知られている。


 異能力者は昔から存在したわけではなく、あの大災害の後から急に現れ始めたという。まだその数は少ないが、徐々に増えてきているようだ。


「今回はすぐに気がつけたから、なんとかこちらの組織に引き込めましたが、また例によって問題児でした……」


「あーまたかー」


 人は異能を手に入れると、必然的に正義を為そうとするか、あるいは悪に堕ちるかの選択を迫られるらしい。少なくとも、金髪少女の周囲ではそのような話が絶えないようだ。また、正義の名のもとに力を過信し、無謀に振る舞う者も少なくない。そうなると、大体……。


「軽くひねりましたけど。毎回これじゃ身体がもちません……せめて誰かさんがいてくれれば私ももっと楽になるんですけどね」


 そう言いながら、ジトーっとした目でこちらを見つめるこの金髪少女は、太陽を司る異能を持っているという――詳しいことはわからないが、とにかく凄そうな力だ。年齢20にして、正義の組織の創始者でもある。


 ――なぜか俺もその創始者の一人らしいが、まったく身に覚えがなく、何かの勘違いであろう。


「りおんちゃんがいれば充分だよ」


「まったく、他人事みたいに……」


 金髪少女こと相坂りおんは、俺の無関心さに諦めたようにため息をついている。だが、ほんとに他人事なので、気にせずコーヒーの香りに浸ることにしよう。


 その様子を見た相坂は、もう一度ため息をつき、テーブルの上に置いてあった俺のスマホをいじり始めた。「また知らない女の名前が」「私というものがありながら」、何やらブツブツ言っているようだが、よくある光景なので特に気に留めず、コーヒーの美味しさに没頭する。やっぱり人類はコーヒーを飲むために生まれてきたのかもしれないとさえ思いながら。


 そんなことを考えていると、スマホチェックに満足したのか、相坂がじーっとこちらを見つめていることに気がついた。


「ん? どしたの?」


「りゅうやさん、相変わらず……顔はかっこいいですよね」彼女のその表情は、どこか惚けたようで面白くて、思わず笑みがこぼれた。


「笑った顔も素敵です……こんなのずるいですよ」


「まー、それしか取り柄がないからね」


「そんなことないと思いますけど」


 勉強はそこそこ頑張ったが、結局は流されて中途半端だし、スポーツも人並みにできたが、結局は人並み。そんな自分にとって、容姿だけが取り柄であることは否定できなかった。幼いころから美容に気を使い、元々悪くなかった容姿は今や、すれ違う女性の8割が振り向くレベルにまでなっている。努力は果たして実を結ぶものだ。


 照れたような表情で俺の顔を眺めている相坂に、「そういえば、なんで隣に座ったの? 前の席の方が広く使えたのに」と問いかけると、


「だって、こっちのほうがキスしやすいじゃないですか……」と少し照れた様子で答えた。


 なんだこいつ、可愛いな。

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