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……あからさまに距離を置いていると思われていそうですね。
わかっていても、距離の詰め方がロイには全く分からないのだ。こんな状況でどうやって見定めれば良いのか皆目見当もつかないけれど、とにかく会話を続けるほかないだろう。
「ところで、私がここに呼ばれた理由を改めてお伺いしてもいいですか?」
ロイはできるだけ丁寧に彼らに聞いた。すると彼らはロイからの話題の提案にハッとして、それから真剣な顔をして食事を続けながらロイに事情を話してくれた。
「わかった。……数カ月前からなんだが、このベイリー男爵家を通る川の水位が大幅に減少してしまってね……手紙に書いた通り、上流にあるデネット侯爵家の領土で問題が起こっているらしい」
「いくら領土内のこととはいえ、海まで続く川の流れが変わってしまうとことは大きな問題を起こすし、デネット侯爵家に抗議をしたり侯爵本人に対応をもとめたりしているけれど、聞き入れられることは無くて伯爵家に婿入りしたロイに手を貸してほしい……というわけよ」
彼らの言ったことは、おおむね手紙で聞いたことだった。そして、デネット侯爵家というと聞き覚えがある。
オーウェンの友人として伯爵家別邸にも跡取りが何度かやってきていた。
美しい前髪が顔にかかっていて、払う仕草が特徴的な人物だったと記憶している。
そしてオーウェンと婚約を破棄してからこのタイミングでの行動はもしかしなくとも嫌がらせではないかと思う。
だからこそロイが呼ばれたのかもしれないし、デネット侯爵家の跡取り息子のフレディーが暴走しているだけなのであれば、別の人間に話をつければいい。
事情を知っている人間の方がその旨を説明しやすいし、オーウェンの件も一番近くで見ていたロイは役に立てるだろう。
「……ただ、来てもらって悪いけれど心配なことがあるんだよね」
ロイが納得しているとアイヴァンが視線を伏せて言う。続きを促すように彼を見れば「言い訳するわけでないんだけど」と前置きをしてイライザが言った。
「……デネット侯爵家跡取りのフレディー様がどうやら今回の件で絡んでいる様子なんだけど……しきりにあたしたちと縁の深いクラウディー伯爵家の者を連れてこいなんて言ってたんだ……」
「だからこそロイに連絡したというのもあるが、まさか、ロイを心配してリディア様までいらっしゃるとは想定していなくてね。……屋敷には招かないようにするし中にいれば安全だと思うけれど、なんせ執着している様子だったから、リディア様にはあまりこの場所の長居はしてほしくないんだ」
その言葉にロイは驚いて、彼らを見た。リディアをよく思っていないのかもしれないと出会いがしらのあのセリフで思っていたけれど、理由があるのならば話は別だ。
というか、それを何故手紙で言わなかったのか。
……そういう話でしたら、リディアお嬢様には事情を伝えて別行動にしてもらったのに……。
そう考える時が来てしまったのだから後の祭りだ。
少し心配だが、話をまとめるにしても招かない限りは彼だって無理やりやってくることもないだろう。こちらがデネット侯爵家の方へと出向いて話をすればいい。
そうわかってはいるのだが、どう反応したらいいのかロイはよくわからなくて、口をつぐんだ。
「あ、もちろん、君たちを早く返せるようにがんばるからね、すぐに帰るのだけは待ってほしい」
「まだまだ話したいことも沢山あるし、お願いよ」
ロイの無言は怒りだと感じた様子で二人は、ロイに焦りながらもそう言って来た。
話したいこともあるし、どういう風に彼らを見ればいいのかロイだって知りたい。しかし、リディアの事も心配で複雑な気持ちのまま夕食の時間を終えたのだった。




