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【連載版】酒の席での戯言ですのよ。  作者: ぽんぽこ狸


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 ……つまりは、性交渉すらしていないと。


 そう考えて、じゃあ一体何が怖かったのかと考える。


「酷いです、初めて体を明け渡すのですよ。怖くて、当たり前じゃないですか。よく知りもしない相手に触れさせてまぐわうなんて本当はずっと恐ろしかったんです。それなのにっ……それなのにっ!」


 ……それなのに、お酒を飲んで真剣に挑まなかった旦那様が嫌だったと……そういう話ですのね。


 それならば流石に周りの人間もエイミーを励まして、気にしない方がいいと言うだろう。


 かくいうリディアだって、酒のせいで多少なりとも痛い目を見ているからこそ、その程度の事でと言ってしまいたくなる気持ちもある。


 オーウェンがいた時に、酒の勢いに任せたあほがリディアに迫った事だってあったのだ。


 だからこそ、上から目線でエイミーに教えることは出来るけれど、そうはせずにリディアは、泣いているエイミーを抱き寄せた。


「辛かったのね。エイミー、それだけはわかりますわ」

「っ……うん、うんッ、リディア~!!」

「あら、いやですわ、子供みたい」

「ううっ」


 エイミーはリディアにひしっと抱き着いて、泣き声をあげながら胸元に顔をこすりつけた。


 聖女として高いプライドを持つ彼女がこんな風になるなんて、よっぽど周りに否定されたのだろう。


 それに高いプライドがあるからこそ、男女の情事に対して気持ちがついていかなかったのかもしれない。


 とにかく色々なことが重なって限界を迎えてしまったのだろう。


 泣きわめく彼女が落ち着くまで背中をさすってやると、エイミーはリディアの胸元に顔がこすれて目元と鼻が赤くなっていた。


 まさしく幼子が酷く泣いたときのような顔に思わず笑ってしまいそうになったが、堪えて涙をぬぐう彼女にグレープジュースを勧めた。


「ありがとう……リディアに話せてよかった。私が想像していた相手とは違ったけどちゃんと結婚して、リディアも怖いのをやり過ごしてきたんですもんね。そんなリディアに認めてもらえて……自分の気持ちが許された気がします」


 ジュースをこくこくと飲みながらエイミーはひどく泣いてしまってぼんやりとした様子で言った。


 しかし、それにリディアはすぐに答えられなかった。


 なんせ、結婚はしているが、初夜なんか迎えていない、なので必然的に性交渉に対する不安の理解のかけらもない。


 ……いえ、そもそも、その時になって怯える様な繊細な質ではないけれど、わたくし偉そうなことは言えませんわね。


 しかし納得しているならばそれでいい、理解され許されたと思うことで事態を受け入れる一歩になったなら前進だろう。


 人を導く立場として色々なことを知っておく必要はあるが、なにも知らなくていい事まで知る必要はない。


「でも、リディアとロイがなんて想像がつきません。私の場合は、本音かもわからない求婚をされて承諾する形で結婚しましたけど、愛しているという言葉は本当なんでしょうか」


 黙り込むリディアにエイミーはひとりで続けた。


「お酒を飲んだ真意はあったんですかね。あの人に求められているということは少なくとも情はあると思うんですけど」


 彼女が続けるのでリディアはその旦那様の事について考えた。お酒を飲んだ真意を今の情報だけで推察するなら、ただの習慣か、緊張の緩和の為であったのだろう。


 しかし、ただでさえ気持ちがついていっていなかったエイミーは過剰に反応して逃げ出した。


 そういう話だと思う。それに加えてきちんと求婚しているし、愛しているともエイミーに伝えている。


「……その方って普段はお酒を飲みますの?」

「いえ、まったくです」


 聞いてみるとどうやら珍しく飲んだらしい、となれば、緊張を緩和させるために飲んだのかもしれない。


 そこまで特定すれば、旦那様がどんな特徴を持っているのか理解できてきた。


 エイミーの事を愛しているからこそ緊張してしまう、だから手を出すために慣れない酒を飲んだ。真相はこうではないだろうか。


 納得のできる結論をリディアは見つけてエイミーたち夫婦は、きちんと話し合うだけで解決できると考えた。


「だからこそ嫌だったんです。お酒に頼らないと触れられないなんて……そんなに嫌なら、私の事なんて求めなければいいと思うでしょ?」


 ……嫌だから以外でも触れられない場合はあると思いますのよ。

 

 愚痴っぽく言う彼女に、リディアはそう考えて笑みを返した。


 それから続けて考える。例えば、ロイのように好きでも自分から踏み込めない場合もあるのだと例に上げてみた。


 しかし、彼は何か違う。リディアが好きだとは言うし、たしかにそうらしいのだが、求められたことが一度でもあっただろうか。


「でも、誰よりも愛しているという言葉が真実に思えるほどに、あの人は私との結婚の為に動いてくれました」

「……」

「言葉を重ねて、常に私を望んでくれた。だからこそ、その手を取ったのに……信じたのに、酷いですっ、ふしだらですっ、もうっ」


 また同じようにむくれる彼女の言葉にリディアは、呆然としてしまった。


 だってそうだろう。リディアだってそう思う。人を愛するということは望むということだ。手に入れたいと望んで、そばにいたいと願って行動をすること。


 それが一番わかりやすく愛が感じられる方法だ。


 自分だって愛した人にはそうするだろう。しかしロイは違う、それが違和感の正体かとリディアは今やっと気がついたのだった。


 しかし同時に、バタンッと突然扉が開き、焦った様子のロイがそこにいて叫ぶように言った。


「リディアお嬢様、大変ですっ!!」






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