【プロローグ】
初めて書いたオリジナル小説です故、拙い文章ですが一人でも多くの方に楽しんでいただければ幸いです‼
夕日がさしている。
世界は一面金色に染まり、町内放送のチャイムが午後六時を告げる。
カーカーとどこからともなく聞こえてくる烏の鳴き声。
次第に近づき、そして離れていったそれは単調で、しかしどこか賑やかな印象を振り撒いていた。
喜丙「はあ``あ``あ``あ``…………バチクソ重てぇ…………」
俺の隣で20㎏のコメを担いでいる喜丙がため息を吐く。
『お疲れー、家まであと1㎞ぐらいだからこのままガンバ~』
喜丙「んなこと言ってねーで榛紀も手伝ってくれよ‼?」
『いやー持ってやりたいのは山々なんだけど、ルールはルールですので…………ね?』
喜丙「ぐぬぬぬぬ………チキショーめ………」
あまりの重さで悶絶する喜丙に、こうなった元凶である稲葉と珠実がちょっかいをかける。
稲葉「いやぁ~悪いねぇ?アタシたちの景品ぜ~んぶ持ってもらっちゃってさぁ。(最大限の煽りフェイス)」
珠実「そんなに重いんだったら、あたしが半分持ってあげよっかぁ~?(最大限のメスガキフェイス)」
喜丙「…………っ‼お前ら二人がくじ引きでコメ10㎏ずつ引いた上に『腕相撲で負けたやつが全部運ぶのな~』とか言いだしたからこうなってんだろうが‼‼ ぶっ飛ばされてぇのか‼?」
煽り耐性皆無な喜丙が、屈辱の言葉を投げつけてきた二人を怒鳴りつけた。
しかし彼女らは、さも面白がっているようで。
珠実「わ~、喜丙がブチギレた~‼」
稲葉「に~げろ~♫」
喜丙「うおおおおおおおお待てゴルアアァアァァ‼‼‼」
殊更に喜丙を刺激し、爆発させたところで逃げて行った。
嗚呼、かわいそうな喜丙くん。
どんなに頑張ったところで、あの二人に追いつくなんて出来やしないのに…………。
雪奈「あっはは、喜丙さんもうバテてる」
早くも肩で息をしながら走る喜丙を見て、雪奈が笑う。
『まあ、コメ二袋も担ぎながら走ったらああなるわな』
俺も笑いながら応える。
雪奈「でも、まぁ…………今日は、本当に楽しかったね」
『うん。…………今度あいつらも誘って、みんなでまた行こう』
ふと、空を見上げる。
すっかり夕焼け色に染まった上空では、もくもくとした白い雲がゆっくりと流れていた。
何気ない日常。ごく当たり前な景色に思える。
………………そう。
彼女らに、獣耳と尻尾さえ付いていなければ。
次回から本文の始まりです。乞うご期待‼