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心の声音  作者: のなめ
第四章 愛情の音
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第12話   『奥底に響く想い』

事が終わり、再び塔の内部へと戻ってきた裕太。


噴水の水面からゆっくりと顔を上げると、例の人物が声を掛けきた。


「今どんな気持ち?」


「いや俺が戻ってきて最初に発する言葉なのそれ!?」


どんな気持ちかよりも他に聞くことがあるのではないかと思うが、この人物が何を知っていて知らないかもよく分かっていないため、裕太は取り敢えずその質問に答えることにする。


「別に......なんだろ。やれることはやったて気持ちかな。今は」


「そっか。その時のキミがその時やれることを精一杯やったのであれば、正解と言えるね」


「正解?あれが......?」


彼女を説得するどころか、むしろ自殺を肯定してしまった事実を正解と呼べるのだろうか。


「そう、正解。ここでの正解は、ついてくる結果ではなく、とったキミの行動のことだよ。自分の本音に従って、潔く彼女の事情と行動を受け入れた。今まで自分の本音に従えなかったキミは、ここにきてそれを徐々に克服してるんだ」


「なるほど、そういう意味での正解か......。でもそういう意味で言えば、ちょっとモヤモヤが残ってるっていうか......」


「ほうほう」


この機会に自分の気持ちを整理しようとする裕太。


「確かにあの時は、彼女にとって最善の選択があれで、自分にはどうすることもできないと思ってた。でも、もしかしたら、この先、色々なものを乗り越えた自分なら彼女を説得できるかもしれないとも、同時に思ったんだ」


「ふむふむ。つまり今のキミには彼女を説得する力はないけど、未来の成長したキミなら説得できるかもしれないってこと?」


「そう」


「それはキミのやりたいこと?」


「何となくだけど、そんな気がする」


そうだ。やはりどんな事情があれど、あんな形で人生が終わるのはあまりに希望がない。確かに今の自分は彼女を救えないが、いつか必ず彼女を救えるまで成長して、再びその時をやり直す。それがここにきて、初めて新しく芽生えた、前向きな自分のやりたいことだった。


「そういうことなら、絶対にやった方がいい。それもまた色々考えてやらずにいたら、前と同じように後悔を生むだろうから」


「うん、もう分かるよ。後悔を手放すためにここでやり直しをしてるのに、そんな場所で更に後悔を生んだら、それこそ今までのやり直しは何だったんだってなるからね」


そんな事には絶対にしない。ここで自分を変えると、強く自分に誓ったのだから。


「......なんか、いいね。色々と。最初にここに来た時のキミと今のキミを比べると、明らかに顔つきがよくなってる」


今までは同じやり直しでも、後悔という、ネガティブな感情が根本にあったが、今回は彼女の死を通して、彼女を救いたいという、初めてポジティブな感情が根本に芽生えたのだ。これは今までの自分であれば絶対に有り得ない話である。


だからこそ、今の自分に少し自信が出てきたのだ。他人には分からないことでも、自分自身では明確に感じるその変化。ここで過去をやり直し後悔を手放さなければ、決して現れることのなかったその変化。


「さてと、じゃあそんなキミは......次は何をやり直すの?」


気持ちの整理がついたところで、改めてその人物は裕太に問いかける。


「そうだね......」


裕太は覚悟を決めたような表情でそう呟くと、更に言葉を続ける。


「こうやって、なんとか途中で投げ出さずに後悔を手放してきたからこそ、今ようやく自分のことが分かってきたよ。今から言うこれは――今までずっと、無意識に自分の中で無いものとして扱っていた出来事だったんだ。それを考えると、あまりにも辛くて苦しいから。だから最初にここにきて過去をやり直せると言われた時も、全く思い浮かばなかった」


「なるほど?要は、()()()よりも強く引きずっているものがあったってことだね?」


裕太は()()()が自分の一番やり直したい過去であり、それを手放すため真っ先に無我夢中で行動したはず。しかしそれは、自分の心の底からは目を背けていた、今までの弱い自分がそう思い込んでいただけに過ぎなかったということ。それに裕太は気付いたのだ。


「それは後悔だったの?」


「後悔、と一言で表すのは違う気がする。でも、それが今になって猛烈に心の中で主張してきてさ。本当にやり直さなくていいのかって。このままずっと自分の中に消えない呪いとして残しておくのかって」


「それこそ心の声だね。今までのキミはそれに従ってこなかった。だから後悔を生んだんだよ」


「分かってる。多分、もうここでその想いをいい加減手放せという事なんだと思う。辛く苦しくても、向き合わなきゃいけない時が来たんだ。だったらもう、やるしかない」


潜在意識では分かっていた、一番考えたくないが、()()()以上にやり直したいと思っていたこと。それにいよいよ、裕太は真正面から対峙する時が来たのだった。






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