召集は突然に
「サクちゃーん、コールよ!」
そう言って、彼女は俺の顔を覗き込んだ。彼女の名前は小村綾。5=6だ。俺の隣人で、いつもちょっかいをかけてくる、困ったヤツだ。
「休み明けから騒がしいな。お前も、害獣も」
「何言ってんの。ボクも彼らも、騒ぐことが仕事なの!静かにしてたら何かあるって思うでしょ?ボクも、彼らも、この軍も月月火水木金金よ!」
「確かにな」と答えて、肝心のコールの内容を尋ねる。
「ええと、ああ、そうだ、準A級のオオモノがでたの!」
即座に休みたいという感情が芽生える。しかし、コールを無視すれば良くても説教じゃあすまないだろう。ドアを閉め、司令塔へと続く廊下を走る。そこでふと疑問を覚えた。
「おい、準A級は4=7が担当するんじゃなかったのか?」
「さあ?全体の質が下がってるってのは聞いた事があるけど。詳しいことは司令官に聞いて」
なんの自慢にもならないが、俺が4=7の時は単騎で五十匹は倒した。
そんな事を話していたら司令塔の第一司令室に着いた。
ドアを開けると、そこには他の5=6が二人と、その奥の机にはいつも通り司令官と、その隣に彼の秘書がいた。どうでもいいことだが、司令官と秘書は夫婦だった気がする。
司令官が机のパソコンから目を上げ、こちらを向いた。
「よし、集まったね。君たちも知っている通り、準Aの魔獣が出た。そこで、君たちに出動してもらうことになる」
「準Aは4=7が担当するんじゃなかったか?」
綾を挟んで隣にいる男が俺と同じ疑問を上げる。名前は知らないが5=6に長年居る古参だった気がする。年は四十代後半といったところだろう。
「それが……その魔獣とは別に特A並みの魔物があるかもしれないんだ。本当なら6=5とか7=4を行かせるべきなんだけど、僕たちも確証が持てなくてね」
司令官は困ったようにしかしおどけたふうに言った。
「なんだよそれ。俺達に死ねっていうのか!?」
ベテラン男の隣の男がヒステリックな声を上げる。休み明けの頭にその声が響き、頭を押さえる。
「お前な、それくらい日常茶飯事だろう?今更ピーピー喚くな」
俺がそう言うと、「いやあ、いつもすまないね」と司令官がバツが悪そうに言った。彼は本気で言っているのだろうが、微塵も真剣さが感じられない。
「まあ、君たちに拒否権は無いんだけどね。だから、お願いするよ。じゃあ、互いに初対面なのが多いだろうから自己紹介をお願い」
そう言われ、互いに自己紹介する。ベテラン男は塩津吾郎、ヒステリック男は数野陸と言うらしい。ちなみに、司令官の名前は高野正人だ。
自己紹介を終えると、やっと聞けると言わんばかりに綾が司令官に尋ねた。
「それで、私達はどこに行けば良いの?」
「ああ、南の大空洞さ」
そう言って、司令官がホログラムを起動する。丸い星の下の方にホログラムがズームアップして、巨大な穴を映し出す。
南の大空洞とは、数千年前にこの星に降ったとされる超巨大隕石によって出来た、星を縦断(または、横断)する直径三万キロ程の大穴だ。星の直径は十万キロぐらいだから、その十分の三のサイズだ。その時に流れ着いたどうたらこうたらで俺達は魔力を使えるようになったらしいが、そんなことはどうでもいい。
ある程度の説明を受けた後、三十分後に総合転移室に集合することになった。世界中どこでも転移できる、いわばルーラの上位互換だ。
司令室で三人と別れた後、訓練室に向かう。訓練室の中では、蓮が一人で百キロのバーベルを片手に三個ずつ持ち、"グリコ"なるポーズをしていた。
蓮は俺を見つけるなり、話しかけてくる。
「お、朔夜。お前もやるか?」
「いや、遠慮しておく。それより、お前に後輩への伝言を頼みに来たんだ」
そう言うと、蓮は少し悩むようにした後、「後輩……ああ、朝のアイツか。いいぞ」と言った。
「ええと……今日は遅くなる。晩飯は作れ……いや、冷蔵庫のゼリーでも食っとけ。以上だ」
そう言い終えると、蓮は訝しげな目を向けてきた。
「おいおい、浮気か?……って、え?お前ら、同棲してんの?!」
「阿呆言え、同居だ。頼んだぞ」
「おい、ちょっと待てって、おい!」
喚く彼を無視して、訓練室を出る。藪蛇をつついた気分だ。面倒事に首を突っ込まないように、この後の任務の為の準備をするために待機部屋に戻った。
ほぼ何も無い部屋の中に無造作に置かれた二丁の拳銃を手に取り、腰のホルダーに入れる。窓際に置かれた時計で集合時間まで二十分あることを確認する。そう言えば、あの時計もユウのものだったか。
ソファに寝転び、物思いに耽る。
知らない人の為に
ルーラ:ルーラとは、ドラゴンクエストに出てくる呪文。主人公だけが特別に使え、行ったことのある街に一瞬で移動できる。しかも、消費MP0で。その代わりというか、屋根がある所やダンジョンの中では使うことが出来ない(これこそがかの有名な「〇〇は てんじょうに あたまをぶつけた!」である)。ちなみに、この呪文は空間転移による瞬間移動ではなく飛行して移動するものである。よって、貴方がこれをやろうと思ったら間違いなく首が折れるからやめた方が良い。
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