恋敵と書いて恋敵《とも》と呼ぶ
-現在-
「そうそう、そんなこともあったよな」
「懐かしいわねぇ…」
「色々とあったからな」
「そうよねぇ…」
ゼル達はそう言って5月の時の出来事を振り返っていた。ランドも「そうだったな」と口にすると…「あの時はゼル達には助けられたな」と続けた。
「なに言ってる?助けられたのはむしろ俺達の方だぜ」
「そうよ、もしあの時ランドがいなかったらきっと私達はキングミノタウロスに殺されてたわね」
「確かにな」
「間違いないわね」
「そうか?まぁそこはギブアンドテイクだったしな互いに貸し借りは無しだな」
「ランドはホントにマイペースなやつだな」
ゼルはそう言って呆れた顔をした。その時ふとペンドラが「ねぇシシリア…」と声をかける。シシリアは「はいどうしました、ペンドラさん?」と返事をした。
「あれからあのバカ息子がどうなったとかは知らないかしら?」
ペンドラの質問にシシリアは「あぁボンズさんはですね…」と話し出した。
「父であり領主のガイゼル様に勘当されてから迷惑をかけた街の皆さんに賠償をするために鉱山で働いてるそうですよ」
「え、賠償はランドの報酬から出されたんじゃないの?」
「えぇ、それもなんですがガイゼル様が言うには…」
『ランド殿からの施しはその者達へのこれまでの生活の保障として配りました。ボンズには彼等への精神的苦痛に対する慰謝料を払わせます!勿論私は一切援助せず世間の厳しさを徹底的に叩き込みます!』
「と言うことで、完済するまでは鉱山での期間的奴隷ということになるそうですよ」
「フン、いい気味だわ」
ペンドラはそう言って満足そうだった。
「ちなみに、完済するとしたらどのくらいかかりそうなんだ?」
ゼルがそう尋ねるとシシリアは「そうですねぇ…正確な期間はわかりませんが、額と賠償する人数を考えたら鉱山奴隷の賃金では35年から40年はかかるかと思います」と答えた。
それを聞いたランド達は
(それはもはや人生終わってるのでは?)×5
と思った。
その後もみんなで「そういえばあの時は…」なんて思い出話をしていると「あ、ランドさん、それにペンドラ達もいたのね」とノエルがやって来た。
「あ、ノエルさんこんにちは。今日はどうされたんですか?」
ノエルを見たシシリアがそう声をかける。それにノエルは「ちょっと鍛冶の資料とかの本を借りてたのを返しに来たんですよ、それと新しい本を借りに。そしたらみんなの姿が見えたので」と答えた。
「久しぶりねノエル、元気にしてた?」
「おうノエル久しぶりだな、俺達は昨日王都に戻ってきてな。明日にでも依頼を受ける前に装備の点検を頼みに寄るつもりだったんだ」
「あの装備にしてから調子が良くてな」
「魔力の調整もすごくやり易いわ」
「そう、良かったわ。なにか気になることがあったら言ってね、ランドさんもその時は言ってくださいね」
「ありがとう、今のとこは問題ないよ。あ、そうだ装備のことじゃないんだがノエルに頼みたいことがあるんだけど」
「頼みたいことですか?」
「あぁ、実は女性の髪飾りを3つ造って欲しいんだ」
「じょ、女性の髪飾り?」
ランドの言葉にノエルは驚きを隠せない。
「そ、それはどなたか女性にプレゼントするためですか?」
「?、そりゃそうだろ。俺が髪飾りつけてどうするんだ?」
「そ、そんな…」
ノエルは力が抜けてその場でへたり込んだ。
「ど、どうしたんだノエルどこか悪いのか?」
それを見ていたゼル達やシシリアは(ランド(さん)に悪気は無いんだろうけどなぁ)×5と思っていた。
「い、いえ大丈夫です…ちなみにランドさんそれはどなたにあげるのですか?」
「え、シシリアとアリスとサトラにだけど?」
「そ、そんな!私の知らないところでシシリアさんとアリスさんどころかサトラさんまで…。さようなら私の初こ…「普段お世話になってるからなにか贈り物しようと思ってな」…へ?」
「こないだちょっとそういった話になってな。それで俺としては腕が信用できるノエルに制作を頼みたいと思ったんだが、っとそうなればノエルにもお世話になってるな。すまん3つじゃなくて4つ頼めるかな?」
「4つ?そ、それは私にもくれるってことですか?」
「そう言ってるんだが?まぁ自分へのプレゼントを自分で作るってのも変な話なんだが俺はノエルより腕のいい鍛冶屋を知らないからなぁ」
(プレゼント…ランドさんからのプレゼント…それに私を信用して任せてくれてるのよね///)
「まぁ無理なら他になにか…「わ、わかりました作らせてもらいますね!」…お、おぅよろしく?」
食いぎみにそう答えたノエルに少し驚きながらランドはそう言った。
そうして急に落ち込んだり元気になったりするノエルの反応に首をかしげながらランドは「ところで、新しい本を借りるってなにを借りたんだ?」とノエルに尋ねた。
ランドの素朴な質問にノエルは「え?」と声をあげると「え、え~とですね…鍛冶とかをしてるとどうしても生活リズムが固定できないのでそういったことによる体調の変化を起こさないようにする習慣とかの本ですね」と答えた。
「へー、そんな本があるんだな。俺も冒険者で生活リズムバラバラだし今度読んでみようかな、タイトル教えてくれないか?」
「い、いえランドさんには必要ないと思いますよ」
「なんで?」
「ラ、ランドさんは十分強いですし逆に変な習慣を混ぜると逆効果かもしれませんから!今のままのランドさんがきっとベストですよ!」
「そうなのか?」
「そうですよ!」
ランドの言葉に必死に頷くノエルを見たシシリアはノエルの手で隠している本を目にすると(あ、あの表紙の柄はたしか…)と心で呟いた。
そんな様子を見たリンは(シシリアはあの本に心当たりがあるみたいね…後で聞いてみよう)と思っていた。
「うーん、それなら仕方ない諦めるか」
ランドがそう言って本への興味をなくしノエルがホッとした顔をしてからシシリアは「ノエルさん、ちょっとこちらへ…」とノエルに声をかける。
「な、なんですかシシリアさん?」
「いいからちょっと…」
そう言って図書館の隅の方へと歩いていくのを見たリンは「ちょっと私も魔法の本を見てくるわね」と言って二人の後を追った。
「ど、どうしたんですかシシリアさん?」
「いえ、今ノエルさんが持ってるその本なんですけど…」
「こ、この本がなにか?ただの習慣を変える本ですよ?」
「いえ、その本のタイトルは「男性をドキッとさせる女性の仕草100選、気になるあの人もこれで貴女に大興奮」ですよね?」
「ななな、なにをそんな///私がそんな本読むなんて「ノエルさん」…うっ!///」
「ランドさんが気になる者同志としてアドバイスしますね。その本は全く役に立ちません」
「え?」
「もう一度言いますね、その本は全く役に立ちません」
「で、でもそれはやってみないと解らないんじゃ…」
「…貸し出しリストの一番上を見てください」
「え?貸し出しリストの一番上…あ!」
貸し出しカードの一番上には「シシリア」と書いてあった。
「わかりましたか?ランドさんはそんなものでどうにかなるレベルの鈍感ではないんですよ。そもそもですね…あのアリスさんの猛アピールすら華麗にスルーしているランドさんに通用するわけないじゃないですか」
「うぅ、そうなんですね…」
「そうなんですよ、だからお互い自分の出来ることで戦いましょう」
「わ、わかりました。で、でも負けませんからね」
「私も負けませんよ、あでも先程ランドさんから頼まれた髪飾りについては楽しみにしていますね。自分のだけ拘り抜いてそれ以外は手抜きなんてことはしないでくださいよ?」
「わかってますよ、私も職人です。いくらなんでもそんなことはしません。ランドさんは私を信用して任せてくださったんです、ランドさんに失望されないように皆さんにピッタリの物を心を込めて作らせていただきます」
「安心しました。では楽しみにしていますね」
「はい、任せてください」
そう言って二人は笑い合った。
そんな二人のやり取りをこっそりと見ていたリンは…
(同じ男を狙ってるのにシシリアもノエルもそしてここには今いないけどアリスも仲が良いわねぇ。恋敵と書いて恋敵と呼ぶってやつかしら?)と考えていた。




