ギルマスへの報告と待っていた人
「あぁそういえばランドさん」
ノエルとの"挨拶"(?)を終えたシシリアがランドに声をかける。
「なんですか?」
「ギルマスがランドさんが戻ってきたら顔だしてくれと言ってましたよ、おそらく同行者がいるだろうからいたらその人も一緒にとのことでした」
「ん?俺もか?」
「そうですか、わかりましたちょっと行ってきます。ノエルはどうする?」
「そうですね、せっかくなので私も挨拶しておきます。今後なにかしら依頼を頼んだりすることもあるかもしれませんし」
「そうか、それじゃあ三人で行くとするか」
するとゼル達は「じゃあ俺達は酒場の方で待ってるよ、ちょうど夕方だしランド達が戻ったら飯にしてその後でアレックスさんとノエルを送ってから宿を探すことにするわ」と言った。
「わかった、じゃあちょっと行ってくる」
そう言って三人がギルマスの部屋に向かうのを見送ったシシリアは(冒険者の格好してたけどあれ「陛下」ですよね…?あぁ、だから「あの方」が…。ランドさんとノエルさん、巻き込まれなきゃいいけど…。)と内心で呟いた。
そんな事を思われてるとは知らないランド達はギルマスの部屋の前に来るとノックをする。
「ギルドマスター、ランドです」
すると中から
「あぁ帰ってきたか、開いてるから入ってくれ」とフォルクスの声が聞こえてきた。
「失礼します」
そう言ってランドはアルガスとノエルと部屋に入った。
部屋に入ったランド達に奥の椅子に座ったフォルクスが視線をやると溜め息をつきながら言葉にした。
「やっぱりランドと一緒にいたか、お前もいい年なんだからもう少し落ち着いたらどうだアルガス?」
「疲れた顔をしてるな?細かい事を気にしてあんまり考え込むと禿げるぞフォルクス。俺みたいにこうやってたまには気分転換しろよ」
「誰のせいで疲れてると思ってんだよ!こちとらランドがたまにやらかす事でも頭がいたいのに妙な案件を増やすな!」
そんなアルガスとフォルクスのやり取りを見たノエルは「ランドさん、ここのギルドマスター…陛下にあんな態度で不敬にならないんですか?」と素朴な質問をした。
ランドは「あぁそれは大丈夫だよ、あの二人はね…」とフォルクスとアルガスの関係性をノエルに説明した。
「なるほど、陛下が冒険者をしてた頃の…」ランドから聞いた説明でノエルは納得した。
「まぁいい…お前には後でまた話をするとしてだ、ランドそちらの嬢ちゃんは誰だ?」
アルガスに呆れたフォルクスがランドの横にいるノエルに視線を向ける。
「あぁ、紹介しますねこちらがギルマスの言っていた鍛冶屋ダイガンさんの後継者のノエルです」
「はじめまして、ダイガンの孫のノエルと言います」
「ダイガンの?そうかお前さんが…奴が亡くなる少し前に「今後は俺の後継者に槍のメンテは頼むようにな」と手紙が来ていたが、まさか孫だったとは」
「おじいちゃんが造った槍が有るのですか?」
フォルクスの言葉にノエルが興味を持った。
「あぁ、そこの壁にかけてあるやつだ」
そう言ってフォルクスが指で示す方に視線をやったノエルは「これがおじいちゃんの造った槍…」と目を見張る。その様子を見たフォルクスは「手にして見るか?」と声をかける。
「いいんですか?」
「もう現役は退いたが今でもたまに鍛練はするし、何かあれば俺も前線に出ることもあるからな。その時はお前さんにメンテを頼むこともあるだろうから構わないぞ。ランド、重いから壁からはお前が外してやれ」
「わかりました、よっと」
そう言ってランドは壁から槍を外すとそっとノエルに手渡した。
「これがおじいちゃんの造った槍、スゴい…こんな製錬今の私にはまだ想像もつかない…」
「まぁアイツはアレックスと並んで「伝説の職人」と呼ばれたほどだからな。ちなみに俺が持ってるこの剣がアレックスの手紙に書いてあったダイガンが打った剣だぞ」そう言ってアルガスも腰の剣を指差した。
「そういえば、国王の剣を造ったって書いてたような」
ノエルはそう言ってアルガスの腰の剣に視線を向ける。
「せっかくだから見ておくか?俺も今後はお前さんにメンテを頼むことになるだろうしな」
そう言ってアルガスは腰から鞘ごと外した剣をテーブルの上に置いた。
「で、では失礼して…」
ノエルはゆっくりと鞘から剣を抜くとその刀身を眺める。
「こっちもスゴい…流石おじいちゃん…」
ノエルは祖父の作品をみてそう感動していた。
するとフォルクスがふいに言葉を発した。
「あぁそうだ、せっかくだし今は落ち着いてるからそのまま持っていってメンテを頼むよ。アルガスもそうしたらどうだ?」
「お、そうだな。今回はけっこう使ったし頼めるか嬢ちゃん」
アルガスがそう言った時ランドはふと違和感を感じた。
(ん?今ギルマス一瞬笑ったような…)
「あ、はいわかりました」
そう言ってノエルはアルガスの剣を鞘に納める。
「じゃあ嵩張るからとりあえず俺のマジックバックに入れておこうか」
「はいお願いしますランドさん」
そう言ってランドはまずはフォルクスの槍を仕舞った。
そして今度はノエルが手にしてる剣を手にしようとした時「そういえばフォルクス?」とアルガスがフォルクスに問い掛ける。
「なんだ?」
「どうして俺がランドと一緒にいると解ったんだ?」
アルガスがそう尋ねるとフォルクスは「あぁ、それはな…」と話し出す。
「こんな書き置きがあったからだ、そして丁度ランドがそっちへ行くのは知ってたからな。お前のことだから「面白そう」と言って合流すると思ったんだ」
そう言うとフォルクスは一枚の紙をテーブルに置いた。
-ガイゼルが領地に戻るらしいからちょっと気分転換もかねてついてくわ、ついでにダイガンの墓参りもしてくる。一応騎士団もつれていくし数日で戻るから執務はアクスに投げてくれ。じゃあ行ってくる。-
アルガスより
その手紙を見たランドは(なんと言うか、適当な手紙だな…)と思った。
「コレは俺が執務室に置いてった手紙じゃないか、何でこんなとこにあるんだ?」
アルガスがそんなことを口にするとフォルクスが「そりゃあ、ソイツが手紙を持ってきて俺に「アルガスが戻ったら引き留めておいてね」と言ったからだよ」と答えた。
「ソイツ?」×3
三人がそう問い返すとフォルクスは「あぁ、ソイツがな」と後ろを指差した。
「?」×3
三人が後ろを向くとそこには一人の人物が立っていた。
「執務ほっぽりだして何してるのかしらアルガス?」
「げっ」
「あ…」
(誰?)
「セセセ、セーラ!?なぜここに?」
「そりゃ貴方が戻ってきたと連絡が来たから来たに決まってるじゃない」
「連絡だと?ハッ、まさか…」
アルガスはそう言ってフォルクスの方を見る。
「そうだ、お前が戻ったら早馬を走らせるように受付嬢達には伝えてあったんだ。ランドと一緒にいる年上の冒険者が来たら城に連絡しろとな」
「ハ、ハメやがったなフォルクス!」
「自業自得だろが」
そんな言い合いをしている二人を見ながらノエルは「あの、ランドさんあの女性のかたは?」とランドに尋ねた。
「あの方はセーラ様と言ってアルガス陛下の奥さんだよ、陛下とギルマスと昔パーティーを組んでいたときは僧侶をされていたらしい」
「あぁなるほどそういう…」
ノエルはランドの説明でようやく理解した。
「王が気分転換とかいって勝手に外に行くなんて、ちょっと話し合いが必要ね」
そう言ってセーラはメイスを構えた。
「ちょ…ちょっとタンマ、落ち着けセーラ!」
「あまり備品壊さないでくれよセーラ」
「善処するわ、仮になにか壊れてもアルガスの個人口座から弁償するから安心してフォルクス」
そんな三人を見るランドとノエルは
(あれが王妃様の武器のメイスか…硬そうだな)
(あ、あれミスリルでできてる。良いデザインだなぁ)
とか考えていた。
「そ、そんな…フォ、フォルクス!助けてくれ!」
「いやー、助けたいがあいにく槍をメンテに出しててな」
そう言ってフォルクスはニヤニヤしている。
「く、かくなるうえは…おいノエルの嬢ちゃん!剣をこっちに!」
「え?えーと…」
アルガスの剣を持ったままのノエルがセーラの方を見ると
「あら、可愛いお嬢さんね。でもそれはそのまま彼に渡さずに持っててくれるかしら?」ニッコリ!
「ひぅ…!」
セーラの笑顔の向こうの気配にノエルは怯えて固まってしまった。
「な、なにしてる!剣をこっちに!」
「渡さないでね?」
「え、えっとえっと…」
二人に交互に言われて困惑するノエルだった。
それを見かねたランドが「ノエルそれを貸してくれ」そう言ってノエルの手からアルガスの剣を受け取る。
「よ、よしランドそれをこっちに…っておい?」
ランドはそのまま剣を自分のマジックバックに入れた。
「陛下、流石に今回は陛下に非がありますキチンと謝った方がよろしいかと。行こうかノエル、ゼル達も待ってることだし」
「え、あ…はいわかりました」
「ではギルドマスター、俺達はこれで失礼します」
「あぁ、お疲れさん。ちょうど夕方だし俺も飯を食いにいくか、じゃあ陛下と王妃様俺達は失礼します」
そう言って三人はギルマスの部屋を出ていった。後ろからは「おい待てお前ら!置いてかないでくれ!セ、セーラ落ち着け…俺は今丸腰だぞ?丸腰の相手に手を出すのは騎士としての礼儀に…え?自分は王妃だし元僧侶だからそんな道知らない?そんなこと言わずに話を聞いてく…ぎゃあぁぁぁぁ!」と悲鳴が聞こえた。
「あ、あの…」
ノエルがランドとフォルクスにそう声をかけるが
「大丈夫だノエル」
「いつものことだから気にすんな」
二人はそう返事するだけだった。
酒場でゼル達と合流するとゼルが
「なんかさっき二階から物凄い音と衝撃があったが何かあったのか?」と聞いてきた。
それにランドは
「気にするな、なんでもない。な、ノエル」
「え、えぇそうですね…」
「?」
二人の返答に首を傾げるゼル達だった。




