闇ギルドの待ち伏せ
地下三階のセーフルームで一夜を過ごしたランド達は朝になりダンジョンの帰路を進んでいく。
「しかしまぁ、あの鎧が言ってた通りモンスターに会わないな。楽で助かるぜ」
ゼルがそんなことを言うと他のメンバーも同意した。
「確かにね、これなら今日の内にはダンジョンから出れるかしら」
「そうだな」
「早く帰ってお風呂に入りたいわね、ダンジョンでは身体を濡れた布で拭くくらいしか出来ないしね」
そんな感じて雑談している。
「リンの言う通りお風呂に入りたいわねぇ…ねぇ帰ったら三人でお風呂にいきましょうよ。疲れも取りたいしさ」
「あら、いいわね。ノエルもそうしましょ」
「うん、私もさっぱりしたいし賛成」
そんな女性陣の話を聞いていた男性陣は
「お、それはいいな。俺達も風呂に行こうぜ」
「そうだな、ランドも行くだろ?」
「あぁ、構わないぞ。流石に今回は色々とあったしな、俺も汗を流したい」
「よっしゃ、せっかく知り合ったんだし裸の付き合いってもんも大事だな。風呂を上がったらみんなで打ち上げだ!」
(は、裸の付き合い?ラ、ランドさんの裸…///)
ゼルの言葉にノエルが反応する
「賛成よ」
「久しぶりに酒がのめるな」
「あんた一応僧侶でしょ?大丈夫なの」
「別に禁止はされてないからな」
「まぁとりあえず無事に帰れたらだな」
「…///」
「ノエルも打ち上げ参加するでしょ?…ってどうしたのノエル?」
(裸…ランドさんの裸///)
「ノエルってば!?」
「…!な、なに?どうしたのペンドラ」
「だから、戻ったらお風呂に行ってそのあと打ち上げしましょうって言ってるのよ。ボーッとしてどうしたの?」
「な、なんでもないわ。そうね、そうしましょ楽しみだなぁ///」
「?」
友人の行動に首をかしげるペンドラだったが、(まぁ初めてのダンジョンで疲れてるのね)と思い気にしないことにした。
そんなペンドラの考えをよそに
(裸の付き合いって聞いてランドさんの裸を想像しちゃうなんて…私ってムッツリだったのかしら///)
そんなことを思う自分をみてノエルは…
(やっぱり私、ランドさんのことを好きになったみたい///)
と自分の気持ちを確信したのだった。
そうして遂に地下一階フロアに来たときにそれは起こった。
「な、なんなのあなたたち!?」
ペンドラがそう言葉を発する。
一階フロアに戻ったランド達を何十人もの武装した男たちが待ち構えていたのだ。
「よぉ、長旅お疲れさん。悪いがここでお前達には消えてもらうぜ、と言っても死ぬのは野郎だけで女共三人は殺す前に色々楽しませてもらうがなぁ」
「ばか、あの鍛冶屋の女は連れてくるように言われてただろ?楽しむなら残りの二人だけだ」
「おっとそうだったな。間違えたら俺達がボスに殺されちまうとこだったぜ」
そう言って男達は下卑た笑みを浮かべる。
「こ、こんなところで騒ぎを起こしても他の冒険者に見つかって捕まるだけよ?」
リンがそう牽制するが男達はニヤリと笑うとそれに答える。
「そんな心配は要らねぇさ、ボンズ様が手を回してこのダンジョンには今日から三日間他の冒険者は立ち入り禁止になってるからな。お前達の死体も見つかるまでにはダンジョンに吸収されて消えてるぜ」
「そ、そんな」
ノエルが絶望した顔をする。
「くそが、どこまで腐ってやがんだあのバカ息子」
「もはや神でもあの男は救えんな」
ゼルやガイルもそう言って武器を構えるが多勢に無勢、焦りの色は隠せない。
「お、抵抗するつもりか、別にいいが良いのか?こっちはお前らを全員殺したらそれまでだがそっちは仮に一人でも逃がしたらギルドの定めた「冒険者同士の殺し合い禁止」に抵触して人生終わるぜ?喧嘩くらいならあれだが殺すと不味いよなぁ」
「く…」
ゼル達がそうして戸惑っていると今まで黙っていたランドが口を開いた。
「なるほど、そっちは俺達を殺しても死体はダンジョンに吸収されて証拠隠滅。俺達がお前らを殺すとギルドの決まりに抵触して捕まる。と言うことか」
ランドの言葉に男が答える
「そう言うことだな、つまりお前らは終わりなんだよ」
「ふむ…それなら…」
ランドは少し思考したかと思うとガイルに声をかける。
「ガイル、六階の時みたいに俺以外のメンバーに結界魔法をかけて守りを固めておいてくれ」
「?…あぁわかった」
ガイルは言われた通りに結界魔法をかける。
「どうする気だランド?」
ゼルがそう言うとランドは答える。
「なに、ちょっとした法の抜け穴ってやつだ。結界魔法もあるし大丈夫だとは思うがノエルを任せたぞ」
そう言ってランドは一人で男達に相対する。
「なんだ?お前が一人で俺達を相手するのか?話は聞いてるぜ、お前Cランクなんだろ?その程度で俺たちに勝てるのかよ」
「今回はちょっとムカついてるんでな、頼むから死ぬなよ?」
「なめやがって!やっちまうぞお前ら!」
男達はそうしてランドに一斉に襲い掛かった。
数分後…
「ぐぁぁぁ、いてぇいてぇよぉ」
「ちくしょう、Cランクじゃねぇのかよ化け物が~」
「う、腕が…俺の腕がぁ」
「動けねぇ、ちくしょう足の腱を切りやがった!」
男達は全員地面に転がり呻き声をあげていた。
ランドは倒した男達の荷物を全て奪うと部屋の隅に積み上げた。
「もう大丈夫だろう、みんなこっちに来てくれ」
ランドの言葉にポカーンとしていたゼル達がランドの方に向かう。
「流石だな、あの人数はきついかもと思ったがものともしないとは」
「ほんとに規格外ね」
「全くだ」
「凄いわね」
「ランドさん、怪我はないですか?」
各々がランドに言葉をかける。
「ありがとうノエル、大丈夫だ。さてリン、この積み上げたあいつらの荷物を燃やせるか?」
「できるけど、燃やしてどうするの?」
「なに、あいつらが回復しないようにしとくだけだよ」
「?まぁわかったわ」
そう言ってリンは荷物に火炎魔法をぶつける。
「どういうことよ?」
ペンドラがそう尋ねた時に男達の一人が声を出した。
「てめぇら、覚えとけよ!このままじゃ済まさねぇからな!」
その言葉にランドが返事する。
「はて?どう済まさないんだ?」
「ここまでのことをしたんだ、ギルドの法に触れてることを報告してやるからな」
男の言葉にランドは笑って答える。
「ハハハ、おかしなことを言うな?」
「なんだと?」
「お前が言ったんじゃないか?殺しはともかく喧嘩くらいならゆるされると。お前達の誰か一人でも俺が殺したか?」
「な?」
男はまわりを見る、確かに全員戦闘不能だが誰も死んでいない。
「あと、お前達は気づいてないみたいだがおかしいと思わないのか?」
「な、何をだ?」
「ここはダンジョンだぞ?ここまで騒いでおいて何故モンスターが一匹も来なかったと思う?」
「は?」
「実は俺達はとある物を持っていてな、それのおかげでここのモンスターが近付いて来ないんだ。だが、俺達がここを去ったらその効果も消える。これの意味がわかるか?」
「あっ」×5
そこまで聞いてゼル達も気づいたようだ。
「そう、コイツらが言ったように冒険者同士の殺し合いはご法度だが喧嘩くらいなら問題ない。その後ダンジョンでモンスターにやられたとしてもそれは俺達の知るところではない。俺達はたまたまダンジョンで他の冒険者の集団に絡まれて喧嘩になった。そのいざこざでコイツらの荷物は燃えてしまった、そこにモンスターがやって来た…それだけだ」
「そ、そんな…」
男が絶望した顔をする。
「まぁ安心しろよ、ここはダンジョンと言っても一階だし出てくるのはゴブリンやコボルトやスライム位だそれくらい倒せるだろ。あ、そうか…武器もアイテムも無いし腕や足の腱が切れてるから動けないんだっけ?それならヤバイかもな。でもきっと心優しい他の冒険者が助けてくれ…あ、三日は立ち入り禁止になってるんだったか?じゃあ自力で生き延びるしかないな頑張れよ。もし助からなくてもきっとお前らの死体を見た知り合いが無念はらして…そうかここダンジョンだから吸収されて消えちゃうのか、誰にも知られずに消えちゃうがそれもクールだよな」
ランドはそう言って男の肩をポンと叩いた。それを見ていたゼル達は…
(エグい…)
(容赦ないわね)
(酷い…)
(サラッと怖いことを…)
と心で呟いた。
そうして男の肩を叩いたランドは立ち上がり「じゃあ俺達は帰るとしよう」とゼル達に言った。
「あ、あぁそうだな」
ゼルがそう言ってランドの後に続き他のみんなもそれに続く。
「ま、待ってくれ!助けてくれ!」
男がそう懇願するが…
「断る!一時的とはいえ俺の大事な仲間たちに危害を与えようとした奴等まで助けるほど俺はお人好しじゃない!」
ランドはそう冷たく言い放った。
そうしてランド達はダンジョンの出口に向かって歩いていく。後ろの方から少しずつモンスターの気配がしてくるがランド達は気にすることはなかった。
「待ってくれ!助けて…助けてくれよぉー!」
男の声がダンジョンに響くがその声に反応するのは近付いてくるモンスターの気配だけであった。
そんな声を遠くに聞きながらゼル達は心に決めたことがあった。
(ランドを怒らせるのは絶対にやめよう)×4
そんな中ノエルだけは…
(大事な仲間…ランドさん、私のこと大事なって言ってくれた…///)
と方向違いの思いを抱いていた。
恋は盲目ってやつですか




