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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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ランドVSヤスツナと親子破滅のカウントダウン

「さぁようやく俺の出番だな、さっそくやるとしようぜ♪」


舞台に上がったヤスツナは、まるで新しいおもちゃを買ってもらえた子供のような笑顔でランドに声をかけてきた。


「随分と嬉しそうだなアンタ…」


そんなヤスツナにランドがそう返すと、ヤスツナは「そんなの当たり前じゃねぇか♪」と更に笑顔になる。


「アンタがアイツラとってる時から、ワクワクして仕方なかったんだからよ。やっと出番が来たかと思うともう楽しみで仕方ねぇよ♪」


「アンタが楽しめるかどうかはともかく、こちらとしても負けるわけにもいかないのでな。アンタのお仲間からの忠告もあったことだし様子見は無しだ(実際この男はかなり強い、油断はできんな)…」スラッ…


そう言うとランドは初めから腰の太刀を抜いた。


「ははっ、アンタ面白いな。いいぜ…こちらとしてもアンタの実力をしっかりと堪能してぇからよ♪」スラッ…


そう言うとヤスツナは腰に携えていた太刀を二本抜き、それぞれ片手に握って構える。


「っ!」ピクッ…


ランドはヤスツナが太刀を構えた途端、周りの空気が締め付けるような緊張を持ったことに反応する。


「こいつは驚いた、かなり出来るとは思っていたがこれ程とはな(急に空気が変わったな、これ程の気迫は陛下やイゾウ、そしてガーネットとの手合わせの時のようだ)…」


「褒め言葉として受け取っとくぜ、お前さんもかなりの気配を持ってるよな。午前中の発表会の時よりも鋭く隙のない気配…まだまだ底がありそうだぜ♪」


「さてどうかな、それはアンタが自分で確かめてみたらどうだ?」


「言われなくてもそのつもりだ、アイツ等三人を圧倒したアンタの力…この俺にも存分に見せてもらうとするぜ♪」


そう言うとヤスツナは、ランドに向かって真っ直ぐと突撃していった。


「しっかりと俺の力を測ってくれよ!」ブォンブォン…!


ヤスツナはランドに接近すると、両手の太刀を凄まじい速度で振るい攻撃を仕掛けてきた。


(速い!)


ランドはヤスツナの斬撃の速度に思わず驚いたが、軌道をよく観察し一つの斬撃を躱してからもう一つの斬撃を太刀で受ける。


ガッギィン…!!


ヤスツナとランドの太刀が重なった時、周りに凄まじい金属音がなる。


「ハハッ…こいつは驚いた。まさか俺の太刀を捌ける奴がこの国に居たとはな♪」


「世界は広いってことだ、こちらとしてもアンタ程の腕前のやつはそうそう見たことがない(強い…陛下やガーネットのような洗練された剣筋とは違う。コイツの剣には型が無い、イゾウもかなり独特な型をしていたがコイツはそれ以上に読みにくい…)」


「褒められるのは悪い気がしねぇな、だがまだまだ楽しませてもらうぜぇ〜♪」


ヤスツナはそう言うと更に太刀の速度を上げてランドに斬りかかる。


「おりゃりゃりゃりゃりゃー!」ズバババババ…!


「ぬっ(まだ上がるのか…)」


ヤスツナの太刀に合わせるようにランドも太刀を振るうが、やはり二本と一本では対応に多少の誤差が生じ、ランドの対応に遅れが出てくる。


「どうした、お前さんの腕はこんなもんじゃないだろう。もっと俺を楽しませてくれよ♪」


そう口にしながら、ヤスツナはランドを攻め続ける。


「とっ…はっ…」


ヤスツナの攻撃に、ランドは防戦一方で少し構えが下がる。


「ここだぁっ!!」


ヤスツナがそう叫びランドに向かって両手の太刀を振り下ろした瞬間…


「ほいさっ!」グイッ…!


「なにっ!?」グラッ…


ランドはヤスツナの攻撃に備え、横向きに構えていた自分の太刀を握る力を弱める。


ヤスツナはまさかランドが防御の力を緩めるとは思わず、目一杯力を込めていた勢いから前のめりになる。


振り下ろした勢いのまま、前のめりになったヤスツナに対して…ランドはすかさず後ろに転がるように回ると…


「そいやっ!」ゴッ…!


「がっ!」ガツッ…


仰向けのような姿勢でヤスツナに両足で蹴りを入れるが、ヤスツナは即座に片足を上げてそれを防ぐ。


どうにかランドの攻撃を防いだヤスツナは、蹴られた勢いでランドから少し距離を取る。


「驚いた、咄嗟に片足で防ぐとは大した反射神経だ…」


ランドはヤスツナの反応速度に素直に感心した声を出す。


「いやぁまいった、まさかそんな方法でやり返してくるとは思わなかったぜ。コンゴウとの試合で、アンタは格闘も出来ることを見ていたのに武器でのやり合いですっかり抜けてたわ♪」


ヤスツナはランドの言葉にそう返すと益々楽しそうな笑顔をランドに向ける。


「次は引っかからねーぜ、下手に出し惜しみして怪我する前に俺に本気を見せくれよ♪」


ヤスツナの言葉にランドはピクッと反応する。


「俺が本気じゃないと言ってるのか?」


「おうよ、アンタの実力はこんなもんじゃねぇだろ?」


「なぜそう思うんだ?」


「なんでってそりゃあ…」


ヤスツナはそう呟くと、自身の太刀をランドに向けながらハッキリと言葉にした。


「アンタ…ホントは太刀使いじゃねーな。かと言って徒手空拳の使い手という気もしねぇ、つまりアンタはまだ自分の本来の戦闘スタイルで戦っちゃいねぇだろ?」


ヤスツナの言葉にランドは…


「………驚いたな、今のちょっとの攻防でそこまで読み取るとは。流石はSランク冒険者ということか…」


ランドの言葉にヤスツナはニヤリと笑うと「だろ♪」と口にする。


「俺は頭を使うことは苦手だが、こと戦闘にかけては天才なもんでよ♪」


「先程の女性がアンタは馬鹿だと言ってたが、どうやら違うようだな」


「いや、タマモと比べたら俺は断然馬鹿だけどな♪」


「そこは認めるのか(スッキリとした性格のやつだな、普通に付き合う分には仲良くなれそうだ。陛下やゼルとかとも気が合いそうだな…)」


ランドはこのヤスツナという男に、自分の親しい知り合い達の姿を重ねてなんだかホッコリとした。


「まぁ口での会話はこの辺にしとくとしてだ、それでどうするんだ?」


「どうするとは?」


ヤスツナの問いかけにランドはそう返す。


「とぼけるなよ、俺に本当の実力を見せてはくれないのかってことだよ♪」


ヤスツナがそう言うと、ランドが「そちらこそとぼけてるんじゃないか?」と言葉を返す。


「あん?」


ランドの言葉にヤスツナが首を傾げると、ランドは手にした太刀を構えて言葉を続ける。


「俺の本来の戦い方を見たいなら、俺がそうせざるを得ない様に掛かってこい」


ランドがそう言うと、ヤスツナは一瞬ポカンとした表情をしたが…すぐに表情を戻すと大笑いし始めた。


「アッハッハッハッハ、そりゃそうだ。俺としたことが…アンタの腕前が凄いあまりに肝心なことを忘れていたぜ。戦ってる相手に「本気」を出すまでもないと思われている内に、「本気で来てくれ」なんて頼んじゃあいけねぇよな♪」


そう言うとヤスツナは再度二本の自分の得物を構える。


「是が非でもアンタの本気が見たくなった、大量の拝観料を受け取ってくれや」チャキ…


「それに値するお支払いを期待しよう…」カチャ…


「ご期待に添えるとするぜ、なぁに釣りは要らねぇとっときな♪」


「見合う料金以上の過剰なお支払いはご遠慮します」


「そんな事言わずに受け取れやぁーー♪」


そんな会話を交わしつつ、再度ヤスツナとランドは激突した。


― ― ―


その頃、医務スペースの方では…


「…コンゴウ、それホントなの?」


「あぁ、あくまで俺の推測の域を出ないが恐らくな…」


「マジか…まさかあの男が…」


「と、とにかく…私達も舞台の方に戻りましょ。もしコンゴウの推測が正しかったら、いくらヤスツナでも万一があるかも…」


「そうだな…一先ず戻ろう。コンゴウ怪我の方は平気か?」


「問題ない、もう痛みも大分引いた」


「急ぎましょ!」


そんな会話をしてコンゴウ、ハヤテ、タマモの三人は舞台の方へと急いで向かった。


― ― ―


そしてランドとヤスツナが戦い始めた頃、観客席の一角では…


「ふふ、本当にランドさんは凄いわね。まさかあの「剣舞の心得」相手にあそこまで出来るなんて♪」


「全く…あの者は本当に底が知れませんな」


そう言って喜ぶツバキと、ランドの出鱈目さに半分呆れるような言葉を発するサイガがいた。


そこに突然「ふん、精々今の内だけ余韻に浸っていろ!」と声が聞こえてくる。


二人が声の方に視線を向けると、そこには顰めっ面をしたブソウとワガマが立っていた。


「あらブソウ、まだ私達にお祝いの言葉を投げるには早いんじゃないかしら♪」


「まぁ時間の問題ではありますがの♪」


ツバキとサイガの言葉に、ブソウとワガマは「煩いわ!」と叫ぶ。


「こちらにはまだヤスツナがいる、三人を相手にしたあの鎧武者が疲労で奴に負けるのは時間の問題だ!」クイッ…


「そうだ、多少腕が立つくらいでSランク四人全員を倒せるものか!」ファサ…


そうのたまう親子に二人は(相変わらずウザい仕草だ…)と思いながら言葉を返す。


「ならば私達と賭けをしますか、どちらの護衛が勝つかを?」


「それ程の自信なら受けてみなされ、よもや逃げたりはせぬよな?」


煽るようにそう口にする二人に、親子は「望むところだ!」と売り言葉に買い言葉で乗ってくる。


「ヤスツナが勝ったら、貴様の巫女頭の権限で…この街の衛兵達の武具は今後全て俺の店で買ってもらおう!」


「あとランとイブキにはこのボク専属の侍女になってもらう!」


自分達の欲望を隠すこともなく喚く親子に、二人は(キモッ…)と思いつつ言葉を返す。


「ではこちらの護衛が勝った場合は?」


「何をしてくださるのかな?」


二人の言葉に親子は「まぁあり得ないだろうが…」と前置くと宣言する。


「俺の店の商品を今日は全部タダにしてやる!」


「ボクはこの髪を全て切ろうじゃないか!」


「良いでしょう、その勝負乗りました。では後で逃げられても困るのでここにその旨を互いに書いて署名をしましょう…」


ツバキはそう言うと一枚の紙を差し出した。


「「いいだろう!」」


ブソウとワガマの親子は、勢いのままに紙に署名する。


「確かに、では勝負の決着を待つとしましょう。くれぐれもお逃げにならぬよう…」


「クドいぞ、俺とて商人だ二言はない!」


「娘がボクにこき使われるのを罪悪感とともに眺めるがいい!」


ツバキの言葉に親子はそう返すと去っていった。


親子が去るとツバキは「けっ…」と口にすると素の言葉で呟く。


「ウザモサ親子が、あとで精々泣いたらええねん!」


「お館様も鬼ですな…」


「ええやんサイガ、あの親子は金に物言わせて威張っとるし。いっぺんどん底見たらエエんや!」


「にしても、お嬢様に断りもせずにあんな約束しておまけに私の孫まで…」


「ヘーキヘーキ、ランドさんが負けるかいな。サイガはランドさんが信用できんか?」


「まぁ…ランド殿ならあのヤスツナにも勝てるでしょうから、そこの心配はしておりませんがね…」


「せやろ、にしてもホンマにセーラには感謝やわ。事が終わったらちゃんとお礼の手紙書かなあかんな♪」


「そうですな」


そんな会話がされており、ブソウ親子の破滅のカウントダウンが始まっていた。

アホ親子に破滅の足音が近づいていく

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