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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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ランドVS式神使いのタマモ

「さぁ覚悟しなさい、二人の弔い合戦よ!」ビシッ…


そう言うとタマモはランドに向かって指を突き付けた。


「弔いって、別に殺してないんだが…」


ランドがそう返すと舞台下のヤスツナも「アイツ等を死なすなよ〜」とツッコんだ。


「煩いわね、意気込みよ意気込み!」


そう言うとタマモはランドに向かって声を出す。


「アナタ覚悟なさいよ、私はさっきの二人のように甘くないわよ」


「そうか、あの二人もかなりの腕だったがアンタはそれ以上か(うーん、見るからに前衛だとは思えないしな…。魔法使いかと思ったが杖なようなものもない、得体が知れんな…)」


ランドが言葉を返しながらそう思案していると、タマモは懐から小さな珠が連なった首飾りのような物と…長方形に切られた紙を取り出した。


「さぁやりましょうか」


そう言って構えるタマモに、ランドは「その前にちょっといいか?」と声をかける。


「なによ?」


タマモがそう返すとランドは「いや、ちょっと確認なんだが…」と言葉を続ける。


「アンタ相手に俺はどうやって勝敗を決すればいいかと思ってな」


「どういう意味よ?」


ランドの言葉にタマモがそう聞き返すと、ランドは「誤解はしないでほしいんだが…」と断ってから話を続ける。


「アンタ前衛職ではないようだし、俺としても出来れば女性に手荒な真似はしたくない。先程の頑丈な男や忍びの男のような戦闘をしたらアンタ大怪我するだろ?」


タマモはランドの言葉にキョトンとしたが、ランドの言葉の雰囲気から「女だから侮っている」という気配は感じなかったので正直に答える。


「まぁそうね…アナタがコンゴウに繰り出した拳なんかを私が貰ったら死ぬと思うわ」


タマモの返答にランドは「だろ?」と言うと言葉を続ける。


「と言ってこっちが「女には手を出せん」と言って戦闘を放棄するわけにもいかないし、先にどうすればそちらが負けを認めてくれるかを決めておいてほしいんだが…」


ランドの言葉にタマモは「うーん…そうねぇ…」と少し考えるとランドに声をかける。


「それじゃあアナタに対して…私が戦闘の意欲を無くしたら負けを認めるわ。私としても無理をして、今後の冒険者業に支障をきたすのは避けたいところだしね」


「了解した、アンタがその紙や珠付きの紐で何をするか知らんが…お手柔らかに頼むよ」


「それは難しいわね、こちらとしても出来ることなら…アナタを負かしたいからね!」


そう言うとタマモは手にした紙を三枚ランドに向かって投擲した。


「む?」


ランドはタマモが自分に向かって放った紙に反応するが、タマモの意図が解らずに困惑する。


ランドに紙が近付いた瞬間、タマモは手にしていた珠の紐を両手でなにやら唱え始める。


「怨獏観令…菩唱…式神招来!」


「ガァァァァッ!」


タマモがそう呪文のような言葉を唱えた途端、放たれた三枚の紙が狼へと姿を変えてランドに襲いかかった。


「のわっ!?」


ランドは突然の事にびっくりしたが、迫る狼達の攻撃をどうにか回避する。


「へぇ…やるじゃないの」


タマモがそう言って笑みを浮かべると、ランドは「びっくりした…」と感想を述べる。


「まさか紙が変身して襲ってくるとは、アンタ召喚士ってやつか(ディクターのような魔法陣とかは無いんだな…)?」


ランドの言葉にタマモは「ちょっと違うわね、私は別に魔物を召喚してるわけじゃないもの」と返す。


「そうなのか?」


「ええ、私の職は「陰陽師(おんみょうじ)」よ」


「陰陽師?」


「そうよ、自身の魔力によってお札…さっきの紙の事ね、それを媒体に式神と呼ばれる精霊を呼び出して戦う。それがこの私…「式神使いのタマモ」の戦闘法よ!」


そう言うとタマモは更に三枚のお札を投げて呪文を唱える。


即座に追加のお札もその姿を熊、鷲、蛇へと姿を変えてランドに襲いかかった。


「グォォォォン!」


「クワァォォ!」


「シャアァァァァ!」


「「ガァァァァ!」」


追加された三体にさっきの狼達まで加わり、ランドに向かって六体の式神が猛烈に襲いかかる。


「わっ…たっ…どわっ…!」


ランドは式神達の攻撃を回避しつつ、今後の対策を考える。


(参ったな、召喚された魔物なら倒したら消えるんだけど…この式神とやらも消えるのかな?)


そう頭で思案したランドは、試しに接近してきた熊の式神の攻撃にカウンターを合わせて拳を入れてみる。


「ていや!」ブンッ…!


「グォッ!」ドゴッ…!


ランドの拳を受けた熊の式神は、ランドの攻撃で下がりはしたものの消滅はしなかった。


「流石にそう簡単ではないか…」


「無駄よ、私の式神は普通の魔物のような物理的な攻撃では倒れないわ。手足を斬ったって再生するわよ、まぁ全体を覆うほどの攻撃魔法とか魔物のブレスとかは別だけどね、アナタ見るからに戦士タイプだし魔法は使えないでしょ?」


タマモの言葉にランドは「それは厄介だな、俺は魔法はからきしだからなぁ…」と返す。


「でしょうね、それなら諦めて降参したら?」


「そういうわけにもいかないんだよなぁ…っと危ない!」


タマモの言葉にそう返しつつ、ランドは式神達の猛攻を回避し続ける。


ランドは式神達の猛攻を回避しつつ、自分なりに対策を考える。


(うーんただ殴ったり斬ったりでは倒せないとなるとどうするかな、俺は魔法は使えないし…精霊と言うならトルテがいたら勝てるんだけどなぁ…)


そんな事を考えながらランドは先程のタマモの言葉を頭の中で反芻する。


『まぁ全体を覆うほどの攻撃魔法とか魔物のブレスとかなら別だけどね』


(さっきの彼女の言葉からするに、絶対に倒せないと言うわけではないみたいだ。全体を覆うほどのってことは、奴等の体の何処かに「壊されたら困る所」があるということだよな…調べてみるか)


ランドは式神達の攻撃を回避しつつ、そう考えると行動に移した。


「先ずはお前だ…」


ランドは初めに熊の式神に攻撃を回避したタイミングで腕を掴むと、そのまま狼とヘビの式神に投げつけた。


「グォッ!」


「「ギャウ!」」


「シャッ!」


ドシン!


熊の式神に押し潰された狼と蛇の式神はうめき声を上げる。


「無駄よ、そんな攻撃で私の式神は…ってちょっと!?」


タマモがランドの行動を「無駄だ」と口にした直後、ランドは残っていた鷲の式神を跳躍して捕まえた。


「クワッ!?」


「ちょっと失礼…」


鷲の式神を掴んだランドは、そのまま式神の体を観察する。


「ふむ、不思議なもんだ…これが紙で出来てるとは思えないな。まるで本物のようだ…おやこれは?」


ランドは式神を観察してあるものに気が付いた。


それは鷲の式神の首元に数センチの「鷲」と書かれている文字だった。


「こんな所に文字が書かれてるな…どれ…?」


ランドはモノは試しにと、その「鷲」という文字の所が崩れるように太刀で斬りつけた。


「クワァォォ!」シュウゥゥゥゥ…ハラリ…


途端に鷲の式神は声を上げると、姿が消滅し破れたお札にその姿を戻した。


「あっ…!」


自分の式神がやられたことにタマモは声を上げる。


「成る程、どうやら体の何処かにある文字を崩せば元の紙に戻るようだな。それで纏めて攻撃できる魔法やブレスは苦手ということか…」


「くっ…」


自分の術の弱点を見抜かれたタマモは額から汗を流す。


「そ…それが解ったとして、アナタに残りの式神の文字を見つけられるかしら。今度はさっきの様に纏まって抑えられないように分散してアナタに向かわせるんだから、そんな状況でコイツ等の文字を探せるかしら!?」


タマモはそう声にすると、残りの式神でランドを包囲するように陣形を取り「かかりなさい!」と残りの五体の式神をランドにけしかけた。


「グォォォォン!」


「「ガァァァァ!!」」


「シャアァァァァ!」


ランドに向かって式神達が各方向からランドに襲いかかる。


「倒し方さえ解ればこっちもんだ…」


そんな式神達を相手に、ランドは慌てることなく太刀を構え「文字の場所が解らないなら…」と呟くと…


「せいやぁ!」ズバババババン…!


ランドは声を出しながら太刀を凄まじい速さで振るい、迫る式神達を細切れに斬り裂いた。


「グォォォォン…!」


「「ガァァァァ!」」


「シャアァァァァ!」


シュウゥゥゥゥ……


細切れにされた式神達は、最期の断末魔を上げながら紙に戻り消滅した。


「なっ!?」


自慢の式神達がやられたことにタマモは驚きの声を出す。


「何処かにある文字が崩れるほどバラバラにしたらいいわけだ」


そう言いながらランドは太刀を鞘に収める。


「さてどうする、まだ続けるか?」


呆気に取られてるタマモにランドがそう尋ねると、タマモは「はぁ…」とため息をついて言葉を返す。


「止めておくわ、アナタにこれ以上お札を斬られるのも嫌だし。作り直すの面倒だから降参するわ」


「そうか、なかなか興味深いものを見れたし勉強になったよ。知り合いに式神とやらを相手にする時は大胆に攻撃するようにと伝えるようにしよう」


「あはは、まるで物凄い魔法使いやブレスを吐ける知り合いが居るみたいな口ぶりね。冗談にしても大げさよ♪」


「……」


タマモの言葉にランドは無言になる。


そんなランドの様子にタマモは「え?」と顔を強張らせる。


「……冗談なのよね…?」


「さてな…」


「知り合いに凄腕の魔法使いがいるの?」


「世界の基準は知らないが…元Sランクの魔法使いとAランクの魔法使いなら一応(あと魔族とか…)」


「ブレスを吐ける知り合いは?」


「……」フィッ…


タマモの質問にランドは首を横にそらした。


(居るのね、つまり何らかの強力な魔物を手なづけているということね…)


ランドの反応にタマモは自身で結論付けると思わず言葉にする。


「アンタホントに何者なのよ?」


「今はただのランお嬢様の護衛だ、普段はしがないCランク冒険者だけどな」


(Cランク!?嘘でしょ!?)


ランドの言葉にタマモは心の中で叫ぶ。


「アンタがCランクとか、アンタの周りどーなってるのよ…?」


「どーなってるって、別に普通だと思うが…」


「成る程…アンタ一人突出して変なのね」


「はい?」


「いえいいわ気にしないで、今回は完敗よ…また機会があればアナタの言ってる魔法使いさん達にも会わせて頂戴。畑は違えど魔力を武器とする者同士話してみたいわ」


「まぁその機会があれば…」


「そう…楽しみにしているわ♪」


そう言うとタマモはランドに手を差し出す。


「言っとくけど、ウチのリーダーは馬鹿だけど強いわよ?」


「だろうな、アンタ等三人が認める程の実力者なんだから」


ランドはそう言うとタマモと握手を交わした。


「まぁ私はもうどうでもいいからゆっくりするわ。あとはウチの馬鹿を楽しませてあげて、アイツは楽しけりゃ勝ち負けに拘らない馬鹿だから」


「依頼を受けた割には随分と軽いな?」


「依頼だからアンタと勝負したけど、私もあのバカ息子は嫌いなのよ。かと言って途中でキャンセルも逃げたみたいで嫌だったからね」


「それ言っていいのか?」


「もうどうでもいいもの♪」


そう言うとタマモはランドにウインクして舞台から降りた。


そして舞台下にいた自分達のリーダーであるヤスツナのところへと向かい声をかける。


「見てたでしょ…アイツ凄いわよ、アンタも気をつけなさい」


「おうよ、さっきの太刀捌きは見事なもんだった。益々楽しめそうだぜ♪」


タマモの言葉にヤスツナは嬉しそうにそう言葉を返す。


「楽しそうにしちゃって…油断するとやられるわよ?」


「わかってるわかってる♪」


ヤスツナはランドとの戦いが楽しみで仕方ないのか、タマモの言葉にも適当に返していた。


タマモはヤスツナの様子に「はぁ…」とため息をつく。


(全く…なんでこんな戦闘馬鹿を好きになったのかしら)


そんな事を頭で考えていると、ヤスツナが「しかしあれだな…」と呟く。


「ん、どうしたのよ?」


ヤスツナの声にタマモが反応するとヤスツナは言葉を続ける。


「お前に怪我が無くて良かったぜ、せっかく美人な顔に傷が付くことにならなくてよ♪」ポンッ…ナデナデ


そう言うとヤスツナはタマモの頭をポンポンと撫でた。


「なっ…///馬鹿言ってないでさっさと上がりなさい。せっかく少し疲れさせたのに無駄になるでしょ///」


タマモの言葉にヤスツナは「あいよ♪」と笑いながら舞台へと上がっていった。


そんなヤスツナを見送りながら、タマモは「もう///」と呟く。


(馬鹿のくせに…時々そんな風に優しいこと言ってくれるんだから///)


タマモは心の中でそう呟くと、気を取り直して「さ…一度コンゴウ達の様子を見に行こうかしら」と医務スペースへと向かうのだった。

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