ランド、双子を装備してランにバフ(意味深)をかける
発表式の会場でそんなゴタゴタがあってから数時間後、街の「運動広場」では会場よりも観客が集まりごった返していた。
「もうすぐ始まるぞ」
「一体どっちが勝つだろうな…」
「さぁなぁ…やはり「剣舞の心得」の方が有利だとは思うけど…」
「いやしかし、あの鎧武者もランちゃんとイブキと一緒に祠の最下層まで行ったなら相当の実力者だと思うぜ」
そんな声が至る所から聞こえてくる中、ランドはランとイブキと共に人目につかない広場の端っこに立っていた。
「なんか…会場より広いせいか観客増えてるな」
「せやね…」
「あれから会場にいた観客達が、街で触れ回り人が集まったようですね…」
イブキがそう言うと二人は「成る程…」と呟いた。
「にしても随分と集まったもんだ…」
「これはもう街の殆どの人が来てると言っても過言じゃ…「お姉さま〜」…ん?」
ランドとランが感想を口にしていたその時、三人のもとに駆け寄ってくる二つの人影があった。
「無事に帰って来られて良かったです」
「お怪我がなくて安心しました」
駆け寄りながらそう口にしたのは、この街の「雅楽」の演奏を担う家庭の双子の娘「スミレ」と「モミジ」だった。
「おぉ二人とも来てたんか、二人のお守りのお陰でこうして元気に帰ってきたで♪」
ランは二人を笑顔で迎えると二人の頭を撫でる。
ランの言葉に双子は「えへへ///」と嬉しそうに笑いながら、表情を真剣に戻すと口を開く。
「会場でのお話を聞きました」
「あのバカ息子のせいで大変なことになりましたね」
双子の言葉にランは「まぁしゃあないわ」と肩を竦める。
「あのアホは喚き出したら面倒やからな、でも逆を言えばこれでウチ等が勝ったらもう完全に何も言えなくなるんやから…トドメを刺すって考えたらエエこっちゃ♪」
ランの言葉に双子は「でも…」と心配そうな表情を浮かべる。
「相手はあの「剣舞の心得」ですよ」
「この街であの人達より強い人なんかいないのです、もしかしたらこの国全体で見ても…」
双子の心配にランは「心配あらへん」と笑顔で返す。
「ウチの護衛のランドはんは凄く強いんや、ヤスツナはん達にも負けたりせぇへんよ」
ランの言葉に双子はランドの方に視線を向ける。
「鎧武者さん、どうか勝ってくださいね!」
「お姉さまをお守りください!」
自分にそう頼む双子を見たランドは…
(この子達は本当にランが大好きなんだな。だとしたら、この子達にはもう隠しておくこともないか…)
そう判断したランドは、先日の祠の前で会った時のようなくぐもらせた声じゃなく…ハッキリとした自分の地声で双子に返事をした。
「任せておけ、君達の大切なお姉さまを悲しませるようなことはしないよ。俺はその為にこの国に来たんだからな」
「「…っ、今の声は!?」」
普段から家で楽器の演奏等の練習をしているため耳が優れていた双子は、ランドの声を聞いてハッとする。
「どないしたん二人とも?」
双子の反応にランがそう尋ねると、双子はランに視線を向けて口を開く。
「お姉さま、私達を助けてくれた男性の話は覚えていますか?」
「あのバカ息子から私達を助けてくれた観光客の方です」
「二人を助けた人?」
ランは双子の言葉に一瞬考えたが、イブキが「ラン様、ほらワガマの取り巻きを一人でノシたとか言ってた…」と口にすると…すぐに「あぁ…」と思い出した。
「あれやな、アンタ等を強引に連れて行こうとしたあのアホを札束で逆にシバいたとか言ってた人やな…」
「確か…後ろを向かずにワガマの取り巻きのナイフを止めたとかいう…」
ランとイブキの言葉に双子は…
「そうです」
「その事です」
双子が頷くとランは「その人がどないしたん?」と尋ねる。
「その人の声なんですが…」
「この鎧武者さんの声にソックリなんです!」
「へ?」
双子の言葉にランとイブキはランドの方に視線を向ける。
「ランドはん?」
「ランドさん…?」
二人ががランドに尋ねるように声をかけると、ランドは「まぁなんというか…」と呟く。
そんなランドに双子は視線を向けると、改めて確認するようにランドに声をかける。
「もしかして貴方は…」
「ラインハルトお兄さんなのですか?」
双子の質問にランドは、それに答える代わりに双子の視線に合うように体を屈めると…
「こないだは嘘ついて悪かったな、俺の本当の名前はランドだ。ランの試練が終わるまではあまり身元を知られたくなかったんだ」カパッ…
そう言って仮面を双子の前で外して素顔を見せた。
二人はランドの素顔を見て、パァッと笑顔になると嬉しそうに声を上げた。
「ラインハルトお兄さんなのです!」
「あの時は本当に助かったのです!」
そう言うと二人は嬉しそうにランドに抱きついた。
ランドはそんな双子をそれぞれ片手で抱えつつ「ははっ、君達には街を案内してもらったからな。今回も君達が悲しまないように頑張るよ」と言葉にする。
「お兄さんなら安心なのです」
「頑張ってください」
ランドに抱えられた二人はキャッキャッとはしゃぎつつそう言葉にした。
そんな三人を見たランとイブキは…
「何やら仲の良い兄妹みたいですね…」
「せやね(エエなぁあの二人ランドはんに抱きかかえられて…まぁウチもさっき肩車してもろたけど///)」
そんな会話をしながら三人を眺めていた。
そしてそろそろ広場の中央に向かおうかとなった時、ランドは「さて行くとするか…」と口にする。
ランドの言葉にランドに抱えられた二人は「なのです!」と口にする。
「いざ出陣なのです!」
「バカ息子に天誅なのです!」
双子の言葉にランドは「楽しそうだな君達は…」と笑いつつ「っといけない、仮面をつけないとな」と口にする。
「ちょっとゴメンよ、仮面を着けたいから君達降りてくれるかな?」
「「え〜」」
ランドの言葉に双子は不満そうな声を出す。
「お兄さん会場ではランお姉様を肩車してたと聞いたのです」
「イブキさんも抱えてたと聞いたのです」
「「私達も肩車して欲しいのです」」
双子の言葉にランドが「そう言われても…」と困惑する。
「一度降りてくれないと仮面が着けれないんだけど…」
ランドがそう言うと、ランが「ランドはん仮面貸し、ウチが着けたるわ」と口にする。
「ん…そうか、それならお願いするよ」
ランドがランの言葉にそう答えると、ランはランドの手にしていた仮面を自分で手にする。
「ほしたらランドはんこっちに顔向けてや」
「わかった」
ランドはランの言葉に従って、双子を抱えたままランの方に顔を向ける。
「ほしたらジッとしててな…」
ランはそう言うとランドの顔に仮面を着けようとするがそこでハッとする。
(あ…あかん…成り行きでそう言うたけど、よく考えたらランドはんの顔がジッとウチのこと見てるやん///)
ランはそこでようやく、仮面を着けるためにはランドの顔を正面から直視しないといけない事に気が付いた。
「ラン?」ジーッ…
ランドはランが中々仮面を着けてくれないので、ランを真っ直ぐ見つめながらそう声をかける。
「あ…あぁ…ちょちょ…ちょっと待ってな(そんなジーッと見つめんといてぇな…あ、ランドはんって睫毛長いんやな…ってなに言ってるねんウチは///)」
「?」ジーッ…
「あああの…あの…(や…やから近いって…///)」
ランドに見つめられてるランは少し挙動不審になる。
その様子を見ていた双子は…まだ子供と言っても女性であるが故にランの挙動にピンときた。
((お姉様…ラインハ…いえランドお兄さんが気になるのですね…♪))
そう察した二人は、ランドの肩の上で目配せをするとニヤリと笑い頷く。
「ランドお兄さん、もう少しランお姉様に顔を近づけたほうが良いのです♪」
「その方が着けやすいのです♪」
「ん…こうか?」
ランドは双子の言葉になんの疑いも持たずに、固まっているランに顔を近づける。
そうしてランドとランの顔が更に近づいた時…
「「はっくしゅん♪」」
わざとらしく双子はそんな声と共に、わざとらしくクシャミをした素振りをしてランドの頭を後ろから少し押した。
「へ?」グイッ…
ランドも流石に双子の不意打ちは予想できず、そのまま更に顔が前に出ると…
チュッ…
ランの頬にランドの唇が触れた。
「はひゃっ!?」
突然の出来事にランは思わず変な声が出た。
「ラララ…ランドはん、いきなりなにすんの(ラ…ランドはんの口がウチの頬に…こ…これってキスされた///)」
「いやすまん、この子達が突然クシャミをしたもんだから…」
ランドがそう謝ると、ランは「そ…そやね…ふ…二人とも気をつけなあかんやん///」と双子に注意する。
「「ごめんなさーい♪」」
言葉では謝りつつも、双子の顔は「してやったり♪」という表情をしていた。
「も…もう…二人ともホンマに…///」
ランは双子にそういいつつも…
(なんかこの子等にはウチの気持ちバレたような気がするな…まぁ偶然やったとしても嬉しかったから、後で二人にお菓子でも買ってあげよかな。……にしてもランドはんの唇、思ったより柔らかかったなぁ///)
と内心では双子に感謝するのだった。
その後、そんなハプニングの後で吹っ切れたのか…ランはランドに仮面を嵌着けると「よし!」と気合を入れる。
「ほしたら行くで、あのバカ息子に引導渡したるんや〜。まぁ言うてもやるんはランドはんやけど…♪」
「「おー♪」」
ランの言葉にランドの肩に乗った双子も呼応する。
そんな少女達の様子に、イブキとランドの大人組は…
「ラン様とお嬢さん二人は楽しそうですね…」
「まぁ下手に緊張してるよりいいさ、俺はそれに応えるまでだ」
「ランドさんもご武運を、…まぁ祠での様子を見るに、ランドさんが負ける姿が想像できませんが」
「ご期待に添えるよう頑張るよ」
そんな会話をしながら、ランの後ろにイブキが付き添い…その後ろをランドは双子を肩に乗せたまま進むのだった。
そうして先頭を歩くランは…
(ランドはんからのキス、事故とはいえなんや安心できたなぁ…今なら何も怖くないわ///)
そんな風に胸が高鳴りつつ気持ちは晴れやかだった。
― ― ―
その頃、グラン王国の王都では…
「ランドお兄ちゃん居ないの、会いたかったなぁ〜」
「ランドはまた何処かに出向いてるのかい?」
「まぁランド殿の事ですから…またどこかで誰かを助けているのでしょうな」
「そうなんですよ、今回は私も詳しくは知らないんですけどね…」
「どこに行ってるんだろうね、心配だなぁ〜」
「大丈夫だファル、あのランド殿がどうかなるなんてことはそうそう起きないよ」
「そうだよ、ランドの事だから今頃またなんかムカつく奴に因縁つけられて困惑してるさ」
「それはそれで大丈夫と言えるんでしょうか…?」
交易でやって来たヴォルグとファル、そしてガレリアがギルドに顔を出してシシリアと会話していた。
― ― ―
そして同じ頃ランドはというと…
「貴様ぁ…今度はその双子を侍らせてボクへの挑発かぁ。ボクを馬鹿にするのもいい加減にしたまえよぉぉぉぉぉ!!」ファサッ…
「うっさいですバカ息子め!」
「お前なんかお兄さんの爪先程も魅力が無いのです!」
「がぁぁぁぁぁぁ、ガキ共までバカにしやがってぇぇぇぇ!!」ファサッ…
「二人ともあまり言い過ぎてやるなよ…」
自分に向けて更に敵意を向けるワガマと、そんなワガマに自分の肩の上で舌を出して煽る双子に困惑していた。




