冒険者養成学院―その後②―
―ミーシャからの手紙―
ランド先生お元気ですか?こちらは私も含めみんな元気にやっています。
カインズは先生に貰ったグローブをつけて毎日剣の訓練をしています、こないだは「オーク」を一人で討伐してました。
ダストンは森の散策の時に私達に突進してきた「ワイルドボア」を止めてビクともせず頼りになってきました。先生に貰ったグローブがしっくりくるそうです。
兵士の皆さんも先生に貰ったベルトを身に付けていつも私達を気にかけてくれていてとても優しいです。
私も補助魔法が大分早く発動できるようになりました。
ソアラちゃんは「自分で書くから」と言っていたので一緒に投函したのでまた読んであげてください、私もソアラちゃんもそして学院長も先生に貰ったブローチをいつも身に付けて大切に使わせていただいてます。こないだカインズがソアラちゃんのブローチにミートソースを飛ばしてしまったときはソアラちゃんが怒り狂ってカインズの頭が鳥の巣みたいにチリチリになっていました。
またみんなで遊びに行くのを楽しみにしています、お身体に気を付けてね。シシリアさんやアリスさんにもよろしくお伝えください。
―ミーシャより―
「優しく気配りができる子ですよね」
シシリアの言葉にランドは「そうだな、あのパーティーを上手く纏めてるのはミーシャかもしれないな」と返した。
「しかし、カインズも災難だな。頭が鳥の巣みたいにされるとは…」
「それだけソアラちゃんにとっては大切なものなんでしょう」
「それだけ大切にしてくれてるなら送ったかいがあるというもんだな」
二人(学院の皆さんいいなぁ~、ランドさんが用意してくれるものがますます楽しみになるわね///)
「後はソアラさんからの手紙ですね」
「そうだな、彼女はなんて書いてるんだろう?」
そう言ってランドは最後の手紙を開封した。
―ソアラからの手紙―
先生、お元気でしょうか?私は皆と訓練に励みながら毎日元気に過ごしています。
先生から貰ったブローチも大切に身に付けさせていただいてます。この間カインズがミートソースをブローチに飛ばしてきたので思わず電撃魔法で黒焦げにしてしまいました。すぐにミーシャが回復魔法をかけたのでカインズに怪我はありません、少し髪が焦げて丸まってましたがそれくらいはいいかと思っています。
またみんなと一緒に遊びに行くのを楽しみにしています。
それと……先生はまだCランクですか?先生の実力は理解していますがもし今のランクでの生活が厳しくなってきたらいつでも言ってくださいね。今はまだ無理かもしれませんが私は今の仲間と一緒にいずれ「Sランク」になります。
そうなったら私が先生の生活を支えますのでいつでも頼ってくださいね!先生一人くらいなら余裕で養えるように頑張ります。そしてゆくゆくは先生だけでなく私と先生の…///いや今はまだいいです、お身体に気を付けて頑張ってください。
―ソアラより―
「ソアラは俺が貧乏になることを心配してくれてるんだな、今のところ生活に困るようなことはないが。それに俺以外にも養おうなんて優しい子だな」
二人(いや、これは暗に「一緒に暮らしたい、そしていずれ夫婦になりたい。あわよくば子供も欲しい」と言ってるんじゃ?)
「皆さんいい子なんですね」
サトラの言葉に「あぁ、短い期間だったが自慢の生徒だよ」とランドは答えた。
そんなやり取りをしている二人を見てシシリアとアリスは…
二人(メリッサさんとソアラちゃんも油断ならない相手になりそうね。これに関してはランドさんが鈍感でホントによかった)
と心で同調していた。
「さて、長々と話していたからもう夕方だな。そろそろ帰ろうか」
「そうですね、今日はここまでにしておきましょう」
ランドがそう言うとシシリアもそれに続いた。
「アリスとサトラさんは今日はどうするんだ?」
「私はできるならランドさんの家で泊まりたいです!」
アリスはそう希望するが「いや、さすがにそれは」とランドが言葉につまると「なに言ってるんですか、ダメに決まってるでしょう」
サトラがそれに待ったをかける。
「えーー?」
「独り暮らし殿方の家に上がり込むなんて駄目ですよ。貞操が危ないです、ランド様の」
「え、俺?」
サトラの言葉にランドが問い掛ける。
「そそそ、そんなことないわよ、なにを根拠にそんなことを言うのかしら?」
「動揺してる時点でアウトですよ」
「そんなことないわよ、別にランドさんの家の食器を舐めたりランドさんがお風呂に入ってる時に服の匂いを嗅いだり寝ている時に布団に入ろうなんて思ってないんだからね」
アリスが早口で色々と口走るが咄嗟にサトラがランドの耳を塞いだのでランドには聞こえなかった。
「ん?どうしたんだ?」
ランドはそうサトラに問い掛けるがサトラは「突然すいません、ちょっと同族の汚点を聞かせてしまうとこだったので」と耳から手を離して答えた。そしてアリスを一瞥するとため息をつきながら口にした。
「どうして貴女はランド様が絡むとそうポンコツなんですか。言いたくないですがさっきの言動は先程聞いた話のドルクと同じレベルですよ?」
「な、私があれと同レベルだというのですか?」
「はい」
「ぐぬぬ」
そんなやり取りを見ていたシシリアはアリスに苦笑いしながらもサトラに提案した。
「でしたらお二人は私の家に泊まりますか?そのくらいならスペースありますし」
「よろしいのですか?」
「いいですよ、たまには女性同士で交流深めましょうよ」
「それではお言葉に甘えさせていただきます」
「ええ、どうぞどうぞ」
「決まったか?それじゃあまたシシリアの家までは送るとするよ」
「いいんですか?」
シシリアがそう尋ねるとランドは「かまわないよ」と答えた。
「しかし、ランド様には手間ではないですか?私もいますし心配されることもないかと」
「確かにサトラさんの腕が立つのは知ってるけどな、それでも万一があるといけないしな。シシリアもアリスもサトラさんもみんな美人なんだから黒いこと考えるやつはいるかもしれないし」
「……サラッとそんなことをいうんだから///」
「ランドさん、そんなに私たちの事を///」
「わ、私もですか///」
二人(ん?)
「当然だろ?さっきも言ったがサトラさんだって美人なんだから。主君に仕えるのは立派だけどもっと自分も見ないと」
「そ、そうですか///」
二人(んん?)
「それじゃあお言葉に甘えて、よろしくお願いいたします」
「あぁ、それじゃあ行こうか」
「はい、あそれとですねランド様」
「ん?」
「私のことは別にさん付けしなくてもいいですよ。気軽にサトラと読んでください」
二人(!?)
「そうか?それじゃあそうさせてもらうなサトラ。それからそっちも「様」なんてつけなくていいぞ」
「そうですか、では今後もよろしくお願いしますランドさん」
「そうだな、よろしく」
二人(これは…不味いのでは?)
シシリアとアリスはなにか嫌な予感がした。
「どうしたんだ二人とも?帰らないのか?」
ランドの言葉にハッとした二人は「い、今いきます」と言って二人のあとを追った。