冒険者養成学院⑬
「あ、帰ってきたぞ!」
そこにいた全員がカインズの指で示した方向を見るとソアラを背に背負ったランドがこちらに歩いて来るのが見えた。
「ほらね、だから大丈夫だったでしょ」
メリッサがそう言ってランドの方へ歩いていく、他のメンバーもそれに続いてランド達へ近づいていった。
「ただいま戻りました」
「ご心配おかけしました。せ、先生もう大丈夫なので下ろしてください」
ランドとソアラがそうみんなに告げると全員ホッとしたような顔をした。
ランドの背中からソアラが降りると「ソアラちゃん!」そう言ってミーシャが涙目でソアラに抱きついた。
「良かった!ソアラちゃんが無事で良かったよぉ…」
そう言うミーシャにソアラも「心配させてごめんね、それとありがとう」と涙ながらに答えた。
全員がそれを見て笑顔になるとメリッサを筆頭に
「お疲れ様」
「しかし先生はすげぇな、サイクロプスも倒すなんてよ」
「さっき学院長に聞きましたよ、俺達じゃ勝てないわけだ」
「ソアラちゃんを助けてくれてありがとうございます」
「無事でよかった」
「予想以上の強さですね」
「私の剣知りませんか?」
みんながそれぞれの言葉でランドに労いの声をかける。
「あぁ、間に合ってよかったよ。あ、兵士さんすいませんお借りした剣返します。それとメリッサさん、みんなに話したんですか?」
「もう大丈夫かと思ってね、駄目だったかい?」
「いえ、別に隠してたわけでもないので構いませんよ」
「話を聞いたら納得だぜ、そりゃ強いわけだそんな先生ならサイクロプスだって…ってあれ?」
「どうしたカインズ?」
ダストンがそう尋ねるとカインズが不思議そうに口にした。
「先生、後頭部に小さくタンコブ出来てるぜ?流石に先生でもサイクロプス相手じゃ無傷とはいかなかったのか?」
カインズのその言葉にソアラがビクッと反応した。
「あぁ、これは…「そ、そうなのよ!サイクロプスが私に投げてきた破片を先生が盾になってくれて!」……」
「へー、やっぱり先生はすげえなぁ」
「サイクロプスの攻撃でその程度なら耐久力もすごいんですね」
「……おい」ボソッ
「……なによ?」ボソッ
「まぁいいがな……」
「って言うかソアラちゃん…」
「な、なに?」
「さっきからランド先生のこと「先生」って呼んでるね?昨日まで「アンタ」とか「あの男」とか言ってたのにどうかしたの?」
「う…///」
「そういえばそうだな?」
「なんかあったのか?」
クラスメイトの三人にそう問われたソアラは「え、え~と」と詰まってから
「ほ、ほら今回は流石に助けられたからね。それなのに失礼な呼び方をするのは礼儀としてはどうかと思ってね///」
「なるほど」
「そういうもんか」
「ん~~?」
男子勢は納得してミーシャは少し気になる様子を見せたがソアラは「そ、そんなことより!」と誤魔化すかのように声を出すと「学院長に話を聞いたってなんのこと?」と盛大に話題を変えることにした。
「あぁ、ランド先生はな…「その前にちょっといいかな?」…へ?」
カインズが答えようとするのを遮るようにメリッサがソアラに問いかけた。
「西の森には魔物が出るから訓練に行くとしたら教員の許可が必要なはずだけど、君に許可を出したのは誰だい?」
その問いにソアラが答えた。
「ドルク先生です、みんなで食堂にいたときに偶々来られたので許可をもらいました」
「そうかい、ドルク先生が…「ドルク先生が許可を出したのですか!?」…ん?」
そのやり取りを聞いていた兵士が驚きの声をあげる。
「ソアラさん、ドルク先生に許可を貰ったのはいつですか?」
兵士がそうきくとソアラは「え、昼頃ですけど?」と答える。
「なんと!なぜそのようなことを?」
「どうしたんだい?」
驚いている兵士にメリッサがそう尋ねると兵士は「えぇ、実は…」と話し出した。
「先程はソアラさんのことで話すのが抜けましたが、冒険者ギルドからの通達が来たのは学院長とランドさんが出掛けて少ししてからです。学院長が居なかったのでドルク先生へと通達の書類を持っていき判断を仰いだのです。ですから昼頃の時点でドルク先生はサイクロプスの事はご存じのはずですが…」
「それは本当かい?」
「はい、その時ドルク先生にはこの件は自分から学院長に伝えるし「初等科」の生徒とかもいるから不安を煽らないようなるべく口外しないようにと言われました。ドルク先生はそう言われましたが内容が内容だけに又聞きになっても構わないかと思い丁度私が交代に来たときに学院長が帰ってこられたのでお伝えしたのですが」
「なるほど、君の判断は正しいよ。おかげでソアラ君は助かったんだ、よく言ってくれたね」
「いえそんな…」
メリッサが兵士を労い兵士が照れている。
「って事はドルク先生は知っててソアラに西の森に行く許可を出したのか?」
「ソアラが死ぬかもしれないのに」
「ひどい!」
「そ、そんな…」
ソアラ以外の生徒の三人が怒りを露にしソアラは絶句する。
「あのゴリラめ…!これはちょっとソアラ君が無事で良かったでは終わりそうにないな。ねぇランドく…っ!?」
メリッサがそう言ってランドの方へ視線を向けるとランドは無表情だったが明らかに怒っている雰囲気を出していた。本人もまわりに悟られないように感情を内に抑えているようでその雰囲気を察知したのはここにいる者ではメリッサだけだった。
「ドルク先生とはお話をしないといけませんね、メリッサさん」
「そ、そうだね。流石にこの人数だと私の部屋では狭いから訓練場の方に行こう。悪いけど君ドルク先生を呼んできてくれないかい?」
ランドの気配に少し動揺しつつもメリッサは兵士の一人にそう頼んだ。
「わ、わかりました」
そう言って兵士がこの場を後にすると「それじゃあ私達も移動しようか」
メリッサの声で全員が訓練場へと向かう。
移動してる中メリッサは心の中で思った。
(ランド君がここまで怒るとはね……こりゃドルク…いやあのゴリラもただじゃすまないな。そしてそんな時でも生徒達や兵士に影響無いように感情を抑えるなんて君はホントにマイペースで優しいね。ますます好きになりそうだよ///)




