冒険者養成学院⑦
ソアラ視点での話になります。
「今日からマーク先生の代わりの講師が来るらしいな」
「さて、どんな奴なんだかな」
「怖い人じゃなければいいんだけど…」
教室でカインズやダストン、ミーシャがそんなことを話し合っている。
「なにそんなこと気にしてるのよ、私達はもう「冒険科」の生徒なのよ?今さらどんな人が来ようと関係ないじゃない」
私は彼等に心底どうでもよさげに返事を返した。
「と言ってもだな、今回来る臨時講師は国王と王都のギルマス二人からの推薦で来るらしいぞ?」
「元Sランクの二人からの推薦と言うことは余程の高ランクなんだろうな」
「厳しいのかなぁ…」
三人の言葉に私は少し思考を巡らせる。確かに、現在の国王と王都のギルマスと言えば元Sランクの冒険者でかなりの腕だったらしい、それに今の王妃とこの学院の学院長の四人のパーティーで活躍したのだとか。
そんな人たちが推薦した人だ、さぞや凄いオーラをまとった冒険者なのだろう。1ヶ月とはいえかなりの経験となると私は信じて疑わなかった。
しかし、いざ当日になって私は落胆を隠せなかった。メリッサ学院長が連れてきた「ランド」と言う男性はなんの変哲もなくどこにでもいそうな男だったのだ。
しかも聞くところによるとランクは「Cランク」だという。
マーク先生は冒険者時代は戦闘がメインではないが斥候職としてAランクまで行った人だ。
最初は全く勝てなかったが、今となってはパーティーとして挑めば5本中3本はこちらが勝てるようになった。
前衛でないとはいえ元Aランクの教師に勝てるようになった私たちが今さらCランクになにを学ぶというのか…。
他の三人もそう思ったのか各々否定的なことを口にしていた。
すると私達の話を聞いた学院長は「だったら君達四人がかりで彼と模擬戦をしてみようじゃないか」と言い出したのだ。
私達は「は?」と戸惑いランドと名乗った臨時講師も「メリッサさん?」と驚いていた。
そういうわけで今日来たばかりの臨時講師との模擬戦が決まり、私達は訓練場に集まった。
私は始める前に相手の「職」と「パーティー」について尋ねてその答えを聞いたときに更に気が滅入った。
「ソロ冒険者で特筆する職を極めた訳でもない、しかも魔法は使えない」と言うのだ。
私達が「バカにしてるのか?」と思う気持ちは当然だろう。しかも彼は、私達が提案したルールになにも文句を言わず更には「怪我とかさせるわけにもいかないし」とまで言ったのだ。
私達パーティーは不快感を隠さなかった。各々が(わからせてやる!)と心の中で誓い身構えた。
学院長の「始め!」の声と同時にカインズが剣(木剣)を構え彼に斬りかかる!
ダストンはカインズの直線上の後ろに立ち私とミーシャを守るように盾を前に構えている。
(これで終わりね、全く意味のない時間だわ)
私がそう思った瞬間、とんでもないことが起こった。
カインズが剣を構えそれを彼に振り下したと思ったら突然倒れたのだ。
「え?」と思ったときには私とミーシャの横をなにか大きいものが通りすぎた。それが吹っ飛ばされたダストンだとわかり私とミーシャは慌てて魔法を発動しようとしたがその時にはすでに私とミーシャの喉元には彼の木剣とカインズから奪った木剣の切っ先が添えられていた。
「まぁそうなるよね…」
呆然とした私は学院長の言葉で我に帰り、私達がなにもできないまま彼に負けたことを理解した。
決着がついても彼は「怪我とかしてないといいんですけど」と心配こそすれ私達に対して優越感を持ってはいないようだった。
他の三人はどうか知らないが、私にとっては「負けた上に相手に心配される」と言うことは屈辱以外のなにものでもなく、胸の内に黒い感情が芽生えた。




