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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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受付嬢との約束・番外編―出逢い―

シシリア視点の回想となります

―3年前―


「てめぇ!新入りの癖に俺達Cランクパーティー「黒い猟犬(ブラックハウンド)」をなめてんのか!?」


私は自分の目の前で大声で怒鳴る冒険者の男とその後ろでニヤニヤとこっちを見ている男のパーティーであろう三人の男性に恐怖を感じながらも対応する。


「で、ですから…前もってご説明したように今回の依頼は畑を荒らしている「ワイルドボア」の討伐とその証拠としての「頭部」の納品です。解体された「ワイルドボア」の肉だけを持ってこられても証拠としては認められません。お肉だけならお店に行けば手に入りますから依頼達成を詐称した可能性もありますから」


「あぁ!?俺達が詐欺をしようとしてるって言うのか!」


男が更に声を荒げて受付のテーブルをドン!と強く叩いて威嚇する。


「ひ…そ、そう言う訳じゃありません。しかしギルドの規則として依頼内容どおりの証拠の提示をしていただかなければ報酬をお渡しするわけにはいきません。本当に討伐されてこうして解体したのならそこに置いてきた頭部等を持ってきてくだされば報酬をお渡しします」


「んなこと知るか!いいからさっさと報酬を寄越せ!」


私は泣きそうだった、今日はギルマスも用事で出ていて不在だしまわりの先輩達も忙しくてこちらに手が回らない。他の冒険者達も事なかれ主義なのか眺めてるだけだった。


(うぅ…就職初日になんでこんな目にあわないといけないの?)


私がそう心の中で嘆いているとギルドの入り口が開きなにやら会話をしながら二人組の男性が入ってきた、一人は初老の男性でもう一人は私より少し上くらいだった。


「いやー、兄ちゃんすまねぇな。「ワイルドボア」を討伐してくれたばかりかここまで運んでくれてよ」


「いえ気にしないでください。俺の方こそ依頼されてるのを勝手に行動したあげくここまで案内してくださって申し訳ありません」


「兄ちゃん謙虚だねぇ、んなこと気にしなさんな。どっちにせよギルドにゃ依頼のキャンセルをしに来なきゃならなかったしついでだついで」


「そう言ってくださるとこちらも気が楽ですよ」


「それでいいそれで、ガッハッハッ」


そう言いながら初老の男性はこちらの受付にやって来た。


「ちょっとスマンな兄ちゃん達、すぐに終わるから横にずれてくれ。お、嬢ちゃん見ない顔だな新入りか?申し訳ないんだが依頼してた「ワイルドボア」の討伐だけどキャンセルするわ。あっちの兄ちゃんが全部片付けてくれてよ、仲介料金だけは払うから勘弁な」


そう言って男性は笑いながら硬貨を数枚テーブルに出した。


「え?「ワイルドボア」はこの人達が討伐したんじゃないんですか?」


私が男性にそう訪ねると男性は「黒い猟犬」の方を向いて首を傾げた。


「あ、なんの事だ?俺はこんな兄ちゃん達知らねぇぞ?依頼したのになかなか誰も来ないから催促に行こうと思ったら通りすがりのこの兄ちゃんが片付けてくれてな、聞くと山で暮らしてたけど冒険者になるために街のギルドに行く途中だっつーからこうして依頼のキャンセルついでに案内してきたんだ」


男性の言葉を聞いてからまわりでボソボソと会話が聞こえた。


「うわぁ…アイツら達成詐称で報酬せしめようとしたのかよ。セコイ奴等だぜ」


「でもよアイツらCランクなんだろ…?「ワイルドボア」は魔物とはいえ所詮は馬鹿デカイ猪だからDランクでもパーティー組めば倒せる獲物だぜ?」


「もしかしたらあのランクも詐称した依頼達成の積み重ねで得たもので実力は大したことねーんじゃねーか?」


「あー、そういうことか」


「なんだよ、「黒い猟犬」とかカッコつけてるけど黒いのは履歴と腹のなかだけじゃねーか」


「うまいこと言うなお前w」


そんな声が聞こえたのか「黒い猟犬」の面々は顔を真っ赤にして


「ク、クソ覚えてろよ!」


そう捨て台詞を吐いてギルドから出ていった。


それから初老の男性が連れてきた男性はこちらに来て「あの、冒険者登録をしたいんですけど」と私に話しかけてきた、どうやら間接的とはいえ私は彼に助けられたようだ。


「あ、はいではこちらにご記入をお願いします」


私が彼に書類を渡すと彼はそれに必要なことを記入して私に渡してきた。彼の名前は「ランド」さんと言うらしい。


「はい、これで登録完了です。まずは「E」ランクからスタートです、これからの活躍に期待しています」


「わかりました、これからよろしくお願いします」


「早速なにか依頼を受けていかれますか?」


「いえ、実は街にきてすぐにここに連れてきて貰ったのでまだ宿も決まってませんし、必要なものも買っていませんので今日のところはこれで失礼します」


「そうですか、ではまた明日からお待ちしております」


「はい、ではこれで」


そう言うと彼はギルドを後にした、これが私とランドさんとの最初の出会いだった。


そして夕方になった、私は今日の仕事を終えてギルドを出て途中で買い物をしてから家に向かって歩いていた。


すると突然、私は誰かに後ろから腕を掴まれて路地裏に引き摺り込まれた。


突然の事に驚いた私が目をやるとそこには「黒い猟犬」のメンバー達がいて私はギルドで私を怒鳴った男に馬乗りになられていた。


「な、なにするんですか!」


「うるせぇ!今日はお前のせいで恥かいたじゃねぇか!」


「そんなの、あなた達が詐欺をしようとしたからでしょう?」


「黙れ!今日は金を手に入れたら久しぶりに女を抱けると思ったのによ。責任とってお前には俺達の相手をしてもらうぜ!」


男がそう言って私の上着を乱暴に引き裂いた。


私の肌が外気に触れてひんやりする、私は恥ずかしさや恐怖から「だ、誰かー!!」と大声で叫んだ。


「へへ、こんなところに誰もきやしねぇよ!生意気だが顔はいいし身体もなかなかじゃねーか。せいぜい俺達を楽しませ…ぐはぁ!?」


私の上に乗っていた男がいきなり後ろに吹っ飛んでいった。そして彼等と私の間に人影が立ちはだかった。


「買い物帰りに道に迷ってたらこんな場面に出くわすとは、やはりこれだけ大きい街だと悪いやつもいるもんだな…」


そこには買い物袋を手に持った、昼間冒険者登録をしたランドさんがいた。


ランドさんに吹っ飛ばされた男が立ち上がり他のメンバーと並んで声を荒げる。


「て、てめぇまた俺達の邪魔しやがって!もう赦さねぇ!」


「数人で女性を襲おうとする輩に赦されたくもないな」


「うるせぇ!やっちまえ!」


「黒い猟犬」のメンバーは一斉にランドさんに襲いかかった。


そして…1分も経たないうちに彼らは全員地面に倒れて動かなくなっていた。


ランドさんは自分の荷物からロープを取り出すと「買ってすぐに使うことになるとは」とか言いながら彼等を縛っていく。


私がその様子に唖然としているとランドさんは私に「大丈夫ですか……って!」と声をかけて振り向いたかと思うと慌ててそっぽを向いた。


私は「?」と思いながらも「だ、大丈夫です。危ないところを助けてくださりありがとうございます」と答えると彼は明後日の方向を見たまま「そ、そうか、それなら良かった。」と答えた。


「はい、助かりました。あの…ところでランドさん」


「な、なんでしょう?」


「なんでずっとそっち向いてるんです?」


私の質問にランドさんは「あー、その…お、怒らないでくださいね?」と言葉にすると私に自分が持っている買い物袋を顔をそらしながら差し出して言った。


「な…中にシャツが入ってますから、男物で申し訳ないですがひとまずそれを着てくれませんか?」


ランドさんにそう言われてやっと私は自分のいまの状態を思い出した。あの男に服を引き裂かれて私の上半身が露になっていたのだ。


「き…きゃあぁぁぁぁあ!み、見ないでください///」


「み、見てません見てませんから!」


「ホントですか?ホントに見てませんか?」


「み、見てませんよ?」


「…おへその上辺りにある大きめのホクロを見たりしてません?」


「え?そんなとこにホクロなんか無かっ「やっぱり見たんじゃないですかぁぁぁぁぁ…///」うわぁぁしまった!すいませんすいません!」


その後、私が落ち着くのに少し時間がかかった。今私の目の前ではランドさんが土下座している。


「ホントにすいませんでした」


「グス…もういいです。助けてもらったわけですし今回は気にしないことにします」


借りたシャツを着こんだ私がそう言うとランドさんはホっとしたような顔をした。


「さて、とりあえずコイツらどうしますか?」


未だに気を失っている「黒い猟犬」のメンバーをみてランドさんが私に訪ねてきた


「衛兵に突きだします。これほどの問題を起こしたのですからキチンと罰してもらわないと」


「そうですか、では呼んできますね」


彼はそう言って立ち上がると移動しようとした。瞬間、私は無意識に彼の服の裾を掴んでしまった。


「あの…動けないんですけど?」


私はハッとして手を離そうとするがなかなか手が開かなかった。


「ご、ごめんなさい。ちょっと時間が経って冷静になってきたら、もしランドさんが通りかからなかったら私はどんな目に遭ってたかと考えると怖くなって…」


そう告げるとランドさんはもう一度私の横に腰を下ろして答えた。


「無理もありません、私こそそんな状態の貴女を置いていこうとしてすいませんでした。落ち着くまで一緒にいますよ」


そう言うとランドさんは笑顔を向けてくれた。この時、私の胸の奥でなにか小さな温かい気持ちが生まれた。


それから暫くして偶々巡回をしていた衛兵が通りかかったので声をかけて「黒い猟犬」達を連行してもらった。


それからの調査で彼等は他にも冒険者としてあるまじき悪事を色々と働いていたことが発覚した。その数と悪質さは元冒険者の国王の耳にも入り、「冒険者としての誇りを冒涜するとは許しがたい!」と激怒した国王は彼等を極刑にしたそうだ。


事件から暫くして、私はギルマスに頼み込んでランドさんの担当にしてもらった。


「これからよろしくお願いしますシシリアさん」


「はい、よろしくお願いしますね!ランドさん!」


私があのとき胸の奥に感じた気持ち、それが彼に対する「恋」だと自覚するのはもう少し後になってからだった。


―現在―


「随分懐かしい夢を見たなぁ~」


朝になり私は目を覚ますとさっきまで見ていた夢を振り返る。


「ランドさんとの昨日のやり取りのせいかな?……思い出さなくていいところも思い出したけど///」


そう呟きながら私はベッドから降りて顔を洗いに行った。


「ランドさんを待たせるわけにもいかないし、早く準備しなくちゃ」


私は今日のランドさんとのデートに思いを馳せて支度を始めた。

PV4000超えありがとうございます。

「誤字脱字」報告もとても助かっていますし「そこまで読んでくださってる」と嬉しくなります。


初めて感想も送っていただき嬉しいばかりです。


今後とも思い付く限り頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。

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