メリッサのお願いと依頼の説明
二人を見送って部屋に三人になるとランドが口を開いた。
「それでメリッサさん、俺に頼みたいこととはなんですか?」
先程メリッサが自分に「頼みたいことがある」と言っていたのでランドはメリッサにそう尋ねた。
「うん、実はとある素材が欲しくてね。それをランド君に手に入れてきて欲しいんだよ」
ランドの言葉にメリッサはそう答えた。
「ある素材?」
「そうなんだ、「世界樹の樹液」と「世界樹の新芽」の二つなんだけど」
「世界樹ですか?」
聞いたことのない単語にランドが「?」を浮かべるとフォルクスが説明してくれた。
「世界樹ってのはな、この大陸の真ん中にそびえてる巨大な樹のことだ。この国ができるよりもっと大昔から生えてたといわれてる」
「へー、そんな樹があるんですね」
「そうだ、それで今回メリッサがお前に調達を頼みたいのはその樹の「樹液と新芽」なんだとよ」
「そうなんだ、頼まれてくれるかな?」
「ちなみにですがなぜ必要なんですか?」
ランドの素朴な質問にメリッサは「え、ええとね…今とある魔法薬を開発してるんだけどそれを作るにはその二つの素材が必要なんだ」と少しどもりつつも答える。
「魔法薬ですか?」
「うん」
「へー、流石メリッサさんですね。俺はその辺りさっぱりわからないですよ」
「そ、そうかな///」
「それでどんな魔法薬なんですか?」
ランドの質問にメリッサは「え///」と何故か顔を赤らめて固まる。
「ど、どうしてそんなこと聞くんだい?」
「いえ特に意味はありませんが、なんとなく気になったので。と言っても難しい事はわからないですけどね」
ランドの返答にメリッサは「え、えーと///なんというか…そうだねランド君にもわかりやすく伝えるなら身体の一部の機能を一時的に高めたりするといったところかな」と答えた。
「なるほど身体強化の薬なんですね」
メリッサの説明でランドはなんとなくだが理解した。
「そ、そうなんだよ///それでその素材としてさっき言った二つが必要だからランド君に頼みたいんだ」
「わかりました、メリッサさんにはお世話になりましたし引き受けますよ」
ランドが了承してくれたのでメリッサは「そうかいありがとう。無事に手に入れてくれたらちゃんとお礼はするからね。なんなら私をお礼として差し出そうか?(こうやって冗談としての雰囲気なら言えるんだけどなぁ///)」とランドをからかった。
「はは、その二つの素材の貴重さはわかりませんがメリッサさんほどの素敵な女性を射止めるにはそんな程度ではとても足りませんよ」
メリッサの言葉が冗談だと思ってるランドは明るく冗談を返した。
「な///」
思わぬ切り返しにメリッサは赤面した。
「どうしました?」
「い、いやなんでもないよ///(まさかそんな風に返されるとは…///)」
「?、まぁ頼まれたからには取りに行きますよ。それでその世界樹の詳しい場所はどこですか?」
ランドの質問にフォルクスが「あ、ちょっと待て。取りに行くと言っても直に取りに行くのは禁止されてるんだ」と伝える。
「え、それじゃあどうやって手に入れたらいいんですか?」
フォルクスの言葉にランドがそう返すと「それを今から説明してやる」とフォルクスが答えた。
フォルクスの説明は以下のとおりだった。
・世界樹は現在確認されてるのはその一本だけ。
・枝を刺し木したり種などを他の場所に植えても育たずその原因はいまだに不明。
・その素材は枝も葉も樹液もあらゆるものがいろんな素材となるがその為に取りすぎると枯れるかもしれないので年間で採取する量は大陸の国々との協定で厳しく決められ全ての流通ルートも厳しく管理されている。
・もし無断でとった場合はどの国でも「極刑」となりその罪は国境を越えても適用される。(つまりどの国もその罪人が世界樹の無断採取の確固たる証拠があれば籍を置く国に引き渡しも伺いもせずに刑を執行できる)
「とまぁそういうわけで調達を直接は出来ないんだ」
フォルクスの説明を聞いたランドは「貴重なものだというのはわかりましたが、ではどうやって手にしたらいいんですか?」と尋ねた。
それにはメリッサが答えた。
「ランド君が学院に臨時講師として来たときに里帰りしていた教師の話は覚えてるかい?」
「ええ、お会いしたことはありませんが。確か元Aランクのマークさんでしたっけ?」
メリッサの言葉にランドが答えると「そうそう、彼は先月私達がアルガス達と海に行ってるときに学院も夏休みだから里帰りしていたんだけどその時にある話を聞いたんだ」と話し始めた。
「彼の田舎はゼスタより更に西にあって隣のダラス帝国の国境の近くなんだよ」
「ダラス帝国?」
ランドの反応にフォルクスがメリッサのフォローを入れる。
「ダラス帝国ってのはこの国の西隣の国でな、強力な軍隊を持つ軍事国家だ」
「そうなんですか」
「まぁ軍事国家といっても別にそこらに戦争を吹っ掛けたりとかはしてないがな、あくまでも「この国に手を出そうとするなよ」という回りへのアピールだ。この国にも普通に冒険者や商人も行き来してるしな」
「へー」
「で、そのダラス帝国から来た冒険者にマーク君が聞いたらしいんだけど今月その国で「武術大会」が開かれるらしいんだよ」
「武術大会?」
「なんでも帝国中や近隣の国から腕自慢が集まって強さを競うそうだよ」
「そうなんですか」
「まぁ国としてはそういった催し物で観光客を呼んで経済を回したり内外に対して自国の武力をアピールする目的もあるんだろうな。調べたらその大会の優勝者のほとんどが帝国出身者だ」
「今その話をしたということはもしかして…」
メリッサとフォルクスの話に大体ランドは想像がついた。
「うん、その大会の今年の優勝商品が「世界樹の樹液」と「世界樹の新芽」なんだよ」
「そういうわけでお前ちょっと行って優勝してこい」
予想通りの二人の言葉にランドは「そんなタバコ買ってこいみたいなノリで言われても…」と返した。
「まぁメリッサの目的は優勝商品だが、俺としてもお前には頑張って欲しいんだよ」
「と言いますと?」
フォルクスの言葉にランドが問い返す。
「仮にその大会でお前が優勝したら他国の人間にも強い奴がいるというメッセージになるだろ?」
「それがなにか?」
「今のところそんな動きはないが、もし帝国がどこかに戦争を仕掛けたりしようとしたときに「大会で優勝した他国の人間」というのは躊躇いが生まれるだろ?」
「ああ、仕掛けようとした国に「あの時の奴がいるかもしれない」と思わせるわけですか」
「そういうこった」
「なるほどわかりました。優勝できるかはわかりませんができる限りの事はしてみます」
「お願いするよ、あ…でも無理はしなくていいからね」
「心配ありがとうございます、でもメリッサさんの頼みですし頑張ってみますよ」
「ありがとね」
「それじゃあ頼んだぞ、道筋とかは明日地図に書いて説明してやるから一先ず今日は帝国に行く準備をしといてくれ」
「わかりました、ではまた明日伺います」
そう言ってランドは部屋をあとにした。
ランドが退出して二人になったフォルクスとメリッサは…
「で?」
「でってなにがだい?」
「ランドに頼んだ素材でなにを作る気だ?」
「べ、別に何だっていいじゃないか///」
「まさかお前、惚れ薬でも作ってランドに盛るつもりじゃないよな?」
「しないよそんなこと!そんな薬の力で手にした気持ちなんて紛い物だからね。ランド君にはちゃんとランド君の本心から振り向いてもらいたいからね」
「じゃあなにを作るんだ?」
「……る薬///」
「何だって?」
「だ、だから飲んだら「そういう時」にお互いの気持ちと身体能力が高まって元気になる薬だよ///」
メリッサが赤面しながらそう答えるとフォルクスは「市販のヤツじゃだめなのか?」と尋ねた。
「普通ならそれでもいいんだろうけど、私が作ろうとしてる薬にはもうひとつ効果があるんだ」
「もうひとつの効果?」
「うん、その薬を飲んでから「そういう事」をしたらその…こ、子供が出来やすくなるんだ///」
メリッサの言葉にフォルクスは「お前、その薬の素材調達を飲ませたい本人に頼んだのかよ?」と呆れる。
「だ、だって///アルガスはもう国王だから頼んだらややこしい事になるし間違いなくからかわれるし」
メリッサの予測にフォルクスは頭の中でアルガスに頼んだ場合を想像する。
―フォルクスの想像―
アルガス「ガハハハ!お前も可愛いとこあるじゃねーか!いい歳して乙女かよ?乙メリッサかってん…(だ?)」カキーン
メリッサ「うるさいな///」
セーラ「ちょっとメリッサ、凍らすなら先に言ってよ。まだ書類残ってるのよ?」
メリッサ「あ、ごめん」
セーラ「まぁいいけどね、アルガス?溶けたら少し話し合いましょうか、もうちょっと女心を気にしなさいな」
―想像終わり―
「確かにな、アイツならそのあとお前とセーラにシバかれるとこまで想像できるわ」
「まぁもし無理ならそれはそれで仕方ないけどね」
「まぁ大丈夫だろ、俺にはランドが負ける姿が想像できん」
「私もできないよ。それとフォルクス、もし薬ができたら自分で「その時」にランド君に説明するからね。もしランド君に先にバラしたりしたら…」
メリッサの警告にフォルクスは「わかってるよ、俺はアルガスほど頑丈じゃないからな」と約束するのだった。




