森の中で蠢く存在
「はぁっ!」ズバッ!
「グギャ!」
「てぇい!」ザン!
「ガベッ!」
ランドとリディアの二人は精霊の森にやって来ると自分達に襲いかかってくる魔物を迎撃していた。
(戦闘中は凛々しいんだがなぁ…)
ランドは手こずることなくゴブリンを一太刀で屠るリディアを見ながらそう感想を抱く。
「ギャギャア!」ブン!(武器振り下ろし)
「…」ヒョイ、スパン!(かわしてカウンターで首を跳ねる)
「ゲッ!」
「ガゲェ!」ビュン(矢を射つ)
「…」パシッ(キャッチ)ビュン!(投げ返し)
「グガッ?」グサッ!(眉間に刺さる)
もちろんランドも自分に向かってくるゴブリンを片手間に片付けつつである。
「ふむ、この辺は片付いたか。どうだランド、私は戦闘はかなりのものだろう?」
得意気にそう言葉にするリディアにランドは「確かにな、剣の腕はかなりのものだな」と正直に返した。
「フフンそうだろ?といってもゴブリン位ならランドでも余裕だろう。私はもっと強い魔物が出ても良いんだがな!」
そう言うリディアに「まぁあくまでも間引きだからな、それにこの時期は冬眠のために栄養を蓄えようとして狂暴になる魔物やそれで特殊個体に変異する魔物が出るときもあるから油断はしない方がいいぞ?」とランドが注意する。
「なにそんなものを恐れることはない。私は強いからな!」
自信満々にそう返すリディアにランドは「やれやれ…」と思いつつも(まぁそんな突然とんでもない個体が出ることもないとは思うがな…)と思うのだった。
そんな二人から少し離れた場所で…
「グルォォォォ!」ブンブン!
巨大な熊の魔物「キラーグリズリー(Aランク指定)」が目の前の相手に威嚇をしながらも怯えた表情でその木の幹のような両腕を振り回している。
キラーグリズリーに対峙する相手は「グルルルル!」と唸り声をあげると突然姿を消した。
「グォ?」
目の前の敵が消えたことに驚いたキラーグリズリーが辺りを見回そうとしたその時…
ザンッ!
キラーグリズリーの頭部が宙を舞いその巨体がズズゥン!と音をたてて倒れた。
この森でも奥地に棲息し食物連鎖の上位に君臨するキラーグリズリーは自身が攻撃されたことすら気付く前に息絶えた。
倒れたキラーグリズリーの死体をバリバリと貪り出し、食事を終えたその生き物は「グルルルル!」と唸り声をあげながら木々の中へと姿を消した。
その頃精霊の森の中にあるエルフの里ではアリスとサトラが執務の小休止でお茶を飲んでいた。
「ふう、とりあえず午前はこんなものかしら?」
「そうですね、午後からもお願いします」
「わかってるわよ、にしても最近書類が多くないかしら?」
「去年に比べるとランドさん達や獣人達と知り合ったことで交易や交流が増えましたからね」
「そうよね、ところで王都では年末に「建国祭」があるけど少しは顔は出せるかしら?」
「そうですね、今のところは数日なら大丈夫だと思いますよ。アルガス陛下からも「国交を結んでいるエルフと獣人達には是非とも楽しんでほしい」とおっしゃってましたし。なによりアリス様はエルフの女王なのですから来賓として呼ばれる予定でしょう。詳しくはもう少し日が近づいてからお伝えするとのことですよ」
「そうだったわね、来賓とかはともかくランドさんと祭を回りたいものだわ」
「そこはランドさんの都合がわからないとなんとも言えませんが…ランドさんのことですしアリス様や他の皆さんとも回るつもりはあるのではないでしょうか?」
「そうね、出来れば独り占めしたいけどシシリアさんやノエルさんや他の方も同じことは考えてるでしょうし…一緒に回れる時間ができるだけでも感謝するべきね。そうなるとランドさんと回るときは前もってプランも必要ね」
「珍しく控えめで頭が回っていますね、変なものでも食べましたか?」
「どういう意味よ!…まぁとにかく出来ることなら前もってどんな露店が出るとかも知りたいわね。サトラ、今度王都へ行くときにその辺も教えてもらいましょ」
「わかりました、では前もって私が調査してランドさんの協力のもと当日の店の混み具合や人混みを想定して予行しておきます」
「ええ、お願いね…ってちょっと待ちなさい!あなた今さりげなくランドさん協力のもととか言ってランドさんと先に祭を回ろうとしたわね?」
「いえいえ、私はアリス様がランドさんと回るときに滞りなく楽しめるように私が実際に体感しておいて計画を詰めようとしただけですよ?それこそどこで食事するかとか、日がくれる頃に丁度宿屋通りに着くルートの計算とか。でも私一人で想像するよりも実際にランドさんと回った方が確実でしょう?まぁその結果アリス様よりランドさんとのあらゆる事を先に体感してしまったとしてもこれも主君の幸せのためですよ」
「さも主君の為みたいなこと言って抜け駆けしようとするんじゃないわよ!」
「まさか気付かれるとは…いつもとは違うその思慮深さホントに何か変なものでも食べましたか?」
「きぃー!」
サトラにいろいろ言われてアリスが悔しそうに声を出すと「あ、そろそろ時間ですね。これを飲んだら執務の続きをしましょうアリス様」とサトラは落ち着いた声で話を終えた。
そこに一昨日から泊まっているラジとトルテがやって来た。
「アリス、サトラちょっと良いかしら?」
トルテの声に二人が顔をトルテの方に向ける。
「どうしましたトルテさん?」
「どうしたの?」
二人の言葉にトルテとラジが返事をする。
「なにか大きな気配が森の方からするの、ほっとくと危ないかもしれないから見回ってくるわ」
「トルテだけじゃ危ないかもしれないからボクが付き添いますね」
「そうですかわかりました、ラジさんがいるなら大丈夫とは思いますが気をつけてくださいね」
「あまり遠くへ行ってはダメですよ?」
「「はーい」」
そう言って二人は里から出て森の散策に向かうのだった。
その頃のランドとリディアは…
「さて、この辺に魔物はいるかな?」
「あまりどんどん行くと迷子になるぞ?」
「うむ、そうだな。はぐれるなよランド!」
「リディアに言われたくないんだが…」
「なにを言うか?私は道は覚えてるぞ」
「じゃあ俺達はどっちから来た?」
「こっちだ!」ビシッ!
リディアが自信満々に指差すがランドはため息をついて「…それ真逆だぞ?」と伝える。
「フ、フェイントだフェイント///」
「誰に対するフェイントだ?」
「ラ、ランドがしっかり覚えてるか確認したんだ///」
「そうか、なら大丈夫だな。俺は戻るとしよう」スタスタ
「待って!置いてかないで!」
「ハァ…まぁあまり離れないようにな」
「わ、わかってる」
そんな会話を繰り広げていた。




