サンタに機関銃
キーワードとかはほとんど関係ないので気にせんでください。
空を見上げていた。とても、とても寒い夜だ。
無数の星が、空に浮かんでいる。
手を伸ばせば届きそうな距離なのに、触れる気配は少しもない。
──ふと、音がした。パキッ、という、枝を踏むような音だ。
「…………遅かったようだ」
男の低い声だ。感情は読み取れない。
暗がりから男が現れる。
「……君がこの家の……? すまない」
「…………なにを言ってるの?」
月明かりに晒された男は、とても赤かった。顔は見えない。
男がなにを言っているのか分からなかった。けれど分かる。ただ、分からないふりをしているだけだ。
「君、名前は?」
「…………知らないし知りたくもない」
早くどっかにいなくなって欲しいのに。
「参ったな……。なら、僕と来るかい?」
「……どこに?」
「決まってるさ。今日はクリスマスだからね。夜の街に繰り出すのさ」
男はこちらに手を差し出してくる。無意識に手を伸ばす。けれど途中でやめた。だって、わたしの手は赤いから。クリスマスは白くないといけないって、誰かが言っていた。
わたしは首を横に振った。
「そんなこと言わずにさ。……ほら!」
問答無用に抱き抱えられる。
「……ぁ」
小さな悲鳴が漏れる。
「しっかりつかまってなよ」
男は当たり前かとばかりに空を駆け始めた。
何故か気になって後ろを振り返った。そこからの記憶はない。
その日、私の記憶に刻まれたのは、「鮮血のクリスマス」だった。