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幕間「光からの誘い」


ーーーーーーーーーー 元衛兵視点


今回の襲撃、妙でしたね。

あんなに多くのスケルトンが現れるなんて。


「ええ、でもアンデッドの軍団なんて言うから、あの黒衣の死霊術師(ネクロマンサー)を想像しちゃいましたけど、ただの烏合の衆でした」


まあ、あの男がわざわざこんな極東まで来る事は無いでしょう。


第三強制収容所の解放から、何日か過ぎた。


収容所の反乱は、驚くほどスムーズに進んだ。

「ベリヤを倒した、これから収容所を解放する」と告げると、男達は我先にと今まで自分達を痛め付けて来た職員達に襲いかかり、鎖に繋がれていた自分の妻や姉妹や娘達を救い出した。


イレーナは的確な指示で反乱者達をまとめ上げた。

反乱者の中から有志を募って自衛軍を組織し、魔物の襲撃や、他の強制収容所からの攻撃を防ぐばかりか、逆に攻め込んで第二強制収容所の解放までやってのけた。


反乱者達はイレーナを自分達の指導者だと祭りたて、ここに新しい国を作ろうとまで言い出した。


「さすがに新しい国までは……私がやるのは全ての収用者の解放と、彼らが自分の祖国へ帰る道筋を作ることです」


その謙虚な姿勢がまた支持者を増やす要因となった。


ーー


「思ったより早く戻れそうですね。どうですか、戻ったら、私の部屋で……」


やや頬を赤く染めながら言うイレーナ。

たったそれだけの事なのに、俺の胸は高鳴った。


ええ、喜んで伺います。


あの日。

ベリヤの寝室でイレーナの(みさお)を貰った日から、俺達は何度も身体を重ね合わせてきた。

最初のうちは、薬物の後遺症だと彼女は説明していたが、今はもうとっくにそんなのは抜けているはずだ。


「いえ、まだ続いているんですよ。あなたという、存在に対して……」


一度()()が外れたら、お互いに歯止めが効かなくなってしまった。

俺も溺れるように彼女の身体を求めた。


ーー


集結していたスケルトン達を鮮やかな戦術で蹴散らし、第三強制収容所へ凱旋した。


昔はベリヤのオフィスだった部屋は、今ではイレーナのオフィス。

奥の寝室はイレーナの寝室である。

ベリヤの頃に置いてあった家具や調度品類は、全て入れ換えてしまい、前と同じなのは壁と柱ぐらいだった。


ベリヤ所長は在職中にせっせと私腹を肥やしていたようで、大型の隠し金庫の中には各種貴金属類に加え、マジックアイテムや魔術スクロールまで多数収集してあった。

その隠し財産はそのまま当座の運営資金となった。


オフィスへ戻ったイレーナに、一人のダークエルフの女性が訪ねてきた。

シビウと名乗ったそのダークエルフは、収容されていた女性達の実質的なリーダーになっていた女性で、今ではイレーナの重要な片腕の一人である。


シビウが夫と共に第三強制収容所へ入れられたのは、北方戦争が終わってまもなくの頃だそうだ。

他の男性収用者と同様に、夫は数年で死んでしまった。


その後、あまりの美貌から歴代収容所所長専用の愛人として、長い年月に渡って扱われ、慰み者にされる日々を、泣いて過ごしたという。


だがある日、瀕死だった収容所の女性の看病をする機会があった。

結局その女性は衰弱して死んでしまったが、その最後を看取った時から気持ちが変わった。

所長専用愛人としての立場を逆に利用して、少しでも収用された女性達の待遇を改善しようと試みたのだ。

そこにこの劣悪な環境で生きる目的を見出だしたシビウは、以来女性収用者達を守る為のまとめ役となったのだという。


シビウは収容所内で起きた新しい問題について、二三まとめてイレーナに報告した。

イレーナはシビウと相談しながら、的確に問題への対処を決めていった。


「以上になります、それでは……」


「ねえ、シビウさんって、全てが終わったらダークエルフ王国へ帰りますか?」


イレーナの問いに対し、シビウは、


「王国には、娘二人と息子一人がいました。だけど、あの子達は私の事をあまり良くは思っていないでしょう……それに、随分前の事だから、もう死んでいると考えていると思います。だから、帰るつもりはありません……」


悲しそうな顔で、シビウはそう言った。


ーー


そんな日々を送っていたある日、珍妙な事件が起きた。


白いクジラが空を飛んでいるという。


こんな極寒の地で、随分とメルヘンチックな事だと思っていたら、ぐんぐん近付いてくるクジラを見て、メルヘンからホラーに変わった。


デカ過ぎる。

全長四百メートルぐらいあるんじゃないか?


地上付近まで来ると、白クジラから小型の船みたいな物が分離され第三強制収容所の入り口まで降りてきた。

船には聖教会の紋章が付いていた。


船から出てきたのはわずか三名だった。

真ん中にハイエルフの少年。

左後ろに猛牛型の獣人の男、右後ろにサカナのような顔をした人族。

うん、人族……魚系の獣人では無い、と思う。

後ろの二人は防寒着を着込んでいたが、ハイエルフの少年は普通の白いフォーマルコートだけだった。

寒くないのかよ。


「やあ、どうも。聖教会の方から来ました」


どこぞの詐欺師みたいな言い方だな。


「僕の名前はウリエル、後ろの二人は部下でハルゼーとフィッシャーと言います」


何となく、猛牛獣人の方がハルゼーだろうなと、俺は思った。


で、ここへはどういう要件で?


「御迎えに上がったのですよ……当世の『光』をね」


ハイエルフの少年はそう言ってニヤリと笑った。



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