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城の中3

ネファラム城三階にある俺の部屋。


ひとっ風呂浴びたし、夜も更けて来たから自室に戻ろうとドアのノブに手を伸ばすと、何やら中から甘い声がする。


ははーん、さては……と思いつつ部屋に入ると、案の定すでにベッドには先客が居た。


「遅かったなエイジ君、悪いが先に始めさせてもらっていたよ」


ベッドではピアが、一糸纏わぬ姿のルナに覆い被さっていた。


「ほうらルナ、お待ちかねのエイジ君が来たぞ……たっぷりと可愛がってもらおうな」


「あ…あ……」


ルナはピアに責められて、もうとろとろになっていた。

半ば虚ろな表情で、口をぱくぱくさせながら喘いでいる。


欲情をそそるその光景に、居ても立っても居られなくなった俺は、服を脱ぐのももどかしく、二人の間に飛び込んで行った。


ーー


気をやって伸びてしまったルナをベッドの片側に寝かせ、今度はピアと身体を重ね合わせた。


「ケーニヒスグラード要塞は陥落し、今ではアザトース教団の支配下だ……これでネファラム城は当分安泰だな」


ええ、チャイカ連邦は、要塞を飛び越えてここへ直接攻め込んで来ることは出来ないでしょう。


「君と出会えて本当に良かった……正直、少し恐かったのだ。ミラージで君が捕まって居たとき、君は私と一緒に逃げてきて、くれないんじゃないかと」


まさか……あの時ピアが差し伸べてくれた手を、拒んだりなんてしませんよ。

俺はあの時、ピアとずっと一緒に行くと、決めたんです。


「ああ、嬉しいよ……エイジ君…」


そのまま固く抱き締めあって、唇を重ね合わせた。

その後はお互いに力尽きるまで、快楽を貪り合った。


ーーーーーーーーーー


ケーニヒスグラード要塞が陥落してから数日がたった。


今や要塞はアザトース教団の拠点となり、月棲獣(ムーンビースト)の住みかとなった。

ニャル導師も要塞に移り住み、そこで教団の指揮を取っている。

要塞内に幻夢境(ドリームランド)との転移門(ポータル)まで作り出したという。

いずれは月棲獣(ムーンビースト)以外のしもべ達も、ここへ呼び寄せるつもりらしい。


オーク帝国は、これまでチャイカ連邦に対し小競り合いをやったり村を襲ったりなどしていたが、ついに正式に宣戦布告を行い、ノース要塞へ攻撃を開始した。


西部方面軍を失って、大きく戦力を減らしたチャイカ連邦は苦戦を強いられているようだ。


チャイカ連邦は東部戦線でもヒノモトへの奇襲作戦に失敗し、大損害を受けたらしい。

上陸部隊を乗せた大輸送船団が、折しも現れた大型台風に巻き込まれ、大半が海の藻屑となったそうだ。


その台風は、偶然の産物とも、あるヒノモトの皇女の一人が自らの命と引き換えに発動した風属性魔術、だとも言われた。


チャイカ王国は、他の連邦加盟国に援軍を要請したが、色々と理由を付けて断られてしまうどころか、連邦からの離脱をほのめかされる有り様だった。


力の切れ目が縁の切れ目。ということだろうか。


チャイカ連邦は力を失いつつあり、北方の軍事バランスは大きく崩れた。

各国は自国の生き残りを懸けて、様々な外交戦を実施し始めた。


ーー


ゴウラ王国が、使者を送ってきたって?


「ああ、先ほど馬車がネファラム城に到着したところだ。どうする、会うか?門前払いしても構わぬが」


と、素っ気ない様子でピアが言った。


ゴウラ王国はチャイカ連邦と組んでツラギ王国に侵略してきた連中だ。

俺はツラギ王国から助勢を頼まれて防衛戦に参加したのだが、チャイカ連邦はその隙を突いてネファラム城へも攻撃を仕掛けてきていた。


言うなれば、ゴウラ王国はネファラム城にとって敵国のままだ。

今さらどの面下げて……と、言いたくもなるが、まあ向こうの言い分ぐらい聞いてやっても良いだろう。


「会うと言うのかい?もう人族なんて放っておけばいいのに……だが君がそう言うのならば、準備しよう」


ピアはあまり乗り気じゃ無いようだが、ゴウラ王国の使者と会うことに同意してくれた。


ーー


応接室に通されたゴウラ王国の使者は、やや禿げ掛かった白髪の初老の男だった。


「お初にお目にかかります、ゴウラ王国の外交官ヒコネと申します。以後お見知りを」


ふうむ。で、今日はどのような用事でネファラムに?


「まずは先の戦いに対する非をお詫びしたいと思います。どうかこの品々をお受け取り下さい」


ヒコネが目配せすると、配下の者達が箱を持って来て俺の前で開いた。


きらびやかな宝石類と貴金属で出来た装飾品が箱の中に詰まっていた。


ゴウラはレアメタルや宝石類の産地として有名だそうですね。

これはありがたく頂戴いたしましょう。


俺がそう言うと、ヒコネ外交官は「ははっ」と畏まって頭を下げた。


さて、ただより高い物は無いと言うが、何を要求してくるのかな。


「ゴウラ王国はネファラム城との関係を修復したいと考えております」


修復?


「先の戦いでは、ネファラム城はツラギ王国へ組みされておりましたので……」


あれって、ゴウラ王国がツラギ王国に侵略してきたのが始まりでしょ?俺はツラギ王国に頼まれてその防衛戦に助勢したんだけど。


「お言葉ですが……」


ヒコネ外交官は、やや言い難そうにしながら、


「元々ミシマ川以北の地はゴウラ王国の領土だったのです。十年前の戦いでゴウラはツラギに敗れ、南方の地を失った。その地を取り戻す事は我らの悲願にございます」


……国境問題っていうのはどの世界でもゴタゴタしてるんだな。

じゃあその前はどうだったんだとか、歴史的資料によるととか、双方が言い出したらもう切りがない。


国境線をミシマ川に戻す為に、ゴウラに協力してツラギと戦え、と言うのならネファラムは断りますよ。

ネファラムはツラギの「友人」だ。

戦うつもりは毛頭無い。


そう、あくまでもツラギとは「友人」だ。

同盟を結ぶ事も出来ない、ダークエルフと人族との間の友人。


「ゴウラ王国は友人以上の関係を構築したく思います」


どんな関係なんだよ。

友人以上恋人未満とかか?


「ゴウラ王国はネファラム城に対し、毎月貢ぎ物を献上致します。侵略行為などを行わない証として、人質を差し出す用意もございます」


え、人質?

そりゃ戦国時代なんかにはそんな事もあったと言うが……


「我が国の第三王女サクヤ様は、年齢的にもあなた様と同年代であられます。我々の信頼の証として……」


待ってくれ、そこまで行ったら確かに友人どころじゃ無いが、従属とか配下とかになるだろう。


けど、俺が望んでいるのは、お互いに中立で居ましょうって事だけだ。

こちらからゴウラに攻め込んだりしない。

そっちもネファラムに攻めて来ない。

そういう関係で良いんです。


「いや、それでは……ゴウラ王国としてはそれ以上の関係を……」


あくまでも食い下がるヒコネ外交官。


どう言うことだ。自ら属国になりたがる国なんてあるのか?


「……エイジ君、どうやら彼は、ネファラムにゴウラを守って欲しい、と言っておるのだよ」


と、ピア。


「オーク帝国が南下政策を実行に移し、今やケーニヒスグラード要塞はアザトース神のしもべ達が占領している。彼はね、ゴウラ王国をオークやアザトースのしもべ達に渡すぐらいなら、ネファラムに属した方がまだマシだ、と考えているのだ。自国の姫君を性奴隷として、差し出してでもな」


性奴隷、と言われた事に一瞬ヒコネ外交官の眉がぴくりと動いたが、それ以外はポーカーフェイスで彼は通した。


「そして我らを恐れてもおるのだ。数万の大軍で攻められても跳ね退け、逆にケーニヒスグラードを陥落せしめさえした、我らの力をな…」


確かに、ゴウラ王国を攻略しようと思えば出来るな。

ゴウラ全土の主要都市に、疫病樽爆弾で絨毯爆撃(カーペットボム)を繰り返し行い、人が住めない疫病汚染地域にしてしまえば良い。

で、鉱山関係者を片っ端から捕まえて処刑した後アンデッド化して、二十四時間炭鉱で働かせ続けるのだ。


「……。」


俺がボソッとそう呟くと、ヒコネ外交官の額に冷や汗が一本伝わって落ちるのが見えた。


いや、さすがにド外道すぎて、そこまではよーやらんけどね?


ふうむ、さてどうしたものか……

俺はしばし思案した後、


ヒコネ外交官殿、オーク帝国やアザ教の支配下に入りたくない、と言うのなら私から話を通しても良いですよ。

ネファラム城の友好国だと言えば、彼らも手を出さんでしょう。

その見返りとして、毎月貢ぎ物が頂けるならこちらも有難い。


「おお、それでは……!」


但し、人質は要らない。

そういうのは趣味じゃないんだ。


俺がそう伝えると、ヒコネ外交官は心なしかホクホク顔で礼を述べ、帰って行った。


ーー


「良いのかい?あれで。向こうにしてみれば随分美味しい話になったろうけど……」


と、ピア。


衰えたとはいえ、チャイカ連邦はまだ健在ですからね。

直接領土を接するより、緩衝地帯があった方が良い。

連邦の加盟国もいるし、聖教会の本拠地「聖地ミッドガル」も遥か向こうとはいえ存在している。


鉱山資源の豊富なゴウラから、毎月不労所得が貰える、というのも旨味がある。


まあ、ゴウラはネファラム(うち)のモンだ、と言えばオークもニャル導師も手を出さんでしょ。


ただし、こっちがやるのはそこまでだ。

大きな敵に対し、徒党を組んで対抗するのは正しいやり方。

だけど、ちょっとはした金を渡したぐらいで、自国を他国に守ってもらえる、なんて考えてるようじゃゴウラはいずれ滅ぶでしょうね。

結局、自分の身を守れるのは自分だけ、なのですから。


「ふむ、そういうものか……ところで、人質は断らなくても良かったのではないか?いざという時、使えるかもしれぬぞ」


人質は相手の弱点を握ることになるけど、取ってる方も相手とのシガラミを持つことになる。

相手が裏切ったから、見せしめに処刑。

なんて事も歴史上では多々あるが、俺には多分出来ない。


「君と同年代の人族の姫君、色々と役立ちそうじゃないか……主に夜の方面で。敵国のお姫様を無理矢理手込めにする、なかなか萌えるシチュエーションじゃないか?」


そんな事で喜んでるような奴は、好色通り越してただの下劣な糞野郎です。


そういうのは俺の趣味じゃないんです。

それに、俺にはピアもルナもいるんだから……そんなの要らないですよ。


「ふふ、そうかい?」


そう言いながら、後ろからピアは俺に優しく抱き付いてきた。


この時の俺は、

まあ、このままゴウラに朝貢させて、柵封しとけばいいや。

ぐらいにしか考えていなかった。


そのお陰で色々と面倒事に巻き込まれる事になろうとは……


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