表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/82

帰還


戦争の後始末には、まだかなりの日数を必要としそうだった。


スケルトン兵を休息無しでフル稼働させ続けているが、城壁の修復、堀の再構築、遺体の搬送、等々やることは多い。


戦力の補充も行っておきたいところだが、ルナは未だに目を覚まさず、ほとんど進められなかった。

それでも敵魔術師の遺体を利用したスケルトンメイジの作成は率先して行っておいた。

イージスルームの人数は十名を越え、かなりの戦力増強になった。


ルナは昏睡状態から中々回復せず、俺は心配のあまり何度もルナの部屋を訪れた。

ミーアやその弟妹達が交代で看病についているが、居ても立ってもいられなかったのだ。


イージスルームから、一番最初にスケルトンメイジにした、あの名も知らぬ司祭メイジを呼び寄せ、光属性魔術で回復を行わせた。

どんな奴だったかも分からぬが、腐っても元司祭なんだからこういう時こそ役に立ってもらおう。


チャイカ連邦は最後の攻勢が撃退されて以降、攻撃をしてくる素振りは見せて来なかった。


まあ、大型骨龍四頭と、多数のガレー船艦隊が駐屯するネファラム城に、ちょっかいを掛けてくる事は当面無いだろう。

今度こそ骨抑止力が完成したのかもしれない。


ーー


ネファラム城三階にある俺の部屋。

今夜もピアと二人っきりで過ごす、めくるめく時間である。


「ふむ、ルナがそんな事を言っていたのか」


俺は骨龍召喚の際にルナが言っていた事を、ピアに伝えていた。


ええ、ちょっと二人で一緒に説得した方が良いかもしれません。


「良い頃合いだな、ルナも引き込んで三人でやろう」


うん、今後はルナに見られないように俺達も気を付けて……

って、えええーーーーっ。


良いんですか。


「ああ、ルナには前々から私も目を付けていたんだ。長らく病弱だったから、遠慮していたが……」


そう言いながら、やや淫靡な表情を見せた。

今まで知らなかったピアの一面が垣間見えた気がして、少しドキッとした。


「……ああ、エイジ君が嫌だと言うのなら考え直すぞ。その……どうかな?」


ええ、俺も……ルナとなら……いいですよ。


「そうか、良かった……」


なんとなく、ミーアが言っていた過去の事について、頭によぎったが、まあその事はもうどっちでもいいや。


「……ところで、この服装はなんなのだ?ウサギ獣人の真似か何かか?」


これは、バニーガールという衣装でして、カジノなどで従業員の女性が着用する衣装です。


「こんなに肩の出たビスチェに、着ける意味がよく分からんカフス……カジノというのは不思議な格好を従業員にさせるのだな」


姿見に自分の姿を映しながら、ピアは自分の服装を確認している。


うんうん、バニーガールなピアも可愛いなあ……。


「ふふ、昔は服なんて戦闘中に動きやすいかどうか、ぐらいしか気にしてなかったが……こうして着飾るのも良いものだな」


それは良かった。服を用意した甲斐があった。


「君の趣味が移ってしまったかな?……それに、何より……」


んん?


「君にそういう顔で、私の姿を視られると、ゾクゾクするんだよ……」


そう言いながら、こっちに歩いてくるピア。


え、俺ってそんなにデレデレした顔してたのかな。


「エイジ君……」


ピア……。


俺はピアと抱き合ってベッドに倒れ込んだ。

これから至福の時が始まるのだ。


ーーーーーーーーーー


最初は悠々自適な引きこもりライフを送るのが、俺の目標だった。


でも今は違う。

ピアと過ごす時間、ネファラム城での生活、それを守る事が俺の全てになった。


これを守るために、宝珠を集めなければならないと言うのならば、当面の目標はそれになるだろう。


ーーーーーーーーーー


数日が過ぎ、さすがにもうチャイカ連邦も攻めてこないだろうということで、サイアをツラギ王国へ帰還させる事になった。


長い事お世話になりました。

あなたの魔術のおかげで、ネファラム城は助けられた。


「最後の大技に、なんだか全部持って行かれちゃった気がしますけどねー。あんな魔術を持ってるなら、もっと早く使えば良いんですよ」


切り札って言うのは、最後の最後まで残しておく物なんですよ。


「あなたはよっぽど駆け引きが上手いのか、あるいは相当臆病なのかのどちらかでしょうね」


後者ですよ、きっと。


俺がそう言うと、サイアはフフっと軽く笑い、


「色々あったけど、ここでの生活は悪くなかったわ。この城にいる人達はみんな好い人よ。闇属性だなんて、思えないぐらいにね」


属性なんて関係ない。その境地に達せられましたかな?


「あはは、何その言い方。……けれど、アザトース教団にだけは注意した方が良いですよー。何を吹き込まれたか知らないけど、アザトースの顕現、なんて事になったら、この世は破滅することになるんですから」


俺の目標はネファラム城での生活を守る事ですよ。

それ以外の目標なんて無い。


「だと良いけどね……」


……そうだ、帰り道ですけど、良かったら馬車ではなく骨龍使いません?


「え、あれ乗れるの?」


ーー


「わあ、馬車で行くよりずっとはやーい」


骨龍の背中にこしらえた、プレハブ小屋から外の景色を見てはしゃぐサイア。


本当はもっと速く飛べるが、これ以上速度を上げると小屋の耐久性が心配になる。

もう少し改良が必要だな。


骨龍四頭には、それぞれ赤城、加賀、飛竜、蒼龍と名付けてあり、今乗っているのはその内の飛竜だ。


乗員は俺とピアとサイアの三人だけである。


「確かに気分が良いな、こんなに高い所から地上を眺めながら行く空の旅と言うのは」


ピアも楽しそうだった。


地上を馬車で丸二日かかる工程を、空から骨龍でなら数時間だ。全速力を出せたらもっと速いだろう。

ついに俺はJRに勝ったぜ、うははは。


事前に通達はしておいたとはいえ、大型骨龍がツラギの王都に飛来すると、街中が大騒ぎになった。


王城の中庭に降り立ち、小屋から外に出ると、警戒して取り囲む衛兵をかき分けて、ヒルダ王女とパーク外交官が出迎えた。


「ボーンドラゴンに乗って空から現れるとは、魔術師殿は毎回度肝を抜かせてくれるな」


ヒルダ王女は嬉しそうに笑った。


城内に招かれ、昼食を振る舞って貰いながら戦況などを報告した。


「大勝利に終わってなによりだ。うちのサイアは君達の役に立ってくれたかい?」


彼女の魔術で何度もネファラム城は救われました。


「そうかそうか。援軍として送った甲斐があるという物だ。私たちはこれからも良き隣人の間柄でいる事が出来る……そうだろう?」


ヒルダ王女は上機嫌だった。


しばし城に滞在し休養を取った後、ネファラム城へ帰ることにした。

見送りにはヒルダ王女の他、サイアやライガーも訪れた。


「貴様には、色々言いたいこともあるが……サイアを無事に返してくれた事には礼を言おう」


と、やや仏頂面でライガーが言った。


傷の方はもう大丈夫何ですか?


「貴様が残しておいてくれた回復スクロールのおかげでな。その後、王都で光属性魔術師の治療も受けた。もう問題無い」


それは良かった。


「敵として戦った相手に、毎回そんな心配なんかしていたら、命がいくつあっても足りんぞ……まあ、敗れた俺が言えた義理じゃ無いがな」


そう言うとライガーは不敵にニヤリと笑みを見せた。


今後は気を付けますよ……ああ、ムラカ王女とお幸せに。


「ムラカ王女?なんの事だ?」


ーーーーーーーーーー ライガー視点


ずいぶん穏やかな顔をして帰ってきたな。

行く前は、隙を見て刺し違えてでも倒すと、息巻いておったのに。


飛び去っていく骨龍を見送りながら、サイアにそう言った。


長く暮らしている内に、情でも移ったか?


「そうかも知れませんねー」


と、サイア。


「何度かチャンスはあったのだけど、なんかやる気が削がれちゃいました。思ったよりアットホームな場所でしたしね」


そうか……まあ、お前が生きて帰って来てくれて、何よりだ。


ところでムラカ王女って何の話だ?


「えー?何の事でしょうねー」


目を逸らしてすっとぼけるサイア。

こいつは優秀な魔術師だが、玉に口から出任せをベラベラしゃべるのが問題だな。


「……そんな事より、すぐにミラージへの馬車郵便の手配を」


何かあったのか?


「かつて北方戦争末期に現れたと文献で読んだ、黒きガレー船、あれは実在していた。そしてそれが大挙してネファラム城に」


何だと?


ーーーーーーーーーー エイジ視点


ネファラム城への帰り道、今度はピアと二人っきりの空の旅である。


「エイジ君、もう少しゆっくり帰らないか?まだしばらくこの眺めを堪能していたいんだ」


うん、このまま遊覧飛行というのも悪くないですね。


ネファラム平原に沈む夕日。

城の上空に浮かぶ黒いガレー船艦隊。


なかなか幻想的な風景じゃないか。


俺はピアと二人で、このつかの間の平和を享受した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ