表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/82

骨の城

 

 戦闘情報中枢(C.I.C)をピアとテリーに任せ、サイアとルナと共に屋上に出た。


 あの攻城塔部隊を破壊せねばならない。

 再びサイアの魔術に頼らねばならないだろう。


 サイアさん、あの時みたいに竜巻(トルネード)を頼む。


「分かったわ」


 サイアはルナと共に魔術の準備を始めた。


 今回はあの時よりも更に数が多く、頑丈に出来ている兵器が相手だ。サイアだけでは全て壊せないかもしれない。


 バリスタと投石機(カタパルト)の準備も進めた。

 両方とも、もう残弾が少ない。

 慎重に狙いを定めさせ、発射する


 ……が、命中する直前になって透明な力場によって弾かれた。

 これは、シールドか?


魔術盾(マジックシールド)ですねー。相手にも魔術師が居るようです」


 と、サイア。


 魔術師だって?

 今まで全然出てこなかったのに……


 この最後の戦いの時まで隠し持って温存していたのか。


 待てよ、少し前に黒塗りの馬車が何台か到着したことがあったな。

 あれに魔術師が乗っていたのだろうか。

 高高度からしか確認できず、人物まで判別できなかったのが悔やまれる。

 何度か低空偵察も試みたが、その都度狙撃されたので、取り止めていたのだ。

 敵には凄腕のスナイパーがいるらしい。


 あのシールド破れますか?


「威力増強すれば、なんとか……。

 でも数がその分打てなくなりますね」


 相手に何人魔術師がいるのか分からないが、当然解除も使ってくるだろう。

 威力も必要だが、手数も必要だ。


 トトラ君をここへ。


 俺はイージスルームから元トトラを外へ出した。


「……トトラ君」


 サイアは短く一言だけそう言い、それ以上は何も言わなかった。


 サイア、元トトラの二人が魔術で攻城塔を攻撃し、ルナが魔力をサポートする。

 俺も敵のシールドを解除させながらバリスタと投石機で攻撃した。


 だが、複数人いる敵魔術師はひたすら攻城塔を守る事だけに魔術を使い続け、大半の攻撃は退けられた。


 破壊できたのはほんの数台で、大半は城壁に到達してしまいそうだった。


 と、そこへ黒玉石へピアから通信が入った。


「エイジ君、周りの他の兵士達も一斉に前進を開始したぞ、そこから確認出来るかい?」


 見渡すと、これまで矢戦に徹していた北側以外の敵兵達も、ネファラム城へ向けて殺到し始めていた。

 大型の梯子を何本も運んでいるのが見えた。

 あれを使えば城壁を登りきる事が出来そうだった。


 不味いな、もう敵兵の城内侵入を防げそうに無い。


 ピア、今すぐ全員を戦闘情報中枢(C.I.C)に集めて扉をロックして下さい。

 こちらはサイアとルナの三人でイージスルームに避難します。


「そうなりそうな気がして、キューもミーアの妹弟達もここへ呼んであるよ。ロックが完了したらもう一度連絡をする」


 通信は切れた。


 さあ、こっちもイージスルームへ移動しましょう。


「どうなるんです、これから……あんなに大勢の兵士が乗り込んで来たら……もう……」


 不安そうなサイア。


 まだ最後の抵抗って奴があるんです。行きましょう。



 ーーーーーーーーーー 元衛兵視点


 城壁に攻城塔が次々と到達し、兵士達が城内に雪崩れ込んで行くのが確認できた。

 北側以外の城壁にも何本も梯子がかけられ、兵士達が城内に向けて登って行く。


 激しい抵抗を見せたあの城も、ついに最期の時を迎えようとしているのだ。


「やっと取り付きおったか、全軍を城内に送り込め。残敵を掃討しろ!」


 ドミトリー将軍が指示を飛ばしたが、言われるまでもなく兵士達は次々と城内に侵入して行った。


 今まで俺達をこんな目に逢わせてきた連中を、血祭りにあげてやりゃなきゃ気がすまん、誰だってそう思う。


 それに陥落した城というのは略奪品の宝庫だ。

 ちょいと金目の物を失敬して持って帰ろうとするのは、もう止められないし、普通の城ならばそこに女子供への凌辱も報酬として加わるだろう。

 あの城に居るかどうかは分からんが。


「……城壁での戦闘は行われていませんね。敵は城内に潜伏したという事でしょうか」


 遠眼鏡で城の様子を見ていたイレーナがそう言った。


 少しでも生き長らえる時間を伸ばす為の、最期の抵抗。という奴か。

 今さら降伏したところで、兵士達の興奮は収まるまい。


 イレーナは顎に指を当てる仕草で考え込んでいた。

 この仕草、ちょっと可愛い。


「……まさか」


 突然、ハッとした表情になるイレーナ。


「すぐに兵士達を城から避難させて下さい。これは我々を中へ引き込む為の罠の可能性が……」


「なにっ?!」


 しかし、これから伝令を走らせても、興奮した兵士はもう言うことを聞かんのではないか……


 半ば祈るような面持ちで城を見つめるイレーナ。


 だが、ほとんどの兵士が中に侵入を果たした、次の瞬間。


 バチン、バチン、という激しい破裂音が、城から遠く離れたここへまでも連続して響いてきた。


「ああ、あれは……っ!」


 見る間に敵の城が、濃い緑色の霧に包まれ始めた。

 城壁内にたっぷりと満たされたそれは、溢れかえって城壁の外へと漏れだし、広範囲に広がって行った。


 それを浴びた兵士達が、もがき苦しむ姿が見えた。

 あれは猛毒の霧か。


 その猛毒の霧の中を、スケルトン達が悠々と歩き回っていた。

 彼らには毒などなんの効果も無い。

 城壁の上でもがいている兵士達を、次々と無慈悲に屠っていく。

 戦闘にすらならない、ほぼ一方的な殺戮。


 ここからは見えない城壁の中が、どのような阿鼻叫喚の地獄になっているか、想像するまでもない。


「へ、兵力はどれだけ残っている」


 上ずった声を出すドミトリー将軍。


「およそ、四千。うち半分は聖ヘルメス協会です」


 つまり彼らは純粋な戦闘力として数えられない。


「魔術師達は、どうした」


「城内に全員侵入しており、恐らく……」


 やられた、完全にまたもや填められた。

 アンデッドの城でなければ、到底出来ない戦術。


 スケルトン兵達が、接続された攻城塔を逆に利用して、続々と城外へと進出し始めた。

 城壁の外で苦しんでいた兵士達も、次々に討ち取られていく。


「か、彼らを、救出に!」


 悲痛な声でイレーナが叫んだが、それは無理そうだった。

 あの惨状を目の当たりにした生き残りの兵士達は、完全に士気を失ってしまっていたからだ。


 掃討をあらかた完了させたスケルトン兵は、理路整然と隊列を組み始めた。

 熟練のチャイカ精鋭兵でも出来ないような、一子乱れぬ動きで素早く横隊を完成させる。


 おいおい、まさか……


「て、撤退を……ああ……」


 スケルトン兵がこちらに向かって進軍を開始すると、兵達は我先にと逃げ惑い始めた。

 もう組織だった行動は望めない。完全な壊走。


 俺はイレーナの腕を掴むと、急いで馬車へと移動した。

 半ば放り込む形で中へ押し込む。


 御者、さっさと馬車を走らせろ!


「しかし、将軍たちがまだ……」


 待ってられるか、馬鹿。


 俺は前に出ると御者から手綱を奪い取り、強引に馬車を走らせた。

 追いすがって来る者達を無視して振り切り、ただひたすらこの場から逃れる為に、突き進んで行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ