砲撃戦
第一波の攻撃が頓挫したチャイカ連邦は、慎重策に切り替えたようだった。
敵陣の後方で、工兵隊が何台もの投石機を組み立て始めているのが、骨鳥からの映像で確認された。
どうやらこちらの城壁を投石で破壊してしまおうという魂胆らしい。
「どうするんです?製造を妨害しますかー?」
と、サイア。
妨害しようにも、あの距離ではバリスタも投石機も攻撃が届かないし、城から外に打って出るのは論外だ。
多勢に無勢で、たちまち包囲されて押し潰されるだろう。
まあ、しばらくはそのまま作らせましょう。
攻撃が始まるまでは少しノンビリ出来そうだ。
ーー
それから数日間はゆっくりと過ぎていった。
小競り合いすら発生せず、延々と睨み合いが続いている状態。
俺は自室に戻って休憩したり、たまにピアを呼んでイチャイチャしたりして過ごした。
その間に敵の工兵隊は、続々と急造投石機を完成させていった。
その数が二十台に達した所で製造が終わった。
そろそろ敵の第二波攻撃が始まりそうだった。
ーー
敵陣に慌ただしい動きが確認され、車輪付き投石機が移動を開始したと報告があった。
いよいよ第二波攻撃が始まる事を直感した俺は、戦闘情報中枢をピアとテリーに任せ、サイアとルナと一緒に城の屋上へ出た。
「今回は外へ出るんですねー」
と、サイア。
魔術使うからね、ちょっと危険だけど外に出るしかない。
シールドは張ってあるから大丈夫だとは思うが。
チャイカ軍はまず二台の投石機を射程内にまで進めてきた。
岩石がセットされ、砲撃が始まった。
俺はイージスシステムを起動させた。
部屋の中にいる元司祭と元トトラ君とが魔術を行使し、飛んできた岩石のうち、受け止められる物は受け止めてこちらの武器庫に蓄え、無理な物は弾いた。
「あの部屋、見てきましたよ。トトラ君も今戦ってるんですね」
俺はサイアの顔をチラっと見たが、その表情からは何も伺い知ることは出来なかった。
サイアのポーカーフェイスは完璧だ。
長いこと宮廷魔術師として生きてきた成果だろうか?
「今なら風属性魔術の竜巻であの二台は壊せますよー。撃つんですか?」
いや、もう少し相手に調子に乗って打たせましょう。
今だと二台しか壊せない。
少数では効果が無いと判断したチャイカ軍は、一気に二十台全部を投入してきた。
さすがにたった二人のスケルトンメイジでは全てを防ぎきれず、城壁や城内に岩石が命中し損害が発生し始めた。
反撃を始めましょう。
発生させた竜巻を横凪ぎに移動させる事って可能ですか?
「……確かにそれなら何台かまとめて壊せますけど、全部となると私の魔力が尽きてしまいますよー」
ルナ、ちょっと魔力を都合してあげてくれるかい?
「分かった」
ルナは俺から離れてサイアの隣へ移動した。
「彼女から魔力を借りれば良いの?」
うん。ルナの魔力はかなり深いから十分気を付けて……
「深いって、あ……何これ」
流石にサイアは驚愕した顔でルナを見つめた。
「あなた、ただのハイエルフじゃ無いのね。それによく見ると……どこか……」
サイアに見つめられて、ルナは恥ずかしそうに顔を背けた。
あー、サイア。城の被害が酷くなる前に攻撃を頼む。
「分かったわ」
サイアは敵陣に向けて杖を掲げた。
あの時ぶんどった杖、結局またサイアに返しちゃったなあ。
「威力増強、軌道変化、竜巻!」
一番左端の投石機に発生した竜巻は、そのまま車列をなめるように横凪ぎに移動し、二十台全てを巻き込んで上空に吹き飛ばして破壊した。
それだけでもまだ収まらず、敵陣の中へ縦横無尽に突き進んで行ってようやく消え去った。
多数の兵士が上空に巻き上げられ、やがて落下し地面に叩き付けられた。
魔術を行使し終わったサイアは、その場にペタンっと尻餅を付いた。
「こんな大きい魔術を行使したのは、産まれて始めてですよー。我ながら凄まじいですね」
それからルナの方を向いて、
「この娘、いったい何者なのですか。あれだけ魔力を引き出したのに、ケロっとしてるなんて……」
ルナは俺の方にタタっと走り込んで来ると、横からギュっとしがみついてきた。
「あらあら、その娘も手なずけちゃっているのね。ピアさんといい、その娘といい、あなたロリコン何じゃないですかー」
ええー、そうかな。俺、ロリコンかよ……。
ーー
第二波攻撃も失敗し、そればかりか多大な被害まで受けたチャイカ軍は、更なる慎重策へと切り替えた。
籠城戦が始まるのである。




