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前哨戦

 

 ネファラム城の中にある一室。


 薄暗い部屋の中、数々の大小様々な水晶板が壁一面に張り巡らされ、多数放った高高度偵察骨鳥からもたらされる映像が写し出されている。


 ここはネファラム城の戦闘情報中枢(C.I.C)

 城周辺と平原に関する情報は、全てこの部屋に集約されている。

 戦闘指揮もここから行う予定だ。


 今、水晶板の一つにケーニヒスグラード要塞から出撃する敵の大部隊が映し出されている。

 歩兵、弓兵、騎兵、数々の大型攻城兵器、そして後ろに連なる大規模な輜重部隊。


 今までも訓練目的であろう少数の部隊が、平原に進出することはあった。


 だが、今回の部隊は規模が違う。

 これほどまでの大部隊が出撃する様子を確認したのは初めてだ。

 明らかに何処かの軍事拠点を攻撃するために送り出された大部隊。

 そして彼らが向かう軍事拠点というのは、要するにココ、ネファラム城だろう。


「これだけの敵が、ここに攻め込んで来るのか……」


 ピアが絶句するのも無理はない。

 こちらを遥かに上回る規模の軍隊が動員されているのだ。


「アンデッド部隊の運用に関しては、君に全てを任せるより他は無い。私に出来るのは、君をサポートして支えてやる事だけだ……」


 ……。


「頼んだぞ、エイジ君。ネファラム城を、奴らの手から守ってくれ。奴らなんかに奪われないでくれ!」


 安心して下さい。

 こんな事ぐらいでネファラム城は落ちたりはしません。

 俺は、ピアとネファラム城を守るために、全力を尽くします。


「エイジ君……」


 薄暗い部屋の中、数々の水晶板に映し出される映像の光を浴びながら、俺はピアと身体を抱きしめ合った。


 本当に勝てるかどうか、それは俺にも分からない。

 でも、全力を尽くすというのは本当だ。

 俺は君を守るために、死力の限りを尽くすよ。


 もう二度と、ネファラム館を失った時のような悲しみを、君に味わわせたくはない……


 ーー


 最初の敵軍がネファラム城の近くに現れたのは、ケーニヒスグラード要塞からの出撃を確認した数日後だった。

 およそ三千ほどの歩兵が平原の彼方に確認できた。


「あれはチャイカ連邦の構成国の一つ、ナンザン王国の旗印だな」


 と、テリーが指摘した。

 連邦の構成国ということは、あのケーニヒスグラード要塞から出撃した部隊とはまた別の部隊らしい。

 他国に先駆けて戦場にご到着とは、随分とやる気のある連中だな。


 当然、遥か後方で待機して後続部隊の到着を待つのかと思い気や、結構城の近くまでやって来て陣営を行い始めた。

 矢の届かぬギリギリの位置で良いやと考えているらしい。

 いや、それどころか……


「ん?あいつら、もしかして攻撃してくる気か?」



 ーーーーーーーーーー ナンザン軍視点


 骨どもが守る城など恐れるに足らぬ。

 威力偵察も兼ねて攻撃し、ナンザン軍の精強さを他の連邦加盟国の連中に知らしめてやろう。


「リース将軍、攻撃の準備が整いました」


 副官から報告が届いた。

 よし、攻撃を開始しよう。


 三千の兵で横隊を組み、ゆっくりと城の射程圏内へと兵を進めた。


 城から矢による攻撃が始まったが、案の定精度が悪く散発的な攻撃であった。


「やはり骨どもの攻撃は大したことありませぬな」


 副官の言う通りだ、もっと大胆に攻め込む好機かもしれない。


 そもそも、こんな小城一つに数万の軍勢を差し向けること自体が大袈裟過ぎるのだ。

 我らだけで十分攻め落とせよう。


 兵たちに盾を掲げさせながら前進を続けさせ、堀の手前まで来たところで一旦停止させた。


 意外にも堀はしっかりした深さで丁寧に作られており、水の入っていない空堀とは言え、ここを乗り越えるのは難しそうだった。

 堀には何ヵ所か土橋があり、越えていくにはそこを進むしか無いだろう。


「よーし、みんな丸太は持ったなぁ!」


 おぉー!


 先端が鋭く研ぎ澄まされた大きな丸太を、数人がかりで持ち上げて突進の準備をした。

 これを何度も城の門に打ち付けて、門を破壊してしまうのである。

 いわゆる破城槌という奴だ。


 行くぞぉー、と言いかけたその矢先、突然城からの攻撃が止んだ。


「んん?」


 と、次の瞬間、城から今までとは桁違いの量の矢が飛んできた。

 まさに矢の雨だった。

 慌てて盾を上に掲げて防いだが、矢量も密度も正確さも圧倒的で、兵たちはその場に釘付けとなり、移動することもままならなくなった。

 無防備で丸太を持ち上げていた兵士たちは、みんな射ち倒されて地面に転がっていた。


 馬鹿な、これでは門が破壊できぬではないか。

 誰かあの丸太を持て、門を攻撃するんだ!


 叫んだが、実行に移す者はいなかった。

 こんな矢の雨の中、身を晒して丸太を持ち上げるなど、自殺行為に等しい。


 だが、これでは門が……なに?


 その門が開き始めていた。

 丸太でこじ開けようと四苦八苦していた門が、自ら開いていく。


 門からおびただしい数のスケルトン兵が出撃してきた。

 スケルトン兵は理路整然と行進し、二手に別れて土橋を渡り始めた。

 矢で釘付けになっている俺たちの目の前で、悠々と左右からの包囲陣形が完成しようとしている。

 にも関わらず黙って見ている事しか出来ない。


「リース様、後退致しましょう」


 副官が意見を述べた。


 しかし、抜け駆けで攻撃しておいて、なんの戦果も上げられず後退したとあっては、ナンザン王国のメンツが……


「そんなもの、気にしている場合ではありませぬぞ!」


 そもそもこの矢の雨の中では、後退するだけでも兵に犠牲が……


 と、突然再び矢の攻撃がピタリと止んだ。


 と言うことは、つまり……?


 陣形を完成させたスケルトン兵が、左右から挟み込むように攻撃を開始してきた。

 ナンザン軍は瞬く間に陣形崩壊し、多数の兵士を失いながら敗走していった。


 ーーーーーーーーーー エイジ視点


「あらー、見事なものですねえ。全く魔術も使わずに撃退しちゃった」


 と、サイア。


 あんな少数の兵力で、完全状態で待ち構えている城に攻め込んで来るなんて、勇敢でも何でもない。単に愚かで無謀なだけですよ。


 スケルトン兵に矢と「材料」の回収を命じる。

 あの破城槌もありがたく頂戴するとしよう。


 普通の軍隊なら戦闘を行えば、勝ったにせよ負けたにせよ、死傷者などの影響で戦闘力は減少する。


 だがネファラム軍は逆に増えるのだ。



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