ゾンビ・ハザード
キューの研究に付き合ったり、
ルナと魔術の練習をしたり、
ミーアの仕事を手伝ったり、
テリーから本を借りて読んだり、
等々して、のんびりネファラム館生活をエンジョイしていたある日、
ピアが俺の部屋にやって来た。
「エイジ君、次の任務は一緒に行って欲しいんだが、良いかな?」
良いですよ。メンバー全員で行くんですか?
「いや、そこまで大変な任務じゃ無いから二人で十分だ」
久しぶりの遠出だな。
ずっと館の中にいて、身体が鈍ってしまいそうだったから、ちょうど良い。
ーー
翌朝、ピアと一緒に出発し、駅馬車へ乗り込んだ。
ナガッセからやや離れた所にある古びた洋館へ行き、あるアイテムを持ち帰るのが任務らしい。
「アンデッド系のモンスターがよく出る場所らしくてな。
それならば、エイジ君がいると攻略も楽だろう」
確かにそういう場所こそ、死霊術師の出番だな。
ナガッセのとなり村まで来たところで馬車を降り、そこからは森へと向かう小道を進む。
今日は天候があまり良くなく、空は灰色の雲で覆われていた。
雨とか降られると面倒だなあ。
ーー
ややあって、怪しい洋館が見えてきた。
どんよりとした空と相まって、実に不気味だ。
かつては貴族の別荘の一つだったらしいが、放棄されて久しく、そのうちにアンデッドが住み着いてしまったらしい。
「では、攻略を開始しよう。
かなりの数のアンデッドが目撃されているようだから、注意してくれ」
庭を進んで半ば壊れた玄関のドアを開け、洋館の中へ入った。
中はエントランスホールになっていて、中央に大きな階段、左右に1つづつドアがあった。
階段そばにあるタイプライターが妙に気になる。
だが、インクリボンを持っていないので使い道がない。
適当にドアを開いて先に進んだ。
老朽化しているのか開けるのに時間がかかり、やけにゆっくりと開くドアだ。
少し進むと早速ゾンビが現れた。
緩慢な動きの奴が2体。
俺は魔術を行使する。
闇属性魔術、死者契約。
まずは下僕2体ゲット。
「ふむ、戦う必要すら無いか」
いちいち戦うの面倒だし、下僕にしていきましょう。
「そうだな、戦いを回避できるなら、その方が良い」
更に先へ進み、出てくるゾンビは片っ端から下僕にしていった。
窓を突き破って入って来たカラスゾンビに驚きつつも下僕に加え、檻から出てきた犬ゾンビ、巨大な蛇ゾンビも下僕にした。
ここはゾンビだらけで気持ち悪いなあ。
こんなところに一人では絶対に来たくない。
「死霊術師の君でもそう思うのかい?」
そりゃそうですよ。
ピアは一人でここに来れます?
「潜入系のスニーキングミッションなら、一人でやる場合が多いが、ここはダメだな。
アンデッドにはスニーキングがやりづらい。
生体感知の奴が多くて面倒だ」
あまり館に居ないのは、ソロで仕事を受けているからですか?
「ああ、一人の方が身軽な時もあるんだよ」
やっぱりそうか。
一人で依頼を受け、一人でクリアし、館の維持費を支えている。
俺はちょっとピアの事が心配になった。
色々と抱えすぎて、倒れてしまわなければいいが。
ーー
館の探索を続ける。
石像を動かしたり、ピアノを演奏したり、エンブレムをはめ込んだりして進まねばならぬ場所があり、ここの洋館に住んでた貴族とやらは普段から毎回こんな事をして生活していたのかしらん。
ハーブ類の鉢植えが至るところ置いてあり、ピアはそれらを回収していった。
街で売ればそこそこの金になるらしい。
いったん洋館から抜け、中庭に出る頃には俺の下僕は30体を越えていた。
つれていくのが面倒だから、放置した下僕も含めて、である。
「相変わらず君の魔力は凄いな、一体どれぐらい下僕を増やせるんだい?」
この魔術は契約の際に魔力を消費するので、維持だけなら何体でも増やせそうですよ。
「君は簡単にそう言うけど、普通の死霊術師はせいぜい数体の維持が限度なんだよ?」
中庭を進んで寄宿舎へ。
鍵が掛かっていて入口が開かない。
鍵を探しに洋館へ戻らなきゃいけないかなあ。
「それは面倒だ。
これぐらいのドア、とっとと蹴破って先へ進もう」
それもそうですね。
下僕にドアを蹴破らせ、中へ入る。
寄宿舎には魚ゾンビやらデカイ植物ゾンビ等がいたが、お目当てのアイテムは無くまったくの時間の無駄だった。
再び中庭へ戻って先へ進む。
クランクで水を抜いたり、転がってくる岩に下僕が潰されたりしたが、どんどん現れるゾンビを次々に下僕化して補充する。
やがて研究所のような建物が見えてきた。
あれが当たりの場所っぽいな。
ーー
中に入って、もはやルーチンワークのようになったゾンビの下僕化を行い探索を続ける。
どうやらお目当てのアイテムはここにあったようで、ピアは研究資料の様なものを回収していった。
何の資料ですか?
「今ざっくり見ただけだが、アンデッドを兵器転用して軍隊を組織するとか、そういう感じの事が書いてあるようだ」
なるほど、じゃあここに集まってるアンデッドって……
「うん、元々ここにいた奴もいるんだろうな。
資料は持っていく前にキュー姉にも複写して渡しておくよ。
こういう内容なら、君も興味あるんじゃないか?」
ちょっとルール違反っぽいが、そこは目を瞑ろう。
俺も内容を調べてみたい。
最後の部屋へ入ると大型のゾンビが待ち構えていた。
複数の死体を組み合わせて作ったようで、かなり気持ち悪い。
「さすがにあいつは戦わなきゃダメかな?」
ロケットランチャーでもなければ苦戦しそうな奴だが、
一応やってみましょう。
闇属性魔術、死者契約。
あ、効いた。
ーーーーーーーー
「予定よりずいぶん早く終わってしまったよ。
やはり、エイジ君を連れてきて正解だったな」
すべての研究資料を回収し、洋館の入口へ戻ってきた。
下僕総数89体、整列させて庭に並ばせる。
「どうするんだ?
またここに住むとか言い出すんじゃないだろうな」
まさか。
俺の家はもう既にありますよ。ネファラム館にね。
「……!
ふふ、そうだな」
ピアは少し嬉しそうに笑った。
俺は下僕達に火を起こさせ、洋館も寄宿舎も研究所も全部焼き払うように命じた。
全てに火が回ると、下僕達に燃え盛る洋館へ飛び込ませ、彼ら自身も燃やさせる。
俺は光属性魔術師のように、彼らを浄化させることは出来ない。
だからせめて火によって浄化してやろう。
お前達は死んだ後ですら十分働いた。
もう休め。そして成仏して、天に帰れ。
最後の下僕が火に飛び込むのを見届け、俺とピアは帰路についた。
天候は悪化し、雨がぽつりぽつりと降り始めた。
村まで急ぐことにした。




