異世界ぽんぽこ化け物語
途中までですが良ければお読みください。少し前に思い付きで書いたものになります。
大きな大きな山のてっぺんで、二匹の獣は長い長い化かしあいをしていました。
一匹は、スラっとした体にサラサラの毛並み。美人さんな白い狐。
もう一匹は、まん丸な体にモフモフの毛並み。立派なおひげのたぬき。
「今日こそは勝つんだから!」
「私も負けません!」
この場所で二匹が出会ってから、ずっとずっと続いて来たこの勝負。
どちらかが、二回連続で勝ったら勝ち。そう決めて戦ってきたけど、これが中々決まらない。
もう5年になる。
そろそろ勝負を決めたい。そう思っていた。
前回は狐の勝ちだった。
たぬきとしては、ここは勝っておきたい。
いざ──
そう思って、たぬきは体に力をいれて頭に乗ってる葉っぱを震わせる。
「なっ!?」
狐は、既に準備を終えていた。長年戦い続けたからわかる。あれは、勝負を始める前から準備をしていなければ出来ないことだ。
(フライングだと!? 正々堂々と戦おうと決めたじゃないか!)
裏切られた気持ちになるたぬき。
狐の優しそうな青い目が赤く光り、視界が黒く染まっていく。
相手の視界が真っ暗で何も見えない様に思わせる。狐が最初の勝負で使った技だった。
段々と黒く染まっていく視界の中の狐は、泣いている様に見えた。
意識も曖昧になっていく。
(随分と腕を上げたんだなぁ。でも、なら何故フライングなんて……。き、つね……)
たぬきは、広がる黒に飲み込まれて意識を失った。
最後に、乾いた音が響いた気がした。
温かくて、ふかふかで、そして少し眩しい。
ゆっくりと目を開けると、そこには幼い少女がいた。
「メイシャ! 起きたよ! 獣さん起きた!」
少女は、振り返って控えていた女性に言う。
「承知しました。食べ物を持って参りますね」
白くてフリフリな服を着た女性は、一度礼をして部屋を出ていく。
「ねえねえ、獣さん。怪我は大丈夫?」
見ると、お腹に白いものが巻かれていた。人里に下りた時、人が似たようなものを手や足に巻いていた気がする。
それと、お腹にジクジクと痛みを感じる。
それと、どうやらたぬきは白いものが敷かれた籠の中にいるようだ。
「獣さんはね、黒い鳥に襲われてたんだよ。だから助けたの」
黒い鳥というと、カラスか?
「怪我が治るまでここにいたらいいよ」
少女は優しい笑顔を向けて言う。
ならば、お言葉に甘えよう。そして、この恩は忘れずに返す。
たぬきは、義理堅いのだ。
「只今戻りました。アルテミシア殿下」
「お帰りなさい。メイシャ、この獣さんの種類は分かったの?」
「残念ながら……。賢者グジュグジャン様にも話を聞いたのですが、分かりませんでした。今まで人前に姿を見せていなかったのか、新しく生まれたのかだろうとおっしゃっておりました」
メイシャと呼ばれた女性は、籠をたぬきの近くに置いた。
「鳥さんに襲われても逃げられないくらいだから、ずっと隠れてたのかもね」
「そうかもしれませんね」
「でも、もしかしたら何処か遠い所から来たのかも」
「そうだったら凄いですね」
アルテミシア殿下と呼ばれた少女は、葡萄の様な小さな実を一つ籠から取ると、たぬきの口元に置いた。
「食べてください。食べないと怪我も治りません」
甘い匂いがする実を食べると、甘酸っぱい味がした。
人里で人の目を盗んで食べた……林檎と言っていた食べ物に味が似ている。
アルテミシア殿下は、小さな実を取っては口元に置いてくれる。
それをたぬきは、むしゃむしゃと食べる。
真っ白なシーツは、直ぐに果汁でびしゃびしゃに濡れた。
「あっ」
「取り替えますね」
メイシャは、たぬきを持ち上げてささっとシーツを取り換える。
お日様の匂いがするシーツは、とても心地が良い。
眠くなってきた。
「寝た方がいいです。怪我は早く治した方がいいですから」
思えば、この様な怪我をした記憶もない。きっと夢なのだろう。
そして、目覚めろと夢が言っているのだ。起きたら狐に文句を言ってやろう。
そう思って、たぬきは目を閉じた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
気が向いた時にでもまた覗いてみてください。