ヒロインは逆ハーを目指す。
少女はヒロインである。
それは突然気づいた。
気づいたというより思い出したに近い。
それも入学式の日、門の入り口のところで転び、
王太子様に助けられた瞬間に。
「大丈夫かい?よく前を見てなかったんだ、すまない。」
これはあれだ。最初のイベントだ。
ダサいタイトルの乙女ゲーム。
内容も普通、出てくるキャラも王道の乙女ゲーム。
ヤバイ。私、誰も攻略したくない!!
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あの場は適当に、だがしっかり礼儀を守った上で逃げた。
特に印象に残らないように気を遣ったはずだった。
だけど見た目からか気を引きやすいらしい。
確かに私は可愛い。とても可愛い。さすがヒロインだ。
よくあるヒロイン特有色のピンクブロンドに、ピンクのくりくりの大きい瞳。身体も小柄で胸も慎ましやかだ。
頭も良いし、よくあるヒロインならではの光属性だ。
もちろん魅了の力も持ってる。
本当に王道ヒロイン。
王道ヒロインから少しでも外れるよう、あの日から一応がんばったんだ。
なのにシナリオ強制力は強かった。
どんどん攻略対象に近づいている。
逃げてるはずなのに!!
いじめみたいなのも始まった!
噂では婚約者様たちも怒っているらしい。
でも違うんだ!!本当に!!
逃げても逃げた先にまた攻略者たちがいるんだ!!
――――――
そしてとうとうきてしまった。
婚約者様たちに呼び出された。
絶望しながら呼ばれたティールームに向かっている。
なんてことはない!!!
この時を待っていた!!
もう一度言おう!この時を待っていた!!
私は婚約者様たちに会いたかったのだ!!
そうこの王道乙女ゲーム。
ヒロイン、ヒーロー、そして婚約者全てが王道。
王太子の婚約者様。
名前はエリーゼ様。
癖のある赤い髪に少しつり目の赤い瞳。
スタイルがもうボンキュッボン。
大輪の薔薇を彷彿とさせる見た目。
なのに!!面倒見のいいお姉さんタイプ。
最高。もう。好き。
宰相様の息子の婚約者。
名前はアイシャ様。
ストレート銀髪に、涼やかな氷のような青い瞳。
背が高く、全体的にサラッとしている。
百合の花のようなお方。
性格もクールなのだ。でも!!時々天然なの!!
最高。もう。好き。
騎士団長の息子の婚約者様。
名前はユリア様。
金の髪を頭の上の方でポニーテールにしており、
新緑のような瞳。
ユリア様自身も騎士を目指しているので、背が高く、少し筋肉質。
性格はサバサバした姉御たいぷ。なのに!!時々デレるの!!
最高。もう。好き。
魔法師団長様の息子の婚約者様。
名前はルル様。
ミルクティー色のふわふわした髪ときゅるんとしたオレンジの瞳。
背は小さく身体もとても華奢で同い年には見えない。
見た目は本当可愛いいのに、実は腹黒。
最高。もう。好き。
すごい長くなってしまった。
好きが強すぎた。
そうなのだ。
私は攻略対象の婚約者様が好きなのだ。
さて。もう一度言おう。
この時を待っていた!会える時を!!
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その後。
さすがヒロイン。
婚約者も攻略できた。
今日もこのあと、婚約者様たちとティーパーティーだ。