初めの仕事
レーアに道案内してもらった次の日から馬車に揺られて丸2日。初めはまだまだ慣れない感覚で楽しかったが2日ともなれば話は別だ。珍しい、楽しいという感覚がなくなってしまえば馬車の旅などあまりにも揺れるためただただ苦痛なだけだ。それに地味にきついのが飯だ。クラウスの家にいた時はエルマの美味しいご飯を食べられていたのだが...この筋肉ダルマに料理の技術を求めるなど当然できず道中口にしてるのは水と肉だ。肉と聞けば実際聞こえはいいがクラウスに料理なんか出来ないから丸焼きだ。ただ焼いただけ。しかも雑でちょっと焦げてたり、硬くなってたりする。下処理も味付けもしないもんだから素材の味をそのまま楽しめ状態だ。ていうかこれなんの肉だよ。俺舌はあまり鋭敏じゃなかったから味だけで豚とか牛とか鳥とか種類を判別することは元々できないが確実に俺が知ってる肉じゃない!なんだこれほんと。この世界ではメジャーなものなのか?検索してみれば...いややめておこう。ゲテモノだった場合地獄だ。ちょっと鳥に近い気もするし鳥肉ってことにしようそうしよう。
馬車の旅中暇すぎてずっとこんなことを考えていた。もうちょっとなんかなかったのか俺よ。例えばこの馬車の中に転がってる斧はなんなんだとかさ。なんだこれ戦斧って言うのか?俺の身長くらいあるが。
「おいどうしたよ由希。頭なんて抱えて。」
「いや...気にしないでくれ。なんでもないんだなんでも。」
「そうか?ならいいけどよもう着くぜ?」
「おっホントか!」
今まで馬車の後ろの方で丸くなっていたがその言葉を聞いて飛び上がりクラウスの肩から前方を覗く。そこにはテゴドールと同じか...まぁテゴドールより少し小さめかな?という村があった。見た感じ農村って感じかな?畑が見えるな。
「急に元気になったなお前。そんなに馬車の旅に飽き飽きしてたのか。」
「当たり前だろ!丸2日ものってたんだぞ!?一昨日の早朝出発して到着したのは夕方だぞ!?」
「まぁそうだろうが...。帰りもあるんだぞ?」
「はっ!」
しまった!帰りがあるのを完全に忘れ開放されると思い込んでいた。また馬車の片隅へと移動し丸まる。
「あぁ...まぁそのうち慣れるだろ。」
クラウスに思いっきり呆れられた。マジで先に移動手段を用意すべきなんじゃないかこれ。
「おい着いたぞ。いつまで丸まってるんだ。」
呆れ顔でクラウスが後ろを覗いてきた。仕方ないじゃないかまだ同じ苦行が待ってるんだぞ?
「ハイハイ降りますよ。」
とりあえず馬車から下り、周りを見回してみたがやっぱり農村だな。畜産もしてるみたいだが...なんだあれ?もっこもこな割に羊には見えないしどっちかと言うとあれ馬なんじゃ...。なんかテレビで見たような...なんだっけなぁ...あっそうだ!アルパカだ!そっくり!でもあれってたしか高地に生息してるんじゃなかったっけ?ここって平地だよな。実は思ってる以上に高かったりするのか?
「なぁクラウス。この村って実は高い場所にあったりする?」
「何言ってるんだ?お前そんなに外見てなかったのか。ずっと平原通ってきただろ。」
「いや一応確認だ確認。」
う~ん。まぁ異世界だし似てるだけで別の生物なんだろうな。毛のためにって言うのは変わらないと思うけど。
「さてとそれでここには何をしに?」
「あぁここでは月に一度あそこにいるピールの毛を使った服とか絨毯とかを買いに来てるんだよ。あとはちょっと農作物もな。」
ピールって言うのかあのアルパカ。確か...ピールって...あぁダメだ思い出せない。英語だった気がするんだけどなぁ。暇だったし宇宙目指すなら英語話せないとって勉強してたんだが...まだまだ足りなかったな。まっいいやなんでも。
「農作物は何があるんだ?」
「ここはまぁ主に小麦だな。主食だからだいたいどこでも育ててるけどな。あとは林檎とかも多めだったな。周りに木が生えてたろ?あれ森じゃなくて果樹園なんだぜ。」
「へぇ結構広いな。」
「ここのは品質もいいからなうちでもちょくちょくおやつとして出てくるぜ。」
「それは楽しみだな。」
まぁ果物なんて見舞いでみんな持ってきてくれてたから正直そろそろ飽きそうだったけどな。
クラウスが相手と話している間俺はさっさと荷物を積んでいる。さっきからずっと話してる様子見てるが取引のわりにクラウスの方からなにか渡してるようには見えないんだよなぁ。まぁ相手から見える位置で荷物積んでるしこの荷物も相手の方にどれを積むか教えてもらったから盗んでるとかそういう訳では無いんだろうが...どうなんだろうな?
そんなことを考えているとクラウスは取引相手を連れてこっちの方へと来た。
「お疲れ様由希。大丈夫か?疲れてないか?」
「まぁこれくらいならな。でそっちが取引相手の方であってるんだよな?」
「あぁそうだ。そういえば紹介してなかったな。」
「おっとそれは失礼しました。私はこの村の村長をしているカールと言います。」
「由希と言います。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。それで剣を腰に下げているようですが由希さんは冒険者なのでしょうか?」
「いいえ。ただクラウスの仕事を手伝いに来ただけですよ。体をもっと鍛えないと冒険者なんてとても。」
「ほう。となるとまだクラウスさんは冒険者を雇わないと。最近物騒だって聞いてるでしょう?ピース平原だってアンピス平原だろというものが現れるようになっているのですよ?」
「あぁ魔物の目撃例が出たんだっけか?まぁその程度問題ねぇよ。」
「盗賊だって出るでしょうに。」
「ハッハッハ問題ねぇよ。」
「まぁあなたがそういうのならそうなのでしょうが自分の歳をあまり舐めてると痛い目に会いますよ?」
「まだそんな歳じゃねぇよ。」
「そうですか。貴方に何かあれば我々も困るのでお気をつけてくださいね。」
そう言うと村長は帰って行った。通った平原って魔物も盗賊も出る可能性あったのか...。戦える人いなくて大丈夫か?まぁクラウスの体格なら多少戦えてもおかしくないとは思うが。
「さて、流石に今日出るのはもう無理だな。」
周りを見ると赤く染っていた夕空は星が輝く夜空へと変わっていた。
「そうだな。今日はここの村に泊まってくのか?」
「まっそうだな。宿屋の部屋執ってくるかぁ。」
「こんな時間だけど大丈夫なのか?」
「ん?まぁ小さい村だし基本的に部屋は余ってたはずだから大丈夫だろ。」
「ホントかぁ?」
「大丈夫だって。ほら行くぞ。」
「ハイハイ行きますよ。」
まぁ実際この日はちゃんと部屋が取れた。部屋はまぁホテルとまでは行かないが特にどこが汚いとかそういうのが気になるレベルではなかった。ベットに転がりながら『あぁ明日はまた野宿かぁ...』などと考え、少し憂鬱になりながらもその日は眠りについた。
どうも!クロウです( 'ω')ということで今回由希の初仕事前半でした!異世界に来てすぐに野宿する羽目になる由希ですがまぁ初日から野宿続きとかいう主人公も沢山いるので彼はまだ運がいいほうでしょう。あとちょくちょく地名が出てきますがネーミングセンスについては目をつぶっていただけるとありがたいです...何も思いつかなかったんや...。




