手に入れた基盤
「そう言えばよ由希。」
「ん?なんだ?」
今は飯を食べ終わり、「この街初めてなんだろ?軽く紹介してやるから夜の散歩でも行こうぜ。」とクラウスに誘われて夜風に吹かれているところだ。
「お前はどこから来たんだ?俺もいろんなところ回ってきたがお前と似た格好のやつは見た事ないんだが。」
あぁ多分白衣のことだな。何故これを選んだのか正直神に小一時間問い詰めたいところだが...まぁ最後に着ていたものよりはマシか。
そう言えばこの世界において俺ってどんな立ち位置なんだ?いや異世界転生者なのは間違いないんだろうが異世界って認識あるんだろうか?調べればわかるか。この世界の常識で異世界についてはっと。
【寝物語の異世界からきた勇者のお話がヒット】
なるほどレアケースか。あまり目立つべきじゃないかな。ベタだが使わせて頂くとするかな。
「いや実は気づいたらあの平原に立っててそれまでのことが分かんねぇだよな。ここら辺に見覚えはないから多分遠いところからだろうってのは分かるんだが。」
「ほう。お前割と不味い状況だな?」
「そうなんだよなぁ。名前はわかるし、多少の知識もあるんだけど荷物は今身につけてる衣服と剣のみなんだよな。剣の使い方なんてわかんないしな。」
「おいおい大丈夫かよ。」
「まぁ最悪剣でも売ってしばらくの生活費にするさ。」
「お前それはやめといた方がいいんじゃないか?」
「なんで?」
「多分剣を持ってるってことはお前それに関する職だった可能性があるわけだろ?昔に関わるものを売るのはまずいって。」
「そうか?俺こんな身体だからな剣を扱ってたとは思えないんだが。」
というか扱ったことなんてないんだけど。
「それに金がなけりゃどうしようもないしな。」
「そりゃそうだが...ちょっと剣見せてみろよ。俺も商人だからな鑑定眼には自信あるんだ。」
「はいよ。」
腰から鞘ごと外してクラウスに渡す。すると受け取ったクラウスは落としかけて驚いた顔をした。
「なんだこれ。重くて実戦で振れたもんじゃねぇぞ。」
そう言ったあと鞘から剣を出して刃を見たり、実際に少し振ってみたりしていた。少しふらついていたが。
「よし、返すぜ。」
「お、おう。」
疲れ切った顔してるからちょっとビックリして声が震えてしまった。
「ダメだぜこりゃ。」
「何が?」
「売れないぜそれ。少なくともそこら辺の鍛冶屋とか商店とかじゃな。」
「えっなんで。」
「まずさっきも言ったが実戦で振るには重すぎる。剣とかじゃなくて戦鎚とかならその重さでもちょっと力自慢向けってだけだがそれじゃよっぽど変わったヤツしか使わないだろうな。バランスが崩れる。柄がかなり短いくて両手では持てないしな。」
「武器商とかに売れないのはわかったがなんで鍛冶屋もダメなんだ?」
「そっちの方は簡単な話で加工技術がないからだ。」
「?」
「少なくともこの辺じゃ見た事ない金属が使われてる。王都とかなら珍しいとか言って買うやつもいるかもしれんがここら辺でそんな余裕のあるやつはいねぇな。」
餞別くれるのはありがたかったけどもうちょっと選んで欲しかったなぁ。
【初期装備 神造剣:神が適当に作ったもの。形を模しただけである。】
あぁなるほど...そういう...見た目だけ考えて用意しやがったな...。神が作った珍しいものなんですよ!と言って売れるわけがないしな。変な宗教家になっちまう。
「それじゃぁ...どうするか。」
「なぁここで相談なんだが。」
「ん?なんだ?」
「実はよ。今日見ててわかったかもしれねぇが今俺人手不足なんだ。」
あぁ確かにかなりの量の荷物だったのに1人だったな。
「でもそれだったら家族に手伝わせたらいいんじゃねぇか?」
「いやぁそうもいかねぇ。エルマは力仕事とは無縁だからな荷物なんて持てない。レーアの方は...まぁ一人娘なんだが残念ながら商いより冒険に魅せられちまってなぁ。継いでほしかったがまぁやりたいことやらせてやりたいし強要出来ないんだよなぁ。」
「なるほどなぁ。」
「俺の仕事を手伝ってくれるなら居候としてうちに置いてやってもいい。見た通り部屋はあまってるし、1人増えるくらいなら問題無いだけの稼ぎもあるしな。まぁもちろん自分の分をちゃんと稼ぐくらいは働いてもらうけどよ。」
願ったり叶ったりだろう。まず俺がやるべきなのはトレーニングと情報収集。商人なら色々なところ動き回るから最低限の体力が必要になるし、色んな人から情報を聞けるだろう。それにクラウスって超良い奴っぽいからな。それに...俺バイトとかしたことないから超興味ある!めっちゃやりたい!
「そりゃぁ助かる。だが見ての通りの体だ。体力の方が絶望的でな。しばらくはお荷物になるかもしれないがいいか?」
「なに商人ってのは未来を見すえて投資して稼ぎを出すもんだ。投資には慣れてるさ。」
「じゃぁよろしくな。」
「おう。頼んだぜ。」
夜風に吹かれながら俺達は握手を交わした。この世界に来てこんなにすぐに基盤を整えられたのは幸運だな。いや、クラウスに会えたこと自体が幸運か。
「よしっ。由希酒は飲めるか?」
「飲んだことないな。」
「そうか。まぁ試しに飲んでみろ!仕事仲間が増えた良き日に乾杯しないなんて損だぜ!」
「そういうもんなのか。」
「そういうもんだ!よしっ帰ろうぜ!」
ばしばしとまた肩を叩いてきたが昼間に比べてかなり弱めだった。豪快そうに見えてこういう所にもちゃんと気を回せる当たりやっぱりクラウスって良い奴だな。
その後晩酌に付き合わされることになるがあまりに豪快な飲みっぷりに付き合わされた由希は初めてなのに飲みすぎたせいで次の日の昼間まで目を覚まさなかったとかなんとか。
どうも!クロウです。由希トントン拍子で基盤を手に入れることに成功しました。幸運ですね。ちなみに彼不幸な人生を送った分の幸運をこっちの世界で神の加護として軽く受け取ってるとかなんとかって話があったりなかったりするんですがまぁそんなことはどうでもいいですね( 'ω')ちなみに最後飲みすぎで昼まで起きないということでしたが「二日酔いになるとかじゃないのか」と思った方もいると思うんですが、そこは権能のお陰ですね( 'ω')さすが権能ってことです。




