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幼馴染の厨二設定は実在していた!?  作者: ワタリイセ
第1章:幼馴染魔王『レナージュ』
3/4

3 幼馴染は魔王で厨二病患者だ。しかし・・・。 後編

「お待たせ。」


 ヴランが私に声をかける。

最後、あの男に何をしたのは見えなかったが、私の元に来たということは決着がついたからであろう。


「結局、私は何もできなかった・・・。」


思わず声を漏らす。

ショックだった・・・。

幼なじみを守ると豪語しておきながら、結局私は地面に這いつくばっていただけ。

いつの間にか出た刀も消滅しており、悔しさと惨めさが私の中に残る。


「仕方がないわよ、あなたは普通の娘だもの、戦えなくて当然よ。」


そう言うと、右手を私に見せる

ヴランの手のひらにはビー玉サイズの小さな光の玉が数百個ほど浮いて密集していた。

それを私に向けて投げつけると、無数の玉は私の中に吸い込まれ、瞬く間に痛みと疲労感が消え去っていた。


「な、なんだこれ?」


急なことで驚いたが、自力で立てるまでに体力が回復した。


「説明は後、早くいきましょ。」


急ぎ足で、ヴランはレナの元へ行く。


「気を失っているようね。」


ヴランが失神しているレナをお姫様抱っこのように抱える。

その光景はまさに美女と野獣だったが、この野獣は私の理解を越した存在・・・。

もちろんまだ警戒対象だ。


「レ、レナをどうするんだよ?」

「もちろん助けるのよ・・・アルちゃん!ゲートを開いてちょうだい!」


『『カヴァー・トゥ・ダウ(ゲートよ、開け)』』


空高くから呪文を唱える声が響き渡ると、ヴランの真正面に赤い魔法陣が現れる。

その魔法陣は厨二男が作り出した魔法陣とまったく違う模様をしていた。

厨二男のは四角や三角の模様が多かったのに対し、こっちは丸みを帯びた模様が多かった。

 

「この先に、貴方の知りたいことの答えがあるわ。行くわよ。」


ヴランが魔法陣の中に消え、私も後を追うようにレナと自分のカバンを回収し、恐る恐る魔法陣を潜った。


周りの風景は一瞬で変わり、建物が多かった通学路から薄暗い森の中へと場所が変わっていた。

これは、いわゆるワープと言うのだろうか・・・。


「さぁ、こっちよ。」


少し歩くと森の中から豪華な建物が現れる、どこかのお金持ちの別荘といっても過言ではない大きな建築物。

がそう思ったのは数秒で、近づくにつれ建物の細部が明らかになる。

壁は蔦で覆われボロボロ、窓ガラスも何箇所か割れ埃もついており、屋根もどこか錆び付いている。

いわゆる廃墟屋敷だった。


「さあ、上がって。」


ヴランはレナを抱えながらも器用に、扉を開け私を誘う。

時間が時間、室内は真っ暗で唯一の明かりは廊下の壁に取り付けられている数個しかないブランケットだけ。

なんとかヴランの後を追いながら長い廊下を歩くともう一つの扉の前に立ち止まる。


一体なぜ止まったのかと思ったら、扉が勝手に開き、中から私の腰ほどしかない低身長の女の子が出てくる。


「おかえりなさいませヴラン様、どうぞこちらへ。」

「ただいまケリブちゃん。紹介するわドワーフ族のケリブよ。」


肌は褐色、厚い防寒着を着込み三角帽子が特徴的な少しずんぐりむっくりした幼女。

ドワーフ族・・・。

ファンタジー物では良く見る背が小さい種族

実際に見るのは初めて・・・だというのに彼女には見覚えがあった。


「よろしくね!人狼族(おおかみ)のお姉ちゃん。」

「お・・・おう。」


彼女の明るい笑顔に少しキョどってしまったが、とりあえず会釈をする。

ケリブを避け部屋の中に入ると、中央に長テーブルと暖炉が備えられている部屋に着く。

辺りを見回していると私はあることに気がつくいた。


部屋にはドワーフ族だけではなく数人の人外族がいたのだ。

しかも・・・ただの人外族ではない、どれもレナの考えた設定に基づいた容姿をしている。

故に私は彼らの種族名を当てることができた。


さっきのドワーフ族も設定集のどこかで見かけたために既視感を覚えたのだろう。


 最初に目に入ったのは身長3mぐらいあるだろう寂れた甲冑を着た男。

顔がごくつ、白目、肌が緑色で下顎の犬歯が長い・・・オーク族だ。


 次に、壁にもたれかかっている真っ黒なライダースーツと、同じく真っ黒な風邪用マスクを付けた人物に目を向ける。

一見普通の人間に見えるが顔色は死人のように真っ青で、髪は光を反射させないほどに真っ黒。

そして明らかに異質なのは『瞳』だ。

黒眼と白眼が反転している普通ではない不気味な目。

種族名アンデット。

反転した目はアンデットならでの特徴だと設定に書いてあったことを覚えている。


最後に、素朴な椅子に腰掛けた丸メガネのおかっぱ少女・・・彼女はすぐ分かった。

エルフだ。

エメラルドのような瞳と髪をしていて、普通の男だったら思わず見とれてしまうほどの美しい容姿。

これだけの特徴だと他の種族の可能性があったが、特徴的に伸びている横長の耳が

エルフであることを決定付けた。


そうこう考えていると

ヴランは長テーブルの上に、レナをそっと寝かしつつ辺りを見渡していた。


「アルちゃんはどこにいるの?」

「アル様は先ほど部屋にあちらに・・。」


オークの男が渋い声で答える。


「読んできてちょうだい。」


 オークを見送りながら、ヴランが仮面を外す。


・・・というかそれ仮面だったのか普通に素顔かと思った。


仮面は割れるように消失し、中から男性の顔が出てくるが彼はリザードマン・・・

人間とは違う容姿を持っていた。

目元と頬が赤黒い鱗に覆われ、瞳は爬虫類のように縦長の瞳孔をしていた。

その姿はまさに蜥蜴男(リザードマン)・・・。

ヴランのデザインを見たときリザードマンらしくない見た目だなと思っていたが

なるほど素顔があったのか。

それ以外にも、人間的な部分は少し特殊で

まつ毛が長く、素肌は男性らしからぬほどに美白で顔も整っている。いわゆるイケメンの部類だが

どこかフェミニンな雰囲気を醸し出していた。


「アル様こちらです。」


私がヴランの素顔を凝視していると。

私たちが入ってきた真逆のドアが開き、中から一人のボロボロのエナンをかぶった黒ローブの老婆が現れる。

彼女は他の者とは違い、種族設定ではなく、レナが考えたオリキャラの中に彼女と同じ容姿を持つ人物(キャラ)が存在していたことを思い出す。


ヴラン以外にレナのオリキャラが存在していた事実に私は再び驚く。


「まったく!人使いが荒いね、ヴラン!」

「しょうがないじゃない?貴方にしかできないことだもの。」


老婆がレナの顔を見るなり顔を引きつらせる。


「これはひどいね・・・聖剣に刺されたのかい?」

「ええ、光属性の攻撃も体内から受けて重症よ・・・もう少し早く駆けつければ。」

「仕方がないさ、まさか彼女の正体が知られるなんてね。もう少し詳しく調べるから待ってなさい。」


老婆がレナの額に手を置くとレナの肉体が黄緑色に輝き始め、苦しそうだったレナの顔が少しだけ和らいだ。

一体何をしているのだろうか・・・レナは大丈夫なのだろうか。


「さて、彼女がレナージュ様を診ている間に説明しましょうか。」


そうだった・・・

今日の現実とは思えない出来事の連続。

いろいろありすぎて、何を質問していいかわからないが、とりあえず目につくこと

そうだ、ヴラン・・・レナの創作物が存在している理由を聞こう。


「お前らは・・・一体何なんだ?何故レナの創作物が実在してるんだ?」

「ワタシ達は創作物では無いわ。正真正銘のレナージュ様の(しもべ)、それ以上でもそれ以下でも無いの。」


つまり実在しているということ。

そうヴランは答えた。

 

「そうね、まずは自己紹介と行こうかしたら?まずはガンちゃんから。」


ヴランがそう言うと、オークが前に出る。


「俺はガンドゥラ・・・オーク族の戦士だ。

俺もレナージュ様の僕だ。」


次にアンデットの男が手を挙げる。


「俺は、ボーンハート、よろしく、種族はアンデット。」


その次に、エルフが本を閉じ、慌てながら起立する。


「僕は、エ、エルフのフロルです!アルさんの弟子をしています!よ、よろしくほねがいします」


噛んでるぞ・・・。

ドワーフの女の子が元気に両手を振る。


「ドワーフ族のケリブだよ!改めてよろしくね!狼のお姉ちゃん!」

「そしてレナージュ様を診ている彼女はアルちゃんこと、魔女アルチーナ・ミネルよ。

あと一人クラーケン族のスマちゃんがいるんだけど今は席を外していてね、それの子はいずれ紹介するわ。」


ヴランが代わりに魔女を紹介をする。

ク、クラーケン族・・・クラーケンてあのタコの巨大生物か?

流石にレナの設定集をそこまで詳細に見ていないから容姿はわからないが、そんな奴がいるのか。


最後にヴランが前に出る。


「最後にワタシ。

ワタシは12代魔王の元右腕で、元十二幹部の一人・・・そして。」


両手を大きく広げ、声高らかに名乗りを上げる。


「レナージュ様直属の軍『魔王軍』の指揮官ヴラン・ヴァキバキ・バルゾよ。

ワタシたちはあなたを歓迎するわ・・・同士『リョーコ』」


レナ直属の軍・・・だと?

これは持たとんでも設定だ・・・って同士?

というか私の名前名乗ってなかったはずだ!?


「・・・なぜ私の名前を?」

「当然よ、ずっとレナージュ様を見てきたからね。」


ストーカーかよお前。


「ヴラン殿、この娘がお主の言っていた新たな同士か?」

「ええ、そうよ」

「わー、フロルと同じ女の子だ!やったぁ!」

「ちょ・・・ちょとまて!同士ってなんだよ!?」


いきなり同士と言われても困るぞ!


「貴方もレナージュ様の僕でしょ?だったら私たちは仲間よ?」


いや、確かにレナはそう言ってたけど。


「僕になった覚えはないんだけどな・・・。」


とりあえずそれは今はいい。もう一つ重大な質問をする。


「とりあえず、もう一つ質問していいか?」

「どうぞ。」

「お前達がレナの創作物では無いことはわかった。・・・レナは本当に魔王なのか?」


これが最も重要な質問だと思う。

魔王魔王言ってきたレナだが、私はめっきり信じていない。

というか彼女自身もそれが自分の創作だと認めているため、信じる以前の問題だった。

しかし、レナの創作物は今まさに私の眼の前にいる。

ということは、レナは本当に魔王の娘である証拠でもある。


私には確信が欲しかった。


「見せたほうが早いわね、アルちゃん以外みんな出て。」


レナを診ている魔女とヴラン以外、外に出る。

そしてヴランは徐にレナのセーラー服を脱がし始めた。


「っちょ!何やってんだお前!!」

「見せたほうが早いと思ってね。」


そう言うと、下着姿になったレナに向かって手をかざし何かを唱える。


「見せるって何を・・・・・・。」


私は思わず自分の眼を疑った。


レナの綺麗な白い肌にタトゥーのような模様が浮かび上がったのだ。

それも全身くまなく、まるでレナに纏わりつくように真っ赤なラインと知らない言語で張り巡らされていた。


「こ、これ一体?」

「先代魔王の王妃様、つまりレナージュ様の母上がかけた記憶封印の印と魔力封じの印よ。」


記憶封印と、魔力封じ?

一体どいうことだ?


「彼女が魔王の娘という身分を隠すためにね、その前の記憶と魔力を封印する必要があったの。」

「そ、その割には、自分のこと魔王の娘とか言ってたな。」


魔王レナージュ・・・これが彼女のお決まりの名乗りだ。


「しょうがないわ、彼女の力は日に日に増しているの。

記憶封印の効果も段々薄れてきて、本来の記憶は彼女の創作物としてアウトプットされ、魔力封じも彼女の増えつずける膨大な魔力を押封じ込みすぎて、体調不良を起こしてしまっているの。問題は山積みね。」


最近よく起こすレナの体調不良・・・これが

原因がこれだったとは。


「なぜ、そんなことを?」

「『いろんな人から』から身を隠すためよ。」


いろいろな人?


「・・・随分曖昧な。」

「どこから説明していいかしらね・・・。」


ヴランは腕を組み、瞼を閉じ、10秒ほど考えた。

そしてゆっくりと口を開く。


「魔王と勇者の話は聞いたことがある?」

「レナの考えた話なら・・・たしかレナの父親が勇者に打たれたってヤツだよね?」


レナが人間嫌な理由・・・というか設定。

いや、魔王の娘が事実と考えると、本当に理由になるのか・・・・こんがらがる。


「そう、12代魔王様が打たれ『()()』と『()()』が無くなった魔人たちは一気に弱体化していってね、人間と魔族の戦争・・・正確には『聖者と魔族の戦争』だけど・・・・」

「聖者?」

「神に選ばれた者たち・・・神を信仰する者よ。

魔族と相対する存在で勇者も聖者の一人なの。」


レナの設定集では魔王と勇者の戦いが描かれていただけで、そんな詳しくは書かれていたなったな。


「戦争は人間側の勝利で物語はハッピーエンド・・・とはいか無いわ。私たちにとってはね。」


それはそうか。

勝ったのは人間、彼ら魔族ではない。


「戦後、人間たちは魔族たちを蹂躙していった・・・人型の魔族は奴隷として扱われ、それ以外の魔族は聖者や人間達によって次々と狩られていったわ。

一度、残党軍が再戦争を仕掛けたど・・・最終的には聖者達が使った『禁断呪文』によって私達の故郷(魔界)もろとも消失したわ。」


ヴランの表情は曇る。

怒っているし悲しんでもいる、そんな表情だった。


「消失・・・した?」

「10年前に・・・えぇ、残ったのは腐敗した大地だけ・・・復興は絶望的なほどに。

幸い私達は王妃とレナージュ様を連れて人間達の大陸にいたから、大事にはいたらなかったけど・・・。」


10年前とは、意外に最近の話なのか。


「その後も、生き残った魔族達は次々と滅ぼされられ、弄ばせられ、強いげられ、苦痛の日々を送ったわ。」


そう言うと深くため息をした。


「その最中だったわ『この世界(地球)』の存在を知ったの・・・。まったく別の世界

魔族と魔法と聖法力の存在がない()()()()をね。」


この世界・・・つまり私たちがいる世界。

魔法が存在しない、異なる世界。


「生き残った魔族のほとんどがこの世界に逃げ込んでいるわ。」


まじかよ。

まぁ、確かにこの世界じゃあ魔族を狩る者とかいないし

魔法とかうまく使えば隠れて生活するぐらい可能だろう。


「『この世界』の存在を知った王妃も『魔族最後の希望』であるレナージュ様をこの世界で、

()()()()()()()』として人生を歩ませるべく記憶封印と魔力封じを施し、『紅林レナ』という偽りの記憶を与え、

娘を亡くしたばかりの紅林夫妻にレナージュ様が自分の娘だと思い込ませ、その身を隠したの。

それが彼女過去よ。」


「そう・・・だったのか。」


明らかになったレナの過去・・・。

壮絶な話・・・ギリギリついていけたが、全部は飲み込めてはいない。

私とレナが初めてあったのは6歳の時・・・私と会うまでにそんなことが彼女の身に起きていたなんて

想像もつかない。


「でも、そう簡単に物事はうまくいかなかったわ。」


再びため息をする。


「それが、貴女がさっき戦った『新生英雄達(しんせいえいゆうたち)』の存在よ」

「新生英雄達・・・。」


そうだ、あの男が名乗っていた。


「『新生英雄達』・・・簡単に言えばこの世界に来た聖者、魔族を葬るための追跡者よ。

それに、一番、厄介なのはこの世界の人間を聖者として育成していることね。さっきの男もこの世界で育成された聖人の一人よ。」


まじか、そんな奴らが私の知らないところで存在していたのか。


「私の仲間も何人かは奴らに殺されたわ・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「あいつら?」

「いえ、今は関係ない話よ。」


んだよ、気になるじゃねーか。


「私たちはそんな者からレナージュ様を守るためこの世界に拠点を移し、活動しているの・・・

どう?理解した?」


確かに、レナの正体やヴランが此処にいる経緯は知ることができた。

しかしまだ分からないことがある。


「じゃあ・・・私は?」

「!」


ヴランの顔が引きつる。


「私は人間のハズなのに・・・なぜこんな風になっている?」


私は自分の毛深くなった銀色の腕をヴランに見せつける。


「それは・・・。」


ヴランが口元を押さえ、何かを考える。

いや考えることか?さっきみたいに話せよ!


「・・・貴女は魔人で人狼族の血が流れている。今言えるのはそれだけよ。」


は?適当すぎるだろ?なぜ人狼の血が流れているのかその理由が知りたいんだ!


「もっと詳しいことを聞かせろよ!なぜ私にその血が流れているんだ!もしかしてレナと同じで偽りの記憶を植え付けているか!!?」


私はヴランに言い寄る、ヴランも私の威圧のせいか若干後退した。

話を考える限り、私にも記憶操作が施されている可能性があるかもしれない。


それは、嫌だ・・・今までの思い出が、記憶が、全て作り出された物だと思いたく無い!


「騒がしいよ!!!!!!ここにはけが人がいるんだ!!!!」


レナを診ていた魔女が大声を出す。


「あなたが一番騒がしいわよ。」


魔女に注意され、私はヴランから離れる。

確かに、レナがいるところで声を上げてしまった・・・。


「ごめんなさい、別にあなたに偽りの記憶()植え付けていないわ・・・でも、今はまだ言え無いの。」

「なんだよそれ・・・」


なぜ言えない?何か理由があるのか?

でも記憶が作られていない物だと知り少しほっとする。


「でもこれだけは、言える・・・その力はレナージュ様を守るための力だということ。」

「レナを守る力?」

「ええ、今まさにレナージュ様は危機に陥っている・・・誰かの助けがいるの。」


そう言ううとヴランは右腕を差し出す。


「同志『リョーコ』その力をワタシ達に貸して欲しい。レナージュ様のためにも」


・・・・・・。


「正直アンタをあまり信用してないし、今言ったこと全部信じたわけでも無い。」


突然、私の前に現れた、レナの創作物達・・・

今日起こったことがあまりにも現実離れしすぎて、どこまで信じていいか分からない。

でも私は・・・自分自身の思いは信じられる。

親友(レナ)を助けたい・・・その思いは絶対に変わらない。


「でも、私は・・・レナを守れるならなんだってする。だからお前も力貸せよレナの僕。」

「ッフフ、当然じゃない。私はレナージュ様の最愛なる僕ヴラン・ヴァキバキ・ヴァルゾよ。

命に代えても彼女は守るわ・・・絶対に。」


「・・・あたしゃ反対だよ。

こんな魔力量も少ない小娘がいったいなにができるのだい?それに・・・!」


・・・確かに私が足を引っ張ったら元もこもない。

魔女が言うことも一理ある・・・悔しいが。


「でも、今戦える魔族がいない状況では貴重な戦力よ。」

「ヴラン!本気かい!?()()()()()()・・・」

「いいのよ、今は彼女の思いを尊重しましょ?」


話はまとまったのか?


「・・・・・あんたが責任持って育てな。」

「ええ、もちろんよ。」


魔女との言い争いが終わりヴランが私の方を向き再び右手を差し伸べる。


「今から貴女はワタシの弟子よ。よろしくねリョーコちゃん」


レナを守れる力が手に入るなら私はなんだってする。

ヴランはあの男(厨二)を容易に倒した・・・そいつが師匠なら文句はない。

だが、ちゃん付けはやめろ!


「あ、あぁ・・・リョーコでいい。」


私は彼の手を取った。





「あの・・・まだダメですか〜?」






扉が開き、ケリブがひょっこり顔を出す。


「あら、ごめなさいね!」


そういえば、他の魔族達は外に出しっぱだった。

ヴランはレナに再びセーラー服を着せると、魔族達を再び部屋に集合させる。

「それで、どうなの?」

「重症といえば重症だ・・・人間としてね。」


心臓を刺されてるから十中八九重症なのは解る、しかし人間としてはどういう意味だ?


「どういうこと?」

「魔王族はそう簡単に死ぬことはない・・・それは膨大な魔力で傷を癒し、生命を維持させているからだ。

だが、彼女はほとんど魔力が使えない状況で猛毒である光属性を喰らい、心臓を潰され重症だ。

人間だと即死だよ。

しかし、不幸か幸いか聖剣で刺された影響で印の効果が不安定で微量の魔力が漏もれている。

それが生命維持の機能を果たしているが、それが無くなるのは時間の問題だよ。」


聖剣でなかったら死んでいた・・・そう思うとぞっとする。


「魔力封じを解いて、魔王族としての治癒能力を発動させるのが最善かもね・・・。」

「しかし、それだとリスクがあるね。」

「リスク?」


ガンドゥラが顔をかしげる。


「フロル説明しな!」

「は、はい!

こ、このお屋敷周囲には僕たちの魔力が聖者に感知されないように遮断結界が貼ってあります。

でも、魔王族の・・・それも膨大に溜まっているレナージュ様の魔力を押さえ込むほど結界は

頑丈には出来ていません。魔力封印を解放すれば魔力が外に漏れてこの居場所がばれてしまいます。」

「それにこの重症だい。回復するのに時間がかかるし、印を結び直すにも時間がかかるよ。」

「奴らの、索敵能力は高い、少しでも漏れれば、ここに奴らは来る。」


まじか、とりあえず襲われるということはわかった。


「アルちゃんの回復魔法で治せないの?」

「怪我程度ならすぐだが、心臓や内臓、魔力源を再生させるほどの魔力をあたしゃあ持ってないよ。」

「どうしますか?ヴラン様」


フロルが心配そうにヴランを見つめる。


「・・・彼女の何時まで持つのかしら?」

「最低72時間・・・それ以内にどうにかしないと、生命を維持している魔力が尽きて死ぬ。」


つまり今から三日間の猶予しかない。


「・・・・・・。」

「治療をするのが早い方がいいと思います。

ヴラン様が倒した『閃光のランサー』の捜索もそろそろ行われますし、ここがバレるのも時間の問題です。」

「…そうだったわね。」


ヴランは顔を上げ、仲間達に指示をする。


「70時間後に封印を解くわ。

その間アルちゃんとフロルちゃんは遮断結界の強化を、できる限り結界外にでる魔力量を減らすの・・・魔王族の存在がバレなければ精鋭はこないはずよ。」


「わかりました!」

「あいよ。」


フロルと魔女が頷く。


「ボーンハートは近辺の街で聖者の捜索、奴らは私が戦った聖者の聖法力が失われていることを察知しているはずだから、そろそろ捜索を始める頃よ。敵の情報が欲しいわ。」

「わかった。」


ボーンハートは頷き、早歩きで部屋を出る。


「ケリブちゃんとカンドゥラは防衛戦に備えて準備をする前に、申し訳ないけど次の移住先の確保をしてほしいの。見つけ次第、早急に移動できるように片付けと身支度を済ませて。」

「あい、わかった!」

「お安い御用だよ!」


ガンドゥラとケリブが返事をする。


「そして、リョーコ・・・。」


そして最後後に私の方を向く。


「明日・・・私と修行をするわよ?

今日は一度家に帰りなさい。」




今回は時間がかかりましたー。

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