STEP1 Frozen Flare 92
〈欲しいだろう 言ってごらんよ全部あげるよ 君に 言ってごらんよ 欲しいって〉
私は、耳を塞ぎたくなる。
目の端で、愛美が硬い表情をしているのが映った。
終わりを作るのは私じゃない。愛美はそう言っていた。
どういう終わりになるのだ。誰が終わらせてくれるのだ。
私は叫び出したくなった。
曲が間奏に入って、ザキがメンバー紹介と叫んだ。私は、やっと息がつける。
「キーボード、シヴァ。真面目なリーダー」
ザキは、マイクを外してシヴァの隣まで歩いていき、茶化すように頭を下げた。
キーボードのソロが終わるのを待って、ザキは別のメンバーの元へ歩いていく。
ライの肩を抱いて、ザキは頬をすりつけるようにした。少女達の声が、一際高くなる。
「ギター、ライ。ポストザキってな」
そしてベースのウミハルを、丁寧にこちらですと言うように腕で指し示した。
「ベース、ウミハル。言わずと知れたたらし野郎」
ウミハルが、蹴りを入れる真似をするのをザキは躱して慌てて逃げ出す。
「ドラムのヨータ。案外努力家らしいぜ」
観客に背を向けて、ザキはヨータに両手を差し出す。
ドラムの乱打の後、ザキはマイクスタンドに戻り、マイクを戻した。
「そして俺、ボーカル、ザキ。悪の権化。権化なんて言っても、お前ら馬鹿だから分かんないだろう。馬鹿ばっかりでやんなるぜ。何と言っても、ここにいる俺達こそ大馬鹿野郎だけどな」
――Frozen Flareに罪を。
ザキは囁くようにマイクに言った。
〈辱めるように容赦なく 喰むようにひそやかに 蝕むように果てしなく 堕ちていくどこまでも 昇っていくどこまでも〉
曲がフェイドアウトで終わる。
私は、逃げ出したい思いを必死で堪えて立っていた。
MCの後が、問題の曲だ。
何が起こるというのだろう。本当に何かが起こるのだろうか。
そしてザキは、駄目になってしまうのか?
「さて、面白い話を一つしよう。何と、今日このライブを中止しなければ、俺を殺すという脅迫状が届いた」
ザキは何を言い出すのだ。
少女達がイヤーと叫ぶ声がする。
「ライブはもう始まった。俺は殺されなきゃならないらしい」
ザキはおかしそうにクスクスと笑っている。
「しかも、犯人は仲間内にいるんだってよ」
少女達の意味不明の悲鳴が交錯する。
ザキは、メンバーを振り返ると、
「殺せるもんなら殺してみな」
と、底冷えするような声で言った。
マイクに声は拾われてしまい、更なる悲鳴がライブハウスに響き渡る。そして再び正面を向いたザキは、最後の言葉でMCを締めくくった。




