STEP1 Frozen Flare 82
人一人の人生を左右するような重い判断を、愛美につけてみろと言うのだから。
(私は、どうすればいい?)
ライブハウス PM3:48
出演 Frozen Flare
PM4:30開場 PM5:00開演
曲目
Starless
Crime Education
皆殺しのJungle
Replica Night
Frozen Flare
物思いに沈んでいるらしい愛美に、私はどう声をかけたものか分からなかった。
薄い紫のサングラスの下の目は、テーブルの一点を睨んでいる。
そこにはコピーされた印刷物が一枚きり、置いてある。
その文面を、私はそらで言えるほどだ。
「警察には何もできない」
愛美は顔を上げると、ある一団に苦々しげに目をやって、先ほどと全く同じ言葉を繰り返した。
私の指示も仰がずに、スタッフの一人が勝手に警察に通報してしまったのだ。
警察が役に立たないと言うのなら、SGAのメンバーである愛美が、役に立つところを見せてくれればいい。
私は苛立っている分意地悪く思いつつ、やっぱり私立探偵と警察の関係と同じで、二つの異なる機構に属する人間同士が、同じ事件に関わるのはあまりうまくはないのかも知れないと考えていた。
「ライブは中止しろ。さもなくばザキを殺す。誰にも止められない。殺す、殺す、殺す、殺す、殺す」
その後も延々と紙が終わるまで続けられた文字を読むことはなく、そこまでで愛美は言葉をきった。
愛美は、唇を噛んでいる。
ザキは愛美を辞めさせるようにと私に迫ったが、そんなこと許せる筈がなかった。
二人の間に何があったか、愛美から聞く間もなかった。
私はザキには曖昧に、一応分かったとは答えたが、今すぐは無理だと釘をさしておいた。
こんなことになった今、頼れるのは長門と愛美だ。警察が頼りにならないと言うのなら、尚更だ。
届けられたのではなく、ただ一枚の紙が扉から一番手近にあるデスクに載せられていた。いつからそこにあったのか、誰も知らない。
ふと紙きれに気付いて文面を読んだスタッフは、ひどく驚いたようだ。
驚かない方がどうかしている。
たまたまその場に居合わせなかった私が口を挟む前に、警察へも連絡がいってしまった。
先日の峰の事故も、一役買っているのだろう。
それまでスタッフは、ザキが何者かに命を狙われているらしいということを楽観的に捉えているところがあった。
ザキが襲われたということよりも、峰が事故に遇った事実の方がインパクトはあったようだ。
自分達にも範囲が及ぶかも知れない危険性に、考えがいって初めて危機感を抱いたらしい。結局は我が身可愛いというやつだろう。




